ヒメノスピア×キリングバイツ   作:モッチー7

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pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。

内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。



序章
第1話:三門陽湖


2019年6月17日 東京都道245号杉並田無線

 

1台の高級車が“ある場所”に向かって走っていた。

「お嬢様、もう直ぐ楽園都市(ヒメノスピア)に到着いたします」

運転手の真後ろ(乗用車における上席)に座る女性が不機嫌になる。

「運転手さん……台詞を間違えてます。ちゃんと台本を読んでいます?」

運転手が慌てて言い直した。

「はっ!失礼いたしました!もう直ぐ西東京市に到着いたします!」

さて、この2人が西東京市の呼び方についてこうも揉めているのか、簡単に説明しよう。

元々はただの西東京市であったが、去年(2018年)の6月13日に日本の警察組織が“ある者”を強奪しようと目論み、1人の女子高生に大量殺戮テロの首謀者と言う濡れ衣を着せた事で、西東京市の運命は大きく変わった。後に『鷺宮女子高銃撃テロ事件』と呼ばれる事になる事件である。

濡れ衣を着せられ知らず知らずの内に日本全土を敵に回す羽目になった“ある者”は、“ある力”を使って日本の警察組織を1週間かけてじわじわと浸食し、逆に鷺宮女子高銃撃テロ事件の真相を白日の下に曝して空前絶後の警察不祥事を引き起こしたのであった。

だが、日本の警察組織を完膚なきまで辱めただけでは飽き足らない“ある者”は、自身の理想を具現化した日本の中でも独立した特別自治区を築いてしまったのだ。

しかも、その“ある者”がある組織()にとんでもない要求をしてきたのだ。

(待ってておじい様……私が必ずあの法案を取り戻してみせるから!)

 

2019年6月17日 楽園都市(ヒメノスピア)鷺宮女子高等学校正門

 

高級車がとある学校の校門前に到着した。

「鷺宮女子高等学校……此処に、園藤姫乃が居る!」

女性は車から降りて校内に入ろうとするが、直ぐに生徒達に取り囲まれてしまった。

「見ない制服だね。転入生?」

「それとも願書と取りに来た受験生かな?」

「何処に行きたいの?事務所?職員室?」

「案内してあげるね」

生徒達は善意の心算であったが、女性にとっては無礼以外の何者でもなかった。

「退いて貰える」

「もー。遠慮しちゃ駄目だよ」

「知らない人にも親切にって、姫乃様が言ってたからね」

「そうそう」

「困った事があったら言ってね」

もう我慢の限界に達してしまった女性は、遂に怒号を飛ばしてしまった。

「この私が、三門財閥の三門陽湖が直々に園藤姫乃に会いに出向いてるのよ!さっさと取り次ぎなさい!この愚民が!」

遂には、取り囲んだ生徒の内の1人の襟首を掴んで脅す様な格好になってしまった。

「お前なんかじゃ話にならない。責任者を出しなさい!」

予想外の展開に、取り囲んでいた生徒達は右往左往する。

「きゃああああああ」

「ちょっと!?みんな落ち着いて!」

其処へ、1人の中年男性がやって来て皆を宥めた。

「やめなさい。この方は、園藤姫乃さんの客です」

 

2019年6月17日 楽園都市(ヒメノスピア)鷺宮女子高等学校裏庭

 

「いやー、驚かせてすいませんでした。予想していた事とは言え、まさかあそこまで騒ぐとは」

中年男性の釈明をまるで聞いていないかの様に無言でついて行く陽湖。

「ここでは、至る所で『女王』に対する愛情や善意が溢れ返っていますから、どうしてもああなってしまうのです」

やはり陽湖は聞く耳持たない。

「あ、申し遅れました。私は、この学校の保健医、藤本です。以前は『蜂』に関する研究施設に勤めていたのですが、訳あって解雇されてしまいましてねえ―――」

陽湖の隣にいた青年が代わりに質問した。

「貴方はもしかして、フジモト生物化学研究所所長の藤本康臣氏ではありませんか?」

()が付きますがね。今は専門知識を活かしながら『蜂』の巣窟であるこの学校で働きつつ、観察を続けている訳です」

陽湖が漸く口を開いた。

「で、園藤姫乃は何処に居ますの?」

藤本の話に全く興味を持たない陽湖であったが、藤本は全く気にしない。

「やはり、あの法案が白紙撤回された事をいまだに恨んでいますか?」

 

日本経済は、400年前から四大財閥に支配されていた。だが、件の四大財閥の間で発言権や収益に関する話し合いで大きく揉めてきた。

そこで、四大財閥が財力に物を言わせて集めた達人達に様々な勝負をさせる事で、四大財閥同士の潰し合いを未然に防いできた。それが『牙闘(キリングバイツ)』である。

それから時代は流れ、『牙闘(キリングバイツ)』の一大エンターテインメントとして公式化させようと言う動きがあった。その為に必要な法案も可決・成立する筈だった。

だが、急に立ち塞がったのが楽園都市(ヒメノスピア)を支配する『女王』園藤姫乃で、彼女の鶴の一声で『牙闘(キリングバイツ)』公式化に必要な法案は否決・白紙撤回されたのであった。

 

2019年6月17日 楽園都市(ヒメノスピア)鷺宮女子高等学校裏庭

 

「いやー……しかし、貴方方も災難でしたなあ。まさか、特定遺伝子組換改革法が否決されてしまうとは。やはりこれも、園藤姫乃の力が、警察のみならず、政局にまで及んでいる証拠ですな」

「そうよ。全く、いい迷惑だわ」

「しかし、四大財閥の仲違いによる日本経済の混乱は避けたいからと、『牙闘(キリングバイツ)』を非合法化させる事で、秘密裏であれば『牙闘(キリングバイツ)』を開催できる。と、言った所ですかな?」

陽湖の眉が不機嫌そうに動いた。

「仰る意味を測りかねますが、所長……いや、藤本教授は、三門財閥が『蜂』に屈したとお考えですか?」

それに対して、藤本は軽々しく答えた。

「いやいやいやいや。屈するとか屈しないとか言う次元の話ではありません。元々昆虫は、既知の種だけでも600万超。これは、地球上の全生物の中でも、半分以上を占める数値ですが、その中でも―――」

やはり陽湖は聞く耳持たない。

「はいはい。話が長くなるなら止めていただけますか?」

藤本はつまらなく呟いた。

「これからが面白いのですがね」

陽湖の目が鋭くなった。

「兎に角、園藤姫乃が何を手に入れようと、所詮は愚民。日本最大・世界最長の歴史と伝統を誇る一流の財閥である三門財閥の前では只の屑。それが園藤姫乃よ!」

藤本が嬉々として言い放つ。

「素晴らしい。『兵士』への不満としては初めてのケースです。果たして『女王』がどんな感想を持つか、私も詳しく知りたい所ですな」

陽湖は少し気持ち悪くなった。

(フン!薄気味悪い老人ですわね)

とは言え、此処で引き下がる気は一切無い。

(ま、何にせよ、これで一先ず、園藤姫乃に会えそうね。どんな女か知りませんが、少なくとも判っているのは、身の丈を弁えずに女王を名乗る、教祖気取りのサイコ屑。根拠の無い自信ともたざる者への憐みを携え、『争いの無い国を造る』とか言う夢物語を真顔で語る平和ボケ。最も愚かな阿呆)

陽湖の顔に血管が浮かぶ。

(身の丈に合わない支配者顔を想像するだけで、腹ただしいですわ!見た瞬間に怒りに飲まれそうで怖いですが、先ずは落ち着いて、あの法案を元に戻す方法を聞き出さないと!)

そうこうしている内に、学校の花壇をいじるジャージ姿の女子高生の背後に辿り着いた。

「ほう、ハルジオンですな。キク科の植物は、最も進化と分化を重ねて来た種族です。人類に次代の進化を促す『女王』を象徴する花と言えますなあ」

藤本の言葉に、女子高生は照れ臭く控えめに答えた。

「い、いえ……単に母が好きだったもので……それと」

学校の花壇をいじるジャージ姿の女子高生が振り返り、それを見た陽湖が驚愕した。

(……嘘……でしょ……)

「『女王』はやめてもらえませんか、藤本先生。私は唯の女子高生なので……」

(この……まるで垢抜けない地味眼鏡が……土塗れな愚民女が……)

金魚の様に口をパクパクさせる陽湖。

「これは失敬。所で、此方の方々はですな―――」

ジャージ姿の女子高生が服に就いた土を手で払った。

「ええ、お話は、ルシアさんから伺っています」

ジャージ姿の女子高生が金魚の様に口をパクパクさせる陽湖に自己紹介する。

「初めまして鷺宮高校生徒会長、園藤姫乃です」

 

人目を気にせずにジャージ姿で園芸部とじゃれ合う姫乃を見て、陽湖は唇がブルブルと震え、胃の奥から溢れ出た、悲痛な叫びを抑える様に、無意識に両手を口元に持っていく。

「女王蜂とは、その呼び名に反し、本質的には働き蜂と何ら変わりはありません。生物学的には『生殖虫』と呼ばれ、あくまで生殖の役割を担う一個体に過ぎず、群れを統率するわけでも、君臨するわけでもないのです。然るに、この学校の『女王』である園藤姫乃の存在もまた、基本的には唯の一生徒。ごく普通の女子高生に過ぎないのです。特に『兵士』ではない一般の生徒にとって園藤姫乃は、元いじめられっ子で異様に腰の低い生徒会長に過ぎないわけで……聞いてます?」

陽湖は聞く耳を持つ余裕が無かった。

日本の警察組織を完膚なきまで辱め、日本国内に独立した特別自治区を築き、鶴の一声で『[[rb:牙闘 > キリングバイツ]]』公式化に必要な法案を否決・白紙撤回させた『女王』が、普通の女子高生だと言うのだ。

陽湖は、この設定に精神的にも生理的にも耐えられなくなり、隣にいた青年に残忍かつ薄情な命令を下した。

「『[[rb:獅子 > レオ]]』!こいつらを皆殺しになさい!」

その直後、渚は陽湖をうつ伏せにしながら馬乗りになった。

「姫乃、大丈夫?」

園芸部が驚く中、姫乃は平然としていた。

「はい。怪しい気配は感じていましたが、皆さんが守ってくれると思っていましたから」

姫乃のこの言葉を合図に、大勢の女子高生が続々とやって来た。しかも、やって来た女子高生全員が陰部から伸びる長い管状の『針』を蠍の尻尾の様にちらつかせた。

これこそが、姫乃が手に入れ、警察が恐れ、日本政府が欲した『蜂』の……そして、『女王』の力である。

 

警察や政府が言っている『蜂』とは、人間社会に寄生する異形の針を持つ赤い寄生バチの事である。

彼らは一般的なハチ目(膜翅目)と違って女王蜂のみが生息し、働き蜂が1匹もいない。

そこで、彼らは人間の女性に針を刺して体内の毒素を注入する事で、自分を愛し護る『兵士』に変えるのである。

しかも、彼らは女性を刺す時に『兵士』にするか『女王』にするか選択する事が出来るのだ。

そして、姫乃は『蜂』に選ばれて『女王』となり、『蜂』同様に人間の女性に針を刺して体内の毒素を注入する事で、自分を愛し護る『兵士』に変えるのである。

また、『蜂』に刺された女性は、『兵士』であろうと『女王』であろうと、体質変化によって長い管状の『針』を得る。伸縮自在である『針』は、普段は陰部に内蔵されているが、有事に際には陰部から出て威嚇や攻撃(『女王』のみ『兵士』を生み出す時にも使用する)に用いるのである。

そうする事で、『蜂』は人間社会を乗っ取り我が物にして理想の社会を作ろうとしているのである。

 

「とは言え、やはり『女王』が特別な存在である事は否めません。常に触覚が触れる距離で護衛するのが『兵士』の役割。いかに巣の中とは言え、敵襲の惧れがある屋外において、単騎でいる道理はありません」

姫乃は、さっきまでのお気楽な女子高生とは打って変わって、上から目線で陽湖に告げた。

「残念ですが、今あなたがした事は立派な犯罪行為です。騒乱罪、暴行罪、殺人未遂罪、そして、国家反逆罪においてあなたを拘留します」

『兵士』達が陽湖を生徒会雑務室に連行する中、姫乃は陽湖に[[rb:獅子 > レオ]]と呼ばれた青年をジーっと視ていた。

「姫乃、どうしたの?」

声を掛けられてハッと我に返る姫乃。

「いえ……ちょっと考え事を……」

『兵士』達の前で気丈に振舞う姫乃であったが、奥歯に物が挟まる気分であった。

 

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