ヒメノスピア×キリングバイツ   作:モッチー7

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服部渚……今回の本当のサブタイトルは『篠崎舞』なのですが、牙闘獣獄刹(キリングバイツ・デストロイヤル)に参加する獣闘士(ブルート)とヒメノスピア第1話前半の時の園藤姫乃との差を露骨に表現した方が面白いと思い、サブタイトルを変更しました。

服部渚は、『兵士』化する前と後、どっちが幸せだったのか?
それは……人それぞれの感性によって変わると思いますので、あえて正解を言いません。


第11話:服部渚

2019年7月2日 東京都新宿区フジモト生物化学研究所

 

1人の男性が、原口の私物と化した()所長室に入ろうとしたが、

「おわ!何だこりゃ。更にモノが増えてるぞ」

それでも、男性はめげずに原口を呼んだ。

「主任。原口主任、いますか?もうすぐ定例会ですよ。たまには顔を出さないと、存在を―――」

当の原口は、着替えるのもめんどくさくなったのか、ほぼ下着姿で顕微鏡とにらめっこしていた。

原口は直ぐに自分を呼びに来た男性に気付いて近寄ったが、男性は下着姿を見られた事を怒っていると勘違いして慌てふためいた。

「な!?何も見てません!殺さないで!」

だが、原口の言葉は予想外であった。

「見つけた!」

「……へ?」

「復元培養した『蜂』の解剖標本と、10年分の実験記録と照らし合わせて、『蜂』の胎内に『女王』の因子を伝達する仕組みを見つけた。やっぱり、園藤姫乃が『女王』になったのも、明確な理由があった」

だが、それでは今までの捜査結果と大きく食い違う。

「ですが、園藤姫乃は、無理矢理『蜂』を食べさせられて『女王』の因子を体内に吸収して同化したっていう―――」

「偶然じゃない。『蜂』は人を刺す時に、『女王』とすべきか『兵士』とすべきか、選択する事ができるのよ」

原口は、男性にパソコンの画面を見せた。

「その証拠に……培養液で復元処理した『蜂』の貯精嚢から、僅かながら『女王』の因子と思しき鎖脂肪酸の跡を発見した」

事の重大さに驚きを隠せない男性。

「え……?それって!?」

「間違い無い!園藤姫乃は『蜂』の意思(・・)で、なるべくして『女王』になった。そして、その仕組みが明確になった以上、園藤姫乃の他にも『女王』となった人間は存在する!」

 

2019年7月2日 アメリカ合衆国某所リビング

 

女性SPに見守られながら食事をする女性の前に、フード付きのジャンバーを着た少女がやって来た。

「今夜は、お招きいただき有難う御座います」

フード娘の慇懃無礼な態度に苛立つSP達。

「マージョリー、もしかしてこの猿は、我々の『女王(クィーン)』を侮辱しているのか?そうだとしたら殺すが」

フード娘がわざとらしく慌てて魅せた。

「まあまあまあまあ、取り敢えず届けに来たプリントを目に通していただいて」

女王(クィーン)』が即座に反応する。

「見せろ」

SPがフード娘からプリントを奪い、それを『女王(クィーン)』に渡した。

「どれどれ……」

プリントの大見出しを見て不思議そうにする『女王(クィーン)』。

牙闘(キリングバイツ)……ただの信憑性皆無の都市伝説だと思ったんだがな」

「今は、それだけマイナーって事だよ牙闘(キリングバイツ)は」

女王(クィーン)』は、肝心要の質問をする。

「で、私に何をしろと?」

それに対して、フード娘は白々しかった。

「一緒に観に行かね?牙闘獣獄刹(キリングバイツデストロイヤル)

逆に不気味がる『女王(クィーン)』。

「一体何の話だ。言いたい事があるなら、ハッキリ言ったらどうだ」

だが、フード娘は更に勿体ぶる。

「今まで絶滅した種族の中で、明らかに人間のせいなのは、どのくらいの数か、ご存じですかな?」

「……あのなお前、質問に質問で返すとかありえないだろ。マナー違反だと思わんか」

でも、まだまだ勿体ぶるフード娘。

「IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)は、5月6日に陸地の75%が人間活動で大幅改変され、約100万種の動植物が絶滅危機にあるとの報告書を公表したそうです。でも、それも暫定に過ぎず、この先も数は増え続ける事でしょうな」

遂にSP達に包囲されるフード娘。

「あれあれ?そんな事していて良いのかな?このままだと、『蜂』が絶滅種だぜ?」

フード娘は、図々しくも『女王(クィーン)』の本名を口にしてしまう。

「セレナ・セルバンテス」

SP達が一斉に『針』を露出して臨戦態勢をとった。

だが、『女王(クィーン)』セレナはGOサインを出さなかった。

「待て。まだこいつに訊きたい事がある」

SP達が渋々『針』をしまうも、やっぱり不服であった。

(く!……殺したぁーい!)

そろそろ限界だと感じたフード娘は、漸く本題を語り始めた。

「1年前に鷺宮女子高等学校を皆殺しにした連中が、一体『何の』を欲しがっていたのか……ご存じですね?」

「……貴様……何者だ?」

「協力して頂けませんか、本当のMr.大統領(ミスタープレジデント)。あなたが本当はそう望んでいる様に、八菱(われわれ)には、『蜂』の天敵(・・)と戦うための準備があります」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

牙闘獣獄刹(キリングバイツデストロイヤル)に参加する事になった姫乃達は、豪華クルーズ船に乗せられて……

「へぇー。すげぇな。本物のパーティーじゃん」

姫乃達を待っていたのは、死闘とは名ばかりの超豪華バイキングであった。

牙闘(キリングバイツ)観戦て、いつもこんな豪華な場所でやってるんですかね」

「そしこ重要な闘いっちゅうこっです園藤殿」

岡島のスーツぱっつんぱっつんなのだが、姫乃に同行していた渚と川辺は、スーツが似合わない岡島にツッコミを入れる気が完全に失せていた。

これから待っている死闘を全く知らないかの様に超豪華バイキングを楽しむ牙闘獣獄刹(キリングバイツデストロイヤル)参加者と観戦者の姿を視て、機嫌を損ねたのだ。

寧ろ、学校制服で此処に来た姫乃達の方が浮いてる様にすら見える。

「くそ成金が!これから獣闘士(ブルート)同士の殺し合いを見せられるって言うのに、よくヘラヘラしてられんな?まったく、反吐が出るぜ……」

見るからに不機嫌な渚に声を掛ける者が。

「セレブは、娯楽に飢えているのさ」

「谷……優牛……」

「やあ、また逢ったね園藤姫乃。それに、獣闘士(ブルート)蜜獾(ラーテル)

「宇崎瞳だ。名前ぐらい覚えておいてやれよ」

渚の皮肉より、この後言った宇崎のボケの方が、谷にとってはダメージが大きかった。

「ところでお前……誰だっけ?」

谷の眉がピクっと動いた。

「ちょっと宇崎さん!」

「瞳殿が初戦で倒した獣闘士(ブルート)獅子(レオ)でごわす」

其処へ、谷や渚よりさらに不機嫌そうな男がやって来てしまった。

「欠場だと?逃げたな獅子(レオ)。俺と闘るのがそんなに怖いのか?」

「お、お兄……」

欠場と聞いて、谷が宇崎に敗けた日の事を思い出して皮肉を言う渚。

「あ。つまり、解雇(クビ)って事?」

谷に喧嘩を売った男の眉がピクっと動いた。

それを見ていたエルザが慌ててフォローに入る。

「ごめんなさい獅子(レオ)。お兄は、今日あなたと再戦するつもりだったから……」

が、宇崎がずけずけと話に入る。

「よーエルザ。ふーん、そいつが自慢の兄貴か。お前すげー強いんだって?今日の試合、楽しみにしてるぜ♪」

だが、谷に喧嘩を売った男は、まるで宇崎を侮辱する様に捨て台詞を吐きながら去って行った。

「フン。獅子(レオ)のいない獣獄刹(デストロイヤル)など……児戯に等しい」

(うわぁー。完全に嘗められてるよ宇崎の奴!)

 

牙闘獣獄刹(キリングバイツデストロイヤル)参加者と観戦者によるパーティを少し引いて客観的に観ている者がいた。

「クク……いつもの事ながら、このくだらない余興は、財閥間の力関係(パワーバランス)がハッキリ判って笑えるせ」

先ずは三門財閥。

「金に色目をつけず、名うての強者でガチガチに固めた三門」

次に八菱財閥。

「負けじと人材をかき集めたものの、一歩遅れて2番手に甘んじる八菱」

角供財閥は、かなり素行が悪く、まるで劣悪なヤンキーグループの会合の様であった。

「俺達みたいなはぐれ者を使って、姑息に漁夫の利を狙う角供」

最後は石田財閥。

「四大財閥の中で、最も資金力に乏しく雑獣(ザコ)しか雇えない石田」

そんなくだらない余興を客観的に観ていた男の背後に、セレナ・セルバンテスとセレナを誘ったフード娘がいた。

「そう言うアンタは、そのくだらない4つの内のどっちなんだい?」

「……誰だ貴様は?」

フード娘はすっとぼけた。

「まだ獣闘士(ブルート)に昇格してないから、まだまだ大手を振って名乗りを挙げられる立場じゃないんだ」

「フン!勿体ぶりやがって!」

フード娘は、親指でセレナを指した。

セレナの姿は、制服姿の姫乃達や一般的な街角の様な格好のフード娘と違って晩餐会に適したネイビーショール風ロングドレスガウンであった。

「でも、セレナは超大物だよ」

「ほう……どの点が?」

フード娘が自信満々に言い放った。

園藤姫乃と同類(・・・・・・・)と言えば解るかな?」

男が慌てて振り返るが、セレナもフード娘も下に降りてパーティに参加していた。

セレナ達を見下ろす形になったが、男にさっきまでの余裕は無かった。

(ど……どういう事だよ!?『針』で『兵士』を増やせるのは、園藤姫乃だけのはずだろ!?それが何で……)

 

突然照明が消え、壇上にスポットライトが当てられるた。

「ご来場の皆様、長らくお待たせ致しました。この度司会進行を務めさせて頂きます、牙闘(キリングバイツ)管理局の篠崎舞です。獣獄刹(デストロイヤル)開催の前に、牙闘(キリングバイツ)管理局長祠堂零一より―――」

祠堂の名を聞いて狂喜乱舞する宇崎。

「何!?祠堂さん!?どこ!?」

呆れる渚。

(アホか?単細胞の忠犬獅子公め)

壇上に上がる祠堂。

「祠堂です。獣獄刹(デストロイヤル)は、各財閥を代表する獣闘士(ブルート)が3名1組4つのチームに分かれ生き残りを懸けて闘う殲滅戦(サバイバルマッチ)

川辺がある事を思い出して陽湖の方を見る。

「そして、その舞台はフィリピン海に浮かぶ無人島『炎蹄島(ほていじま)』。皆様もご存じの通り、今我々は……国内最大級のクルーズ船『獣王』に乗り現地に向かっております」

壇上の後ろの巨大スクリーンに炎蹄島が映る。

「島の総面積は約6㎢。それを100メートル四方のマス目で区切った『ゲーム盤』の上に獣闘士(ブルート)を駒として配置。それを『プレイヤー』が動かし、違うチームの獣闘士(ブルート)が同じマス目に入った時戦闘が開始されます」

渚が怒りで拳が震えていた。

(糞外道が!まるでスパロボじゃねえか!)

そんな事お構いなしに説明が続く。

「同じマス目であれば、2対1であろうと、3対3であろうと、9対1であろうと、戦闘は成立します。そして、勝利条件は他の3チーム全ての獣闘士(ブルート)が死亡または戦闘不能になった時のみ。つまり、経過の如何に因らず、最後まで生き残った者が、獣獄刹(デストロイヤル)の覇者となるのです」

セレナが不敵に笑い、渚が不機嫌そうに唾を吐いた。

「おい!」

渚に唾をかけられたセレブが文句を垂れるが無視された。

「間もなく炎蹄島に到着します。参加獣闘士(ブルート)は速やかに準備に入ってください」

渚同様ヤンキーぽい女が連れに声を掛けた。

「あんた達、さっさと行くよ!」

だが、返答は無かった。

パーティを少し引いて客観的に観ていた男は、フード娘が言った「園藤姫乃と同類(・・・・・・・)」と言う言葉が引っかかってそれどころではなく、もう1人は……

「ちっ!あのアホまたかよ」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』女子トイレ

 

1人のバニーガールが強姦されて呆然自失していた。

「ふー。やっと落ち着いたぜ。どーも、牙闘(キリングバイツ)の前には、女を犯っとかないと気が済まねー」

ヤンキーぽい女がバニーガールを強姦した男に声を掛けた。

「ちょっと、いい加減行くよ」

「ヘイヘイ」

ヤンキーぽい女は、強姦魔を折檻するわけでもなく、只々冗談を言い合うだけであった。

「お前が相手してくれりゃ、もっと手早く済んだんだけどな。へへ」

「死にたきゃどうぞ」

「冗談だって」

だが、強姦魔の邪気はまだ消えてはいなかった。

「でも、まだ犯り足りねー……ま、蜜獾(ラーテル)でガマンすっかぁ」

どうやら、彼らが獣獄刹(デストロイヤル)に参戦する角供派獣闘士(ブルート)であった。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』廊下

 

一方、エルザは付いて来る貴婦人に疑問を懐いていた。

(ねえ、お兄。何でアイツなの?八菱(うち)には、もっと強い奴いっぱいいると思うんだけど……)

「俺は知らん。会長の指示だ」

肝心の兄がまったく興味を示さなかった。谷が欠席なのがよっぽど不満だった様だ。

「いずれにせよ、結果は見えている。獅子(レオ)が出ない以上、俺1人でも、全員倒せる」

 

その頃、石田財閥の幹部達が石田派獣闘士(ブルート)の眼前で土下座していた。

「どうかお願いします。私共は、会長に勝利を厳命されておりまして、何卒、何卒奮迅頂きたく―――」

岡島は正直困惑していた。自身の実力に自信が無い訳ではない。だが、他の獣闘士(ブルート)だって勝つ気でいる筈だ。

「おい達も死にたくはなか。じゃっどん、戦況は厳しか。勝つ保証はできもはん」

「そ、其処を何とか!」

宇崎が強気でいつもの台詞を言い放って幹部達を安心させた。

「安心しろって。誰が相手だろうと関係ねぇ。牙の鋭い方が勝つ。それが牙闘(キリングバイツ)だ!」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

壇上に戻った篠崎がプレイヤーに指示を出す。

「『駒』が炎蹄島に上陸しました。プレイヤーの皆様は、速やかに所定のシートに御着席ください」

将棋盤とタブレットPCが合体したかの様な大きなテーブルを囲む様に座るプレイヤー達。その中に、姫乃と陽湖が含まれていた。

陽湖は、隣に座る姫乃を見て不機嫌になった。

姫乃は、陽湖の無礼とも言える態度に思う所があるが、陽湖が姫乃を殺しかけた時の谷の態度に思う所が有る為にあえて黙認した。

(あの戦いから既に1ヶ月が経っている。なのに病欠……)

姫乃は、ゆっくりと首を横に振った。まるで邪念を捨てるかの様に。

(今は忘れましょう。今やるべき事とは違いますし)

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島海岸

 

その頃、宇崎がちょっとした不満を口にしていた。

首輪(これ)、ちょっと邪魔なんだけど、外しちゃダメ?」

[[jumpuri:カイジシリーズ > http://kc.kodansha.co.jp/search?_ft=author&_sw=%E7%A6%8F%E6%9C%AC%E3%80%80%E4%BC%B8%E8%A1%8C]]に出て来そうな黒服達は、宇崎の注文を却下した。

「とんでもございません。その首輪は、貴女様を導くナビゲーター。貴女様がどこに向かえばいいか指示してくれます。それに、ワイヤー部分は特殊素材。獣化に合わせて伸縮するので邪魔にはなりません」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

宇崎と黒服達とのやり取りは、壇上の巨大スクリーンに映し出されていた。

そして、姫乃の右横に控える渚の眉がピクっと動いた。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島海岸

 

宇崎が最も肝心な質問をしていた。

「指示に従わなかったら?」

黒服達の答えは、ただでさえ不機嫌な渚の堪忍袋の緒を切った。

「ルール違反を伝える警告のメッセージが流れます。そのまま放置いたしますと……ボンッ!となる仕組みで御座います」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

獣獄刹(デストロイヤル)に参加するプレイヤーの1人である角供生命常任顧問の横田大がニヤリと笑った。

それに対し、渚が怒りで震えていた。

姫乃の左横に控える川辺が渚の心配をする。

「おい。さっきから様子がおかしいよ?大丈夫?」

渚が静かに怒りの理由を口にした。

「ムカつくんだよ。獣獄刹(デストロイヤル)その物が昔の自分を観てる様でよ」

「昔……」

川辺は、1年前にSNSに掲載されたイジメ動画を思い出して大声を上げてしまう。

「あー!あれかぁー!?」

 

2018年5月28日 西東京市鷺宮女子高等学校廊下

 

まだ『蜂』に刺されて『女王』になる前の姫乃が、全裸で四つん這いになりながら移動させられていた。

それを、周りの者達は、助けるどころか物珍しそうに観て楽しんでいた。

「すげー」

「こいつマジかよー」

「超ウケる」

「こっち向けよ」

「オイ」

「ギャハハハハハ」

「校内全裸お散歩♡」

「ぱねー」

「マジで奴隷じゃん」

「バッチリ調教されてんよ」

スマホで姫乃を撮っていた者の中には、それをSNSに実況動画として掲載する悪質もいた。

「ツイキャス配信ぱねー」

「視聴者数200とか、ウチら以外、観てる奴、誰よ!?」

姫乃が慌てて懇願するも、渚が姫乃の後頭部を踏んで懇願を遮断する。

「チョーシこいてんじゃねぇよ。誰に許可とって言葉発してんだよ。この、『虫』が!」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

あのまま……姫乃が『蜂』に出逢わなかったら、渚の取り巻き達が警察に殺される事も無く面白可笑しく暮らしていただろうが、その代償として、『蜂』が日本の警察組織を腐らせていたという事実も、日本経済を支配する四大財閥や牙闘(キリングバイツ)の存在も知らず、無知で獣獄刹(デストロイヤル)に参加するプレイヤー達と同じ所まで堕ちた状態で、自堕落かつ無駄に人生を消費していたと思うと、渚の背筋を冷たくする。

「あの頃の姫乃と獣獄刹(デストロイヤル)に参加させられてる(・・・・・・)連中……どこが違うって言うんだよ?」

獣獄刹(デストロイヤル)と悪質なイジメを同一視されて激怒する陽湖。

「ふざけないで貰える!これ以上、神聖な牙闘(キリングバイツ)を汚す―――」

今の渚なら絶対にしない姫乃への悪質なイジメを神聖視された気がした渚が激怒する。

「どこが違うって言うんだ!?どっちも調教師気取りで自分勝手に命令してるだけじゃねぇか!このままだと、テメェらにこき使われた獣闘士(ブルート)共が化けで出てくるぞ!」

『針』を出しそうな勢いの渚の手を優しく握る姫乃。

「大丈夫ですよ。瞳さんは違います。瞳さんは駒ではありません」

姫乃に諭されて怒りを収めかけた渚だったが、陽湖の余計な言葉が、渚の激怒を更に煽った。

「そんな事より園藤姫乃、島の地形は把握してるんでしょうね?」

「地形……ですか?」

「単なる『ゲーム』じゃないのよ。闇雲に『駒』を動かせば、崖や川に誘導してしまい、それだけで『駒』が命を落とす事もあるのよ」

「きっさまぁー!」

だが、姫乃が優しくかつ余裕で渚を説得した。

「大丈夫ですよ。魅せれば良いんです。瞳さんが駒ではない事を。自我を持った『戦士』であり『命』である事を」

渚は、姫乃と宇崎とのやり取りを思い出して冷静さを取り戻した。

「そう……だったな!アイツが、ただの『駒』で終わる様なヤワなタマじゃなかったな!」

姫乃が謝罪しながら獣獄刹(デストロイヤル)の開始を促した。

「申し訳ございませんでした。もう邪魔致しませんので、戦闘を開始して下さい」

キョトンとしていた篠崎が、姫乃の指摘でハッとして司会進行を再開した。

「失礼いたしました。前大会の優勝プレイヤーの品田様、ダイズをお願いします」

漸く始まった獣獄刹(デストロイヤル)だが、渚も陽湖も怒りが収まり切っていないのか、横目で睨み合っていた。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島海岸

 

漸く獣獄刹(デストロイヤル)が始まった事を察した宇崎が気合いを入れ直す。

「さてと……いっちょブン回すか!」

 




pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。

内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。
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