能力の違いも大きいとは思いますが、原作での矢部は、あまり謙虚ではなかったのも破滅の理由だったのかもしれません?矢部は、手に入れた人外の力に酔い過ぎていたのかもしれません。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島草原エリア
姫乃達も安達も、黒居佑に関する致命的な勘違いに囚われている中、矢部が宇崎と行動を共にしていた『兵士』達の背後に立ってしまった。
(まさか……園藤が城戸を潰しに行くとは?しかも、それを城戸の
その時、『兵士』達のスマホに着信が入り、宇崎VS矢部に待ったをかけた。
「待って!」
今まさに矢部に飛び掛かろうとしていた宇崎が、出鼻を挫かれて転びそうになる。
「またヘボプレイヤーの妨害かよ……
「その点については、どこか遠くで踏ん反り返ってるプレイヤーが
宇崎もその点は同感だった。
「確かにな。もっと自由に闘らせて欲しいぜ!」
その間、電話に出た『兵士』が、矢部にスマホを渡そうとする。
「貴方に話が有るらしいわ?」
スマホを渡されそうになった矢部は混乱して困惑した。
(何でこんな所にスマホが有る!?)
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
矢部の困惑の理由に呆れる川辺。
「改めて
一方、渚はなかなか電話に出ない矢部に焦れていた。
「宇崎が矢部とか言う眼鏡を潰す前に、どうしても矢部と話がしたかったんだがな……」
大分時間が掛かったが、漸く矢部が渚の電話に出た。
「……はい……」
恐る恐るな感じの矢部に対し、渚は堂々と話した。
「やっと出てくれたか?どうしてもお前について気になる事があったからな」
渚が一呼吸を置いてから本題をズバッと言い放った。
「お前、いじめられっ子だろ?」
一旦固まってから否定する矢部。
「は、はああ!?何を根拠に言っているんだ!僕をなめてるのか!?」
いや、渚には渚なりの根拠があった。傍目から視れば只の勘だが。
「あたしの様ないじめっ子って言うのはね、人が思っている以上に気弱なザコを探すのが得意でな、こいつなら絶対に反撃しないってのが判っちゃんだよ」
「はああ!?僕は
だが、渚が鋭い目線をモニターに映る矢部に向けた。
「てめぇがどんなに化物の仮面を被ろうと、その瞳の奥にある物は隠せなかったぜ?」
「瞳の奥!?」
渚は、自分のかつての悪行を恥じて苦々しく思いながら、矢部の正体に関してこう述べた。
「似てるんだよ……あの頃の姫乃の目に……」
隠していた何かを言い当てられた矢部は、狂った様に笑い出し、姫乃に対する不満を口にした。
「お前……正しいよ。
渚にとっては耳が痛かった。
矢部を此処まで狂気に変えたのは、かつての渚の様な非情ないじめっ子達だからだ。
人は時として不毛な制裁に突っ走る!たまったフラストレーションの捌け口として!
そして、憎しみの連鎖は罪無き被害者を邪悪な加害者に変えてしまう。矢部こそそんな邪悪な加害者になった元被害者の典型だった。
「あの頃の僕は、もう死んだ。
その言葉を聴いた渚は失望した。
あの頃の姫乃と全く同じ目をしている矢部であれば、あの頃の姫乃の心情を、自分達よりもっと深く正しく理解してくれると信じていたからだ。
だが、今の矢部は、『兵士』になる前の渚と何の変哲も無い。不満の捌け口を探す凶暴で自分勝手な愚者。
矢部に同情する気が一気に失せた渚は、冷酷に事実を矢部に伝えた。
「後……言い忘れてたけど、お前の連れのヒグマなら、もうKO敗けしたぜ」
矢部は、意外と冷静で驚かなかった。
自分を惑わす為の嘘だと判断したからか、
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島草原エリア
漸くゴーサインを得た宇崎が矢部にゆっくりと近づくか、矢部は冷静に右手を宇崎の頭の上に乗せた。
「あ?何の真似だ?」
矢部が偉そうに解説をする。
「ラーテルの強みは、背中の強靭さと柔軟性を合わせ持った甲皮と神経毒に対して強い耐性がある事。だが、今回はどちらも役に立たない。何故だか判るか?」
宇崎がイラつきながら悪態を吐く。
「知るかそんなもん!闘る気が無いなら帰れ!」
だが、矢部は薄ら笑いすら浮かべる。
「闘る気ねぇ……確かに、ゴリラは生来温厚で頭も良くて好戦的な動物じゃないけど、握力は500㎏超。パンチ力は1t超。即ち、こと腕力に限るなら、自然界最強。そのパワーをもってすれば、脆弱な小人を踏み潰す事くらい……訳ない」
矢部は、一呼吸を置いてから腕力だけで宇崎を踏み潰そうとした。
「血反吐の桜ぁッ、舞い散らせやぁぁあああああッ!」
矢部が思いっきり右手を振り下ろした途端、さっきまで宇崎が立っていた場所が大きな砂塵に包まれた。
それを観ていた『兵士』達は、姿が見えない宇崎の安否を気にして叫ぶ。
「ぐ……宇崎!」
「宇崎……!」
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
それを観ていた姫乃は、意外と余裕だった。
何故なら、姫乃が視る限りだと、矢部は谷やエルザと同じ過ちを犯してる様にしか見えないからである。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島草原エリア
んで、姫乃の予想通り、矢部は右手の親指を喰いちぎられていた。
「!?」
しかも、矢部自身が起こした砂塵の中から宇崎が飛び出して来て、矢部の下アゴに頭突きを見舞った。
「お前……口上が長過ぎんだよ!つうか、過去も性格も腕力も関係無えんだよ。牙の鋭い方が勝つ。それが『
一方の矢部は、自信満々の宇崎を見て忌まわしい過去を思い出してしまったのか、感情的になり逆上する。
「おおおお!」
矢部が近くにあった木々を持って宇崎を何度も殴打し、宇崎が両腕をクロスさせながら防御する。
何度も何度も殴打されながらも自信満々な視線を崩さない宇崎を見て、矢部が更に逆上する。
「うっ!なんだよ……なんだよ……その目は!?知性の欠片もない下等動物め!この僕を散々馬鹿にしてきた連中と同じ様に、お前もこの手で潰してやる!」
矢部が手にしていた木々を投げ捨てると、両手を組んで勢い良く振り下ろした。
「喰らえ!
だが、宇崎の様なカウンタータイプにとっては、こういう大振りなテレフォンパンチは攻撃ではなく美味しい獲物であった。
「
すれ違いざまに宇崎に思いっきり引っ掻かれた矢部が、激しく吹き飛んで仰向けに倒れた。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
篠崎が相変わらずのハイテンションで実況を行う。
「決着うぅ!?
一方の矢部のプレイヤーである増田が愕然とする。
「わ……私の駒が……」
増田の動揺に対し、姫乃は冷ややかに独白する。
(この期に及んで、まだ『駒』と言う単語を使いますか……この様子では、この先の対城戸戦も先が見えましたね?)
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島草原エリア
3人の『兵士』の内の1人が宇崎にスマホを渡そうとする。
だが、大河、椎名、そして宇崎との戦いで大きく傷付いた筈の矢部が再び立ち上がった。
「待てぇ……」
それに対し、『兵士』達が呆れながら告げた。
「あんた、獣化手術を受けて強くなったと勘違いしてない?」
馬鹿にされた矢部が不満げな顔をしている。
「勘違い……だとおぉ!?」
既にKO敗けと判断されてもおかしくない程ボロボロなのに、獣化して『兵士』達に襲い掛かろうとする矢部。
それがかえって『兵士』達の呆れを助長する。
「あんた、自分が頭が良くて力持ちのつもりでいるけど、私達には群れからはぐれた迷える猿にしか見えないんですけど?」
「いくら友達がいないからって、気に入らない相手を消しまくって回ってるだけって……それじゃあ、誰もあんたに近付けないじゃない?」
「三門に拾われたって事は、本当は寂しいんでしょ?」
矢部が必死に反論する。
「三門に属する事が寂しがり屋の証明って、意味が解らねぇよ!」
それに対し、『兵士』達は宇崎を例に挙げた。
「宇崎の奴……祠堂に説得されるまでは無所属を貫いたからね」
「しかも、その石田所属もこの大会が終わるまでの臨時雇いだって話だよ?」
確かにその情報は事前に聴いていた事だ。だが、それを本当に1人で生きていく気が有るのか無いのかの判断基準になるとは思わなかった。
「それと僕が寂しがり屋と何の関係が―――」
「今の私達が言える事じゃないけど、あんた、今直ぐ三門を抜けて1人になれる?」
「そんなの!……」
と言いかけて言葉に詰まる矢部。ここで「
しかし、
「素直に認めたら。味方に囲まれる状況の心地良さを」
『兵士』達のこの言葉に、激しく動揺する矢部。
「み……かた……だと……?」
「あんたは虐められてたんでしょ?って事は、三門に拾われるまでは味方に恵まれなかったんでしょ?」
「そ!……それはぁ……!」
矢部は返す言葉を失って困惑した。あまりにも図星過ぎるからだ。
そこでスマホが鳴った。
相手は姫乃だった。
慌てて宇崎にスマホを渡すが、宇崎は渡されたスマホを矢部に渡そうとした。
「お前にだってよ?」
『兵士』達にとっては予想外の事であった。
「え!?次の移動に関する相談じゃなくて!?」
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
矢部と電話する姫乃。
「私が……何を基準にして状況を
矢部がイライラしながら返答する。
「お前も、僕を1人では何も出来ない
姫乃の考えは逆だった。
「いいえ、私達が言う弱さは、1人では何も出来ない事実を認める事が出来ない不器用さを指します」
「何いぃー!?」
「洗脳でも依存でもない、愛情という共通項を持つ
矢部は、図星を交えて激しく反論する。
「お前のそれは、『女王』の『針』が強制的に作り出した独裁だぁあああッ!」
姫乃は冷静に反論する。
「私の『針』が及ぼす効果は、洗脳ではありません」
「嘘を吐くなー!」
「性格も人格も元のまま、人が変わったわけでも悔い改めたわけでもありません。唯、愛する者を護るための『兵士』として、何者をも何事をも受け入れる事のできる揺るぎない力を手に入れた。それだけの事です」
「それと僕を
「ですが、貴方はせっかく手に入れた力を『否定』の為だけに使用しています。群れるチャンスがいくらでもあったというのに」
「貴様ぁあああッ!」
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島草原エリア
見苦しい反論を続ける矢部にイラっとした宇崎は、矢部の顔にストレートパンチを見舞った。
「ごめん。うるさくて聞こえなかった」
「ですよねぇ」
一説には、
ラーテルがミツオシエを追いかけるのは、けたたましく叫ぶうるさい鳥を食い殺そうとしているためとも言われる。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
「
最後まで改心しなかった矢部に呆れる様に首を横に振る姫乃。
それに対し、谷は、宇崎と矢部の精神力の差を嘲笑った。
「
そんな谷の言葉に、安達は複雑な思いでジーと見ていた。
pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。
内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。