どうやら、村田真哉先生は『救い様が無い屑男性』を描くのが大得意の様で、その集大成が『ヒメノスピア』なのかもしれません。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
目の前の花を踏みかけた事に気が付いて慌てて後退る城戸。
「お前!案外優しいんだなぁー!?」
宇崎に声を掛けられた城戸が、
「!?」
宇崎に同行する『兵士』3人は、蒼褪めた城戸に特別な何かを感じる事は無かった。
「がたいが良いけど、見た目に反して案外ビビりかもね」
が、宇崎はそんな事お構いなしに歩き出した。当然、宇崎は目の前の花々を踏み潰す。
「やめろおぉおぉーーーーー!」
城戸が叫ぶが、目の前に花々が在る為駆け出せない城戸。
叫ぶだけで全く行動しない城戸に呆れながらも、城戸に向かって駆け出す宇崎。当然、宇崎は目の前の花々を踏み潰す。
「口だけじゃ、誰も止まってくれねぇぜ!」
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
観客席のセレブ達も
そして、1人の観客が城戸を嘲笑った。
「どうやら……
それを合図に、観客席のセレブ達が爆笑した。
「ぶゃはははははは!」
「何だそりゃ!?」
「意味が分からん!」
それを聞いた陽湖が赤面しながら歯噛みした。
(園藤姫乃があんな馬鹿げた事をしなければ、こんな事にはならなかったのよ!)
相変わらず
(笑ってんじゃねぇよ!誰も城戸に同情しねぇのかよ!?)
その時、姫乃がグーでテーブルを思いっきり叩いた。
「茶番は沢山です。ゲームを進めてください。今すぐに」
目の前の爆笑を沈黙に変えるのに十分過ぎる威力であった。
ハイテンションなノリで進行役を務める篠崎ですら、社交辞令的な台詞しか吐けなかった。
「も、申し訳ありません。それでは、次のプレイヤーはダイズを……」
観客席のセレブ達や
「ぐ……」
(げ……幻覚!?怒気だけで私達を制圧……これが、関東を掌握する大組織の長!)
1年前、鷺宮女子高銃撃テロ事件の際に自分達の制止を振り切って母親を助けに行った姫乃の1週間での成長が、自分達の予想を大きく超えている事実を認めるしかない渚であった。
ただ、セレナと黒居だけは姫乃の怒気には屈していなかった。
「この程度で屈するとは……我々『蜂』が四大財閥を攻め潰す日も遠くないな?」
「万物の霊長などと奢る人類も、生存競争に勝ち残るために選んだ進化部位が『脳』であっただけの、単なる獣の1種。無駄に発達した大脳で『人間の方が優れている』という妄想を思い描くのが関の山だよ?」
そんな2人を疑いの目で視る安達であったが、未だに真実には辿り着いていないせいか、完全に2人に無視された。
その間も、花々を踏み散らしながら進んで行く宇崎に向けて叫ぶが、目の前の花々を気にし過ぎて動けない城戸の姿がモニターに映し出されている。
それを観た川辺は、ある推論に辿り着く。
「エコテロリストだわ」
「エコテロリスト?」
エコテロリズムという用語は、次のように複数の異なった意味で用いられている。
①環境に害を与えると見なされる活動を妨げようとする意図で行われるサボタージュ(破壊活動)の事。 環境を理由に行われるサボタージュ(破壊活動)の事。
②政治的なテロリズムで、敵の自然環境に損害を与えることを意図するもの。
「あの様子だと、城戸は恐らく前者。地球環境保護や動物愛護などの目的を掲げてはいるが、度を越えた環境破壊を行えば、犯罪行為すら平然と行うぞ!」
「だからか?目の前の花を踏むのを躊躇しているのは?」
「つまりだ、三門陽湖が城戸に逃走を指示したのは、草木を庇って本気を出せないからだ」
だとすると、1つ矛盾する事があり、渚はそれに気が付いた。
「でもよ、城戸は最初、あのヒグマと組んで宇崎を挟み撃ちにしようとしてたぜ?」
その矛盾に関する説明も、川辺は既に浮かんでいた。
「あの時、宇崎がいたのは見晴らしの良い崖。それに、目の前の環境破壊を見て暴走しそうになってもあのヒグマが制止する筈だった。だが」
渚はハッとする。
「そうか!宇崎がヒグマを早々と斃しちゃったから、予定が色々と狂っちゃったんだ!」
「そのおかげで草木が多い場所で立ち往生。慌てて元居住区である廃墟エリアに逃げ込もうとしたが、宇崎に即バレて何処行けば解らなくなった。その上に矢部のあの敗北がダメ押しとなって、花畑の上で激戦となった。正直、只の推測だけど、そう考えれば、全ての辻褄があう!」
そうなると、気になるのは城戸の過去。
「あんなに滅茶苦茶ぐちゃぐちゃになる程の
?年?月?日 日本某所とあるボロアパート
1人の少年が福寿草を悲し気に見下ろしていた。
「ママ……逢いたいよ、ママ……」
其処へ、父親が酒を飲みながら福寿草を蹴り飛ばした。
「何が幸福だ」
予想外過ぎる展開に唖然とする少年。だが、父親は傷口に塩を塗る様な事を言い出した。
「教えてやるよ。アイツが出ていったのはなァー、お前が邪魔になったからなんだよ」
「う……うそ……」
実際は、夫の配偶者暴力(DV)に耐えきれずに出て行ったのだが、息子の親権を夫に奪われたのが真相である。
だが、父親はそれを棚に上げて自分を捨てた妻を全否定するかの様な事を自分の息子に言い放った。
「嘘じゃねえよ。そもそもあの女は金で釣ったただの淫売。お前のママじゃねえんだよ。他に男を作って本物の
妻を繋ぎとめる事すら出来ない魅力の無さまで棚に上げる父親を見る少年の目に殺気が宿っている事に気が付かぬ哀れな酔っ払いは、妻が唯一残してくれた物まで完全否定しようとしていた。
「ついでにもう1つ教えてやるよ。その花の本当の意味はなァー―――」
そこで……少年の父親の人生は唐突に終わった。
父親の息子に金属バットで何度も殴られたからだ。
福寿草の花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。
だが、父親の口から出そうになった言葉は「悲しい思い出」。
幼い少年の唯一の財産である母との美しき記憶を「悲しい思い出」にしない為には、父親を殺すしかなかった……
そして、この事件が少年の善悪の基準を決めた。
草木を尊ぶ者は善。
そうでない者は悪。
この妄念は、少年の成長と共に肥大し、やがて、母のイメージは大自然と強く結び付き、母を慕う少年の感情の爆発が……
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
「やめろおぉおぉーーーーー!」
鋭利な刃となって表出した。
宇崎に同行する『兵士』3人は、獣化した城戸の姿に驚愕し困惑した。
「何あれ!?」
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
全身が鱗だらけになる城戸の姿を見てとんでもない勘違いをする渚。
「アレって、トカ!?いや!魚!?」
動植物の雑学が趣味の川辺は、獣化した城戸の正体を正しく見抜いた。
「信じられないと思うけど、ああ見えて哺乳類だよ」
勿論、渚は信じられない。
「いや!あんな鱗を持ってる生き物は魚だけだって、あたしでも知ってるよ!」
いや、センザンコウはれっきとした哺乳類である。
センザンコウ科センザンコウ属という1科1属に属す、全体の
アルマジロの甲皮が防御にのみ用いられるのに対し、センザンコウの鱗は刃物の様に鋭く、しばしば攻撃にも用いられる。
いわば全身に武器を纏った状態であり、結果として、怪獣の如き威容を得た戦闘型哺乳動物である。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
やっと本気になった城戸に対して容赦無く爪で切り裂こうとする宇崎であったが、センザンコウの鱗はその程度では剥がれない。
「随分頑丈じゃねぇか!?そんな面白い物を持ってるくせに、何で逃げんだよ!?」
宇崎の強がりに対する答えは、長い尻尾を振り回す事であった。
しかし、
「逃げたと思えば棒立ち。お前は本当にどっちだよ!?」
そこで、城戸は丸まった。
それを観た宇崎は、シラケて頭を掻きながら城戸に近付く。
「お前は……本当に何なんだよ!」
宇崎は、右手を振り上げたのち右手を思いっきり振り下ろして容赦なく爪で切り裂こうとするが、センザンコウの鱗に跳ね返されてまた右手を振り上げる形になった。
守勢に回ったセンザンコウは、事実上無敵。
腹部を覆い隠す様に丸くなる事で、鱗による防御は一切の死角を失う。そして、その強度はハンマーも銃弾も寄せ付けない。捕食者の頂点に立つライオンですらも、あまりの硬さになす術なく諦めるという。
また硬いボールになったときに、尻尾だけを伸ばして振り回す事もあるのだ。
即ち、この鉄壁の防御を突破する術は、自然界には存在しないのである。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
城戸の規格外の強度に唖然とする渚。
「な!?何よアレ!?……あんなの倒し様がないじゃない!」
一方、川辺は余裕綽々である。
「まあ……落ち着け」
「どうやってだよ!?どうやってあいつを倒せって言うんだよ!?」
川辺は冷静に質問する。
「悪質な密猟者がセンザンコウを絶滅に追いやってるんだけど、何でか解る?」
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
防御形態となった城戸をぺたぺた触る宇崎。
「本当に訳が解んない奴だなぁ……」
今度は、城戸を思いっきり蹴り飛ばした。
すると、丸まったのが災いしたのか、そのままコロコロ転がって何処かへ去ってしまう城戸。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
城戸の規格外の馬鹿に唖然とする渚。
「センザンコウを漢方薬や食用としか見ていない傲慢な考えがセンザンコウを絶滅に追いやってるのも事実だけど、センザンコウは素早く逃げたりせずその場で丸くなってしまうという習性があるから、悪辣な密猟者にとってはとても簡単に捕獲できる動物としてターゲットにされてしまうだよね」
川辺の説明を聞いて、黒居が何で城戸を危険性満載だと告げたのかがますます解らなくなる渚であった。
そして、セレナもである。
「……何だアレは?」
ただ、黒居は苦悩しながら微笑んだ。
「いや……
「……タブー?」
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
宇崎に蹴り飛ばされた城戸が、滝の様な涙を流しながら戻って来た。
「
無論、何も知らない宇崎は意図が解らなかった。
「あ?何だそりゃ?」
その間、城戸の鱗に変化が起こっていた。
「殺す。
そして、城戸が奇声を上げながら宇崎に突進した。
「ギュオオオオオオオオーーーッ!」
が、
「何だか分からねぇけど」
宇崎にとっては戦いやすい展開であった。
今の城戸の動きは、ただ怒りに任せて両腕と尻尾を乱暴に振り回しているだけで、小賢しい部分はなに1つ無いのだ。
「ヘッ!要は、当たらなきゃ……どうってこたねーんだ……よッ!」
だが、宇崎は何も気付いていなかった。城戸の全鱗の先端が針の様に鋭くなっていた事に。
その代償は大きく、鱗が宇崎の右掌を貫通してしまった。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
「ヤベェ!あの野郎、完全にキレまくって暴走してる!あんなに大事にしていた花々にも、一切構う事なく、薙ぎ払いながら攻撃を繰り出してる!?」
川辺もまた、城戸の暴走を観てさっきまでの余裕を失っていた。
「全身の鱗を逆立てたあの
センザンコウとは、地球上で唯一の『鱗』を持つ哺乳類である。
その数は実に300枚以上。
かつて中国では、あまりに特異なその風貌から、陸棲の魚類と考えられていたという。
城戸にとって全身を包むこの鱗は、自分を護る優しい母の如き存在であり、醜悪な敵から母を守るための武器でもある。
一方、
「そ……そうよ
それを聞いた姫乃は、最後の手段を実行に移す為に用意したスマホを制服の内ポケットにしまった。
「城戸さんは……プレイヤー選びを完全に間違えてしまった様ですね?最早……気の毒を通り越してます」
陽湖は、事態の劇的好転と城戸の圧倒的過ぎる戦闘力に酔いしれ過ぎて、姫乃の陰険な皮肉を完全に無視してしまった。多分、聞こえてすらいないだろう。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
宇崎対城戸を観ていた『兵士』達は、最終手段の実行命令を待っていたが、手にしたスマホは一向に鳴らなかった。
「どうしてだ!?何故姫乃様は御決断なさらない!?このまま……」
城戸の刃物の様な鱗と狂気的な暴走に完全に手を焼いている宇崎を観ながら歯噛みする『兵士』達。
「宇崎を見捨てる気なのか!?」
姫乃が反則敗け覚悟で用意した最後の手段。それは、クルーズ船『獣王』にいる姫乃と炎蹄島にいる宇崎の連絡手段として配置している『兵士』達の戦闘投入であった。
蜂が他の動物を襲うのは、巣が危険に晒されていると感じた時。
獰猛なスズメバチも、攻撃行動を取る前に、羽音を立てながら敵の周囲を飛び回り、大あごをかみ合わせて「カチカチ」という音を立て、威嚇する。
ミツバチに至っては、敵を攻撃すると息絶えてしまう。ミツバチにとって「攻撃」は、文字通り最期に残された防衛手段なのだ。
だからこそ、蜂は防衛本能を刺激されて攻撃的になると、死を恐れずに果敢に戦いを挑む。たとえそれが、体格差が240倍以上もある人間であろうと。
だが、陽湖の余計な言動のせいで、姫乃は城戸への攻撃命令を取り止めたのだ。姫乃が陽湖を完全に侮り過小評価していると言ってもいいくらいである。
そして、陽湖の上から目線的な言動の代償を支払う時が、突然やって来た。
「ヒトミさん!大丈夫ですか!?」
稲葉が突然地面からニョキっと生えたのだ。真後ろに城戸がいる事に気が付かずに。
殺気を感じた稲葉がゆっくり後ろを振り返ると、青筋を浮かべながら怒る城戸の姿が在った。
「もしかして……出るとこ間違え……た……?」
城戸の攻撃のターゲットが、目の前の宇崎から花畑に大穴を開けた稲葉にシフトしてしまった。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
稲葉が引き起こしたギャグの様な展開に、ついさっきまで宇崎対城戸で盛り上がっていた一同が呆然となり、秒針の音だけが響き渡った。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
ちょっとした行き違いのせいで、稲葉が城戸に追いかけ回されていた。それを宇崎が追う。
「おい!人の獲物を盗るな!」
宇崎の文句に対して逃げ惑いながら叫ぶ稲葉。
「そんなつもりはありませーん!」
一方の城戸は、完全に狂気と殺意に取り憑かれて叫ぶだけであった。
それを観ている『兵士』達が逃げ惑う稲葉を気の毒に思うが……
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
逃げ惑う稲葉を観て、稲葉の身を案じる渚。
「あいつ逃げ回ってるだけで何も出来ないぞ!?」
一方、姫乃も川辺も意外に冷静であった。
「確かに、ウサギはあまり攻撃的じゃない。けど」
「けどって何だよ?」
「だいじょうぶです。稲葉さんは城戸の攻撃を全て見切っています」
「見切っているって……怯えて逃げ……」
よく視ると、
「本当だ!城戸の攻撃が稲葉に1発も当たってない!」
ウサギという動物が、最も本領を発揮する瞬間がある。
それは、逃げる時。
左右で個別に物音をキャッチする長く大きな耳で敵の位置を正確に把握。
危険を察知した瞬間、後肢を同時に蹴り出す「ハーフバウンド」と呼ばれる走法で、チーターと同様の加速を生み出し、更に、地面に掘った避難用の無数の巣穴が、短距離走で言うところのスターティングブロックの役割を果たし、ウサギ独特のロケットダッシュを可能とする。
その最大瞬間速度は、実に時速70㎞。
正に「脱兎の如き」瞬敏さで、狩人の手から逃れる技能を持つ。
それに引き換え……陽湖は、今
「何やってるのよ!?あんな
それを見た尊夫人が皮肉を言う。
「どうやら、
陽湖は、赤面しながらしらばっくれる。
「ハ、ハア?何の事かしら?」
尊夫人と陽湖のやり取りを聴いて、陽湖の視る目の無さを呆れた。
「無駄だ。あの狭義的な単細胞では、
それを聞いた黒居が皮肉を言う。
「そう言えば、『
だが、それでも渚は安堵出来なかった。
「いや……やっぱり駄目だ!アイツは確かに城戸の攻撃を全て避けてるけど、アイツは1度も城戸を攻撃してない」
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア
城戸の攻撃を全てかわしながら逃げる稲葉であったが、それもそろそろ疲れてきた。
「たーすけてー!」
「だったら換われぇー!」
対する城戸は、全く当たらない自身の攻撃にしびれを切らして大技を繰り出した。
嫌な予感がした稲葉が後ろを振り返ると、城戸がジャンプしながら丸まっていた。
「やばい!やばいのが来るよぉー!」
が、丸まったまま着地した城戸が、突然落とし穴に落ちたかの様にいきなり消えた。
「落とし穴!?」
城戸の着地兼消滅によって起こった砂塵が消えると、大方の予想通り大きな穴が開いていた。
ウサギはしばしば、狩人の嗜虐心をそそり、深追いさせ有利な地点に迷い込ませる。
これは、ガゼルなどにも見られる草食動物特有の逃走法であり、わざと速度を緩め捕まりそうになった瞬間、クイックターンで敵の気勢を殺ぐなど、追う側の心理を本能的に察する能力を持つ。
宇崎は、取り敢えず城戸を消した大穴の前で城戸を待ち続けた。
だが、
――城戸は――
2度と宇崎の眼前へは戻れなかった……。
ウサギの巣穴は、総延長50mにも及ぶ地下王国である。
内部では、無数の兎が集団生活を営んでおり、騙し部屋あり隠し通路あり、住人が増える度に拡張工事も行われるため、内部構造は複雑に入り組み、ウサギにとっては広大で快適な居住空間でも、侵入者にとってはうかつに攻め入れぬ
しかも、城戸の鋭い鱗がスコップの役割を果たしてしまい、丸まった状態なのも仇となり、坑道の拡張に大いに役立ってしまったのだ。
それに、プレイヤーが指定したマスから離れ過ぎると、首輪が反応して警告音を発し、それでもダメな時は首輪が爆発してしまうという
――そのうち城戸は考えるのをやめた。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
まるでギャグの様な決着に一同が唖然として沈黙し、陽湖が椅子ごと仰向けに倒れながら気絶した。
ただ1人。
稲葉の勝利を予想していたセレナだけは満足げに大笑いした。
pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。
内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。