ヒメノスピア×キリングバイツ   作:モッチー7

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とうとうやってしまった……
今回のお話しのサブタイトルに似合うキャラクター名が思いつかなかった!マジで!


第19話:謎の青年

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

篠崎が陽湖が最も聞きたくない実況を言い放ってしまった。

穿山甲(パンゴリン)(ラビ)の罠に堕ちたァーーー!巨猩羅(ゴリラ)(ベア)蜜獾(ラーテル)に倒され既に撃沈!よって、この時点で……三門チームの敗北が決定しましたァーーーーー!」

陽湖は、まるで世界の終わりかの様に落ち込んでいた。

「こ……ここだけ明るさが違う……」

が、気にする事なく篠崎が残りの獣闘士(ブルート)の数を整理する。

「あとの3チームは、共に残り2人!これは勝敗が予想出来なくなったぞォーーーーー!」

だが、篠崎のこの説明に猜疑的な考えを持つ姫乃。

(本当に同数と言えるのでしょうか?角供は、怒りに囚われて精神異常を起こした方を抱えての戦い。石田は、1人は戦闘力ゼロで1人は既に3連戦。三門は全滅。つまり……3人ともほぼ無傷の八菱が、圧倒的に有利!)

そんな姫乃の不安を煽るかの様に品田が話しかける。

「これで穿山甲(パンゴリン)は片付いた。残る脅威は、蜜獾(ラーテル)のみ」

姫乃の眉がピクと動く。

「邪魔な駒は整理しておきますので、ゆっくりいらして下さい。『女王』陛下」

姫乃がイヤミたらしく言い放った。

「こちらこそ、急かしてしまって(・・・・・・・・)申し訳ありません」

一方、椎名の暴走のせいで話に割り込めない横田が歯噛みした。

「チッ!」

だが、横田の不幸はこれだけではなかった。

「な!?何という事でしょう……」

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島密林エリア

 

風間が椎名と合流しようと移動していた。

獣獄刹(デストロイヤル)の基本戦略は、仲間の駒と合流。(クロコダイル)もこちらに向かっているとすれば、そろそろ同じマスに入ってもいい頃だが……」

突然、足場兼ジャンプ台である木々が次々と倒壊していき、風間は地面に叩きつけられた。

「何だい何だい!?このマスに何がいるって言うんだい!?」

そこにいるのは、怒り狂い過ぎている椎名であった。

「何なんだいこれは?脅かすんじゃ―――」

椎名は、冷静と考えるを既にやめていた。

(何があったかは知らないけど、いくら何でもキレ過ぎだろ!?……説得が通じるか……?)

怒りと憎しみに任せて周りの木々を破壊し続ける椎名から冷静さを感じない風間。

(いや、この異常者に対して、会話での意思疎通は不可能!マスから出ない程度に距離―――)

だが、風間は全てが遅かった。

椎名が尻尾で風間を殴り飛ばして木に激突させて気絶させてしまった。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

「角供チームの(クロコダイル)が……同じチームの守宮(ゲッコー)を倒してしまったァーーー!」

篠崎の実況を聞いて頭を抱える横田。

それを見た渚が独白。

(予想されていた事とは言え……始まったばっかと今とのプレイヤー席の明るさが違う!)

だが、椎名の異常行為はこれだけではなかった。

「な!?こ……これはぁー!?」

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島密林エリア

 

何時まで経っても大河追撃指示が出ない事にしびれを切らした椎名が、プレイヤーの指示を伝え、獣闘士(ブルート)のルール違反を予防する為の首輪を引きちぎろうとしていたのだ。

「ああーっ!あああーっ……!」

そして、とうとう首輪を引きちぎってしまった。

「ううーっ……あああーっ!」

そして、首輪は爆発した。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

首輪の爆発の威力が予想外に大きかった事に驚く渚。

「マジかよこれ!?殺す気か!?」

獣獄刹(デストロイヤル)の危うさを再確認した川辺が冷静に説明する。

「これぐらい危険だよって言っとかないと、獣闘士(ブルート)がプレイヤーの言う事を聴かなくなるんだろう?現に宇崎の様な奴もいるし。それに、人間以外の動植物の自己治癒力は侮れない―――」

人間以外の動植物の自己治癒力は侮れないと言う、川辺が今言った台詞を証明する事態が起こった。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島密林エリア

 

「うがあぁー……があぁー!」

爆炎の中から出て来た椎名が大河を追うべく歩き始めた。

 

多少の傷では、ワニは死なない。

何故なら彼らは、凶悪な雑菌の蔓延る泥濘の中、闘い傷付く事を日常としているのである。

そのため、哺乳類とは比較にならない程の強力な免疫機構を持ち、破傷風などの感染症に侵される可能性は皆無(ゼロ)

この事実が示すのは、中生代三畳紀に出現して以来、2億年以上もの間ほぼ形態を変える事なく、生存競争を勝ち抜いてきたワニの筋金入りの耐久性(タフネス)である。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

緊急事態中の緊急事態に混乱する一同。黒居も予想外の事態に困惑する。

それらを冷静に見る姫乃達とセレナ達。

「……裏切りに対する免疫が……意外と低くね?」

「あの首輪を引きちぎるのも、あの爆発をもってしても死なないのも、彼らは想定していなかったんだろ?」

「愛情でも洗脳でもない……物としか見ていない強制的な命令の弊害が、とうとう出てしまいましたね?獣闘士(ブルート)を駒と呼んでいる時点で、この事態をきちんと予測出来る筈でしたのに……」

「どうした?私をこの獣獄刹(デストロイヤル)の観戦に[[jumpuri:誘った時の図々しさ > https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11657676]]は、何処へ行った?」

困惑ぶりを指摘されて赤面する黒居。

「ハ、ハア?何の事だ?」

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア

 

四大財閥と管理局を大混乱させた椎名の言動を全く知らない宇崎は、待ちぼうけにイライラしていた。

「何だよ?移動指示はまだかよ?」

宇崎と行動を共にする『兵士』の1人が姫乃と電話をしていたが、宇崎の期待とは真逆な事を言う羽目になってしまった。

「このままだと……獣獄刹(デストロイヤル)は中止かもしれない!」

「何で?」

「角供派の獣闘士(ブルート)がルールから大きく逸脱し過ぎて首輪が爆発したんだけど、重大な違反を犯した獣闘士(ブルート)はまだピンピンしてる!」

「で、そいつが獣獄刹(デストロイヤル)のルール通りに動かないから中止?」

「でしょうね?プレイヤーと獣闘士(ブルート)とのやり取りは、完全に一方通行。プレイヤーが一方的に移動指示を出すだけで、私達の様な現場側がプレイヤー側に自分の意志を伝える術が全く無いときてる」

だが、運営側の混乱を知っている者にとっては予想外の言葉が発せられた。

「駒の移動が確認されました。3分以内に東方向のマスに進んで下さい。繰り返します。駒の移動が確認されました。3分以内に東方向のマスに進んで下さい」

「なな!なにぃ!?」

誰の仕業か察しがついていた宇崎は、嬉々として歩を進めようとした。

「フン!園藤の奴、勝手に駒を動かしやがって……上出来だ!」

だが、『兵士』達は宇崎の予測について1つだけ疑問があった。

「待て待て!今は運営側の言ういつも通り(・・・・・)とはかなりかけ離れているのよ!?さすがの姫乃様でも―――」

それに対し、宇崎は、姫乃を評価しているのか馬鹿にしているのか判り辛い事を言い出す。

「あいつ……口八丁が得意だぞ。一緒にいて気付かなかったのか?」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

確かに、宇崎の言う通り姫乃は、ゲームの続行……もとい強行を願い出た。

「ダイズを振ります」

獣獄刹(デストロイヤル)をよく知る他のプレイヤー達にとっては、とても通るとは思えない虚しい我が儘にしか聞こえなかった。

特に、駒全滅を認定されてしまった三門派にとっては、続行不能によるノーカウント試合に持ち込む絶好過ぎるチャンスでもあった。

「……通る訳……無いでしょ……」

陽参は、姫乃の胸倉を掴んで無理矢理立たせようとした。

「今まで散々好き勝手したくせに、まだ自分の好き勝手を通そうとする気なの!?スクールカースト最下位のクセにどこまで図々しいのよアンタは!?」

見かねた渚が陽参を突き飛ばした。

「何してくれてんの糞アマ!そういうテメェだって駒駒駒駒うるせぇんだよ!殺し合いをしている連中を駒扱いしてる奴に言われても説得力が無ぇんだよ!」

獣獄刹(デストロイヤル)の流儀に反し過ぎたクセに、まだまだ我が儘を言い足りない貴様等の図々しさには虫唾が走るわ!」

その先は、完全に売り言葉に買い言葉。渚と陽参の口論はどんどんヒートアップする。

そして、遂には渚が『針』を露出させてしまい周囲を驚かせてしまったので、川辺が慌てて止めに入る。

「落ち着け渚!確かにブチ殺したくなる程無礼な奴だが、ここでこいつを殺せば四大財閥に楽園都市(わたしたち)潰しの大義名分を与える事になる!そうなれば、お前が姫乃様の楽園を潰した事になるんだぞ!?」

川辺の必死の説得を受けて渋々『針』を収める渚。

「すまねぇ……ついカッとなった……」

だからと言って、完全に中止に傾いてしまった運営側の意向が変わる訳ではなかった。

「お言葉ですが園藤様、今回の獣獄刹(デストロイヤル)のこれ以上の続行は、もはや不可能と―――」

姫乃は、静かに“ある無茶(・・・・)”の口癖を真似た。

「不利も有利も、正常も異常も、いつも通りもいつもと違うも、全く関係無し!」

「ちょっと!?それってえぇーーー!?」

「牙の鋭い方が勝つ」

「あの引っ込み思案な姫乃があいつの!?」

遂に決断を下した祠堂の声が響き渡った。

「それが『牙闘(キリングバイツ)』だ」

それを聞いた篠崎が慌てて後ろのモニターを視て驚いた。

「だ!……ダイズが!?」

それに対し、品田が咳払いで出た目の数の発表を促した。

「え!?……あ……次の目は、4。園藤様、駒を進めてください」

篠崎がどうにか冷静を装おうとするが、予想外の展開に完全に動揺していた。

(本当にどういう事!?どう考えてもいつも通りの獣獄刹(デストロイヤル)は、もう不可能なはず!?)

そんな篠崎の疑問に答えるかの様に、再び祠堂の声が響き渡った。

「ただし、条件がある」

(じょ!?条件?)

「君が意図的に島に配置した複数の『兵士』。それらを(ルール)から逸脱した(クロコダイル)の監視に使わせてもらう。現場のカメラスタッフだけでは手に余るからね」

それを聞いた横田が悔しそうに舌打ちをした。

「それが、園藤姫乃が行ってきた反則の数々に対する懲罰ですか?まるで角供(われわれ)が悪役みたいじゃないですか?」

それに対し、品田は安堵の表情を浮かべた。

「これも……施しと言えるのですかな?『女王』陛下は、八菱(わたしたち)に嬉しい誤算を何度も与えてくださる」

「どう言う意味だよ?」

「正直言って、この好機は逃したくなかった」

また不機嫌になる渚。

「宇崎の奴、随分なめらてんじゃねぇか?」

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島花畑エリア

 

渚からの連絡を受けた『兵士』達が驚いた。

「はぁー!?何それ!?まるで姫乃様が人質みたいじゃん!?」

『兵士』達が言ってる意味が解らず首を傾げる宇崎。

「何言ってんだ?何でプレイヤーが捕まってんだ?」

『兵士』の1人が、一息ついてから事実を説明する。

「実はね、この島に忍び込んだ『仲間』は私達だけじゃないの」

「そんなの、とっくに知ってたよ。で?」

「その『仲間』を使って……その首輪を切って逃走中の違反者を見張れって言ってんだよ!」

宇崎は、また首を傾げた。

「何で見張るの?」

『兵士』達は耳を疑った。

「何でって……そいつが何をしでかすか分かんねぇだろ?」

宇崎は自信満々に言い放った。

「いや解るだろ?」

「判るの!?」

宇崎が持論を展開する。

「そいつって、自分のやりたい戦い方が有るから違反したんだろ?」

「それは、アンタだけだろ?」

「余程自分の強さに自信がないと出来ないって!」

いや、宇崎の推測はある意味正しかった。

今の椎名の頭の中にあるのは、大河の抹殺。それだけであった。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島密林エリア

 

別の『兵士』達が激怒し過ぎて逆に冷静になった椎名を発見した。

「いたよワニちゃん!一直線に例の廃墟に向かってる!」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

『兵士』達の報告を聞いた横田が、大河抹殺に拘り過ぎて理性を失った椎名の姿に歯噛みした。

(くそ!今回は角供(われわれ)も三門も……石田に翻弄され過ぎた様だな!?)

一方の品田が今後の展開を予想した。

「どうやら……全ての駒が11-24に集結するようですな?」

横田が更に歯噛みした。

(それは良いんだそれは!問題は、(クロコダイル)(ティガ)VS蜜獾(ラーテル)が終了するまで待てるかどうかだ!)

姫乃は、横田の独白を聞き取ったかの様に言い放った。

「宇崎さんが大河さんにどれだけのダメージを与えられるか?そこに関心が入ってましたね?」

品田が間髪入れずに皮肉を言う。

「当然でしょ。相手の駒が無傷というのは、それはそれで嫌なものですからね」

横田の歯噛みが更に酷くなった。

(そう言いたいのは山々なんだよ!だが、俺はもう……(クロコダイル)に待機命令を出せないんだよ!)

KDDY顧問の田中正が口を挟む。

「いやいやいやいや。麝香猫(シベット)の存在を忘れてもらっては困りますな?それに引き換え、角供は既に残り1人。八菱が俄然有利ですな?」

田中の楽天的な予想に、セレナが呆れた。

「何を言っているのだあいつは?石田にはまだ(ラビ)が残ってるだろ?」

黒居がセレナの台詞に呆れた。

「推すねぇ……穿山甲(パンゴリン)撃破の大金星を」

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア

 

そうこうしている内に、宇崎が大河の眼前に到着した。

「ヘッ。やっとお出ましか。待ってたぜ?(ティガ)……だけ?」

それを観ていた『兵士』達が困惑した。

「良いのか?例のワニちゃんをほったらかしにして?」

「今更だけど、こいつの行動って刹那的過ぎなんだよねぇ。何となく流れで生きてる感あるわ」

「ある意味野性的ね」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』廊下

 

他の観客達がもうすぐ始まる宇崎VS大河の話題で盛り上がっている頃、黒居の小出しで中途半端な情報に惑わされてはいるものの三門陽参暗殺計画が順調に進んでいる事だけは正しく理解していた安達が、暗殺計画の犯人と黒幕に関する勘違いに取り憑かれた状態のまま四大財閥に密告しようとしていたが、

「……迷った……」

当然である。卑しくもこの『獣王』は、日本籍のクルーズ船有数の大きさと豪華さを誇っており、旅客定員は880人。客室数は440室にも及ぶ。

「つうか、たかが1隻の船に施設詰め込み過ぎなんだよ。良いのかよ日本人がカジノ作ってもよ?」

道に迷うにただでさえ少ない時間を、更に無駄に消費させられて不貞腐れる安達であったが、その先に1人の青年がいた。

だが、安達は声を掛けずにジーっと顔を視た。

「どうしました?私の顔に何か?」

顔を視る理由を問われた安達は、無礼を承知で質問した。

「あんた……男だよな?」

青年は、その質問の本当に意味を見抜いてこう答えた。

「ご安心ください。私は(・・)『兵士』ではありません」

青年が男だと確信した安達が安堵の溜息を吐いた。

「すまねぇな、変に疑っちまってよ」

「今の行動を園藤姫乃に知られたくない様ですね?」

安達の表情に真剣みが増す。

「三門陽参に会わせてくれ」

だが、青年は冷静に業務的な事を言う。

「どの様なご用件でしょうか?」

青年の危機感の無さにイライラする安達。

「今はいつも通りをやってる場合じゃねえんだよ!三門陽参に残された時間は少ねぇんだよ!」

「少ない?三門会長の残り時間がですか?」

「早くしないと、あいつらが三門陽参を殺しちまう」

だが、青年は冷静に業務的な事を言う。

「つまり、VIPルームをお探しなのですね?」

「あ?何暢気な事言ってんだ?その気になりゃあ、この船の女性全員を『兵士』に変える事だって出来んだぞ?」

それに対し、青年は自信無さげに言った。

「そうは言われましても……私は、貴女様の言い分を一方的に聞かされただけですので、貴女様の言う暗躍を立証する自信がございません」

この正論に対し、安達は苦虫を噛み潰した様な顔をしながら不敵に微笑んだ。

「証拠が無いから誰も信じねぇって訳だ。まるでカッサンドラだな」

青年は、取り合えず口頭でVIPルームへの往き方を説明するが、安達が青年に背を向けた途端にズボンの左ポケットから白いハンカチを取り出そうとする。

だが、

「そのポケットの中のモノをしまいな」

背後からの声に反応するかの様に安達と青年が振り向くと、青年の背中すれすれに『針』があった。

(しまった!見つかったか!?)

目論見がバレたと思い込んだ安達が悔しそうに舌打ちするが、新崎敦子の台詞は、安達の推測とは真逆であった。

「おい、四大財閥!安達のバカに何を観られた?」

予想外の展開に、安達は反応が遅れた。

「……は……?」

「『は?』っじゃないよ!それ以外に四大財閥があんたを殺す理由があると思う?」

ここで漸く、黒居のあのセリフの正体に気が付いた。

(それって!?四大財閥同士の!?つうか!こいつも三門の敵なのか!?)

安達の動揺を無視して、新崎が勝手に話を進めた。

「安達が握ってる情報は、ちゃんと姫乃様に届ける。邪魔するならブチ殺すよ?」

だが、青年は自信満々に笑った。

「ハハハハハ!」

「何が可笑しい!?」

青年の次の言葉は、安達にとっては予想外なものだった。

「園藤姫乃から聞かされてないのか?新たな『女王』の誕生の可能性を?」

(え!?園藤姫乃以外にも『女王』がいるの!?)

だが、新崎は全く驚かなかった。

「へー。流石は日本財界の親玉様だ。もうアメリカにいる連中の事をご存じか?」

(そんで驚かないんだ)

「……それだけか?」

青年の不気味な言い方に、新崎が少しだけ焦った。

「え?そいつらの事言ってたんじゃないの?」

「はあぁー!?まだいるの!?」

その直後、新崎の背中に何かが刺さった。

「……『針』……?……誰……の……」

新崎はあっけなく死んでしまった。

青年が左ポケットから白いハンカチに隠した麻酔薬を取り出そうとするが、その前に催涙スプレーをかけた。

「もう引っ掛かるかよ!てめえらの好きにはさせねぇよ!」

急いでメインダイニングに戻ろうとする安達であったが、

(少々気に食わねぇが、あいつらを止められるのは園藤姫乃だけだ!急いであいつ等に―――)

安達の目の前に中国人女性が2人現れた。

「すまねぇ!ちょっと急いでるんだ!」

だが、2人の女性が『針』を露出させた。

「なっ!?」

嫌な予感がしたので後ろを振り返ると、青年が注射針を持って待っていた。

「岩崎弥芯が今日やろうとしている計画の失敗は、俺にとっても致命的な痛手なんでね……三門陽参の救出はさせん!」

安達は、自分の軽率な行動を呪った。

(チッ!ドジッちまった!)

 




pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。

内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。

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