宇崎瞳は何故獣人なのか?祠堂零一はどうやって彼女を発掘したのか?そして宇崎瞳はどうして日本にやって来たのか?
それらが全て詰まったエピソードだからです。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム
姫乃の指示を受けた『兵士』が四つん這いで宇崎に覆い被さる姿を観て、姫乃が何を知って何を
(まさか……たったあれだけの時間で7年前に辿り着くとはな。あの時の本気が良く解ったよ)
2012年5月12日 香港九龍・尖沙咀地区龍記招牌雲吞
祠堂がある噂を聞きつけて、部下の柴山と共に香港にやって来ていた。
「社長。滞在の期限は1週間ですからね。それ以上は延ばせませんよ」
社長と呼ばれた祠堂が訂正する。
「お前なあ、いい加減社長はよせよ。会社が(
店に外が騒がしかったので外に出てみると、ボロボロの白いワンピースを着た獣の様な少女が、口に盗んだ肉まんを銜えながら走り回っていた。
その動きは既に人間ではなく、体毛も耳も手足も動物そのものであった。
「何だありゃ!?猿!?いや……山猫!?」
柴山はその少女が人間には見えなかったが、祠堂は何かを確信し、嬉々としてその少女を追った。
「追うぞ柴山!あれが
そして、祠堂が咄嗟に指示を出す。
「南西方向に向かった!行く先は、おそらく
「
因みに、香港人にとっては大変失礼なやり取りである。
A座3階に警備員詰所が設けられるなど2000年代以降警備の強化が続いている。問題となっていたG階での強引な客引きも2008年末から規制の強化が行われ、以前よりは悪質な客引きは大幅に減っている。
2012年5月12日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
その少女が、一体何者なのか?
どうやって生まれ、何処から来たのか?
誰も知らない。
だが、その異様と獣の如き性情から、現地の人々は、彼女をこう呼んだ。
『
言葉も心ももたない唯の動物。それが彼女の名前だった。
そして、そんな彼女に親しく話しかけるのは……祠堂零一だけであった。
「大丈夫。私は味方だ。ほら、GoobneChickenの韓国チキンだ。美味いぞ」
少女は、警戒しながら匂いを嗅ぐと、祠堂の手を噛んでチキンを奪って逃げてしまった。
「い痛ッ!ぐ……」
少女がどっかに行ってしまってから柴山が漸く祠堂に追いついた。
「社長!大丈夫ですか!?社長!奴は何処に!?」
だが、祠堂は柴山の質問には答えず、少女が逃げた方向を見ながら喜んでいた。
「ついに見つけたぞ……
だが、その目論見は容易ではなく、その時から、祠堂零一の苦闘に日々が始まった。
2012年5月13日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
「やあ、また会ったね。どうやら、この貯水タンクは君のお気に入りの場所らしい。機能のお詫びに、今日はいろいろ持ってきた。君の好物があるといいが―――」
なす術無く蹴られる祠堂。
「あ……でえ!う、うぐぐ……くそ、負けんぞ」
2012年5月14日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
「どれもうまいぞ!」
なす術無く蹴られる祠堂。
2012年5月15日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
2012年5月16日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
2012年5月17日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
2012年5月18日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
2012年5月18日 香港九龍・尖沙咀地区
傷だらけの祠堂を診て、柴山が苦言を呈する。
「ったく、何やってんだか。相手は獣ですよ?餌付けなんかできるわけないでしょ」
祠堂は、少女が唯の獣とは思えなかった。
「いや、そうでもないさ。少しずつだが近づける距離は縮まっている。それに、ヒトミの好みも解ってきた。肉や魚より甘い―――」
「!?」
既に名前まで考えている事に驚く柴山。
「ちょ……何ですかヒトミって?あいつの名前!?」
「あの子は人間だ」
あの少女を人間と呼んだのは、多分祠堂が初めてであろう。
「その証拠に、瞳の奥に知性の輝きがある。服も着てるし、言葉も理解出来る。時間さえかければ、意思の疎通も―――」
柴山は猛反対した。
「社長!いい加減にしてください!これ以上は危険だ。篠崎を呼んで捕らえさせます。それまでの間、もう2度とあいつに近づかないで下さい!」
2012年5月20日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦屋上
祠堂は、懲りずにまた少女の前に現れた。
「だってさ。柴山には参るよ。お陰でこんな時間にコソコソ逢引きだ」
少女は、何も答えず、ただ祠堂から貰った物を食べていた。しかし、
「悪い奴じゃないんだが、今頃は、まるで亭主の浮気を疑う古女房―――」
少女は、聞き慣れない言葉に首を傾げた。
「ふるによーぼ?」
少女が喋った事に驚く祠堂。
「瞳……今お前、喋ったのか?」
大喜びで少女に近付く祠堂。
「やっぱり言葉が分かるんだな!俺の名前も言えるか?祠堂だ。ほら祠堂!」
だが、祠堂の歓喜は、非情な1発の銃声によって絶望へと変わった。
祠堂が残念そうに振り返ると、柴山が少女に向けて銃口を向けていた。
「柴山!お前、何て事を!」
その隙に少女が逃走してしまう。
「ヒトミー!待ってくれ!ヒトミー!」
一方、悪びれない柴山は、
「麻酔弾を撃ちました。2~3分で身動きできなくなるでしょう。その隙に捕まえれば―――」
祠堂が柴山を殴り倒した。
「大馬鹿野郎!野生の獣にとって、たとえ一時でも、身体の自由を奪われる事が、どれだけ危険か分からないのか!?」
2012年5月20日 香港九龍・尖沙咀地区重慶大厦裏路地。
柴山が撃ってしまった麻酔薬の効果が、少女にとっても、祠堂にとっても、最悪なタイミングで効果を発揮してしまった。
「急げ!この辺りは
祠堂が見たものは……
複数のチンピラに取り囲まれ、凶暴そうな犬達に両腕を噛まれている少女の姿であった。
「ま!?待ってくれ!」
居ても立っても居られない祠堂が少女の許へと走る。
「その子は獣じゃない!人間なんだ!言葉も通じるし感情だってある!ただルールを知らないだけなんだ!」
だが、悪辣なチンピラ達にとっては喧しいだけであった。
「令人沮喪」
チンピラに殴り倒される祠堂を見て慌てて飛び掛かる柴山。
「しゃ!?社長!?」
だが、簡単に返り討ちにされた。
「請勿打擾。我會殺了你?」
悪辣なチンピラ達は、祠堂に銃口を向けながら、更に邪で身勝手な事を言い始めた。
「此外當你反對、你也是像他一樣、切斷四肢在迷藥我賣!」
このままでは少女が殺されると思った祠堂が、銃口を撥ね退けで少女に覆い被さる。
「不要上當!」
少女に覆い被さった祠堂に対し、悪辣なチンピラ達が殴る蹴るの暴行を加える。
「請停下來、因為它在路上!」
「死了!」
「しゃちょおぉーーーーー!」
柴山の悲痛な叫びが届いたのか、チンピラが何者かに蹴り飛ばされた。
「什麼!?」
「是誰!?」
その姿を見て、祠堂が安堵した。
「来てくれたか!?篠崎!」
「遅れて申し訳ありません。局の事務作業が滞っておりまして」
篠崎の謝罪に対し、安堵した祠堂が安心させる様に指示を出す。
「私は大丈夫だ。この子もな。悪いが柴山を看てくれ」
そして、四つん這いで覆い被さる形で少女に語り掛ける祠堂。
「もう大丈夫だヒトミ。一緒に行こう」
それが、ヒトミが祠堂と心を通わせた、最初の瞬間であり、ヒトミが獣から人へと生まれ変わった瞬間であった。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
しかし今宵……
人間社会に寄生して乗っ取ってしまう『蜂』の力を手に入れた『女王』園藤姫乃の謀略が、ヒトミを人から獣へと引き摺り戻してしまった。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』倉庫
麻酔薬の効果がまだ僅かだけ残っているにも関わらず、安達は隙を見て逃走した。三門陽参の敵の思惑と戦う為に。
それを監視していた姫乃とは無関係の『兵士』2人が追おうとするが、あの青年が2人を制止する。
「もう、あの女を捕縛する必要は無い。もう……間に合わんよ」
「本当に大丈夫なのか?あの者の口から、三門陽参殺害計画が漏れたら?」
青年は強気だった。
「もうあの者1人だけではどうする事もできまい。それに、今は
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
覆い被さっていた『兵士』を突き飛ばした宇崎の変化に、7年前の香港の出来事を知らない者達は驚きを隠せなかった。
特に横田は、汗だくで蒼褪めていた。
「何だ……これは……?」
姫乃は、1つの仮説を口に知る。
「宇崎さんは、おそらく獣化手術を受けておりません」
一同は、姫乃の頭の悪さに呆れていた。
「……何を言っているのかね君は?」
「そうだ!獣化手術なくして
姫乃は、ある調査資料をテーブルにぶちまけた。
その中に、あの少女と祠堂が一緒に写ってる写真もあった。
「この写真が何だと言うんだ!?」
尊夫人は、写真に写る少女の正体に直ぐに気が付いた。
「
その言葉に、一同の視線が尊夫人に集中した。
一方、姫乃が7年前の香港での出来事を知っている事に驚き困惑する篠崎。
(どうしてこれを!?いや……管理局にも『兵士』が宿ってしまったと見るべきね!)
そして、姫乃が仮説を再開した。
「7年前まで、重慶大厦付近で猿の様な生物による盗難事件が相次いでいたそうなんですが、祠堂零一が1人の少女を連れて日本に帰国した辺りから、猿の様な生物の盗難は一気に終息したそうです」
横田は、恐る恐る姫乃に質問した。
「では何か?その猿の正体が
姫乃は普通に答えた。
「はい。かなりの確率で。そして、宇崎さんは、何らかの環境悪化の影響により、胎児の頃から既に獣化手術を受けた状態……つまり、宇崎さんは最初から
横田は、歯軋りしながら悔しがった。
「くっ!……化け物めぇー」
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム
祠堂もまた、宇崎の変化について説明していた。
「あれがヒトミの本来の姿。遺伝子操作による強制的な獣化ではなく、初めから獣化DNAを持って生まれた
それを聞いた雅が不機嫌な顔をする。
(チッ!
「人と獣の完全なる融合は、身体のみならず、本能を司る脳幹深部まで影響を与え、人体に眠る獣の本能『精神の牙』を研ぎ澄ます」
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
大河との戦いに戻ろうと立ち上がる宇崎だが、その姿は、肌が褐色になり体毛も白く変化していた。
「さっきの続きをしようぜ
それを見た
「これは……
大河に飛び掛かろうとした椎名を突き飛ばす宇崎だが、
「な!?何!?今の!?」
一方、宇崎の性格も普段以上に破壊的なものに変化していた。
「さあ……
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』
「牙の鋭い方が勝つ。それが『
pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。
内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。