思えば、宇崎瞳を筆頭に、城戸剛、戌井純、黒居佑、園藤姫乃、安達瑞、セレナ・セルバンテス、中西兄妹、椎名兄弟と、キリングバイツ・ヒメノスピア双方ともに気の毒な幼少期の持ち主が多い。
今の所、平和で幸福な幼少期の持ち主である事が確定したのは黒田二郎だけですね。今の所、平和で幸福な幼少期の持ち主である事が確定したのは黒田二郎だけですね。大事な事なので2回言いました。
三門陽湖「おい。裕福な幼少期と言えば私だろ。三門陽参の孫娘の」
椎名竜次。
彼には喉から手が出るほど力を欲した時期があった。
竜次は弟の咢と仲が良かったが、暴力的な父親と育児放棄の激しい母親から身を護るための共同戦線という、防御本能から来る必然的な関係と言えた。
だが、ある程度成長するにつれて、父の標的は弟に絞られた。弟の方が頭が良かったからだ。
子供らしい愛嬌と大人びた利発さを兼ね備え、場の空気を読み、何でも卒なくこなし、巧みに人心を捉える、「良い子」そのものであり、時にわざと父の神経を逆なでしているのかと思える程、誰に対しても常に礼儀正しく社交的であったため、その慇懃無礼とも言える態度がいわゆる「反社」に身を置く父の癇に障るのもまた必然と言えた。
竜次は思った。
弟を
故に、小学校高学年になる頃には、椎名竜次は立派な不良に成長していた。
だが、竜次が心の底から望む様になった
父親が寝てる間に包丁でアキレス腱を切断し、身動きが取れない状態にしてから包丁で全身滅多刺しにしたのだ。
内に潜む凶暴性は、咢の方が上だったのだ。
その結果、竜次の強くなりたいという願望から目的と目標が完全に抜け落ち、執念だけとなってしまったのだ。
そんな竜次の「行き場を失った強化願望」を更に刺激したのが獣化手術と
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
「ぐおおおおおー!」
椎名竜次は、
「がああぁーーーー!」
椎名が宇崎と大河の激突を待たずに突撃した。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
勿論、椎名のプレイヤーである横田にとっては、頭を抱える程嫌な展開である。
「よせ
当然、横田の悲痛な叫びは、遠く彼方にいる椎名には届かず、逆に勢いが増した様に見えた。
「くそ!もはや打つ手は!?」
その時、スマホをいじる渚の姿が目に映り、それを奪おうと立ち上がった。
「おい!そこの『兵士』!それをよこせ!」
「……やっとかよ?」
渚が皮肉めいた微笑みを浮かべながらスマホを横田に手渡そうとしたが、姫乃が無言で右手を上げる形でそれを妨害した。
それを見た横田が胸倉を掴みながら姫乃を立たせた。
「どう言う事だ害虫!?」
「おいてめぇ―――」
姫乃が無言で左手を上げる形で渚の飛び掛かりを妨害した。
「その程度で、あの3人が停まると思いますか?」
今度は、姫乃が横田のネクタイを掴んだ。
「認めてください!私を含めた
横田は、姫乃の気迫に圧されて汗だくになりながら沈黙した。
「
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
宇崎と大河と椎名が壮絶な三つ巴を繰り広げていた。
宇崎の爪が光り、椎名の尻尾がうなりを上げ、大河の脚力が砂塵を起こし、横槍を許さぬ雰囲気を醸し出している。
「これこれ!こういうのこういうの!やっぱ
「
「
言ってる事は三者三様だが、どこか楽しそうなのは一緒なので、その場にいた『兵士』達は、完全にドン引きした。
「……ついてけん……」
一方、自分とは全く関係の無い三つ巴が決勝戦扱いされる事態を、自分のプライドが傷付く事態と捉えてしまった
「私を差し置いて決勝戦だと!フンッ!体内からシベトンを噴出させて!性欲を亢進させ!戦局を操ってくれるわ!」
とっさに
「ぎぃゃぁぁあああ!だ……だめか!と……遠ざかるッ!あの3人の攻撃の威力が大き過ぎて、私が決勝戦から遠ざかってしまうッ!き……軌道を変えられん、も……戻れんッ!ぎぃゃぁぁあああ!」
やめとけばよかったのに、
「
1人の『兵士』が、足下の異変の気付いた。
「ん?」
そこへ、宇崎の退路を確保するために稲葉がやって来てしまった。
「たぁーーーッ!」
「馬鹿!来るな!殺されるぞ!?」
「殺される!?それって!?」
だが、
「へにゃあーーー♡なにこれぇー♡力が入らにゃいーーー♡」
『兵士』達は、稲葉の突然の発情に面食らった。
「はあぁー!?」
「なにエロ声出してんの!?」
「意味解んない!?」
一方の稲葉は、自身の発情に翻弄されて無様に転がっていた。
「あひゃああん♡きもちいいーーーーー♡」
人間は一年中発情期。
という言葉もあるが、ウサギも年間を通し、毎日が発情期である。
ウサギは概して成長が早く、生後わずか5ヶ月で生殖機能が成熟し、繁殖の準備が完全に整う。
これは、とにかく子孫を残す事で絶滅を避けようとする弱者の本能であり、特にメスなどは最も効率の良い次世代生産のため、出産後でもすぐ発情期に入るという、凄まじい徹底ぶりである。
「……どうしよう……これ……」
「ふにゃあ♡うにゃあああん♡子作りしたいぃーーー♡」
「……ほっとこう」
「ほっとくの?」
「うん。変に冷静になって……」
『兵士』達の視線が宇崎と大河と椎名の壮絶な三つ巴に向けられた。
「あれに割り込むチャンスを窺うなんて馬鹿な真似をする心配が無さそうだし」
「……そうだねー……」
こうして、この三つ巴の邪魔者が勝手に退場したのであった。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
「
観客席の異様な盛り上がりと篠崎のハイテンションな実況に反して、3人のプレイヤーである品田と横田と姫乃は気が気でなかった。
(全ての足枷を外してこの程度!?もし、あのままの状態で続けていたら、宇崎さんは……)
(これで……正真正銘の1対1になってしまった!もはや見守るしかない訳か?)
(くそ!全ての策略が全てパーだ!)
どうにかここまで戻って来れた安達は、この騒ぎを見てなぜあの状態から逃げ切れたのかを悟って愕然とした。
(駄目だ……誰も聞く耳持っちゃいねえ……)
安達は、知らず知らずの内に滝の様な悔し涙を流していた。
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
壮絶な三つ巴は、椎名が出遅れる形になり始めた。
動きが単調と思われ始めたのだ。悪く言えば、後の2人に動きを見切られ攻撃を受け流され始めたのだ。
特に、宇崎の劣勢でも
ラーテルは、
自力で折の鍵を外したり、他者の力を借りて狩りを行うなど、非情に知能の高い動物として知られるが、ことナワバリ争いにおいては全くのやぶれかぶれ。
出会い頭にいきなり噛み付き吠えるなど無為無策も甚だしい乱戦となるが、それもそのはず、ラーテルの生息圏に棲む大型肉食獣とラーテルを比較した場合、その体格差は実に10倍。
これは、戦術や戦略でどうにかできる範囲をとっくに超えた、自然界では通常ありえない暴挙である。
しかし、この暴挙こそが、長い進化の歴史で培ったラーテル本来の戦闘スタイルであり、強大な敵に挑む勝ち目のない闘いこそが、ラーテルの本領発揮の瞬間である。
「!」
(この目……何だ!?あんな目をした覚えは1度も無い筈なのに、まるで
宇崎の目にイラついた椎名が強烈な抜き手を繰り出そうとするが、
「グガアアアァ!」
逆に宇崎に引っ掻かれてしまった。
驚異的な回復力と治癒力の前では宇崎の引っ掻きなんて児戯に等しいが、気迫の差が致命的に開いているために宇崎のラッシュにさらされる羽目になった。
「オラオラオラ!さっきの威勢はどうした!?」
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
三つ巴の筈が大河が徐々にほったらかしになりつつある状況に、品田が内心喜び、横田が青ざめ始め、姫乃が宇崎の性格に呆れた。
「いかん!
「あー……宇崎さん、このままだと、悪役のおバカキャラになってしまいますよ!」
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
だが、プレイヤー達の意見は全く反映されず、弟の天敵にしか見えなかった父親を殺せる程の力を求めて足掻いていた頃の事を思い出してしまった椎名が、宇崎を突き飛ばして大河に突進していった。
「死ねえぇーーーーー!クソ親父いぃーーーーー!」
宇崎と横田は異口同音、全く同じ叫びを上げていた。
「何で!?」
だが、そんな椎名の突撃の代償は、大河の猛攻による失明であった。
猫科猛獣が狩の中で獲物の弱点を見出す
これこそが、トラをして現生動物無差別級絶対王者と目される最大の由縁であり、一部の研究者は、3m級のベンガルトラと森で相対するならば、ティラノサウルスですら頸椎を砕かれ死亡するだろうと予測する。
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
横田は、この結果に愕然とした。
「バ……バカな……あり得ない……総理事に何と申し開きすれば……」
姫乃は、横田の姿を見て軽く頭を抱えた。観客は、明日は我が身だと思ったのではと思い込んでしまったが……
2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア
そして、闘いは
(あの重心をできるだけ低くするあの構え……あれは土下座と言うより、短距離走のクラウチングスタート!終わらせる気だ!その為に全力全速の突進の準備だ!)
『兵士』達は、
そして、宇崎と大河が同時に飛び掛かったが、両目を失ってもなお戦意を失っていない椎名が起き上がって吠えた。
「クソ親父いいぃーーーーー!」
だが、失明したのが災いしたのか宇崎と大河の激突のど真ん中に突っ込んでしまった椎名。
だが……
2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング
この大事なタイミングで、豪華クルーズ船『獣王』が大停電に襲われた。
観客達は完全に大パニック。
「なっ!?」
「よりによってここで!?」
「これでは結果が判らん!」
「この船の乗務員は何をしている!?」
「早く直せ!見逃してしまうではないか!」
黒居もまた、事前に聴かされていた
「聴いて無いぞこれ!」
三門陽参殺害計画に翻弄されている安達は、とうとう計画が実行されたと勘違いして頭を抱えた。
一方、この状況をある程度予想していた者達が動き出していた。
先ずは姫乃達。
この停電の黒幕を知っている渚が悪態を吐く。
「あのハゲやりやがった!」
そして、姫乃は立ち上がり、渚と川辺を連れてこの停電の黒幕の許へと急いだ。
そんな姫乃の動きを運よく発見した安達がその後を追う。
まだ間に合うと。岩崎弥芯を倒す術がまだ残っていると信じて。
セレナも、そんな姫乃達の動きに気付いて、配下の女性SPに尾行を命じた。
そして、司会進行役だった篠崎の姿も、何時の間にか消えていた。
想定外の展開の連続に、黒居が混乱しながら移動を決意し、セレナに一言断ってからある場所に向かった。
その結果、今回の
「愚かな……この程度の想定外如きで、ここまで狼狽えるとは……」
2019年7月26日
謎の悪意によって
「これって……」
「よりによって姫乃様が留守って時に!」
pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。
内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。