ヒメノスピア×キリングバイツ   作:モッチー7

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角供雅……恰幅がよく、強面で、部下からは「おやじ」と呼ばれ、素行が悪いと風評される爬虫類を躊躇無く採用し、四大会長唯一のヘビースモーカー……この人、「ヤ」の字の人じゃないよな?
この人も、三門陽参同様に殺されたが、原作では、角供財閥のその後があまりよく語られていない気がするのだが?石田や八菱の様に存続の可能性を魅せている訳でもないし、かと言って三門の様に滅んだと明記されている訳でもない……四大財閥の中で最も雑な扱いを受けてるのではないのか角供?本当にどうなった角供財閥は?

後、このやり方なら、有耶無耶に出来た筈の“最後の三つ巴決戦”の結果をあえて書かせて頂きました。
この結果は違うだろうと思う方は、遠慮なくコメントを下さい。


第23話:角供雅

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア

 

事実上の決勝戦である三つ巴を見届けた『兵士』達は、周囲を警戒しながらある動画を送信していた。

「間に合ってくれればいいんだけど!」

「渚の話だと、例の船が停電になったらしいし……」

「これがバレたら……あいつら絶対に私達まで殺そうとするよ!」

誰かの話声が聞こえた気がしたので、『針』を露出させながら周囲を警戒した。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島密林エリア

 

現地カメラクルーが何者かに襲われて全員死亡した。

「現地の撮影クルーは全員死亡……あとは、生き残った獣人を……1人残らず抹殺するだけ」

「それで今大会は勝者不在の無効試合(ノーコンテスト)

「全ては闇の中。真相を知る者は俺達だけ」

 

カメレオン

爬虫類爬虫綱有鱗目カメレオン科に属する生物であり、その特殊な性質の数々から、地上棲の脊椎動物の中でも最も「暗殺」に適した種である。

瞬時に変色し周囲に溶け込む皮膚。

左右が独立して動く事で広大な視野を確保する眼。

高所でもバランスを取り易い体型。

樹に捉まるための長い尻尾と手足。

それに……

 

「目指すは11-24の廃墟エリア。そこに、石田と八菱のラストバッターがいる。そいつ等だけでも殺せ!……との厳命だ」

「面白い。偉そうに獅子(レオ)のライバルを気取っている(ティガ)の脳漿を味わってくれるわ」

ルールを堂々と無視する無粋な暗殺者(あくい)がゆっくりと宇崎達に近づいて行く。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム

 

姫乃達が、未だに復旧しない停電に少々苛立つ四大会長が待つVIPルームに乗り込んだ。

渚が、VIPルームにいる者達に質問される前に開口一発怒鳴った。

「おいハゲ!なにふざけた事をしやがる!?」

全く動揺しない三門陽参が、自分の頭を触りながら冗談を言う。

「ハゲ?どっちの事じゃ?」

安達は、自分の周りで暗躍する裏切りと悪意に気付いていない陽参に告げる。

「やっぱり何も気付いていねえのかよ?って言うか、寧ろ被害者なんだよ」

未だに余裕の陽参が呑気な事を言う。

「被害者?誰がじゃ?」

いま陽参と話しても埒が明かないと感じた姫乃は、角供雅にある事を訊ねた。

「この停電……貴方の仕業ですね?角供雅!」

姫乃が四大会長に問い詰めてる理由が、三門陽参暗殺計画ではなく角供財閥が行った不正についてだと知って困ってしまった安達。

「えー!?そっち!?」

一方、安達が驚く意味が解らず首を傾げる渚。

「そっちってどう言う意味だよ?」

だが、安達と渚の会話を遮る様に祠堂が姫乃に質問する。

「この停電が意図的だと?まるで今回の獣獄刹(デストロイヤル)の結果を書き換えようとしているみたいですが?」

(だあぁーーーーー!何やってんだこいつら!?そんな暢気な事言ってる場合じゃねえんだよ!)

雅が祠堂の台詞を聞いて不気味な笑いを浮かべた。

「くくく……どうやら、俺は貴様を買い被り過ぎた様だな……園藤姫乃!」

話が全く三門陽参暗殺計画や岩崎弥芯に触れない事に頭を抱える安達。

(それ……不正を認めた様なもんじゃん。って言うか、そんな事をグチグチ言ってる場合じゃねえんだよ!)

安達の悩みなどどこ吹く風と言わんばかりに、雅がある推測を口にする。

「俺が知らねえとでも思ってんのか?今回の獣獄刹(デストロイヤル)は、管理局が八菱と石田を抱き込み、駒の配置やら賽の出目を有利に計らう。その見返りとして、祠堂の駒の性能を試す実験場として利用した。違うか?」

(かあぁーーーーー!違うんだよ!つうか、その余計な疑念のせいで本当の本題が隠れちまったじゃねえかよ!)

「1年前に日本の警察組織を完膚なきまで辱めたお前なら……と思っていたが、その程度すら気付かんとはな?」

(邪魔だよその疑念!本当の敵がお前の余計な疑念に隠れちゃったじゃないか!?)

雅の推測と安達の独白が全く噛み合わない中、姫乃がある事実を白状した。

「つまり、私の『仲間』があの島に入れる様手引きしたのは、あの島で起こった事を全て消す為だった訳ですね?解っていた事とは言え、まさか本当に行うとは……」

そして、姫乃は雅を殺意が籠った目で睨んだ。

「もし、あの島にいる大切な『仲間』に少しでも触れたら……その時は容赦しません!」

それを聞いた雅が高笑い。

「ダハハハハハ!其処の鈍感馬鹿女と話しても時間の無駄だったようだな!?だが、俺の敵はお前じゃない!」

雅が祠堂をチラ見した。

「どの道だ祠堂。俺は貴様のやり方を絶対に認めん。この角供雅を敵に回した事を……」

雅の背後にいる女性秘書が徐々に獣化する。

「地獄で悔やめ」

だが、川辺の報告で全てが一変した。

「姫乃様、角供雅の不正を無かった事にする(・・・・・・・・)準備が整ったとの事です」

雅が慌てて立ち上がる。

「俺の不正を消すだと!?何をする心算だ園藤姫乃!」

姫乃が柄にもなくカッコつけた指鳴らしをすると……

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

豪華クルーズ船『獣王』を襲った大停電が完治し、モニターに例の三つ巴の続きが映し出された。

それが何を意味するのかを正しく理解したセレナが苦笑いした。

(四大財閥め!この船を乗っ取られたな!?園藤姫乃に)

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア(録画)

 

宇崎と大河が同時に飛び掛かったが、両目を失ってもなお戦意を失っていない椎名が起き上がって吠えた。

「クソ親父いいぃーーーーー!」

だが、失明したのが災いしたのか宇崎と大河の激突のど真ん中に突っ込んでしまった椎名。

そして、椎名は大河の方を向いたつもりだが、失明が仇となったのか目測を誤って宇崎の方を向いてしまった。

大河は、無意識で放った形になってしまった鰐鎚(デスメイス)を避ける事が出来なかった。

大河が吹き飛んだ事に気が付かぬ椎名は、目の前の相手が大河だと思い込みながら叫んだ。

「くたばれ(ティガ)ああぁーーーーー!鰐噛(デスバイツ)うぅーーーーー!」

そんな椎名の咆哮は、宇崎にとっては嬉しい誤算だった。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

宇崎を襲った嬉しい誤算に……観客達は固唾を飲んだ。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア(録画)

 

宇崎のストレートパンチが椎名の口内に深々と入り、椎名の後頭部を貫通したのだ。

なす術無く死亡する椎名。

勝利を確信した宇崎が絶叫する。

「おおおおおおおおおおおおお!」

 

無敵のラーテルも敵に殺される事はある。

だが、手足を叩き斬られようと、腹を裂かれようと、喉笛を貫かれようと、弱るでも怯むでもなく、むしろより一層凶暴になり、完全に絶命する瞬間まで、激しく抵抗を続けるという。

その根底に在るのは、自然界の常識を覆すラーテル最大の武器……死をも恐れぬ鋼の精神(メンタル)

 

だが、

「お、お、お……」

宇崎はそこで力尽きた……

宇崎は無邪気な寝顔を浮かべるが、観客達にとっては困った事である。勝者が誰か解らないからである。

司会進行役だった篠崎もいない……

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア

 

一方、例の三つ巴の結果を録画してそれを豪華クルーズ船『獣王』にいる『兵士』達のスマホに送信した『兵士』達は、この後の戦いに備えて『針』を露出させていた。

「渚があの船を押さえたって言うけど、そのくらいであのハゲが止まると思う?」

「……無理だと思う」

『兵士』達が苦笑い。

「死んだね……あたし達……」

「姫乃様を庇いながらなら兎も角、こんなクソ大会に殺されるなんてね」

「唯一の救いは、姫乃様の命令でここにいる事かな?」

「ハハハハ」

その時、肌色のロープみたいな物が近くの茂みから放たれ、それに気付いた『兵士』が『針』で撃ち落した。

「褒めてやろう。その『針』で初弾を撃ち落した事をな」

雅が獣獄刹(デストロイヤル)の結果を書き換える為に送り込んだ暗殺者(あくい)が、遂に宇崎と同行していた『兵士』達の前に姿を現した。

「だが、無明の闇からの狙撃を可能とする避役(カメレオン)の必殺武器……『舌弾』からは逃れられん」

 

カメレオンの舌の射出速度は、実に90km/h。

しかも、最高速度に達するまでの時間は、僅か0.01秒。

これは爬虫類のみならず、鳥類、哺乳類を含めたあらゆる有羊膜類の中で最大の加速度を持つ、動物界最速の「弾丸」なのである。

 

「さあ……死にたくなければ、そのスマホをこっちに寄越せ」

暗殺者(あくい)と対峙した『兵士』が悪態を吐く。

「何を白々しい事言ってんの?どの道、生き残ってる獣闘士(ブルート)全員殺す癖に」

「それに、今更スマホを取り上げたってもう遅いんですけど?」

「そうそう。もうこの中に入ってる動画は、あの船にいる『仲間』に送ったよ」

暗殺者(あくい)が、目の前の『兵士』達の空元気を嘲笑う。

「無駄な足掻きは止せ。さっきの一撃で実力差をまざまざと知った筈だ?」

それでも、『兵士』達は啖呵を切った。

「うぜえ事言ってんじゃねえよクズ!私達に命令して良いのは、園藤姫乃ただ1人だ!」

「そうだそうだ!誰がお前の命令なんて効くか!」

「それに、さっきの決勝戦の結果はもう全員にバレてる!もう手遅れなんだよ!」

暗殺者(あくい)の内の1人が大きく口を開けた。

「そうか……なら……せめての情けだ……死に気付かぬ程一瞬で殺してやろう……苦しまずに死ねる事をありがたく思え!」

自分達の確実な死を確信した『兵士』達は、ただ一言、姫乃への詫びの言葉を告げていた。

「申し訳ございません姫乃様……私達はもう……ここまでです」

だが……暗殺者(あくい)による『兵士』達の処刑が実行される事は無かった。

暗殺者(あくい)達の背後に何者かが立っていたからだ。

茂みの奥から突然聞こえる戦闘音に驚く『兵士』達。

「な!?何なのこれ!?」

だが、『兵士』達は直ぐにこれを好機と見て『針』で茂みを攻撃し、暗殺者(あくい)達の背後にいた者が暗殺者(あくい)を盾にして『針』を防いだ。

「クソ!」

別の暗殺者(あくい)が慌てて舌弾を発射するが、逆にその舌が捕まってしまい投げ飛ばされた。

「ぐっ!?な、何故だ……一体どうやって、俺達の位置を把握して……」

暗殺者(あくい)達と戦っていた者の正体は、豪華クルーズ船『獣王』にいる筈の篠崎であった。

「未登録獣闘士(ブルート)獣獄刹(デストロイヤル)参戦は、重大なルール違反です。管理局の権限において、あなた達を排除します」

暗殺者(あくい)達の意外な末路に唖然とする『兵士』達。

 

篠崎が手にしているハンディカメラで自撮りしながらスマイルする。

「大変お待たせ致しました。機材トラブルが発生したため中継が寸断されておりましたが、勝者の生の声をお伝えするべく、わたくし篠崎が現場に急行した次第です」

突然の篠崎の変貌に困惑する『兵士』達。

「……多重人格者?」

とは言え、『兵士』達は説明しなければならない。

三つ巴の結果、暗殺者(あくい)達の目的、豪華クルーズ船『獣王』の現状など、色々と。

だが、ある1人の少女が目を覚ました事で、それらの全てを帳消しにしてしまった。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

獣獄刹(デストロイヤル)を観戦していた観客全員が頭を抱えながら困り果てた。

最も起きてはいけない者が、最も起きてはいけないタイミングで、最もそれを観てはいけない者の前で、目覚めてしまったからだ。

 

2019年7月26日 フィリピン海炎蹄島廃墟エリア

 

何も知らない稲葉がゆっくりと目を覚ました。

「あ、あれ……?ここ、どこだっけ……」

篠崎と『兵士』達が見守る中、何も知らない稲葉が素っ頓狂な事を言い始めた。

「確か……急に物凄く気持ちよくなって……物凄く子作りしたくなっちゃって……えーと……確か……」

そして、漸く獣獄刹(デストロイヤル)の事を思い出す。

「そうだ!獣獄刹(デストロイヤル)!私は逃げるための穴を掘って……」

慌てて宇崎を探す稲葉。

「ヒ、ヒトミさんは、何処に!?」

全てが終わった事に気付かず、とんでもないタイミングで目を覚ました事に気付かぬ稲葉の慌てふためく姿は、どこか滑稽で、どこか暢気であった。

今の稲葉はかなり情けないが、篠崎は目の前の真実を克明に実況しなければならない。

「ぎえええ!まさか!?まさかまさかの……獣闘士(ブルート)(ラビ)!優勝ォーーーッ!」

優勝の2文字を聞かされても、何の事か解らない稲葉はキョトンとするばかりであった。

「……え?優勝?誰が?」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム

 

結局、稲葉が獣獄刹(デストロイヤル)で優勝したという形になってしまい、雅がやろうとした結果隠蔽は失敗に終わった。

「お前の負けだな?角供雅!」

「不正の証拠は全て篠崎が録りました。そうですね?角供会長」

観念したかの様に座る雅。

「フン。どいつもこいつも、使えん奴らよ」

「不正への関与をお認めになるという事ですか?」

「ああ。こうなった以上、逃げも隠れもせん。だが、地獄往きは祠堂と同伴だ!貴様の野望を道連れにしてくれるわ!」

だが、雅に仕える女性秘書が祠堂に飛び掛かる前に、何者かが天井から降って来て雅の顔を右眼球が吹き飛ぶほど思いっきり引っ掻いた。

「く!」

女性秘書が雅を殺害した者に飛び掛かろうとするが、相手の唸り声を聞いた途端に身体がすくんで動けなくなった。

が、『兵士』である渚は平然と雅を殺害した者の名前を口にした。

「黒居」

川辺もまた、『兵士』故か雅の女性秘書を怯ませた唸り声に対して平然としていたが、流石に姫乃を裏切るかもしれない者の名を聞いて少し焦った。

「こいつが黒居佑か?」

一方の黒居は、自身の唸り声が通用しない事に驚きつつも、悟られない様に平然を装った。

「飼い主が目の前にいるから怯えてる場合じゃねえってか?これって、『兵士』と言うより軍用犬だな?」

(くそ!服部の奴、何で魔唸(デアグロル)が通用しねえんだ!?)

それに引き換え、黒居の魔唸(デアグロル)を受けて完全に身体が竦み過ぎていた安達。

(早く三門に警告して……園藤姫乃に岩崎弥芯を殺させねえといけないのに……でも……な……何でだ……身体が……動かない……)

黒居が唸り声を止めると、安達が何かから解放されたかの様に深呼吸するが、汗だくで呼吸も荒々しく、何も言えなかった。

一方、未だに座ったままの三門陽参が、何も知らずに只々黒居を褒めた。

「何者かは知らないがよくやった。このわしの眼前で不正を働くなど、牙闘(キリングバイツ)に対する冒涜に他ならん。死で償うが相応の罪よ」

汗だくで四つん這いが関の山の安達が何かを言おうとするが、まだ竦みが完治してないのか言葉が出ない。

(くそ!口が思う様に開かねえ!?早く気付かせねえといけねえのに!)

一方、姫乃は黒居に間接的に言われたあの言葉の意味を漸く理解した。

「園藤姫乃に三門陽参は救えない。もう……見殺ししか出来ないんだよ姫乃は」

「ん?私の言葉だな?何でそれを園藤が言うんだ?」

姫乃は、意味深な事を言った。

「つまり、貴方方牙闘(キリングバイツ)が三門財閥をブチ壊す気なんですね?」

姫乃の言葉の意味が解らずな安達。

「……え?」

 




pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。

内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。
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