ヒメノスピア×キリングバイツ   作:モッチー7

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真鍋進造……ヒメノスピアにおける日本国内閣総理大臣。
その容姿があの超悪名高いアレなので、本作がヒメノスピア第24話以降の様な悪辣な展開に堕ちるのを防ぐ為に、ここで完膚なきまでに叩いておきました。ただ、真鍋へのお仕置きは『もうちょっとだけ続くんじゃ』。


様々な暗躍
第24話:真鍋進造


2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム

 

姫乃は、意味深な事を言った。

「つまり、貴方方牙闘(キリングバイツ)が三門財閥をブチ壊す気なんですね?」

姫乃の言葉の意味が解らずな安達。

「……え?」

代わりに言葉の意味を説明したのは……祠堂だった。

「あなたも大きな罪を犯したのですよ。三門陽参」

陽参の眉がピクっと動いた。

牙闘(キリングバイツ)を利用する事で、三門財閥は長きに渡り経済を私物化。今日の停滞を生んだ。もはや日本経済は限界。このままでは自滅は免れない。つまり、我欲のために変革を恐れ、変革を拒んだ事こそが、あなたが犯した大罪なのです」

それを聞いた安達がとんでもない勘違いに囚われてしまった。

「貴様が岩崎弥芯かあぁーーーーー!」

安達が祠堂にナイフを突き刺そうとするが、黒居が唸り声を放った途端に身体が竦んで転んでしまった。

(くそ!何でだよ!?このクソ忙しい時にどうしちまったんだよ私の身体!?)

一方の陽参は、見苦しい命乞いなどを一切せず、寧ろ清々しい程堂々とした態度で自身の理屈を言い放った。

「ならば、貴様ら弱者の存在こそが罪よ。このわしの様な強大な力を持った王に、罪を問う事など誰にも―――」

黒居が右腕を陽参の胸に突き刺して背中を貫いた。

「ゴプ!」

「てめえの罪……その最たるものは、下界の目論見に目を背けた、雲の上ゆえの傲慢さなんだよ」

黒居が陽参を殺害する場面を目撃した事で、今までの勘違いの数々を恥じて赤面してしまう安達。

「我ながら、とんでもない迷探偵ぶりだぜ。結局、あの時に黒居を殺せばいいだけだったんだ」

だが、姫乃がそんな安達の後悔を否定した。

「いいえ。ここに黒居がいなかったとしても、遅かれ早かれ三門陽参は殺されていた」

姫乃の言葉の意味が解らずな安達。

「……え?」

祠堂が姫乃に質問した。

「どうしてそう思います?」

なんでお前が訊くんだよってツッコみたかったが、既に三門陽参の暗殺が完了してしまった為、ただの負け惜しみにしか聞こえないと思いやめた。

姫乃は、悔しそうに言った。

「今にして思えば、最初から怪しかったです」

「最初……から……?どこの事言ってんだよ?」

姫乃が思い出すのは、学校で渚と陽湖の口論であった。

「私が学校で三門陽湖と口論した時、谷さんは一度も助けてはくれませんでした。学校にいる『仲間』全員と戦えば無傷では済まないと判断したというのもあるかもしれませんが、既にその段階で……三門財閥に従う気を失っていた?」

姫乃の言ってる事に恐怖を感じる安達。

「それってつまり……」

安達が怯えながらVIPルームを視回した。

「この部屋全員が……グル……だって言うのか?」

三門陽参暗殺計画の規模の大きさに恐れ慄く安達。

 

2019年7月26日 日本某テレビ局

 

フリーアナウンサーで姫乃に仕える『兵士』である鹿島優美は、ある緊急臨時報道の原稿を渡されて動揺する。

(これは……罠……なの?楽園都市(ヒメノスピア)を滅ぼす為の……)

とは言え、フリーは信頼と実績が命な為、読まない訳にはいかなかった。

「番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします」

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』廊下

 

ある中年男性が大慌てでVIPルームに向かって行った。

「くそ!あの害虫共が!だが、あの者達がいつまでもこの『獣王』を乗っ取られ続ける事を黙っていると思っているのか!だとしたら―――」

だが、中年男性がVIPルームに到着した時には……もう全てが終わっていた。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム

 

中年男性にとっては仇敵と言える存在がいたので叫んでしまった。

「園藤姫乃おおぉーーーーー!?」

「この忙しい時に何を―――」

背後で叫ばれて不機嫌になった渚が、叫んだ中年男性の顔を見て仰天した。

「真鍋総理!?何でここにいる!?」

何も知らない真鍋は、白々しいと思ったのか、呆れながら見当違いな事を言い放った。

「何を言っている!貴様ら虫けら共が私を拉致誘拐を実行したのであろう!」

身に覚えの無い罪を問われて困惑する楽園都市(ヒメノスピア)勢。

一方の安達は、周囲を確認せずに見当違いな決めつけに取り憑かれている真鍋に呆れ果ててしまった。

「……おっさん……まだ何も解ってないみたいだな……」

だが、安達も『兵士』に見える真鍋の耳には届かなかった。

「解っておるわ……害虫風情の貴様らが、四大財閥をも取り込もうとしているという、身の丈に合わず手に余り過ぎる誇大妄想過ぎる間抜けな計画をしているのであろう」

自身の決めつけを一方的に押し付けて真実を視ない真鍋の姿を見て、右掌を顔に当てながら首を横に振る安達。

「だが、楽園都市(ヒメノスピア)はもう終わったのだ!我々の勝利だ!我々と四大財閥による(・・・・・・・・・・)計画は、既に最終段階を通り越して―――」

安達が真面目な顔で、とある計画(・・・・・)の結果を見る様に促した。

「じゃあ見て視ろよ」

姫乃達も察したのか、真鍋の視界から出た。

そして、三門陽参と角供雅が無様に殺されたという事実に漸く気が付く真鍋。

「み、三門陽参!?どうしてこんな!?」

慌てて三門陽参に駆け寄る真鍋。

「三門さん!?しっかり!?みつ……」

既に手遅れだった。

(そ、そんな。三門陽参が死んで……いや、この夥しい流血と背中にまで達した深い傷。どう見ても異常事態。自然死じゃない。もう1人倒れている血まみれの男は、まさか、角供会長?)

だが、それでも三門を裏切った者達の関与に全く気が付かない真鍋は、ここぞとばかりに畳み掛ける。

「ふふふ……ふふふ……園藤姫乃……とうとう日本に仇為す害虫としての本性を―――」

だが、白々しい事を言ったのは……祠堂だった。

「園藤お嬢様、三門会長は先程……急性的な心不全により亡くなられました」

真鍋にとっては予想外の展開であった。楽園都市(ヒメノスピア)の敵である筈の祠堂が、楽園都市(ヒメノスピア)が行った三門陽参殺害に関する言い訳を、楽園都市(ヒメノスピア)の首魁である姫乃に言い聞かせる様に言い放ったからだ。

「な、何をやってるんだね?祠堂君?」

真鍋のこの言葉は、安達にとっても予想外であった。祠堂が岩崎弥芯だと勘違いしていたからだ。

「は?じゃあ……どれが岩崎弥芯なんだ?」

安達の質問は無視され、祠堂が姫乃に向かって三門陽参殺害についての白々しい言い訳を続ける。

「警察と医療機関にはすでに連絡してありますので、亡骸にはあまりお手を触れぬよう。お悔やみ申し上げます」

真鍋が、汗だくになりながら真鍋にとっては予定外な事実を無視する。

「見損なったよ祠堂君……あの害虫共にどんな弱味を握られているか知らんが、あの計画の事を知っている者なら、この程度の事は楽々と撥ね退ける事が出来るだろう……」

そして、真鍋が姫乃に向かって殺意と悪意に満ちた視線を送った。

「いずれにせよ、楽園都市(ヒメノスピア)の責任問題は免れない!つまりお前はもうおしまいって事だ害虫共!」

だが、祠堂が更に畳みかける様に、真鍋にとっては予定外な事実を冷酷に言い放った。

「お言葉ですが、おしまいなのは真鍋()総理の方ですよ」

一方、姫乃達はあまりの気の毒さに言葉を失っていた。

 

2019年7月26日 楽園都市(ヒメノスピア)

 

楽園都市(ヒメノスピア)に居残っていた『兵士』達は、とんでもない緊急臨時ニュースに驚いていた。

「何でもいいから、とにかく当たって情報を集めてくれ!」

「何としてでも姫乃様に連絡しろ!」

「誰か鹿島を呼べ!」

「罠だとしたら規模はかなり大きい!必ず痕跡が残っているはずだ!」

「北條の経歴も洗い直せ!多分、私達に伝えている事は全部嘘だ!」

「大貫と村上は何をしている!?」

 

2019年6月19日  東京都千代田区霞が関二丁目1番1号。警視庁本部庁舎

 

警察もまた、とんでもない緊急臨時ニュースのせいで大混乱であった。

「なんて事だ……1年前の大敗を超える内閣不祥事になるぞ!」

「本当に合成麻薬MDMAがあそこにあったのか!?」

「君達の言葉次第で、日本そのものが消えてしまうのだぞ!解っているのかね!?」

だが、呼び出された麻薬取締官と交通捜査課役員は全く忖度せずに事実を報告した。

それを聞いた警察幹部は、まるでお通夜の様に真っ暗となった。

それに対し、何の隠蔽も無しに事実を軽々しく報告した取締官達に違和感を感じた大貫が食って掛かる。

「待て!」

「何でしょうか?すべき報告は全て報告したと思いますがね?」

「逆だ!」

取締官達が首を傾げた。

「逆?」

「喋り過ぎなんだよ!」

「仰る意味が解りかねますがね?」

大貫が取締官の胸倉を掴みながら壁に叩きつけた。

「今がどれだけ大事な時期か……解って言っているのか!?」

大貫に問い詰められた取締官達は、悪びれも無く正論を口にした。

「でしたら何です?警察組織の為なら、目の前の犯罪を見て見ぬ振りをしろと?可笑しな話ですねぇ?」

だが、大貫は一歩も引かない。

「日本がどうなっても良いのか!?今ここで我々警察が弱みを見せれば、日本は2度と『蜂』に立ち向かえなくなるんだぞ!」

取締官達は鼻で笑った。

「まるで……反政府デモに対して軍事力行使を行う恩知らずな独裁政権の様な事を仰いますな?」

「貴方が本当に警察官なのか疑ってしまう」

それでも、大貫は一歩も引かない。

「あと少しなんだぞ……あと少しで楽園都市(ヒメノスピア)は終わるんだぞ!という時に、この様な状況を公に堂々と公表する!それが、日本にとってどれだけ危険な事か解っているのか!?」

取締官達は鼻で笑った。

「全国の全テレビ局にお詫びしろと?先程の発表は全部嘘……だと?」

「それでは、政権が間違った方向に進んだ時に誰が止めてくれるのだ?警察が民衆にとっての防犯であらねばならないのに」

一歩も引かない大貫であったが、取締官達は、これ以上はただの堂々巡りだと感じて足早に去って行った。

「待て!まだ話は終わってない!」

このやり取りを観ていた村上が大貫に話し掛けた。

「どうやら……姫乃様は無事な様だな?」

「……それは……我々警察が『蜂』に屈した……って意味か?」

村上は、予想外に大貫の推理力の無さに呆れて溜息を吐いた。

「いいや、『蜂』が四大財閥に屈したんだよ。『兵士』としてはかなり悔しい事ではあるがな」

大貫は認めたくなかった。だが、認めざるをえなかった。

「……奴らは見捨てたのか……『蜂』と結託する為に、我々公安警察特務捜査課を見捨てたのか!?」

村上は、大貫にとってはキツイ事実を口にした。

「さっき楽園都市(ヒメノスピア)から連絡があってな、さっきのフェイクニュースの意図を調べてくれって言われてるんだが、どうやら、楽園都市(ヒメノスピア)にとってはそんなに慌てなくてもいいニュースだった様だな?」

大貫は愕然とした。

1年前の鷺宮女子高銃撃テロ事件で園藤姫乃に敗れ、空前絶後の警察不祥事となって公安警察特務捜査課を苦しめ、 公安部第6課と名前を改める事でどうにか解散を免れて再び『害虫駆除』を再開出来る所まで回復したのに、日本経済を支配する四大財閥の勝手な我が儘のせいで全てが水の泡となってしまったのだ。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』VIPルーム

 

祠堂の報告を聞き、姫乃と川辺は呆然とし、真鍋は愕然として崩れ落ち、渚は祠堂の胸倉を掴みながら『針』を露出させた。

「真鍋がシャブ中?真鍋が交通事故で焼死!?祠堂!お前、そんなふざけた嘘を本気で押し通せるとと思っているのか!?」

祠堂は平然と答えた。

「いいえ。これは全て事実です」

姫乃が無事に日本に帰れるか否かがかかっていると思っているのか、渚は怒気を強めた。

「ふざけるな!じゃあ何で焼死したシャブ中が、あたしらの目の前で平然としてるんだよ!?」

渚が認めたくない疑念を、安達が口にしてしまった。

「この船に乗ってる奴を皆殺しか?」

それを聞いた渚が更に焦る。

「ふざけるなあああぁーーーーー!」

見かねた岩崎が、姫乃達を安心させようと語り始めた。

「おいおい祠堂君、言葉が過ぎるぞ。『女王』陛下、どうかご安心ください。これは管理局の落度などではありません。言うなれば、犠牲を最小限に留めた理想的政変(イデアルクーデター)

今度は真鍋が焦り始める。

「くくくクーデターだとおぉーーーーー!?日本に仇為す害虫共の前でなんて事をしてくれたのかね君達は!?」

だが、岩崎の語りは止まらない。

「管理局、八菱財閥、石田財閥、そして三門財閥内部の『反会長派』が慎重に協議を重ねた結果、三門会長に死んで頂くのが一番良いと判断したまでの事。どうか、ご理解頂きたい」

それでも納得がいかない渚。

「それは、お前らが三門を裏切った事に関する理由だろ!?真鍋は関係無ぇだろ!」

岩崎は、真鍋に対する処刑宣告とも言える言葉を口にした。

「そこにいる真鍋()なら―――」

もはや、岩崎が真鍋の事を総理として扱っていない事を知って慌てふためく真鍋。

「く!?くくくくくくくくくくくくく『()』だとおおおおおぉーーーーー!?この私も切る気か岩崎!?」

安達は、どれが岩崎弥芯か漸く解ったが、正直言ってもう手遅れであった。

その間も、岩崎は真鍋に対して冷酷な事を平然と言い放っていた。

「この後、別の船でアメリカに直行し、とある港町で『女王(クィーン)』セレナ・セルバンテス配下の『兵士』達が回収して―――」

更に蒼褪める真鍋。

「ままままままままま待ってくれ!私がセレナ・セルバンテスと対面する理由とどの様な状況下でかをちゃんと説明してくれ!場合によっては、日米安保に致命的な悪影響を及ぼすぞ!」

祠堂が不機嫌そうに訊ねた。

「まさかと思いますが真鍋()総理……あのデメリットしかない計画が実行されれば、『蜂』は必ず駆除出来ると……ロナルド・トランポリンに説明してしまったのですか?」

真鍋にとっては信じられない単語ばかりであった。

「デメリット?我々の勝利が約束されたあの計画を……デメリットだとおおおおおぉーーーーー!?」

祠堂は平然と答えた。

「はい。財界を、世界を、人類を変える新たな進化を創めるためにも、デメリットしかないあの計画の中止は必要不可欠だったのです」

「日本の敵である害虫の駆除を中止する事に何の意味が―――」

祠堂が怒気を強めながらこう告げた。

「期待していたのですがねぇ。あなたなら世界を変えられると。だが、あなたは戦争とアメリカの軍事力とそれが生み出す損害に魅入られた。社会と人類全体よりも、自分に利益をもたらす者への忖度とアメリカの奴隷(ポチ)に成り下がるという小さな行為を優先した。大罪人である真鍋(きさま)が唯一出来る事は、セレナ・セルバンテスに『蜂』の天敵の本名を正しく伝え、多くの人々が獣化技術の恩恵を享受できる社会の構築の足しになる事だけです」

真鍋が涙目で殺意の籠った視線を送る。

「くっ!よくも私の目の前でいけしゃあしゃあと―――」

だが、黒居が強烈な壁ドンで真鍋を黙らせた。

「どうです?これまであなた方が我々日本国民にしてきた様に、盤上の駒の如く使い捨てにされた気分は?」

岩崎達は、黒居に脅されている真鍋を無視して次々と退室した。

「さて、これから忙しくなるぞ。事後処理は任せたよ祠堂君。我々は授賞式典に出席せねばな。ところで尊社長、どんなスピーチをなさるおつもりで?」

「いやいやいや!そんな準備は全く……早く妻に相談せねば!」

「いっそ代わってもらっては?ああ、『女王』陛下もどうです?授賞式典」

姫乃は、逆に尊社長がさっきまで座っていた席に座った。

「申し訳ありませんが……私は疲れましたので、欠席させて頂きます」

「まあ……ご自由に。これから貴女も忙しくなりますからな」

愉し気な笑い声を響かせながら退室する岩崎達であった。

姫乃達と安達と黒居と……八菱財閥に完全に見捨てられた真鍋を残して。

 

八菱財閥は、これで真鍋への懲罰が終わったと思っているが、黒居はそうは思っていなかった。

「そう言えば、そこの屑男をセレナに明け渡せと厳命されてはいるが、鷺宮女子高銃撃テロ事件被害者遺族の怒りを代弁するなとは……一言も言われてないんだよねぇー」

鷺宮女子高と言う言葉を聞き不安を募らせる真鍋。

「鷺宮女子高だと?君もあの害虫共の仲間なのか?」

黒居が不機嫌そうに言い放つ。

「違げえよ」

その時の黒居の顔は、冷めた目でしょっぱい顔をしていた。

しかし、真鍋は黒居の否定を否定した。

「嘘だ!では何故あの害虫共の味方をする!?」

黒居は、真鍋の否定を否定した。

「害虫うぅー?人間という雑獣(ザコ)の分際で、なに偉そうな事言ってんの?」

「雑魚!?日本国内閣総理大臣である真鍋進造が雑魚だと言うのか!?」

黒居が偉そうな事を言う。

「人間は、脆弱な動物である。牙は無く、爪は丸く、体毛は薄く、皮膚は弱く、感覚器官は鈍い。有るのは……唯、他者を喰らい嬲り尽くしたいという欲望のみ。それの何処が雑獣(ザコ)より強いって?」

真鍋は否定したかったが、肝心要であった権力は、既に八菱財閥に奪い尽くされた後なので、もう何も言えなかった。

渚が弱々しく訊ねた。

「……だ、誰だ?お前?」

黒居が偉そうに答えた。

(デビル)獣闘士(ブルート)牙魔猫(タスマニアデビル)』。名前くらい覚えとけよな。バーカ」

 

タスマニアデビルとは、

タスマニア島に生息する世界最大の肉食有袋類である。

その性質は極めて獰猛であり、生まれた瞬間から死ぬまで闘い続けるとも言われ、同種他種間を問わず、戦闘の際には、

「背筋の凍る様な」

「地の果てまで響く」

と形容される程の特徴的な唸り声を上げて相手を威嚇し、動きを封じる事で知られる。

そしてそれが、

この獣が「悪魔」の名で呼ばれる事の最大の所以である。

 

黒居が真鍋に向かってとんでもない事を言い出した。

「いいからケツ穴を魅せろや」

「何で!?」

渚は、黒居の手の組方からこの後の展開が読めた。

「お前……まさか浣腸?」

嫌がる真鍋を追いかけ回して蹴り上げ、無理矢理ズボンを脱がす黒居。

「いいからケツ穴を魅せろや!」

「な!?何をする気だ貴様!?」

やっぱり、黒居がやろうとしている事は、真鍋への浣腸だった。

「今から貴様に秘孔を突く。そうすれば、アンタも雑獣(ザコ)に合った口の利き方を少しは身に付くだろう……」

「何を訳解らない事を言っているかね貴様はあぁーーーーー!」

「いい加減往生際を良くしろよ?アンタはもう……終わってんだよ」

だが、真鍋がとんでもない事を口にした。

「こうなったら……貴様等も道連れた八菱いいぃーーーーー!せっかく時坂涼子(・・・・)の遺体を有効活用してやったというのに恩知らずめえぇーーーーー!」

姫乃達にとっては衝撃的過ぎる台詞だった。

「……え?」

「玄野二穂!そいつが我々が楽園都市(ヒメノスピア)を滅ぼす為に送り込んだ刺客だ!」

聞き慣れない名前の連続に、川辺は混乱して困惑した。

「盛り上がってる所悪いけど、くろのにほって……誰?」

そして……真鍋は、姫乃の仇敵の名を口にしてしまった。

「黒田二郎と言った方が解り易いだろう!?黒田君の脳を時坂涼子とか言う害虫の身体に移植したのだ!害虫共を陥れるためにな!」

黒居が呆れ果てた。

「あー……お前さあ、あれだけ言われてあの手術が実行されたとまだ思ってたの?嘘だと思うなら黒田の今の入院先……あっ、真鍋はもう日本の土を踏めないんだったわ」

「黙れ裏切り者!貴様ら八菱もクソ虫けら共に―――」

 

ブスッ!

 

「あう!」

真鍋の肛門が吸い込み飲み込んだのは黒居の両人差し指―――ではなく、姫乃の『女王』の『針』であった。

「消えろ。穢らわしい」

それを観ていた者達は全く同じ考えが浮かんでいた。

 

今の姫乃の表情をどう形容したらいいんだ?

 

その間も真鍋の肛門が姫乃の『女王』の『針』を飲み込み続ける。

「ぐお!があ!があああぁああーーーーー!」

「お前に……楽園都市(ヒメノスピア)に入国する資格は無い!アメリカだろうと地獄だろうと好きな場所に逝くが良い!ただし、二度と私達の前に姿を現すな!」

真鍋の肛門が姫乃の『女王』の『針』を吐き出した頃には、真鍋は白目を剥き舌と涎を垂らし無様に尻穴と出来立て切れ痔を晒しながら失神していた。

 

2019年7月26日 フィリピン海豪華クルーズ船『獣王』メインダイニング

 

VIPルームで日本の運命を左右する暗闘が行われていた事などつゆ知らぬ観客達は、目の前で繰り広げられている閉会式に一喜一憂していた。

「個人優勝は獣闘士(ブルート)(ラビ)!チーム優勝は石田財閥!以上の結果をもちまして、牙闘獣獄刹(キリングバイツデストロイヤル)を閉幕とさせて頂きます」

 




pixivに連載中の私の作品であるヒメノスピア×キリングバイツ(https://www.pixiv.net/novel/series/1143454)を、こちらでも掲載させて頂きます。

内容としましては、ヒメノスピア第11話(https://www.heros-web.com/comics/9784864685900/)以降の園藤姫乃がキリングバイツ第30話(https://www.heros-web.com/comics/9784864684729/)までの野本裕也の役割を担うが、無料では引き受けないぞ!的な内容です。
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