鬼滅の刃VRONLINE~嵐翅異夢~   作:エイ

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プロローグ

 30歳の誕生日。興奮に打ち震えて、ゲーム機を起動した。

 とあるVRゲームのR30版解禁である。これを震えずして何に震えるというのだろう。

 かなり前の作品だが、アニメ化でブレイク。静まった頃に映画で再ブレイク。作品が完結する直前にゲーム化で再々ブレイク。

 そして、原作が完結して、アニメ120期オリジナルすら終わろうというころに、VRゲーム化して再々々ブレイクした神作品『鬼滅の刃』

 その最後のブレイクの引き金となった『鬼滅の刃VRONLINE~嵐翅異夢~』R30版である。

 残酷表現が多いからしょうがないね。

 R18版からR25版、そして、今とうとうR30版へのアップデートが終わる。今日が誕生日だからと予約アップデートをしていた己の周到さには拍手しか出てこない。自画自賛。

 

 このゲームのジャンルはシミュレーション。

 だが今どきのVRゲームあるあるで、ジャンルなんかあって無きがもの。やろうと思えば謎解きもアクション・アドベンチャーもガンシューティングだってできる。

 ゲーム統御専用人工知能の発達により自由度が恐ろしく広がったからである。一節によれば、どこぞの国家権力が軍用人工知能に転用を考えているという噂まである。噂だが。

 

 世界観を簡単に説明すると、鬼と人が対立している世界でなんとか生き延びてクリアを目指せ! みたいな感じ。

 クリア条件は、ラスボスである鬼舞辻無惨の死である。

 ちなみに、強くてニューゲームが可能です。周回は正義です。

 

 R18版は、戦闘は新聞チャンバラ(比喩)だったし、グロ表現もカット。痛みもカットというお子様仕様である。今日生きていた隣の仲間が明日死ぬという、精神的な地獄だけが鬼滅世界の感触であったと言えよう。

 それゆえに自由度も比較的低かった。それでも十分楽しいんだけどね。

 原作世界の中に自分が入れるってだけで神ゲーじゃないか? 

 まあクリアは難しいけど。

 鬼舞辻無惨が1回死ぬまでに30回くらい死んだけど。

 

 R25版はカットされていた感覚が部分的に開放される。

 設定で、全面カットもできるけど、大体の人は苦痛制限は限界まで開放している。このゲームは原作厨が多いからな。狂人も多いんだよな。ワニの呼吸の使い手は自分にも容赦ないという称賛。

 感覚開放度合いでリアル感が違うし、そもそもVRに慣れた人にとっては限界まで開放してもヌルい部類だろう。

 鬼化ルートもこの版から開放される。ただし、鬼化したまま死ぬと周回不可なので注意。鬼舞辻無惨と一緒に死ぬという仕様もあって、繰り返すけど周回不可。まごうことなきバッドエンド。

 周回100回すると、輪廻の絆というアイテムが手に入り、次のキャラメイクからは時代が選べるようになる。1アイテムごとに100年遡れるようになるんだが、最大値が500年。

 継国兄弟と会いたかったら最低でも400回は周回しないといけない。たった400回で継国兄弟と出会えるんだから、ありがたいな! 

 

 そして、R30版。

 感覚の全面解放。自分が死ぬ苦痛を、死にきるまではしっかり味わえるという世界だ。R18版や25版では『死』の判定が降りた瞬間にバッドエンド表示が出るんだが、R30版は設定次第で『死』の判定が出ても、しっかり死に切るまで苦しむことができる。

 内臓を啜られる感覚、手足の燃え上がる苦痛、避け得ない死への恐怖、これらを楽しむための感覚解放である。狂人向けかな? 

 大抵の人はR25版と大差ない設定にしているが、全面解禁した上で、上弦の鬼や無惨様に殺される苦痛を楽しむ上級狂人がそこそこ居る。相打ち狙いの殺すのも楽しい殺されるのも楽しいという変態もそこそこ生まれる。

 狂人変態曰く「この苦痛を味わってこそ、鬼を殲滅し、無惨様を殺す楽しみが最大となる。これこそ愛」らしいけれど、常人から言わせれば性癖が過ぎるというものである。

 こちらでは、最大で千年遡れる。輪廻の絆アイテムが100回周回するごとにいくらでももらえるからだ。人間時代の無惨様を見たければ、最低1000回周回しましょうということだな。愛が試される武者震い。

 

 このゲームは神ゲーランキング殿堂入りだが、クソゲーランキングにも割と名前が見られる。

 難易度の問題もあるが、R18版からR25版へのアップデート時、あるいはR25版からR30版へのアップデート時にデータが引き継げないのである。確かにここは頂けない。

 ただ、運営側の言葉も分かる。

 こんなヌルい世界で稼いだ経験値が、上位世界での経験値に換算できると思うなと言われたらそりゃそうだと思う。でもなぁ、輪廻の絆アイテムくらいは引き継がせて欲しい。

 狂人でないと1000回の周回はきつい。まあ、やるんですけどね。

 そうでないと、無惨様成り代わりルートの条件満たせないからね。あーしんどい。

 

 アップデートの終わったゲーム機を装着。

 まずは環境設定から。

 苦痛を含み、感覚は全面解放にする。いや、一度くらいはね。試してみようと思ってね。自分が死ぬ感覚を実装しているゲームって、この時代でもかなり少ないしね。まあ無理だったらR25版と同じくらいに変更するつもりだけど。

 

 キャラクターメイキングへ移行する。

 無味乾燥な設定画面だった環境設定と違い、キャラメイクは産屋敷家に似た屋敷へ降り立つ感覚だ。

 ランダムで概ね産屋敷家の人間が出てきて対応してくれる。たまに鬼舞辻無惨とか出てくる。

 今回はあまね様だった。

 

「あなたが新しい剣士ですね。名前を教えて下さい」

「好きに決めてください」

「分かりました」

 

 どんな名前でも支障はない。特定の名前だと反応が変わるとかはあるんだけど、そういうのはR18版およびR25版で楽しみ尽くした。よって、最近はもう名付けてもらっている。

 自分の名前を入れると、呼ばれるたびに、なんか居たたまれない気持ちになる勢です。どうかわかってほしい。

 

「年齢はいくつですか?」

「10歳です」

 

 これも、「好きに決めてください」ということはできる。でもな、それをやると0歳児から始まることが比較的多い。0歳児スタートが一番強くなれる可能性も高いが、正直ものすごく育成が面倒。かつ成人までに死ぬ危険性も高い。原作前に死ぬのはもう、もう、もう勘弁してくだせぇ。幼児のパラメーターでは逃げられん……! 

 ちなみに初回プレイは否応なく炭治郎と同い年なので、16歳以上の年齢で設定できない。

 まあ、初回プレイは原作ノータッチ予定なんですけどね。理由は10歳に設定する理由と一緒に後述する。

 

「あなたの見た目を教えてください」

「黒髪黒目、身長は5尺2寸。体重は98斤程度」

「では、このようなお姿ですか?」

「体重を変えず、もうちょっと細身に」

 

 あまね様の隣に出てきたシルエットが、こちらの注文に合わせて、少し細めになった。

 基本的にリアルの自分と同じようなシルエットになるよう調整するのが、最も動きやすいとは思う。ましてや感覚全解放だからな。

 いくらでも詳細にしようと思えばできるんだが、こんなふうに適当に言っても、それなりに補正してくれる。160cm、58kgくらいという注文したわけだが、言ってない部分は適当に平均値で出してくれるのだ。尺貫法で表現するのはキメツラーとしての嗜みです。

 ちょっとした裏技だが、少しだけ体重を多めに言って、それから姿を細めにすると、筋肉量とか骨の密度とかに反映されるらしく丈夫になる、らしい。実感できる程度の差ってないけどね。どんなに太い骨でも折れる時は折れるからね。つらい。

 でも多分少し楽になる、はずと信じたい。

 

「誕生日を教えてください」

「好きに決めてください」

「分かりました」

 

 お誕生日イベントだってあるよ。一応。

 幸せの壊れる血の匂いが最もしやすいとファンの間では有名だ。

 特定の月日で、特定のキャラの反応が変わるってのはあるけど、そういうのは名前や容姿と同じくR18とR25で楽しみ尽くした。

 

「それでは、このようなお姿なのですね」

「はい、そうです」

 

 あまね様の確認の言葉に諾を返せば、あまね様は退出していった。

 目の前にはあまね様の残した黒いシルエット。

 細かい特徴づけと、ポイントの振り分けをこれからするのだ。この手のVRゲームあるあるだが、最初のキャラメイクが長い。慣れたけど長い。

 0歳児スタートにしておけば、この細かいポイントの振り分けってしなくてもいいんだけどね。

 10歳児スタートだから、10歳になるまでの間に得ただろうというデフォでもらえる経験値をポイント換算して振り分ける手間がいる。

 身体数値だけじゃなくて、装備品にポイントを振り分ける事もできるけど、今回は必要ない。初回プレイだから。

 

 この『鬼滅の刃ONLINE~嵐翅異夢~』において、初回プレイは原作ノータッチ農民または町民プレイが推奨されているのだ! 

 理由は原作を読んで察して欲しい。

 鬼殺隊やら鬼やらに、一般人が関わった場合の生存率を計算して欲しい。

 一言で言って、

 

 無理ゲー

 

 でしかない。

 不可能ではないが、炭治郎でもないかぎり心が折れるので、初回は次回のための踏み台とするのが常套手段だ。だって長男じゃないもんは合言葉。

 白目にならざるを得ないことに、あっちから襲ってくることも……よく、ある。ウッ、頭痛が……。

 

 思い出し涙をこらえながら、細かいポイント振り分け、つまりキャラ付けを行っていく。

 この手のVRゲームは自由度が高い分、リアルの自分とかけ離れた設定にすると、ものすごくやりにくい。

 たとえばリアルでは泳げないのに、こっちで泳げる設定にしてしまったとする。で、ゲーム内で泳ぐ際に恐怖心とかで泳げなかったりすると、せっかく水泳という技能に振ったポイントがマイナスされて、泳げないというステータスに修正される。自動でな。

 ポイントの無駄遣いだし、これをまた泳げると再修正するのは経験値が多分3倍くらい必要だ。そういうわけで、リアル自分と近づけたほうがいい。ネカマも不可能ではないが、男勝りとかの設定を付けておいたほうがマイナス補正が入りにくくなるだろう。そもそも選ぶだけでもポイント大量消費するけど。

 

 初回プレイの今回は、農民または町民をしつつ、可能な限り身体を鍛え、武術を身に着け、周回プレイのお供アイテムを集めつつ、鬼というか原作イベから逃げ回るプレイになる。

 脚力は必須です。

 感覚値も鋭いに越したことはないので、可能な限り上げる。

 体力も必須です。

 ああ経験値が足りない……プレイしながら上げるしかない。

10歳に設定するのはこれが理由だ。デフォの経験値だけでは必要技能が取れない。ある程度、経験値を貯めるためのプレイ時間が必要なのである。徳を貯めるにしても時間は必須だしな。

運命値を左右する徳と業、これを原作イベ無しで上下させるのはけっこう手間がかかる。

 

 

 

 ちなみに初回プレイ時のみ選択できる『ネクスト鬼滅ヒント』をONにすれば、原作に関わる人物や物はこれこれ! という感じの矢印がつくため、避けていけばほとんどイベントはスルーできる。とは言え、もう暗記してるんでOFFにしとくけど。

 

 出身地は僻地にしておこう。でも、遠すぎても助けにきてもらえないんだよなぁ。選択肢が農民とか木こりとかになってしまうので、知識レベルを上げにくいのもちょっといたい。いや、安全には変えられない。

 山ん中にしよ。

 ここでうっかり炭治郎のご近所とかにならないように注意だ。知り合いだとイベントフラグが立ちやすいからな。

 可能限り効率良いプレイができるように、細かく設定していく。効率重視しすぎるのも面白くないが、効率を無視して後悔するのも嫌なもんだからな。

 ランダム設定でキャラを作るのは、周回を最低限5回はしてからにしたい。さもないとすぐ死ぬ。

 

 黒髪黒目の10歳児。

 デフォルト顔にちょっと細工して愛嬌のある顔にしておく。傷をつけて迫力をという手もあるが、それは次回だな。

 技能もステータスもバランス良く配分して、耳と勘の鋭く臆病で逃げ足の早いキャラクターにした。

 戦闘技能は来世で上げます……余裕があれば、今世でも経験値取得できるようにするけど。

 

 さぁ、諸々の設定は終えた。

 さて、世界へと、降り立とう。

 鬼滅世界で農民プレイのために! 

 

 

 

 




こういうゲームがあればやりたいなという願望です。

タイトル誤字指摘ありがとうございます。修正しました。
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