不思議の墳墓のネム   作:まがお

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前回のあらすじ

「我が家へようこそ」
「聞いてたのと全然違う!?」
「モモンガ様の妻よ」
「モモンガ様の妃でありんす」
「お姉ちゃんじゃ無理だね」


今回は幻の薬草採取の話です。


課金の竜王

 家の前に置かれた石臼をゴリゴリと鳴らしながら、ネムは籠から取り出した薬草を少しずつ投入していく。

 持ち手を両手でしっかりと握り、力を加減しながら石臼を一定の速度で回し続ける。

 

 

「うんしょ、よいしょ」

 

 

 薬草は種類によって保存方法が変わり、乾燥させる物もあれば、ペースト状にして保存する物もある。

 こうしてすり潰した薬草を壺に入れて街で買い取ってもらうのだが、これが中々の収入になるのだ。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 手のひらは指先まで薬草の色に染まっており、ネムはかろうじて綺麗だと思われる手の甲で額の汗を拭った。屋外で作業を続けていた自分の服は汗でびっしょりだ。

 しかし、石臼を中心に広がる薬草の強い臭いで、汗臭さなどは微塵も気にならない。

 

 

「うん、出来た」

 

 

 潰した薬草をヘラでかき集め、壺の中がいっぱいになるまで入れる。それを何度か繰り返して作業を終えると、ネムは満足げに頷いた。

 この仕事にも随分と慣れてきたのだろう。今回も素早く均一に、無駄なく薬草をすり潰すことが出来た。

 

 

(薬草はもうないし、明日からは別の作業かな……)

 

 

 作業中の臭いはキツく、意外と重労働なのだが、最近のネムはこの仕事が嫌いではない。

 普段はあまり力になれない自分が、自信を持って家族の役に立てていると実感出来る仕事だからだ。

 ネムが使った道具の後片付けをしていると、こちらに向かって何者かが近づいてきた。

 

 

「――こんにちは。貴女がネム・エモットさんよね?」

 

「はい、そうですけど……」

 

 

 初めて会った相手が、何故か自分の事を知っている。

 その事実に僅かに身構えながら、ネムは相手の反応をうかがった。

 

 

「私は『蒼の薔薇』のリーダー、ラキュースよ。お仕事中に悪いんだけど、少しお話を聞かせてもらえないかしら」

 

 

 金色に輝く長髪を巻き髪にした、美人で凛々しい女性だ。全体的に活発な印象を受けるが、どこか品のある優しい笑みを浮かべている。

 そして、その首にあるのは見慣れない色のプレート――冒険者をやっているのが不思議なくらい綺麗な人だ。

 

 

「私達は万病に効く薬草を探しているの。昔トブの大森林の奥地で発見された物よ。聞いたことはあるかしら?」

 

「全然聞いた事ないです」

 

 

 初耳だ。そんな凄い薬草があるなら自分も欲しい。

 とっても高く売れそうだし、もし家族が病気になったら使いたい。

 

 

「そう…… じゃあ、貴女の使役する魔獣は『森の賢王』だと聞いたのだけれど、それは本当?」

 

「……確かにハムスケは森の賢王だったけど、使役なんかしてないです。ハムスケは私の友達で、一緒に冒険してる相棒です」

 

 

 ネムはきっぱりと言い切ったつもりだが、少しだけ声に不満が滲んでしまったかもしれない。

 これは時々聞かれる質問ではあるけど、自分としては非常に困るのだ。

 ハムスケと冒険をする都合上、使役魔獣としての登録は確かにしている。周りからすれば自分がハムスケを従えている様に見えるのだろう。

 だけど、ハムスケは自分にとって友達なのだ。主従関係がある様に思われるのは嫌なのだ。

 

 

「勘違いしてごめんなさい。ハムスケさんは貴女にとって大切なお友達なのね」

 

「うん!!」

 

 

 ラキュースは少し驚いたような顔をしたが、すぐに温かい笑みを見せた。

 自分が伝えたかった事を、彼女はすぐに理解してくれたのだろう。ラキュースは気分を害するどころか、何故か嬉しそうな雰囲気まで出している。

 きっとこの人は良い人だ。そう感じたネムは、少しだけ残っていた警戒心を解いた。

 

 

「ハムスケなら薬草の事を知ってるかもしれないです。会って聞いてみますか?」

 

「ええ、紹介してもらえるかしら。出来れば、ネムさんに通訳もお願いしたいのだけど……」

 

「ハムスケは普通に喋れますよ?」

 

「そうなの? 噂で人語を理解するとは聞いていたけど、流石森の賢王ね…… とにかく助かるわ。薬草の大まかな生息場所は知っているけれど、古い情報だし、ちょうど森林内の事も聞きたかったの」

 

「縄張り内の事なら、きっとハムスケは知ってると思います。今から会いに行きますか?」

 

 

 本当はモモンガの方が色々と詳しそうだと思ったけど、流石にそれを伝えるのはやめておいた。

 冒険者モモンではなく、魔法を使うモモンガの事はあまり広めない方がいいだろう。

 

 

「ありがとう、でも少しだけ待っててもらえるかしら。一緒に依頼を受けた仲間達を連れてくるわね」

 

 

 いや、そもそもモモンガなら「それなら持ってる」くらいの事は言いそうな気もする。

 もしかしたら、もっと凄い薬草も持っているかも。

 

 

(情報は大切だって、モモンガも言ってたもんね)

 

 

 うん。やっぱりモモンガの事は秘密にしておこう。下手に話せば余計なトラブルが寄ってきそうだ。

 どちらにしろモモンガは今いないし、モモンガにばかり頼るのも良くないよね。

 

 

「――彼女達が一緒にチームを組んでいる私の仲間よ。戦士ガガーラン、盗賊のティアとティナ、それに魔法詠唱者(マジックキャスター)のイビルアイよ」

 

「おう、よろしくな」

 

「惜しい。性別が反対なら完璧だった」

 

「愛嬌があって良い。数年後が楽しみ」

 

 

 数分と経たず戻って来たラキュースは、自身の冒険者仲間を紹介してくれた。

 豪快に歯を見せて笑っている、大きなハンマーを担いだ筋肉質で大柄な女性。

 言ってる事はよく分からないけど、顔と服装がそっくりな双子の女性。

 無言で腕を組んでいるのは、仮面を着けた赤いローブのちっちゃい人。

 ラキュースのチームは女性だけで構成されていて、みんなとっても個性的だ。

 

 

「それから、こちらは今回の仕事に協力してくれるミスリルのチーム。『クラルグラ』と『虹』の皆さんよ」

 

「ちっ。……銅級(カッパー)なんかの情報が本当に役に立つのかよ」

 

「おい。失礼な言い方はよせ、イグヴァルジ」

 

「銅級なのは事実だろうが」

 

「……はぁ、すまないね。難しい依頼の前だから、彼も気が立っているようだ。私はエ・ランテルで冒険者をやっている『虹』のモックナックだ。よろしく頼む」

 

 

 そして、その他いっぱいのおじさん達。

 多くて名前は覚えきれない。

 でも、イグヴァルジという人だけは覚えた。

 さっきから妙に睨まれている気がして、ちょっと怖い。

 

 

「えっと、じゃあ案内しますね」

 

「ハムスケさんが住んでいるのは森の中なのよね? もちろんモンスターが出たら私達が対処するけど、ネムさんは何か準備しなくていいの?」

 

「すぐそこだから大丈夫です。ハムスケがいるおかげで、モンスターとかも出ないよ」

 

 

 ラキュースが戻ってくるまでに後片付けは終わらせて、家族にも事情を話しておいたので自分はすぐにでも案内できる。挨拶もそこそこに村を出発し、蒼の薔薇の人達と軽く雑談しながら森に向かった。

 話をしていて分かったが、彼女達はアダマンタイト級の冒険者――王国で二組しかいない最上位のチームの一つだった。凄い。

 

 

「――ここからは森に入るわ。皆、気を引き締めていくわよ」

 

 

 最初は皆のんびりとした雰囲気だった。

 しかし、森に足を踏み入れた直後から、彼女達の放つ気配がガラッと変わる。周囲をかなり警戒しているようだ。

 

 

「着きましたよ」

 

「……えっ、この巣穴がそうなの?」

 

 

 しかし、その警戒も徒労に終わる。

 隊列を組むようにゾロゾロと進み、森に入ってから僅か五分ほど。私達はハムスケの今の住処に辿り着いた。

 短い時間だったが、ここに来るまでに魔物どころか大型の動物すら見ていない。

 あまりの近さに拍子抜けだったのか、ラキュースはポカンとした表情になった。

 

 

「ハムスケー、今いるー?」

 

 

 ハムスケの巣穴の周りは、穴を掘って余った土がこんもりと積もっている。サイズが大き過ぎる事を除けば、普通の動物の巣穴とあまり違いはない。

 私が穴に向かって声を出すと、程なくして地面を擦る音が聞こえてきた。

 

 

「――おおっ、ネム殿ではござらんか。こんなに沢山人を連れて来て、どうしたでござる?」

 

「このお姉さんが、ハムスケに聞きたい事があるんだって」

 

 

 そして、中から巨大な魔獣がひょっこりと顔を出した。

 周りからは「なんと強そうな魔獣だ」「あれがかの伝説の魔獣、森の賢王か……」「深い知性を感じる目をしているな」など、驚きの声が上がっている。

 それが聞こえているハムスケも、どことなく自慢げに見えた。

 

 

「初めまして。私は蒼の薔薇のリーダーを務めるラキュースと申します」

 

「某はハムスケでござる。それで、何を聞きたいのでござるか?」

 

「私達は依頼でとある薬草を探しに来ました。貴方の賢王と謳われる知恵を、私達にお貸し頂けないでしょうか。現在の森の情報と、万病に効くと言われる薬草について教えて欲しいのです」

 

 

 代表でラキュースがハムスケに質問しているけど、本当に丁寧で礼儀正しい人だ。

 もし目指すなら、私も将来はこんな感じの立派な女性になりたい。

 

 

「その薬草に心当たりはないでござるが…… 今、森の奥に行くのは危険でござるよ」

 

 

 ハムスケは苦い思い出でもあるのか、頭をかきながら困り顔になった。

 

 

「森で何かあったのでしょうか?」

 

「何かどころか、とんでもない事があったでござるよ。某は元々森のもっと奥にある洞窟に住んでいたでござる。……しかし、最近になってドラゴンが森に現れたのでござるよ」

 

「ドラゴンですって!?」

 

「遠目から見ただけでござるが、とてつもなく強そうでござった…… 某では絶対に勝ち目がないので、一旦元の縄張りは捨ててきたでござる」

 

 

 ハムスケの引っ越しの真相が判明した。

 そういえば「縄張り争いになったらヤバイでござる」って、前に言ってたかもしれない。

 

 

「ここならネム殿にもすぐ会えるから、そう悪い事ばかりでもないでござるよ。一緒に冒険に行く時も、村に近い方が楽でござる」

 

「もしそれが本当なら、森林内はかなり荒れてる可能性があるわね…… 魔物の行動範囲の変化や、森から逃げ出す個体も増えるでしょうし……」

 

 

 ハムスケの所に自力で行けるようになった嬉しさで、引っ越した理由を詳しく聞くのをすっかり忘れてた。

 でも、これは思ったより重大な事件かもしれない。

 もし今のカルネ村がモンスターに襲われたら、またあの時の様な悲劇が起こってしまう。

 

 

「被害が出たという情報は知らないけど、近くの村は大丈夫かしら?」

 

「カルネ村は多分大丈夫でござるよ? 偶にこっちに来たモンスターは、某が全部叩きのめして糧にしてるでござる」

 

「さ、流石ね……」

 

 

 ハムスケがいつの間にか、村の救世主になってくれていたようだ。

 一応村を囲む柵は作っている途中だが、完成にはまだまだ時間が必要だし、そもそもモンスターの襲撃に耐えられる程の物ではない。

 きっとしばらくの間はハムスケに頼る事になるだろう。

 

 

「ネム殿もそんなに不安そうな顔はしなくていいでござる。某の住んでいる場所にはモンスターも滅多に近づいて来ないし、仮に来てもここは通さないでござるよ」

 

「ありがとう、ハムスケ。よく考えたら、昔からハムスケは村の事を守ってくれてたんだね」

 

「そんなつもりは全然なかったでござるが…… まぁ、結果的にそうなっていただけなので、気にしなくていいでござる」

 

 

 当の本人は呑気にあくびをしているけど、話を聞いたラキュースは真剣に考え込んでいるようだ。

 他の冒険者も眉間にシワを作りながら、お互いに顔を見合わせている。

 

 

「そのドラゴンについてですが、森にいるという事はフォレスト・ドラゴンだったのですか?」

 

「種類までは知らないでござる。森に元からいたのか、それとも飛んで来たのか、ずっと森に住むつもりなのかも不明でござる」

 

「確かに、別の場所から来た個体の可能性もあるわね。そうなると、あえて種類を断定するのは危険ね……」

 

「あんな化け物と戦えるのは、きっとモモン殿くらいでござろうなぁ。いや、モモン殿でも剣じゃ勝つのは厳しいと思うでござる。お主達も死にたくなかったら、諦めて帰った方が賢明でござるよ」

 

「けっ、何が森の賢王だ。銅級如きが戦えるドラゴンがどこにいるってんだよ。ビビってデカい蜥蜴と見間違えたんじゃねぇのか?」

 

 

 ハムスケが何気なく言った言葉に反応して、イグヴァルジが噛み付いて来た。

 やっぱりこの人は好きになれそうにない。

 

 

「某、本当に見たでござる。黄金色の大きなドラゴンだったでござるよ」

 

「そうかよ。仮に本当にドラゴンだったとしても、最下級の戦士が戦える雑魚なら俺達が勝てないはずねぇな」

 

「聞く耳持たずでござるか…… まぁこれ以上は止めないでござるよ」

 

 

 ハムスケは親切のつもりだったと思うけど、上位の冒険者としてのプライドを刺激してしまったらしい。

 ハムスケも冒険者達にそこまで興味はなさそうで、それ以上は何も言わなかった。

 

 

「どうする、鬼ボス?」

 

「……どちらにせよ薬草を採取する必要はあるし、確認の意味でも行くしかないわ」

 

「それしかないだろうな。そのモモンとやらがどれ程の戦士かは知らんが、一口にドラゴンと言ってもピンキリだ」

 

「遭遇しないのが一番だけど、イビルアイの見立てでは勝算もあるのね?」

 

「この魔獣より強くても、竜王クラスという事はないだろう。若い個体ならば仮に遭遇したとしても、私達で十分対処出来るはずだ。古竜(エインシャント)あたりが相手だと厳しいが、最低でも逃げ出せる隙さえ作れれば問題ない」

 

「なら決まりね」

 

 

 少しだけ仲間達と相談した後、ラキュースは決断を下した。

 道中ほとんど喋らなかったイビルアイも口を開いたけど、妙に自信満々だ。

 もしかしたら過去にドラゴンと戦った事があるのかもしれない。

 それとも、モモンガみたいに凄い魔法が使えるのだろうか。

 

 

「イビルアイさんは凄い魔法使いなんですか?」

 

「ふん、わざわざ手の内を晒す気はない」

 

「うちのちびさんは凄えぞ。こんなナリだが、間違いなく王国で一番の魔法詠唱者だ」

 

「おい、ガガーラン、余計なことを…… はぁ、まぁいい。この程度の情報なら構わないか。――私は第五位階の魔法が使える」

 

 

 ――モモンガの半分しかないじゃん。

 イビルアイはぶっきらぼうだけど、隠し切れていない自信とともに言い放った。

 でもそれってモモンガの使っていた、椅子を作る魔法の位階より低かった気がする。

 

 

「す、すごーい?」

 

「あまりピンときていないようだな……」

 

「あっはっは!! ドヤ顔したのに残念だったな。イビルアイもそんくらいで拗ねるなよ」

 

「拗ねてなどいない!! 仮にも冒険者を名乗る者が、魔法の知識を全く持っていない事に嘆いただけだ!!」

 

「そりゃ仕方ねぇさ。この子は冒険者になりたてなんだし、そもそも王国で魔法に詳しいやつは一握りだろうよ」

 

 

 ガガーランが笑ってイビルアイをフォローしているけど、なんとも反応しづらい。

 確かに私は魔法に詳しくないけど、あんまり凄そうには思えなかった。

 本当に大丈夫かな。

 

 

「やっぱり行っちゃうんですか?」

 

「ええ、私達はトップであるアダマンタイト級の冒険者よ。それに彼らも凄腕のミスリル級冒険者。多少の危険で逃げる訳にはいかないわ」

 

 

 一度決断を下してから、ラキュースの表情には一切の迷いが感じられなかった。

 最高位冒険者と呼ばれるに相応しい、カッコいい姿だとは思う。

 

 

「無事に依頼が終わったら、この情報のお礼をさせてもらうから期待していてね」

 

「おう、俺らの無事を祈っててくれや。土産はドラゴンの鱗かもな」

 

 

 最後に少しお茶目な笑顔を見せた後、彼女達は薬草の生息地を目指して出発していった。

 

 

「――ねぇハムスケ。あの人達、無事に戻ってこれるかな?」

 

 

 蒼の薔薇と二つのミスリルのチームが森の奥へと姿を消した後、気になってハムスケに尋ねてみた。

 彼女達は良い人だったけど、私には人の強さなんて分からないし、どうしても不安はある。

 

 

「うーん、それなりに強そうな者達ではござったが…… もし某が見つけたドラゴンと戦えば、正直ひとたまりもないでござろうなぁ」

 

「そっか……」

 

「弱肉強食は自然の掟でござる。挑む相手を間違えれば、死ぬのは必然でござるよ。時には格上に挑まねばならぬ時もござろうが……」

 

 

 ハムスケは誤魔化さずに、自身が感じた事実を答えてくれた。

 厳しい大自然を長年生き抜いてきた――モモンガに会った瞬間に降伏した――大魔獣らしい意見だ。

 

 

「昔は某に挑んできた者もそれなりにいたでござるが、彼らも今の者達も同じ様に誇りがあったのでござろう。富と名声を求める人間も多いでござる」

 

「……よく分かんない。危ないお仕事は断れないのかな?」

 

「当然しがらみもあるでござろうな」

 

「上位の冒険者の人達も大変なんだね」

 

「無謀だとは思うでござるが、笑いはしないでござる……」

 

 

 あの人達に会えた事は、私にとって冒険者の仕事の危険性を知る良い機会になった。

 他の冒険者も自身にとって大切な物――お金、誇り、責任、名声――色んな物を背負って頑張っているのだろう。

 

 

「うーん、私は無理せず頑張るね」

 

「それがいいでござる。某も死にたくはないから、程々に頑張るでござるよ」

 

 

 ラキュース達が無事に帰って来る事を祈りながら、私は改めて思う。

 

 

「まぁ正直モモンガ殿が本気を出せば、ドラゴンがやって来ても何とかなると思うでござる」

 

「あははっ!! やっぱりモモンガが一番凄いよね!! そうだ、今日もブラッシングしてあげようか?」

 

 

 お仕事は大事。でも安全第一。

 やっぱりモモンガは世界一。

 

 

「おお、頼むでござる!! 一度ネム殿にやってもらってから、自分で毛繕いしても満足出来なくなってしまったでござるよ」

 

「そうなの? 私はいつでもしてあげるよ」

 

「ありがたいでござる。……でも先に手を洗った方が良いでござるよ」

 

「……気づいてた? この薬草の臭い、洗ったけど全然とれないんだよね」

 

 

 お金は欲しいけど、それは家族の役に立ちたいからだ。無理して怪我をしたら元も子もない。

 だからこれからも欲を出し過ぎないようにして、自分に出来ることを精一杯頑張ろう。

 とりあえずは、戻ったら畑の雑草取りから始めようかな。

 

 

 

 

 森の中を進んでいると時折モンスターが姿を見せるが、先に発見して先手を取ればこの戦力で負ける事はない。自分が手を出さなくても、無傷で倒せる程の余裕がある。

 ラキュース達の戦闘力を見るたび、尊敬と共に嫉妬心が湧き上がるが、今はそれもすぐに鎮火する。

 周囲の警戒を続けながら、イグヴァルジはニンマリとほくそ笑んだ。

 

 

(トブの大森林だろうが、俺の敵じゃねぇな)

 

 

 アダマンタイト級の引き立て役になるのは御免だが、この仕事自体は実績として悪くない。

 なんせ過去にこれを成功させたのも、ミスリル級のチームを二つ同行させたアダマンタイト級のチームだけだ。

 三十年振りの快挙に大きく貢献したとして、『クラルグラ』の――ひいてはリーダーである自分の名が上がるだろう。

 

 

(こりゃ、オリハルコンへの昇格もすぐだな)

 

 

 魔境と呼ばれるトブの大森林であろうとも、森の中は自分の庭も同然。自分の活躍は約束されているようなものだ。

 確かに戦闘面では彼女達の方が遥かに強い。

 だが、アダマンタイト級である『蒼の薔薇』の二人の盗賊に、自分もレンジャーとしては引けを取らない働きが出来ているはずだ。

 

 

「過去の記録だと、薬草があるのはこの辺りのはずなんだが……」

 

「これは、一体……」

 

 

 イグヴァルジ達は順調に目的地周辺まで進む事が出来た。しかし、目当ての薬草をそろそろ探そうかという段になって、全員が違和感を覚える。

 辺りに木が一本も生えていない、開けた明るい場所に出たのだ。より正確に言えば、葉のついた健康な木々が全くなかった。

 太陽光を遮るものが一つもなく、少し眩しいと感じる程の変化である。

 

 

「――周囲一帯の草木が完全に枯れている。人為的な物ではないと思うが、理由がさっぱり分からん」

 

「何があったのだろうな。森の賢王が見たという、謎のドラゴンが関係しているのか?」

 

 

 自分のチームのメンバーを含め、周りの冒険者が口々に考察を始める中、イグヴァルジは悪態をつくのを必死に堪えていた。

 

 

(くそっ、冗談じゃねぇぞ!! ここまで来たのに依頼失敗ってか?)

 

 

 周囲の状況から考えて、目当ての薬草を採取する事は絶望的だろう。トブの大森林を無事に踏破しようが、依頼としては失敗だ。

 これでは何も知らない奴らから、自分たちが過去の冒険者に劣っていると思われる可能性がある。

 英雄になる事を目標にしているイグヴァルジにとって、人から認められない事は何よりも許せない。

 

 

「どうする、ラキュース?」

 

「……無闇に探すのは危険ね。この現象の原因が不明なため、これ以上の捜索は困難と判断します。あと一時間だけ周りの枯れていない範囲を確認したら――」

 

 

 諦めるのは業腹だが、ここで独断専行して薬草を探す程イグヴァルジも愚かではない。素直に言うことを聞くしかないだろう。

 

 

(……ん、なんだ?)

 

 

 リーダーであるラキュースがテキパキと指示を出している途中、自分たちの頭上から影が落ちてきた。

 太陽が一番高い位置にあった時間はとうに過ぎているが、それでも先程までは雲もなく明るかったのだ。

 この急激な変化は、自然現象ではあり得ない。

 

 

「――っ上だ!!」

 

 

 誰かの叫びに反応して、全員が一斉に武器を構える。イグヴァルジも剣に手を添えつつ、即座に動ける様に腰を落とした。

 そして、影を作った正体を目にして驚愕する。

 翼を羽ばたかせる力強い音。

 それに伴って生まれる暴風。

 地響きと共に、空から大地へと降り立ったのは――

 

 

「人間如きがこの地に現れるとは……」

 

 

 ――竜だ。

 こちらを見下した様な重く低い声。

 磨かれた装飾品の金色ではなく、原始的な黄金色の鱗に覆われた体。

 森の賢王が比較にもならない巨体だ。

 こちらを射抜く鋭い眼光。大きな体を支える強靭な四肢と、太くて長い尻尾。

 どれも生命力に溢れたドラゴンの力強さを表している。

 

 

「それ相応の覚悟はあるのだろうな?」

 

 

 ドラゴンという種族を実際に目にするの初めてだが、それでも確信が持てる。

 自分達に降りかかるプレッシャーは尋常なものではない。

 目の前の生物こそ、数多の物語で最強の存在として描かれる、本物の竜だ。

 

 

「……逃げろ」

 

 

 息を呑む音が聞こえるほど静まり返った中、イビルアイのくぐもった声がポツリと漏れた。

 

 

「――っ早く逃げろ!! 私達の手には負えない!! こいつは、こいつは間違いなく竜王に匹敵する!!」

 

 

 イビルアイの二度目の言葉は指示ではなく、もはや絶叫に近い。

 

 

「――っ!!」

 

 

 イグヴァルジはその言葉を聞いて――この場の誰よりも早く――弾かれる様に反応した。アダマンタイト級を超える反射速度である。

 急速に吸い込んだ空気を肺に送り込み、爆発的な踏み込みで地面を蹴った。

 

 

(俺は死なねぇっ。絶対に死んでたまるか。英雄になるまで死んでたまるか!!)

 

 

 英雄への憧れが、生への執念が、イグヴァルジに大量のアドレナリンを分泌させる。

 長年冒険者として生きてきた人生の中で、最高の瞬発力を発揮して走った。

 

 

(たとえ全員を囮にしてでも、俺は――)

 

 

 極限まで研ぎ澄まされた感覚によって、時が止まっているかのように錯覚する。

 体は前に進んでいるはずなのに、目の前の景色がまるで動いていない。

 

 

(――生きる!!)

 

 

 イグヴァルジは湧き上がる高揚感に満たされていた。

 動かす足は羽を超え、重さのない空気の様に軽い。体が軽すぎて宙に浮かんでいるようだ。

 ――自分はまさか、土壇場で英雄の領域に足を踏み入れたのかもしれない。

 もはや地面を踏み締める感触すらなく――

 

 

「……あれ?」

 

 

 ――何故か迫りくる地面に、顔面から激突した。

 イグヴァルジは口に入った砂利を、不快さと共に荒っぽく吐き出す。そのまま即座に立ち上がろうとするが、何故か上手く立ち上がる事が出来ない。

 そして気付いてしまった。

 血塗れの地面に這いつくばった自分。その視界の左側――

 

 ――自分の下半身が転がっている。

 

 

 

 

 ラキュース達は皆、目の前のドラゴンに意識を集中させている。否、視線を外す事など出来なかった。

 しかし、辺りに漂う血の匂いは、嫌でも彼女達の鼻についた。

 

 

「――愚かな。この私の許可なく帰れるとでも思ったか?」

 

 

 協力して依頼にあたっていた『クラルグラ』のリーダー、イグヴァルジが一瞬で真っ二つにされた。

 ラキュースは先程まで目の前のドラゴンから、一秒たりとも目を離してはいない。にもかかわらず、気付いたら彼が血溜まりに沈んでいたのだ。

 何が起こったのか把握する事さえ出来なかった。ドラゴンとの実力差をまざまざと見せつけられ、この場にいる誰もが動けなくなっている。

 

 

(不味いわね、何も反応出来なかった…… くっ、闇の力を暴走させれば――なんて考えてる余裕もない)

 

 

 蒼の薔薇を結成して以来の――いや、間違いなくラキュース・アルベイン・デイル・アインドラにとって人生最大のピンチだ。

 ――今動いたら殺される。

 ラキュースはそんな確信めいた恐怖に支配され、いつもの妄想を頭の中で繰り広げることすら出来ない。

 握り締めた魔剣がこれ程頼りなく感じたのも、自分がこの武器を手にしてから初めての事だ。

 

 

「それで、貴様らは何故この人ならざる者の土地に侵入した。私を倒しにでも来たか? 私がここにいる事は、まだ誰も知らないと思っていたのだがな……」

 

 

 このドラゴンは一人の人間を殺した事など気にも止めていない。地面に這いずる虫を一匹潰した程度の感覚なのだろう。

 それ故に何の感慨もなく、心底不思議そうな声音で尋ねてきた。

 ――活路はここしかない。

 ラキュースは一瞬で判断し、手に持った魔剣を素早く地面に落とす。

 周りの仲間も即座に自分の意図を理解し、それぞれが持った武器を手放してくれた。

 

 

 

「私達は薬草を採取するためにこの地へ来ました。決して貴方と敵対するためではありません!!」

 

「ほぅ、たかが薬草のためにここへ来たと?」

 

「はい。貴方様のような偉大な竜がいるとは、全く存じておりませんでした」

 

 

 ドラゴンの瞳にじっと見つめられても、ラキュースは顔を逸らさずに耐える。

 心臓がドクドクと早鐘を打ち、相手の反応を待つ一秒一秒が異常に長く感じられた。

 

 

「――まぁ、よかろう。今の私は目覚めたばかりで気分が良い。虫ケラが草を集める程度、寛大な心で見逃してやろうではないか」

 

 

 ドラゴンから放たれる威圧感が僅かに和らぎ、この場の全員がほっと息を吐く。

 何とか賭けには勝った。まだ油断は出来ないが、首の皮一枚は繋がっただろう。

 

 

「だが、『課金の竜王(ガーチャー・ドラゴンロード)』であるこの私に、貢ぎ物の一つもない訳ではあるまいな?」

 

 

 イビルアイの竜王に匹敵するという言葉は正しかったようだ。

 『ガーチャー・ドラゴンロード』など聞いた事はないが、目の前のドラゴンが竜王である事に疑う余地はない。

 そこに存在するだけで感じ取れる力の量が、今まで会ったどの生物とも桁が違う。

 

 

「もちろんです。こちらを捧げさせて頂きます」

 

 

 当然の如く態度で要求されたが慌てることはない。これはまだ想定の範囲内だ。

 ラキュースは蘇生魔法の媒介に使う金塊を取り出すと、ドラゴンの前にゆっくりと差し出した。

 いつも持ち歩いている訳ではないが、今回の依頼では念の為持ってきていて正解だったようだ。

 ドラゴンという種族は共通して財宝を好む特性がある。

 それは目の前のドラゴンであっても例外ではないはずだ。

 

 

「この程度の量ではまるで足りんな。私はこの世全ての財を求める竜王だぞ? ……しかし、その勇気と素直さに免じて、今回に限り許してやろう」

 

「ありがとうございます」

 

「次に私に会えば、お前達の持つ全てを容赦なくもらう。他の人間共にも伝えておくのだな。そこのゴミを拾ってさっさと去るがいい」

 

 

 こちらに興味を失ったドラゴンの気が変わらない内に、ラキュース達は素早くその場を離れた。

 イグヴァルジの死体も安眠の屍衣(シュラウド・オブ・スリープ)で包んで回収する事が出来たので、拠点に戻ったら蘇生を試みるべきだろう。

 

 

「――まさかあれ程のドラゴンがいたなんて…… これは組合どころか、国にも報告する必要がありそうね」

 

「あれはマジでやべぇ…… 俺にはこれっぽっちも勝てる気がしねぇ。仮にガセフのおっさんが国宝を全部纏っても、勝負にすらならねぇはずだ」

 

 

 比較的安全な所まで辿り着き、それぞれのチームは一息ついた。

 極度の緊張状態にさらされていたため、全員がかなりの疲労感を覚えている。

 

 

「周囲にモンスターの気配はない。なさ過ぎるくらいだ」

 

「ありがとう、ティア、ティナ。貴女たちも交代で休んでちょうだい」

 

 

 自分達はまだしも、『虹』と『クラルグラ』の二チームは口も開かずに意気消沈していた。

 無理もないだろう。いくら手練れのミスリル級とはいえ、あのドラゴンの力を間近で感じてしまったのだ。

 特にリーダーを殺されたクラルグラのメンバーは、各々の仕事の役割こそこなしているが、あの時から死の恐怖に怯えきっている。

 この分ではイグヴァルジの蘇生が成功したとしても、チームとして再起出来るかは五分五分だろう。

 

 

「すまない。あの魔獣の忠告を甘く見ていた…… だとしても予想外だっ。あれはかつて十三英雄が戦った魔神を優に超えている。どう足掻いても人の身では勝てんぞ」

 

「あれが森の外に出ない事を祈るばかりだわ。もし人の住む土地にやって来たら――」

 

 

 普段は尊大な態度でいる事の多いイビルアイだが、今回ばかりは流石にしおらしくなっている。

 ガガーランも似た様な事を話していたが、ラキュースもその考えに同意した。

 

 

「――人類の存亡をかけた戦いになるかもしれないわね」

 

 

 自分が妄想で呟くような台詞を、本当に言う日が来るとは思ってもみなかった。

 しかし残念ながら妄想と違うのは、今の自分には対抗する特別な力が無いという事。

 ラキュースは暗い気分を晴らそうと空を見上げるが、鬱蒼とした森の中では太陽を拝む事は出来なかった。

 

 

 

 

おまけ〜いつもの黒幕〜

 

 

「で、デミウルゴスさん。言われた通りドラゴンを一匹散歩させておきました」

 

 

 マーレはペットの拾ってきた金塊を片手に、デミウルゴスに作戦終了の報告をしていた。

 モモンガも同席しているのだが「まずはデミウルゴスへの報告を済ませよ」と、マーレは既に言い含められている。

 

 

「ありがとう、マーレ。私の部下からも報告は貰っているよ。君のドラゴンは中々の名演だったそうじゃないか」

 

「えへへ、でもデミウルゴスさんの作った設定通りに演じてもらっただけですから」

 

「謙遜することはないさ。ともかく無事に終わって良かった。万が一に備えて、不可知化した護衛を用意したとはいえ…… 君のペットに危険な囮役を頼んでしまって、すまなかったね」

 

「い、いえっ。ナザリックのためなら、何でも言ってください」

 

 

 デミウルゴスはカルマ値が極悪の悪魔だが、身内に対しては人一倍思いやりがある。

 組織として時に厳しい判断を下せるが、仲間思いの彼はこうした言葉も忘れる事はない。

 モモンガはそんなやりとりを眺めながら、顎に手を当てて何かを考え込んでいる。

 きっとこの間にも自分では考え付かないような、何か凄い作戦を練られているのだろう。

 

 

「ところで、何でボクのドラゴンだったんですか? デミウルゴスさんのところの魔将でも強さは十分だったんじゃ……」

 

 

 マーレはデミウルゴスに質問しつつ、ちらりと椅子に座る主人を見た。

 モモンガはその程度の事は簡単だと言わんばかりに、小さく笑う。

 そして、支配者然とした態度でゆっくりと頷いた。

 

 

「強さという点ではそうだね。あの冒険者達は一人を除いて弱過ぎた。だが、この世界にいても違和感のない強者だと、君のドラゴンの方が適任だったのだよ」

 

「あ、だから竜王を名乗らせたんですね。確かにあの人間達も納得してました」

 

 

 デミウルゴスが解説を入れてくれたが、モモンガは黙して語らない。

 当たり前のことだが、こうした反応も含めて全てお見通しだったのだろう。

 

 

「その通り。これは我々に匹敵する強者、強者に対抗する技術を炙り出す作戦だ。以前モモンガ様がおっしゃられていたように、我々と同じ様な別世界からの存在も考慮してだがね」

 

「……覚えていたのか」

 

「もちろんでございます。このデミウルゴス、モモンガ様からのお言葉であれば、どれ程の月日が経とうが一言一句記憶しております」

 

「そ、そうか。私は嬉しいぞ……」

 

 

 二人はいつもどのような会話をしているのだろうか。

 非常に悔しいが、自分では難しい内容の話についていける自信はない。

 

 

「そ、そんな先まで考えて…… 流石はモモンガ様です」

 

「正しく端倪すべからざる御方という他ありません。その遠過ぎる背中に一歩でも近付くべく、私も日々精進させて頂きます」

 

「ふふふ、お前ならば既に私を超えているとも。さぁ、報告を続けよ」

 

 

 流石はナザリックでも智者と名高いデミウルゴスだ。お世辞でもモモンガにここまで言われるシモベは中々いない。

 そして驚愕すべきは、遥か先の未来まで見据えていたモモンガの叡智だ。

 その上、謙虚さと慈悲深さまで溢れている。

 この世で最も偉大な支配者のシモベである事に、マーレは深く心の中で感謝した。

 

 

「先程の続きだが、以前監視していたトレントの件もある。あれはこの世界の人間では、対処する事が不可能なレベルのモンスターだった」

 

「お姉ちゃんもテイムは出来ないって言ってたやつですよね」

 

「ああ。それを支配した者達がいる以上、情報収集は必須だ。――もしかしたら我々にも通用する可能性だってあるのだからね」

 

「な、なるほど。冒険者を生きて帰したのも、情報を広めて欲しいからなんですね」

 

「まぁ他にも理由はあるが、概ねそんなところだ。今後もドラゴンに散歩してもらう事が出てくるかもしれないが、その時はまた頼むよ」

 

「はい、任せてください!!」

 

 

 ナザリックの輝かしい未来を想像しながら、マーレは元気よく返事をした。

 

 

「――今後は万一の事が起きても、天災ならぬ竜災に全て揉み消してもらう事が出来ます。実に楽しみですね……」

 

「も、もしボクの力が必要なら言ってください。ちゃんと天災も起こせますから、全部ペシャンコに出来ます」

 

「ああ、手札はあればあるほど良い。頼りにしているよ」

 

 

 そしてデミウルゴスはこれからの作戦を思い浮かべているのか、悪魔らしい笑みを見せる。

 しかし、我らが偉大なる支配者は一味違った。

 

 

「ぇ……」

 

 

 眼窩の灯を消し、完全な瞑想に入っている。

 神聖さすら感じる神秘的で美しい静の姿。

 浮き足立っている自分達に、油断はするなと優しく諭してくれているようだ。

 

 

(凄い…… ありがとうございます、モモンガ様!!)

 

 

 流石は至高の御方のまとめ役、アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターである。

 マーレもモモンガに倣って、静かに気を引き締めるのだった。

 

 

 




当時の状況は詳しく分からないけど、過去に薬草採取を成功させたチームってかなり凄そう。
課金ガチャのドラゴンが喋れるのか不明ですが、そのあたりは想像です。
ラキュースがそれっぽい事を呟いてますが、人類の存亡をかけた戦いは多分起きない。
ちなみにイグヴァルジは灰にならずにちゃんと蘇りました。


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