邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 ところで、そろそろこの形式のキャプションもいい加減ネタが尽きそうなので、どうしたらいいと思う?
 なんかいいネタないかなー?と思って、本屋に行ったら、『ネクロノミコン』著:アブドゥル=アルハザードって本が平然と棚に陳列されてて、盛大に吹いた。
 何でそげなもんが?まあ、いいかと深く考えずに、ビニールパッケージに包まれてないのをいいことに、そのまま本を開いた。
 そうして、私は考えるのをやめた。



【#13】名探偵VS邪神。勝ち目なんてあるとお思いで?

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 前回までのあらすじ。公安のメンツと真っ黒ラベルのアルコール犯罪者たちを発狂させて、幼児化新一君をお持ち帰りしました♪

 

 いやー、どうしたもんでしょうねえ。

 

 さて新一君とお話と思ったら、狂人蘭君が、お父さんが倒れたーとかお店の引き戸壊して突撃かましてくる始末ですし。君、いい加減にしないと、ショゴスさんにモグモグさせま・・・おや、ショゴスさん、どうしたんです?え?あんな美味しくなさそうなのはいらない?

 

 おやまあ、すっかりグルメになってしまいまして。海の底でクトゥルフさんの影響を受けた海草とか、磯臭い魚面モグモグするよりかはマシだと思いません?

 

 え?ここは海の底じゃなくて米花町だから関係ないでしょうって?それはそうですけどねえ。

 

 ま、狂人蘭君の処遇に関しては、またおいおい考えていきましょう。ぶっちゃけ、彼女を処理するのも面倒なんですよねえ。それに、ああいうのって、下手に処分するより、放置しておいた方が、もっと面白いことを引き起こしてくれたりもしますしねえ。フフフ。

 

 

 

* * *

 

 

 

 頭を抱えてうずくまった新一君が我に返ったのは、夜の8時前でした。

 

 「あ・・・か、帰らねえと・・・」

 

 半ば現実逃避もあったのでしょうが、とにかく自分にとっての安全地帯へ逃げ込もうとしての発言だったのでしょう。

 

 頭を上げ、呻くように言うや彼はソファから飛び降りようとしました。

 

 ですが。

 

 「おや、本当にそれでいいんですか?」

 

 正面に座っている私が、にこやかに笑いながら問いかけます。

 

 「考えてもごらんなさい、新一君」

 

 「な、にを・・・」

 

 ビクッと体を震わせて、反射的に私を見てくる新一君に私は口を開きました。

 

 「たかが高校生の口封じに拳銃か死因を不明にする毒薬の二択を選ぶ、悪の組織の一員が、死体の確認をしないと思います?」

 

 ヒュッと新一君の喉が大きくなる。

 

 ニヤニヤと口元をゆるめながら、私は続ける。彼の最悪を、歌うように口ずさんでみせる。

 

 「遊園地で死体が発見されず、怪訝に思った連中は、家探しの一つでもしてみるでしょうねえ。おや、工藤の家に我が物顔でいるこのボウヤは誰だ?何とまあ、工藤新一にそっくりじゃないか!幼児化したのか?あの毒薬は若返りの薬だったんだ!どうしてこの子だけそうなった?きっと、生きたまま解体されて、口にするのも悍ましい、冒涜的な実験を強要されるでしょうねえ。

 

 君一人で済めば御の字だ。生きてる君が、誰に何をしゃべったか、幼児化しているのを誰に知られてしまったか、わかったもんじゃない。

 

 口封じも必要になる。加えて実験にも更なる素体がいる。さあて、誰が追加の人員にされるんでしょうねえ。類似遺伝子の持ち主ですから血縁的にご両親は確定として、あとは・・・」

 

 「やめろ!もうやめろ!!」

 

 おやまあ。この程度で真っ青になって喚くなんて。まだまだ青いですねえ。

 

 「いいじゃないですか。それでいいから帰るのでしょう?どうぞ。なんならタクシーもお呼びしましょうか?」

 

 「てめえ、ふざけてんのか!」

 

 「いえいえ。とても面白そうだから、そう言ってるのですが?」

 

 がなる新一君に、私はにこやかに笑う。

 

 「君だって、ご理解できるでしょう?他人の不幸は蜜の味なんですから」

 

 「ふざけんな!そんなもん、理解できるわけ」

 

 「渾身の殺意と知恵と決意をもって成し遂げた密室殺人!誰にも言えない苦悩と苦痛の果ての、憎悪と憤怒!織りなされた計画!アリバイ偽装!犯人を指し示すダイイングメッセージ!」

 

 喚こうとする新一君に、私は笑う。笑って、つきつける。彼の、真実を。

 

 真実をつまびらかにするという行為の裏に隠れる、彼の本音を。

 

 「人が人を殺す行為を、真実を明らかにするという建前のもとに、さらけ出して、嘲笑っていたんでしょう?

 

 例えば・・・そうです!強姦された仕返しに殺人を犯したOLがいたとしましょう!可哀そうに、強姦されたことを誰にも言えずに苦悩の結果、殺人に手を染め染めてしまったとしましょう。きっと司法の裁きは怖いでしょう。それでも覚悟を決めて、ない知恵絞って考えたトリック!用意した凶器と綿密な計画!君は嬉々として彼女の犯行の一切合財、そして罪を、警察官と野次馬の面々の前で暴くんです!

 

 動機の面で君は堂々と叫ぶんです!あなたは彼に乱暴されたからその仕返しだと!

 

 ああ!ああ!何たることでしょう!彼女が必死に押し殺し、誰にも知られたくなかった恥部は、賢しらにしたり顔で暴いてきた少年の無遠慮さによってさらけ出されてしまいました!

 

 その野次馬の中には、彼女が最も知られたくなかったでしょう、恋人だっていたかもしれないのに!

 

 でも君は言うんでしょう?“そんなの警察に相談しなかったお前が悪い”“それでも殺人はいけない”とねえ。

 

 そして、そのあと犯人が刑務所で自殺したって、真実は明らかにされるべきと大声で叫ぶんでしょう?違いますか?」

 

 「ちが・・・違う!違う違う!オレは・・・オレは、そんなことしない!そんな・・・そんな、推理で犯人を追いつめた挙句自殺なんて、殺人と変わらないこと、やりもしない!」

 

 「おや、本当に?

 

 では、なぜ、君は大勢の前であえて推理を披露するんです?」

 

 「そ、れは・・・」

 

 「素直におっしゃいなさい。“犯人が泣き崩れるのが楽しい”“悪いことしたからだザマアミロ”と。

 

 人間素直が一番ですよ」

 

 「違うっつってんだろ!!」

 

 青ざめた顔で、新一君はなおも否定します。

 

 喉の奥でも言葉をこねくり回し、なんというべきか迷っているようですね。

 

 ソファから降りた、ちっぽけな人間は、長い脚を尊大に組んで見せる私を前に、青ざめた顔でそれでもなお毅然と言い放ちました。

 

 「いいか!はっきり言ってやる!

 

 オレは確かに!犯人を推理で追い詰めてるさ!推理すんのは楽しいし!生きがいだ!けどな!それでひとを傷つけようなんて、考えてない!そんなの、探偵じゃねえ!」

 

 ここで一息入れて、呼吸を整えて、新一君は続けます。

 

 「ああ!俺は目立ちたがりだよ!大勢の前で推理を披露して!オレはすげえんだ!こんなことだってわかるんだって!これがオレだ!工藤新一なんだって!

 

 ・・・そうじゃないオレなんて、誰が見てくれるんだよ。

 

 “藤峰有希子の息子”でも、“工藤優作の息子”でもない、新一なんて、何があるんだよ。他に、何が・・・」

 

 最終的に、呻いてうなだれてしまった新一君。

 

 おやおや。意外と面倒な感じだったんですねえ。

 

 

 

 確かに、米花町の工藤一家といえば、芸能人の一家のような扱いですからねえ。

 

 ビカビカ当てられるスポットライトの影は、暗闇でしたというところでしょうか。

 

 銀幕の大女優の息子、天才ベストセラー推理小説家の息子、だから美人で天才で当たり前。できて当然、あの夫婦の息子なら当たり前と、どこに行っても誰に会っても言われたでしょうねえ。・・・よくグレませんでしたねえ、新一君。

 

 

 

 ふうむ。だいぶ精神的にキてるようですし、ここらで【説得】あるいは【言いくるめ】して信者に落とすのもありっちゃあ、ありですが・・・さて、どうしたものでしょう?

 

 

 

 おや?

 

 次の瞬間、きっと顔をあげて、新一君は私を睨み付けながら叫びました。

 

 「けどな!だからって、オレの!存在証明たる推理を!凶器にして人を傷つけていい理屈が成立するわけがねえんだよ!

 

 犯人が泣き崩れるのが楽しい”?“悪いことしたからだザマアミロ”?

 

 そんな幼稚な感情論、あるわけねえだろ!むしろそういうのがあるのはお前の方だろうが!違うか?!

 

 神様だか化物だか知らねえが、他人の心を弄んでいいと思ってんのか?!ふざけんな!!」

 

 おやまあ。

 

 あれだけグラついていたというのに、持ち直しましたよ。

 

 多少虚勢は入っているでしょうが、これはなかなか・・・素晴らしい。

 

 

 

 いやあ。正直、今の言動でSANをヤスリにかけたつもりだったんですが、これはなかなか。やはり人間は素晴らしい。そして、愚かしい。ゆえにこそ、愛して滅ぼす価値があるというものです。

 

 

 

 クフクフと喉が勝手に鳴ってしまいます。邪神といえど、人間という器に押しこめている以上、生体器官も彼らを模しているため、愉快であればそこから声が漏れ出るのは必然であり、生理現象に近いのです。仕方ないでしょう。

 

 「何がおかしい!」

 

 「いやだって・・・ふざけてなんてないんですよ。だって、それが私の、愛ですから」

 

 「・・・は?」

 

 心底理解できませんという顔を新一君がしましたが、構わず私は両手を広げて愛しい子供に語りかけます。

 

 「いいですか、新一君。私、邪神ニャルラトホテプは人類を愛しています。だからこそ、狂わせてのた打ち回らせて邪悪と冒涜の限りを尽くし、最終的に死んでいくのを眺めさせていただくんです。

 

 なぜならそれが、私の愛ですから♪」

 

 愛ならしょうがない。とどこぞの撲殺天使もピピルピルピル~♪と歌ってくださってますし。

 

 呆気にとられた表情をしていた新一君は、すぐさま我に返ったように私を睨み付けてくれました。

 

 「・・・この世から犯罪がなくならないわけだぜ。あんたみたいなやつが神様なら、当然だな」

 

 「おや失礼ですねえ。私ほど人類を愛している神はいませんよ?」

 

 「人類最悪の不幸だな」

 

 手厳しいですねえ。シュルズベリィ教授や赤井君と同じことを言ってますよ、彼。

 

 「てけり・り?てけり・り?」

 

 ちょいちょい、と私の袖を引っ張って、ショゴスさんが物言いたげにしています。

 

 「へ?」

 

 「ああ、彼女は、ああとしかしゃべれないんですよ。意味は通じますのでね。

 

 ちなみに今のは、“結局君はどうするのか?夕食は作ってあるので食べていっては?”という意味です」

 

 「いや、言葉自体は短い割に意味が長いな!」

 

 さすがは工藤新一君ですね。ほとんど反射に近いツッコミをありがとうございます。

 

 君、ツンツン頭の青い弁護士さんが御親戚にいらっしゃいません?

 

 「っつーか、何だよ、今の。あんな言語、あったか?」

 

 君は本当に、藪を突くのがお上手ですねえ。

 

 怪訝そうな顔でメイド服を着たショゴスさんを振り返った新一君に、私はにっこり笑ってパンパンと手を叩いた。

 

 「はい!では、我が家のメンツをご紹介いたしましょうか!ショゴスさんとシャンタク鳥!本性と一緒に御挨拶だ!」

 

 え?描写?やってもいいですけど、SANが削れますよ?

 

 新一君ですか?彼らの本性を目の当たりにするなり、目を皿のようにしてしばらく見つめた後、ややあって白目をむいてひっくり返りました。

 

 ハハッ!SANチェック失敗して、アイデアロールからの気絶になりましたか!自殺癖とか、異常食欲とか引き当てなくてよかったですねえ!

 

 「てけり・り・・・」

 

 元のメイド姿に戻ったショゴスさんが、肩をすくめてため息を吐かれしたよ。何です、しょうがないご主人だっていうのは!

 

 『どうするのだ、その玩具は』

 

 オカメインコ姿に戻ったシャンタク鳥が、呆れたようにソファの近くでひっくり返ったままの新一君を見やっています。

 

 ふーむ。あ、デザートにするってのはダメですよ?これはまだ、楽しみ方があるんですから♪

 

 『そんなガキ、腹の足しにもならん。妙な毒も飲まされたんだろう?そんなの進んで食うか』

 

 吐き捨てるように言ってくれますねえ、シャンタク鳥。

 

 「てけり・り。てけり・り、てけり・り」

 

 そうですねえ。まあ、今晩くらいは泊めてあげましょうか!よかったですねえ、新一君!

 

 え?来客用のお布団?あるわけないじゃないですか!ショゴスさんが一晩布団姿で添い寝してくれますって!寝心地抜群ですよ!

 

 おや、どうしました皆さん。一斉に青い顔になって、合掌するなんて。大丈夫ですよ!ショゴスさんは聞き分けがいいですから、新一君を味見なんてしませんってば!

 

 

 

* * *

 

 

 

 さて、翌日です。

 

 ショゴスさんの作った朝食を、恐る恐る青い顔で食べた新一君は、とりあえず帰宅したいという旨を申し出てきました。

 

 一応そのリスクは昨夜申し上げたはずなのですが、小さくなった体のことを相談したい人間がいることを言ってきました。

 

 そうそう。一応、彼、私が小さくした連中とは無関係ということは信じてくれましたよ!

 

 曰く、「あんたみたいな奴がその気になったら、小さくするどころか、もっと悪辣で冒涜的なことを企んで実行してきそうだから」ということです。

 

 フフッ♪理解の早い子は嫌いじゃないですよ♪

 

 というわけで、今、私は新一君にバイク用のヘルメットをかぶせて、自分もライダースジャケットとヘルメットを身に着け、バイクにまたがり、道路を気分よく駆け抜けています。

 

 ちなみに、車種はHondaのCBR250RR通称“ニダボ”といいまして、黒を主体に赤でアクセントを加えた車体に、翼の入ったクサリヘビのマーキングをつけています。

 

 ま、本物じゃないんですけどね。バイクに擬態させている、狩り立てる恐怖だったりします。いやあ、ペットに蛇って敬遠されがちですし、置場もちょっと困りまして。だったら、これでいいじゃない、と。

 

 燃料の代わりにちょっとばかり生贄を要求してきますがね。まあ、そこは長い付き合いですよ!

 

 「神様がニケツでツーリング・・・」

 

 「神様だって人間の真似事をしてみたいときがあるんですよ。いっつも神様してたら疲れるでしょう?君だって、探偵ばっかりしてるというわけではないんですから。同じことです」

 

 背中で物言いたげな微妙な顔をしているだろう新一君にしれっと言って、彼のナビゲートのもと、ハンドルを米花町2丁目に向けます。

 

 

 

 そうそう。新一君から、私の正体は軽々しく人様に言わないようにと釘をさされましたよ。

 

 おや、失礼な子ですねえ。これでも正体を教える相手はちゃんと考えて選んでいるつもりですよ?君の場合は蘭君のせいで、不可抗力に近かっただけです。

 

 

 

 さて、赤い屋根の洋館工藤邸のお隣、円筒じみた近未来的シルエットの阿笠邸のそばにバイクを止めて、新一君と一緒に阿笠邸にお邪魔させていただきました。

 

 最初こそ、阿笠博士は幼児化している新一君を彼の親戚かな?と言ってきましたが、新一君が阿笠博士の個人情報に加えてその抜群の推理力を披露するなり、まさか本人?!と非常に驚きながらも、中に入って改めて話すことになりました。

 

 ちなみに、私は遊園地で新一君が幼児化されるところを目撃し、彼を放置するのは危険と判断して保護したという立場で同席させていただいてます。ちゃんと表向きの立場で自己紹介もしましたよ。

 

 時々、新一君が絶対余計なこと言うなよ?絶対だからな!という感じの目を向けてくるんですよねえ。信用ないですねえ。

 

 え?お前は昨日の言動を思い返したうえで言ってみろ?新一君の意見が最もだろって?

 

 もう!皆さんまで!こう見えて、人間に擬態するのは得意中の得意なんですから!・・・ときどき隠しきれない邪悪と混沌があふれ出てしまうだけで。何しろ私、邪神ですから。

 

 とはいえ、新一君が巻き込むリスクを抱えてまで阿笠博士に会いたがったのは、彼なら解毒剤を作れるのでは?と考えたからのようです。・・・結構、君って浅知恵なところがありますよねえ。

 

 阿笠博士は工学系の研究者なのに、明らかに畑違いの生化学面で頼ろうとは・・・。

 

 おや。私に医師や薬学者の知り合いはいないか聞いてきますか?阿笠博士。

 

 ・・・新一君の顔が明らかに引きつっていますねえ。

 

 

 

 いるにはいるんですがねえ。どいつもこいつも、接触すれば正気を削り取る人外ばかりですがね。

 

 パッと思いつく限りでは・・・ユゴス産の甲殻モドキのカビども〈ミ=ゴ〉に、過去と未来に渡って精神拉致を目論む連中〈イス人〉に、異星からの寄生虫〈シャン〉くらいでしょうかねえ。

 

 とはいえ、彼らと直接の面識があるかというと、それも微妙ですしねえ。人づてに聞いた、という感じですし。

 

 

 

 あ、もちろんそんなこと口には出さずに、ちょっと困った感じに微笑みながら首を振るにとどめておきましたよ?

 

 新一君があからさまにホッとしたような顔をしてますが、君は本当に私が神様であることを隠す気があるんですか?君がそんな態度だと私は何かあるんですと言ってるようなものですよ?

 

 

 

 で、その後、改めて身の振り方の相談に入りました。

 

 新一君が元の体に戻るには、黒ずくめの連中の持っている毒薬のオリジナルが必要、彼らを追って捕まえなければならない、しかし肝心な手掛かりが皆無で・・・おや?新一君がじっと私の方を見つめていますねえ。

 

 「バーボン、ジン、ウォッカ・・・アンタ、昨日の電話でそんなこと言ってたよな?」

 

 おやまあ。発狂したりSANをヤスリにかけた割には、しっかり覚えていましたか。

 

 「・・・だったら何です?言っておきますが」

 

 グイッと顔を新一君に近づけ、唇を割って笑いながら、続けて言いました。

 

 「私の面識のある彼は、目的のためには手段を選びませんよ?自分が出世して手柄を立てるためだったら、ちょうどいい相手を生贄として差し出せる程度には、非情になれる子です。頭もいいですし」

 

 嘘は言ってませんよ?零君だったら、赤井君辺りなら平然と生贄にするでしょうねえ。

 

 公安警察のNOCであることや、非情にはなれても優しさは捨てきってないという事実全てではありませんがね。

 

 

 

 え?この性悪邪神?だって、つまらないじゃないですか。ここで新一君を素直に零君に引き合わせたって、零君は彼を保護という名の隔離政策を企てて終了、ですよ?

 

 トロピカルランドでの反応から見ても、零君は新一君を認めてない。ちょっとばかり頭のいい子ども程度にしか見ていないのは明白です。

 

 攻略本では共闘体制を築けているようですが、それは江戸川コナンが安室透の前で、その抜群の推理力と胆力を見せつけたからです。逆を言うなら、その切っ掛けが失われれば、それは成り立たないということです。

 

 せっかく目の前にある面白そうな玩具を、育成途中の家畜に差し出す理由がどこにあるんです?

 

 

 

 「そ、そうじゃぞ、新一!

 

 第一、下手をすればナイア君も危険になるかもしれんのじゃぞ!」

 

 アワアワとかばってきてくれる阿笠博士に、私は姿勢を正しながら困ったように笑みを返す。

 

 「ええ。私は、彼とは幼馴染のようなもので、お目こぼしをもらっている分際にすぎませんので。下手に機密を知ってしまえば、私でもどうなるか・・・。まあ、現状ですでに危ないかもしれませんが・・・」

 

 新一君がものすごく物言いたげに口元をモゴつかせていますねえ。

 

 ええ。言いたいことはわかります。私のような邪神が、たかだか悪の組織ごときにどうこうされるはずがない、逆に潰し返すんじゃないかぐらい言いたいのでしょう?

 

 確かにその通り。ですが、忘れてもらっては困ります。これは、君の戦いなんです。私が首を突っ込んであげる義理も義務も、ありはしないのですよ?脇から面白おかしく眺めるのが、私の役割なんですから。

 

 そうして、阿笠博士はそんな新一君に、別の切り口を提案しています。曰く、幼馴染の探偵事務所に転がり込み、奴らの情報を待てというものです。

 

 ところが、肝心の新一君はそれにノーを返しました。

 

 ・・・あらら。そういえば、無理ですねえ。

 

 「毛利のおっちゃんが、入院しちまったんだ。しばらく、探偵事務所の経営は無理だ。借金もしてるっていうし、下手をしたら事務所自体畳んじまう可能性だって・・・」

 

 ですねえ!

 

 言いにくそうに呻く新一君に、阿笠博士は絶句なさってますねえ。

 

 しかし、新一君は何か心惹かれるものがあったのでしょうか、顎に手を当てて考え込みながら、ちらっと私を見やってきました。ややあって。

 

 「・・・そうだな。奴らの情報を仕入れるために、探偵役を立てて、名を売らせるって基本方針は悪くねえな。おっちゃんがダメなら、他を使えばいいんだ」

 

 そう言うや、彼は私に向き直って、指を突き付けながらおもむろに言いました。

 

 「あんた、今から探偵な」

 

 ・・・おや?

 

 

 

 

 

次回漁りとは・・・感心しないな?

けどわかるよ。続きは甘いものだ

 





【新一君のSANをヤスリにかけたのに、なぜか探偵役に指名されたナイアさん】
 前回から引き続き、新一君(どうにか復帰)とお話。
 以前から新一君に興味を持っていたのは、こうして彼のSANをヤスリにかける気満々だったらしい。
 なお、彼女は攻略本で実際彼が推理ショーで自殺に追い込んだ人物の存在を知ってたので、どうせそうするつもりなんだろ?と軽く訊いてみたつもり。訊き方がイチイチ邪悪。
 芸能一家の2世君みたいな立場の新一君に、意外と闇が深かったんだなーと察した。工藤夫妻は子育て下手っぽい。
 好奇心のままに藪を突く新一君に、蛇どころか蛇人間をけしかける勢いで、さらにSANを削り取る。
 こんな面白い玩具手放すなんてもったいない。一晩くらい泊めてあげましょうそうしましょう。
 翌日、バイクに擬態した狩り立てる恐怖に乗って、新一君を阿笠邸へ連れて行ってあげる。
 ハラハラしている新一君をよそに、見事に人間に擬態した言動を取ってみせる。ハラハラしている玩具の反応の方が面白い。
 はたで面白おかしく眺めて腹抱えて笑うのが自分の務めなので、新一君に進んで協力してやる気はないし、バーボン=零君に繋ぎを取ってやる義理も義務もさらさらない。むしろ、誤解を煽って新一君が警戒を強めるのを邪悪に笑って眺める気満々だったりする。
 阿笠博士の名探偵役を仕立てあげろ作戦に、毛利探偵いないしどうする気かな~と他人事調子でいたら、なぜか探偵役に指名された。
 ・・・どういうつもりだ?

【冒涜的な邪神やその配下とコンタクトしたけど、それでも立ち向かう新一君】
 自分が培ってきた知識も経験も打ち壊す冒涜的な恐怖の権化に、本能的にこの世の真理を悟ってしまう。
 とにかく落ち着いて考えられる場所に逃げ込みたくて、おうちに帰りたい、とポロッと言ったら、目の前の美女に扮した恐怖の権化が嬉々として口撃(こうげきと読む。誤字に非ず)してきた。
 もうやめて?!俺の一時的狂気までのSAN余裕はもうゼロよ?!
 ただでさえも幼児化したうえ、幼馴染が頭おかしい言動とって、拾ってくれた女はトンデモ邪神で頭がパンクしそうなところに、追い打ち掛けられて散々だった。
 ・・・ぶっちゃけた話、彼は邪神に指摘されるまで、犯罪者の事情というものを真剣に考えたことがなかった。事件を解くのが自分の役目で、犯罪者のケアは警察の仕事、と割り切っていたのもあった。
 ・・・新一君自身も17歳にしてはかなりのハイスペックぶりを誇るが、普通、あんなスーパー御両親持ってたら、劣等感に苛まれるかとんでもなく我儘な天狗になるかの二択になると思うのは作者の偏見だろうか。彼は環境の割にかなりまともに育った方。若いので矯正も効く。
 虚勢はあるが、邪神が何ぼのもんじゃい!お前がそう言おうが、俺は目立ちたがりではあるけど、そんなことしねえからな!と最終的に開き直る。くどいようだが、彼は根っこの部分ではいい子で、強い子なので。
 しかし、邪神様を感心させた直後、ペットとメイドさんの本性を暴露されて、もれなく一時的狂気からの気絶に至り、そのまま翌日を迎えた。
 ・・・まともに考えたら、あんな化け物の周囲にいるのが、まともな存在なはずがないのに。
 翌日、邪神様と一緒に唯一現状を相談できそうな阿笠博士の邸宅へ。
 邪神様にあらかじめ釘をさしておくが、彼女がその気になったら自分の釘さしなんて、糠床に対するそれと同じ――つまり、全く無意味ということも悟っているので、気が気でない。送ってもらったからもういい帰れと言っても、「おや、巻き込んだのはそちらなのに、ずいぶんじゃないですか?」と言い放たれて、無駄に終わった。
 邪神様の言動に気が気でない(いつ自分のように阿笠博士の正気を削りにかかるか!)上、彼女の本性を知っている身の上としては、その言動にイチイチツッコミを入れたくてしょうがない。
 もちろん、自分を小さくした連中と、その手がかりを知っているだろう邪神様を逃がす気は毛頭ない。邪神様はどうにかする気はないが、手掛かりくらいはくれたっていいじゃないか!神様なんだろ?!
 ・・・恐ろしさは体感しているのだが、根っこの根っこの部分で、理解が及んでないのかもしれない。
 阿笠博士発案の、名探偵を仕立てあげて、連中の情報を仕入れようぜ!という作戦に、なぜか邪神を探偵役に指名する。
 彼の真意は次回にて。

【神話生物だけど御主人に振り回される新たな生贄に同情するショゴスさん】
 邪悪なご主人の邪悪な我がままに振り回される、新たな被害者に合掌。
 結局お夕飯は、食べてもらえなかった。せっかく彼の分まで作ってあげたのに。
 ・・・なお、普段は活動に便利だからメイド姿を取っているだけで、不定形なその身体はあらゆる形状に、自在に変身できる。お布団に変身も超余裕だったりする。
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