邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 「ドーモ、亜希羅=サン。ニャルラトホテプ=デス。貴様誰に許可を得て私の話を投稿している」
 「アイエエエエ?!邪神?!邪神ナンデ?!ココ私の家、邪神ナンデ?!」
 「それは貴様が作者であるからだ!作者殺すべし!慈悲はない!」
 「アバーッ?!」
 「覚悟!イヤーッ!」
 「グワーッ?!」
 南無三!ニャルラトホテプのアラバマオトシが亜希羅に直撃!
 「サヨナラ!」
 爆発四散!無慈悲!


【#18】ブラッディーブライド。略してブラブラって言うと別物に聞こえません?

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 さて、我らが親愛なる同居人、コナン君ですが、無事に立ち直ったようです。

 

 ただ・・・どこで接点を持ったのか、1週間から2週間に1回くらいの割合で、遠出なさるんですよ。行先は、鳥矢町の槍田探偵事務所です。

 

 阿笠博士御謹製のターボスケボーで一っ走りで行けるそうですよ?え?あのスケボー、コミックスでは1回しか出番がない?不憫な子なんですねえ。

 

 

 

 

 

 まあ、接点はわからないでもないです。

 

 件のなんちゃって誘拐事件の際に、コナン君は偶然あった松井君と成実君に助力を求めました。ま、概要から恐らくそういうこと、なのでしょうね。

 

 有希子さんの事情説明では、ネタバラしをした際、二人とも物言いたげな顔をしはしたものの、優作さんの説明を表面上は信じたらしく、そのまま大人しく退散したとのことです。

 

 ・・・ただ、これはあくまで有希子さんの視点から見た出来事でしかありません。

 

 もし、お二人が優作さんの説明を本当に表面上しかそうと受け取らず、コナン君に何らかの連絡手段を残していたとしたら?

 

 例えば、メモか何かに住所や連絡先を残して、それをこっそりコナン君に渡しておけば、それだけでコナン君は彼らと再び会うことができるでしょう。

 

 あくまで推測の域を出ませんが、まあ、つまるところはそういうことなのでしょう。

 

 最初に鳥矢町にお出かけになった際は、少し緊張しているようにも見えましたが、最近はむしろ明るくなったようにも見えますしね。

 

 

 

 

 

 まあ、私は彼が何をしようが、基本的に関知するつもりはありません。

 

 私に面倒と迷惑をかけないならという枕詞は付きますがね。

 

 もちろん、面白そうなことが起こっているなら、率先して出歯亀に行きます。

 

 いつも通りに!ええ!皆さんご承知でしょう?!

 

 そうそう、先日も我が古書店『九頭竜亭』にご来店いただいて以降、お付き合いのある友人の結婚披露宴に参列させていただいたんですが、いやあ、素晴らしい一日でしたね!

 

 え?お前が人生の新たな門出を素直に祝うとは到底思えない?今度はどんな冒涜的な事件を起こしやがった?ですか?

 

 おや、ひどいですねえ。毎度毎度人のことを冒涜的事件発生器のような扱いをなさって。確かに私があの手この手と糸を引いて、冒涜的で世間一般的感覚で言うなら悍ましいカオス塗れの事案を一生懸命画策しまくっているのは事実ですが、今回に関しては無罪を主張します。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 その日は、知り合いの人間の一人が、結婚の披露宴をするということで、朝早くから準備をしていました。ショゴスさんにも髪のセットとメイクを手伝っていただき、パーティードレスを颯爽とまといます。

 

 一番衆目を集めなければならない、新婦さんと派手さが被っては申し訳ありませんからね。かといって、手抜きは招待してくださった方に失礼というものです。ほどほどに、綺麗にします。

 

 腰を絞ってふんわりと裾の広がる、いわゆるプリンセスラインのミドルを採用。色は黒です。こういったパーティードレスの場合、ボレロやショールなどの羽織りものか、ドレスのどちらかを黒にするのは必須ですので。

 

 私の背の高さであれば、マーメイドラインやAラインもありだったかもしれませんが、ちょっと気分がのらなかったので、こちらにしました。

 

 ボレロはレースたっぷりのライトブルーを採用。もちろん、ラメ入りストッキングとヒールの高いパンプスも忘れずに。

 

 メイクはブラウンを基調にしたものを。髪は丁寧に編み込み、花をあしらったバレッタで留めていただきます。

 

 さて、準備完了です。

 

 そうそう。一応、先方に伺いを立てて、子供を一人連れて行く、しつけのいい子なので、おとなしくできるとお伝えしたところ、了解いただけましたので、コナン君もつれていきます。

 

 その彼は、玄関先の戸口で退屈そうにあくびなさっています。

 

 基本は、ジャケットとスラックス、蝶ネクタイに眼鏡というお馴染み坊ちゃんスタイルですが、色は青ではなく、グレーのシックなものですし、生地も相当いいものを使っています。蝶ネクタイも、一目で安っぽく見えそうな変声機ではなく、それに似合う良さげなものにされています。

 

 ああ、ちなみに今日は臨時休業ということで、『九頭竜亭』は閉めさせていただいております。大変申し訳ないのですが。

 

 ・・・現在、『九頭竜亭』のガラスの引き戸の上には、臨時休業の看板が掛けられています。そのガラスはひびが入って、割れて砕けている部分もあるので危ないからダンボールで覆われています。

 

 

 

 

 

 コナン君が我が家にやってきた夜に、蘭君がつけてくれた傷はとっくの昔に修理が完了したんですがね。

 

 先日、蘭君が学校帰りに我が古書店に寄ってくださって、いつものように狂人トークをなさっている最中に、ちょっと宅配便の対応をしなければならず、彼女から一時目を離したんですよ。

 

 いやあ、油断してしまいました。

 

 彼女、そこで私が置いといた結婚披露宴の招待状を発見して、自分も行きたい!連れてって!と駄々をこね始めたんですよ。

 

 ・・・百歩譲って一応同居人のコナン君は、預かり先が見つからなかったということで、大丈夫でしょうが、完全赤の他人の君はダメでしょう。そう言ったんですがね?

 

 神様のいじわる!こんなに信奉しているのに、どうしてわかってくれないんですか?!とまた意味不明な逆ギレをされて、お店を荒らしてくれました。そのせいでまたガラス戸が壊れてしまったんですよ。

 

 ちなみに、ちょうどそのタイミングでご帰宅なさったコナン君が、SANチェックに失敗して、青ざめていたのがとても印象的でした。君の知らない幼馴染を見た感想はいかがですか?と、笑顔でお尋ねしたくなる顔でしたねえ。その顔が見れただけで、いい加減冒涜的お仕置きをしようと思っていた蘭君を許そうという気になれましたもの!

 

 ま、毛利探偵へ、さらに借金は追加いたしましたがね!それはそれ、これはこれです。

 

 引き換えに、『九頭竜亭』の玄関は犠牲になったのですよ・・・我が愉悦の犠牲にね・・・。

 

 あ、蘭君には、縁もゆかりも伝手もない私より、ご友人の園子君を頼った方が確実と言ったら、それもそうですね!アドバイスありがとうございます!と出ていかれました。・・・破壊活動に関しての謝罪?もちろん、一言もありませんでした。まあ、狂人ですのでね。致し方なしですよ。

 

 

 

 

 

 え?コナン君だって他人だろうが?中身のことをお前が知ってるなら、無理に連れて行く必要はないだろうが?阿笠博士にでも預ければいいのに、なぜあえて連れて行くのか?ですか?

 

 おや。あの子の行く先行く先、ロクでもないことが起こっていることは皆さんご存知でしょう?死体と悪意に塗れてしまって・・・可哀そうに(ニチャァッ)。先日に至っては、ついに宇宙的恐怖の一端を垣間見たわけですし。

 

 そんな歩く事件吸引機の彼が、結婚披露宴という一大イベントに参加なさるんですよ?

 

 何も起きないわけがないじゃないですか!!(嬉々とした笑顔)

 

 これから開かれる新しい未来・・・新郎新婦の思い出と、御挨拶を語る御親戚の方々・・・寿ぐ参加者の皆様・・・そこに轟く絹を割かれたような悲鳴!血反吐を吐いて倒れ伏す被害者!SANチェックに失敗した参加者の皆さんの阿鼻叫喚図!

 

 素晴らしい!素敵だ!実に素敵だ!

 

 いやあ、考えてみれば、コナン君のようなものを、ただ居候させるだなんてもったいない!行く先で事件が起こるなら、積極的に連れ出して、積極的に事件を起こさせれば、私は楽しいし、コナン君も事件を解決できて一石二鳥じゃないですか!

 

 おやどうしました?皆さん。そこ気づくなよ!クソ邪神!と頭を抱えられて。どうせ皆さんだって、彼のことを陰で疫病神呼ばわりして、はたで見てるにゃ笑えるが、関わり合いにはなりたくないって腹の底で思ってたんでしょう?ほら、そんなギクリと肩をゆすられては、図星と言ってるようなものですよ?隠すならもっとちゃんと隠してくださらないと。

 

 とにかく、コナン君は、これからもあちこち連れて行って差し上げましょう、そうしましょう。フフッ。楽しみになってきました。

 

 

 

 

 

 まあ、まずは目前の結婚披露宴ですね。

 

 おや、招待主が気になりますか。え?またぞろ冒涜的事件関係者じゃないだろうな?ですか?まさか!松井君じゃあるまいし!

 

 前記しましたが、我が古書店に以前来てくださったお客様ですよ!何でも、絶版なさったプレミアの古書をお探しになられてたとか。

 

 で、それが偶然我が『九頭竜亭』に入荷されてたということで、めでたくご購入いただきまして!以降、お得意様としてお付き合いさせていただいているんです!

 

 御心配なさらずと、彼は魔導書もかじってなければ、神話生物の目撃経験もない、探索者ですらないごく普通の人間ですのでね。

 

 え?お名前、ですか?結婚して、入り婿となられたので苗字が変わりまして。旗本武君といいます。ちなみに、奥様のお名前は、旗本夏江さんだそうです。有名な旗本グループの一員だそうで。

 

 おやどうしました?絶対事件起こるだろそれ・・・などと一斉に呻かれて。

 

 いやあ、本当に、楽しみですねえ!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、披露宴となっている、豪奢なホールのエントランスで受け付けを済ませ、開宴時間までの暇つぶしをしています。

 

 少々少ないですが、御祝儀も包みました。

 

 いやあ、流石は旗本グループの結婚披露宴ですねえ。あちこちに有名著名人がいらっしゃるんですよねえ。(ちなみに『式』でないのは、式本番はすでに一族のみで済ませているので、お披露目を兼ねた披露宴を他関係者と一緒に、ということだそうですよ?)

 

 あ。あそこにいるのは、蘭君ですね。そのお隣にいるのが、園子君でしょうね。確か、鈴木財閥の跡取りだそうで。

 

 お二人とも、綺麗にドレスアップなさってました。

 

 そして蘭君は私の姿を認めるなり、高速で駆け寄ってきて、「ナイアさん!今日は一段ときれいですね!素敵です!」と狂人の目つきでおっしゃるのはいかがなものかと。

 

 「ちょっと蘭!いきなりどうしたの?この人は?」

 

 「初めまして。鈴木園子君ですね?お話は蘭君からかねがね伺っています。私は、手取ナイアと申します」

 

 園子君の問いに蘭君が答えるより早く、自己紹介します。彼女に任せてたら、狂人理論に基づいたカオス満載な返答を勝手に返して、下手をすれば周囲の人間にSANチェックを課すかもしれませんからね。

 

 「蘭君はうちの店に時々遊びに来てくれるんですよ。月並みな助言しか言えませんが、甘酸っぱいコイバナもしてくださりまして」

 

 「ヤダ、ナイアさんってば!」

 

 ポッと頬を染めて照れる蘭君。うんうん、そうしていると常人に見えるんですがねー。残念、彼女のSANは0に達しているのです。狂人ですね。お分かりでしょう?

 

 「そうだったんですね!よろしくお願いしますね!」

 

 ニッコリ笑う園子君。いやあ、財閥出身という割には、割と凡庸そうな感じの子ですねー。

 

 「コナン君もこんにちは!」

 

 「こんにちは、蘭姉ちゃん・・・」

 

 蘭君に挨拶されるや、足元のコナン君は微妙に不安そうな顔をしています。

 

 

 

 

 

 彼は先日の狂人全開モードを目の当たりにしてしまいましたからねえ。加えて、蘭君の異常をはっきりと異常と認識しているのは、現在私とコナン君くらいなんですよねえ。私はどうにかしようという気はありませんし、コナン君に至っては子供の言うことなんて!と信じてもらえませんしねえ。

 

 いやあ、米花町の大人たちの子供に対する信頼度は素晴らしいですよね!人は信じたいものだけ信じて、見たいものだけ見るという典型ぶりです。非常に笑えます。皆さんもそう思いません?

 

 え?お前と一緒にするな?邪悪と混沌に塗れたお前の笑いのツボが、人間に理解できるわけないだろ、ですか?

 

 おや、こんな高尚な私の趣味が理解できないとは・・・実に嘆かわしいですねえ。

 

 

 

 

 

 さて、そろそろ披露宴が始まるようです。会場内に案内され、用意されていた席に座ります。

 

 いやあ、流石は大グループの披露宴ですねえ。出てくるお料理も豪華です♪

 

 ちなみに、私とコナン君は新郎関係者側の席ですが、かなり端の方です。ま、新郎の個人的友人の位置に近いですからね。鈴木財閥の代表で来ているだろう園子君とその連れである蘭君は、中心に近い位置に座られています。

 

 蘭君はこちらに来たそうにソワソワされていましたが、園子君にたしなめられておりました。ここで狂人を炸裂させないとは、いい子ですねえ♪

 

 そして、披露宴開始です♪

 

 司会の進行のもと、新郎新婦の想い出語りや、ご友人方の余興やら、職場先の挨拶やらをはさみんでいきますが、途中で何やら激しくイスを蹴倒して、しわがれた声の罵声が炸裂して(「下らん茶番に付き合わせよって!」云々と)、誰かが出ていかれました。

 

 招待客の皆様は、何事?!と目を見張られてましたが、旗本グループ関係者の皆様は、ああまただよ、というような生温かな目をしてましたねえ。

 

 出て行かれたのは、白髪に紋付羽織袴を纏った、ご老人です。旗本グループの総帥にして、現当主旗本豪蔵氏ですね。

 

 何とも・・・どうも気難しい性格のようですねえ。あれでよくこの披露宴に参加・・・どころか、旗本グループそのものを経営できましたねえ。

 

 ああ、お年を召されたからですかね?人間は加齢とともに、頑固になったりするそうですからねえ。面倒なものです。

 

 そうして、そういったトラブルはあれど、そのまま披露宴は進行していきます。最初から織り込み済みだと言わんばかりですねえ。

 

 そうして、そろそろケーキ入刀、もとい、ウェディングケーキの一部をお互い大きなスプーンで食べさせあいこ(最近はこういう形式もあるそうで)というイベントのタイミングでした。

 

 『うひゃあああああああっ?!だ、旦那様あああああ?!』

 

 待ってました!メインイベント!!

 

 一斉に何事かと弾かれたように、ホールの外から聞こえた大絶叫に、全員が絶句しました。

 

 ほぼその直後に、弾かれたように走り出した人影3つ。1つは言わずもがな、先ほどまで隣でオレンジジュースを飲んでいたコナン君、そしてもう2つは。

 

 ・・・おやまあ、彼らもいらっしゃるとは。招待客が結構いましたし、蘭君たちに気を取られて、気が付きませんでしたよ。

 

 しかしまあ、これから盛り上がりそうですねえ。ウフフフ。

 

 もちろん、私もあわてた風を装って、後に続きますよ!メインイベントなんですよ?!出歯亀しないでどうします!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 被害者は、大方の予想通り、旗本豪蔵氏。

 

 殺害方法は、包丁でグサッと一突き。ホールから離れた親族の待合で、お一人でおられたところを・・・だそうで。

 

 もちろん、警察が呼ばれることになりました。

 

 気の毒に、せっかくの披露宴は中止です!ドレス姿の新婦さんは、新郎さんに抱きついて、すすり泣かれておられます。楽しい思い出が血塗られた惨劇に塗り替えられてしまいました!可哀そうに(ニチャァッ)。

 

 ちなみに、警察到着より早く、救急車に連絡と現場保存に動いたのは、コナン君とこの二人です。

 

 「松井さんと成実さんも来てたんだ・・・」

 

 「今はナルミじゃなくて、セイジって呼んでくれるかな?」

 

 コナン君の言葉に、成実君が苦笑して見せます。

 

 今の彼は普段の黒いワンピースにポニーテールという清楚系女装姿ではなく、礼服に尻尾髪という、柔和な優男で通じる姿でいます。言葉遣いもやや男寄りにしているようですね。

 

 で、その隣にいるのが、白髪を撫でつけ、眼鏡(おそらくは伊達眼鏡)をかけた、同じく礼服姿の松井君です。

 

 「新婦になる夏江さんがね、松井先輩の彼女の友人で。

 

 僕たちとも個人的な付き合いがあるんですよ。ね?先輩」

 

 「まあな」

 

 ぶっきらぼうにうなずく松井君は、夏江君のそばで同じく泣きながら彼女を慰める女性を見やりました。

 

 ああ、設楽蓮希君ですね。名門音楽一族の一員ですし、2年前のセッションで蓮希君と羽賀君を除いて一族は全滅していましたからねえ。何人かは生きてますけど、病院にいまだに入院中ですのでねえ。回復は難しいらしいですよ?蓮希君自身も探索者としては引退せざるを得ないほどの精神ダメージを食らったようでしたし。

 

 「従兄弟が行方不明になったとかで、大変な中でこの騒ぎですから・・・」

 

 ぽつりと言って、成実君は蓮希君たちに心配そうな眼差しを向けます。

 

 

 

 

 

 そうそう。彼は救急車が到着するまではと、松井君やほかの人たちに見てもらいながら、念のため蘇生処置を試みましたが、徒労に終わりました。出血多量で、ショック状態でしたからねえ。

 

 おかげで、今の成実君はせっかくの礼服が血塗れです。

 

 

 

 

 

 「従兄弟?」

 

 「(こないだの美術館の時、一番最初に斬られた奴。あいつだ)」

 

 不思議そうに尋ねたコナン君に、その耳元にボソッと囁きかける松井君。誰かに聞かれないように声を潜めての発言なのでしょうが、私には通じませんよ!なぜなら私、邪神ですから♪

 

 「(遺体がない、つまり行方不明のままだ。悪いがこればかりはな)」

 

 松井君はヒソヒソとコナン君に囁きかけてから、立ち上がります。コナン君もそれを聞いて複雑そうな顔をしますが、すぐに部屋の周囲の探索に向かわれました。

 

 

 

 

 

 そうそう。後日伝手を使って調べ上げて分かったのですがね。

 

 行方不明になったという旗本夏江嬢の従兄弟――旗本一郎君は、ご自宅にピックマン氏の絵を大量にお持ちになられてたとか!

 

 フフッ、道理で低SANのはずですねえ。

 

 で、そちらの方は、夏江嬢から相談を受けた蓮希君を通じて、松井君と成実君が二人で捜索。まあ、顔写真見せられて、あっ(察し)となった挙句、ピックマン氏の絵を発見して、二人してそういうことかよ!と頭を抱えられたそうですよ。

 

 その後は、清掃業者を装ったMSOの回収部隊によってピックマン氏の絵画をことごとく処分、一郎君の方は、残念ですが・・・と二人による捜索は打ち切り、あとは警察に、となったようです。

 

 おや?そういう捜索は通常探偵に持ち込まれるのでは?という至極真っ当な疑問ですが、それは残念ながら無理ですね。例の気難しいご老人の旗本豪蔵氏が、超絶探偵嫌いとかで、雇いたくても無理だとか。ドラマを見るのも禁じられているそうですし。

 

 それで、探偵事務所の非常勤であり、そういう伝手をもっている松井君たちに話が持ち込まれたらしいんですねえ。

 

 

 

 

 

 えー、話を戻しまして。

 

 到着した警察の皆さんに状況を説明しまして、既に遺体となってしまった、旗本豪蔵氏を運び出し、そのまま捜査開始です。

 

 おや、こんにちは、目暮警部。フフッ。出会いがしらに顔をひきつらせながら死神呼ばわりとは。

 

 まあ、死神でも一応、神の一柱ですからねえ。褒め言葉と受け取っておきましょう。おや、まるで奇怪なものを目の当たりにしたような顔でこちらを見られていかがなさいました?

 

 「変わった方ですなぁ・・・」などと言いながら彼は離れ、とりあえず集められた関係者一行から話を聞くことにしたようです。

 

 次々自己紹介と、犯行時刻(予想時間は蘇生ついでの検視で成実君が割り出していたのを警部さんにお伝えしてました)に何をしていたかというのをお伝えしていきます。

 

 そして。とある人間の番になったところで、警察関係者の一部・・・というより、数人を除いた大部分の人間が、青ざめて絶句しています。

 

 「ま、つだ、君・・・」

 

 小さく呻く彼女は、確か佐藤美和子刑事、でしたか。

 

 最初こそ青い顔をされて松井君を見てましたが、すぐにその目が期待に輝き出されています。今にも松田君!生きてたのね!と言って駆け寄りそうな感じですね。

 

 攻略本によると、彼女も死神がファンにつかれているようで、父親の死に始まり、思いを寄せた松田刑事は亡くなりと・・・なかなか素晴らしい前歴をお持ちでしたね。

 

 いやあ、零君に出会う前でしたら、面白そうとチョッカイをかけているところなのですが。

 

 おや、私の邪神トークより、松井君の反応が気になりますか。

 

 そうですね。一言でいうなら、石像ですね。アイムスタチュー、プリーズドントウォーリー。そんな感じでしょうか。直立不動、微動だにせず、眉一つ動かさないんですよ。

 

 ふーむ。【心理学】!

 

 おやおやおや♪眼鏡に隠していますが、目線がすごいです。「生きてて悪かったなクソッたれ」って物語ってるんですよ。唇も動きませんけど、あれは気を抜いたら罵倒が口をつくから歯を食いしばって黙ってるんでしょうねえ。蟀谷がヒクヒクしてらっしゃいます。

 

 NDK〈ねえどんな気持ち〉?NDK〈ねえどんな気持ち〉?

 

 無実を信じてくれなかった同僚たちに再会して、幽霊見るように見られてどんな御気分です?

 

 そしてコナン君はそんな空気をあえて読まずに、「松田さんって?」と無邪気を装って尋ねます。

 

 アッハハハハハ!君、今の状況で、その発言は核弾頭ですよ?!さしずめ今の松田君としては、ルルイエで寝ていたのに核でたたき起こされたクトゥルフ君のような心地でしょうね!

 

 握りしめた彼の拳がマナーモードに突入してるのが、見えないんでしょうか?

 

 で、そんな彼をチラチラ見ながら(中には本当に生きてたんだ!と期待しているような目をして)、警察の皆さんは好き放題にしゃべるしゃべる。

 

 一匹狼で勝手だったけど、いい奴だった。口は悪かったけど、思いやりにあふれていた。

 

 で、世間的に語られている誘拐殺人の容疑で逮捕された挙句、裁判を待たずに留置場で自殺ということを、語り終えた佐藤刑事がポツリとこぼしました。

 

 「本当はそんなことするわけがないのに・・・どうしてって・・・」

 

 いやあ。吹き出さなかった私を褒めていただきたいですね。

 

 しかも、松井君が本人だと名乗り出るのを期待しているかのように、みんなしてチラチラと松井君を見ているんですよ?ヒドイひどい。

 

 皆さん、だぁれも松田陣平君の無実を信じず突き放した分際というのに、いなくなった今更彼の無実を主張されるんですか?!矛盾極まれり。人間なんて矛盾の塊ですが、これはひどい。

 

 ついでに言うなら、視界の端で涙をぬぐった蓮希君が眉を吊り上げているのが見えます。

 

 これはこれは。ま、彼女は事情を知ってますからねえ。しかも恋人のことですし。今にも「何調子のいいこと言ってるのよ!」と怒鳴りそうですね。

 

 しんみりしながらチラチラ松井君を見やる警察勢と、無視してスタチューモードを決め込む松井君と、怒髪天を衝く寸前の蓮希君と、おろおろしている野次馬たち。(そして内心爆笑している私)

 

 いよいよ収拾がつきそうにないですねえ。

 

 「そこまでだ」

 

 そんな空気を、一つの低い声が切り裂きました。

 

 

 

 

続く続く続く…そして続く。

 





【結婚披露宴が血塗れになって、ついでに警視庁捜査一課による愁嘆場に爆笑したナイアさん】
 正式にコナン君が居候となり、事件にも順調に巻き込まれまくっている。
 最初は脇で見ているだけで、話の中心に位置するなんて面倒と思っていたが、コナン君の体質を吟味してみれば、好きなだけ事件に係わりやすくなるじゃないか?!と啓蒙的閃きを得て、好きなだけ好きな場所に連れて行くことにした。
 だから、最も血生臭いことから縁遠くなくてはならない結婚披露宴にも遠慮なく連れて行く。
 ちなみに、せっかく直したお店の玄関は、またしても狂信者蘭ちゃんに破壊された。コナン君によって愉悦が得られたので、とりあえず、彼女に対するお仕置きは見送ることに。
 なお、一応人間に擬態しているので、そこそこ友人付き合いはある。年賀状や暑中お見舞いのやり取りも欠かさない。
 それもあっての結婚披露宴の招待だった。
 ついに起こった殺人事件をメインイベント呼ばわりする。そして始まるだろう犯人探しという名の疑り合いに期待を大にするが、思いもよらない人間が招待客に名を連ねていたことで、思いがけないイベントが発生する。
 傍目にはオロオロしている風を装いつつ、警視庁捜査一課による警視庁捜査一課のための愁嘆場に、内心爆笑した。
 え?!お前らあいつのこと見捨てたじゃん!wwwww今更何綺麗ごと抜かしていい人ぶってるの?!超絶草ぁ!
 松井君もそこで我慢せずに、蓮希君と一緒にキレて殴っていいんだよ?!勢いに任せて人殺ししてくれたら、もっと面白いのに!

【邪神様の思惑などつゆ知らず、好奇心のまま藪を突いたコナン君】
 両親主催のなんちゃって誘拐事件によって落ち込みモードになったものの、再会した探索者たちによって、一人じゃないと勇気づけられ、立ち直った。
 今回は、ナイアさんと一緒に結婚披露宴に出席することになった。俺、関係ない他人だけど、いいのかよ?といったが、ナイアさんは楽しそうに笑うだけで教えてくれない。
 ・・・自分の死神振りの自覚は徐々についてきているが、それを邪神様に面白がられているとは微塵も思ってない。
 学校から自宅に帰ったら、狂人全開の蘭ちゃんが、我儘ブッこいてお店の引き戸を破壊している場面に遭遇した。元々脅迫に空手使う悪癖があったけど、ここまでじゃなかった。オレのかわいい幼馴染はどこへ行ってしまったんだ・・・?SANチェック(1/1D6)。
 結婚披露宴の会場でまたしても事件に遭遇。そして再会する松井さんたち探索者たち。探索者は惹かれあう。
 成実さんがとりあえず蘇生・応急処置を試みるが、被害者は助からず。そして、成実さんがそっと手を合わせたのに、あわてて自分も手を合わせる。・・・そうだよね、普通人が死んだら先にその死を悼まないといけないのにね。
 そして到着した警視庁捜査一課の皆さんと捜査開始!と思いきや、様子がおかしい。みんな松井さん見て、幽霊見たようなひどい顔、あるいはすごく嬉しそうな顔してる。
 松田って誰?と軽いジャブのつもりで質問した。ジャブどころか核弾頭なのだが、気が付いていない。
 ・・・情報に夢中で、松井さん本人が噴火寸前のスタチューモード決めているのにもまだ気が付いていない。

【恋人同伴の披露宴で、会いたくもない顔に再会しちゃった松井さん】
 美術館の一件の後、恋人として付き合ってた蓮希さんを経由して、旗本夏江さんから行方不明の従兄弟である旗本一郎君を探して!という依頼が持ち込まれ、捜索に乗り出していた。
 写真見せられた時点であっ(察し)となってた上、一郎君の自室からは、ピックマン氏謹製のモデルグールの絵が出るわ出るわ。そういうことかよ!と成実さんと一緒に頭を抱えた。
 結局絵は、清掃業者装ったMSOの回収部隊に処理してもらって、一郎君に関しては、どうも美術館に行ったまでははっきりしているけど、結局見つからないから後は警察へ、とした。
 情けなかろうが、それしかないから。知らない方が幸せなことも世の中にはある。
 その後、お世話になったからと披露宴に友人枠で招待される。何もできなかったのに!と言っても、夏江さんはいいのいいの!たくさんの人にお祝いしてほしいから!と笑うばかり。優しみ・・・。
 でも、せっかくの披露宴は血塗れの惨劇になりました。
 被害者を救護しようとしたら、まさかの名探偵と再会。
 とりあえずわかる範囲で、探索して警察を・・・警察?
 ・・・逃げるわけにもいかず、結局望まぬ再会をすることに。
 一応髪の色と目の色誤魔化しているし、戸籍も経歴も別人にしてるけど、わかる奴には分かる。
 最初は、生きてて悪かったなクソッたれと半ばいじけが入っていたが、好き放題言われた挙句、自分たちは彼の無実を信じていたのに!とか言われて、はあ?!今更過ぎるだろ!と腹立てた。
 お前ら留置場で散々人のこと罵倒したの、忘れたんか!佐藤!お前、何悲劇のヒロインぶってんだ?!
 でも、それ口にしたら、同一人物と認めるようなものなので、必死に我慢する。その結果が噴火寸前の能面スタチューモード。
 蓮希ちゃんが怒っているのもわかっている。でも我慢してくれ!腹立ててるのは俺も同じだから!
 ちなみにコナン君に対しても、それ今の事件には関係ないだろ?!とちょっとムカついた。

【最後に口を挟んだ人】
 少なくとも常識はある。そして彼は3年前の真相と取捨選択の結果を受け入れている。
 正体は次回に。





 Q.原作3巻の『豪華客船連続殺人事件』は、犯人である旗本一郎青年は行方不明のままだし、未発生?
 A.ザッツライ。帰りの船旅は何事もなく、済みました。バタフライエフェクトで、そもそも毛利探偵事務所一行(要は主人公たるコナン君)が居合せてません。
 結婚式も平穏無事に済み、武君は船の中で、豪蔵さんに「お前あいつの息子だろうが。夏江に取り入りやがって。仇討か?仇討なんか?おおん?」と詰問されましたが、最終的に「まあええわ。変なこと企んでるってわかったら、ただじゃおかねえからな」と威嚇されるだけで済みました。
 まあ、何事もなく天寿を全うできるとは誰も何も保障されてなかったので、このザマです。

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