邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 新章スタート。今回も胸糞悪さと冒涜感たっぷり、SAN用のヤスリ満載でお届けいたします。
 ひょっとしたら厳しめ以前にキャラヘイトになるかもしれません。少年探偵団に慈悲は?子供ですよ?そんなものはないと邪神様がおっしゃってました。可哀そうに。
 もっと可哀そうなのは、間近で冒涜と無力を経験させられることになった名探偵でしょうか。
 強く生きるんやで。(親指グッ)
 なお、今回は導入編です。事件の発端とも言い換えられます。ひたすら胸糞が悪いのでご注意を。
 副題:邪神様、激オコプンプン丸。触らぬ神に、何とやら。


【#20】これぞ邪神流リベンジ!少年探偵団?自殺団の間違いでは?

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 え?いきなりタイトルが不穏過ぎる?何の話です?

 

 旗本グループの結婚披露宴(という名の殺人事件)から数日。マスコミは実質的な後継者と目されていた旗本武・夏江ご夫妻の悲劇を面白おかしく取り上げていますねえ。

 

 続報が入り次第、ということだそうですが、何しろ当事者は全員亡くなられて残りの遺族はよく知らないという状態ですからねえ。警察の捜査も手こずられているようで、待て続報!状態が続いていますねえ。

 

 それはそれは面白い事情が隠れているとお見受けしますが、まあ情報が入らない以上、待つしかないのでしょうねえ。

 

 

 

 

 

 おや、その後のコナン君のご様子、ですか?

 

 え?前回お前の暴言で落ち込んでただろうが、ですか?暴言も何も、私は事実しか言ってないつもりですが?

 

 だって、彼も殺人事件に対してトリックも何もない、つまらないと言ってましたし。いやあ、不謹慎な発言ですね。素晴らしい。

 

 しかし残念。彼は今、留守にされてるんですよ。スケボーにのって、ご近所まで出かけられてしまいまして。

 

 何事でしょうねえ?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 コナンが松井に呼び出されたのは、公園だった。

 

 元太・光彦・歩美の3人組とも遊ぶことがあるが、今日は歩美の習いごとがあるということで、彼らとは遊ぶ約束はしていないのだ。

 

 乗ってきたスケボーを片手に、コナンは待ち合わせの場所へ駆け寄った。

 

 昨今の嫌煙ブームの影響で、そこかしこにある喫煙所や屋外に設置された灰皿はことごとく撤去の憂き目に遭っているというのに、そこにはしぶとくぽつんと灰皿が置かれていた。

 

 そして、その灰皿のすぐそばで、松井が煙草を吹かしている。

 

 相変わらず、奔放な白髪に、サングラスと皮のジャケットという、ともすればチンピラにも見えそうな格好だ。

 

 「よう」と軽い調子で片手を上げる松井に、「こんにちは、松井さん」とコナンはちょこちょこと歩み寄って挨拶をする。

 

 「それで、大事な話って?」

 

 「・・・この前の事件、覚えているか?」

 

 「当たり前だよ」

 

 少しサングラスをずらした松井の問いかけに、コナンは大きくうなずいた。

 

 「関係者の一人、旗本武と夏江の夫妻が、亡くなったことは?」

 

 「知ってる。ニュースで見た」

 

 ここでコナンは、少し口をつぐみ、視線を伏せてから言った。

 

 「遺産絡み、なのかな。事件は終わったって思ったのに、どうして・・・」

 

 そんなコナンの目の前に、唐突に封筒が差し出された。松井が差し出してきたのだ。

 

 「差出人は旗本北郎となっているが、中身は旗本武からだ。手紙を出した時点で、腹をくくってたらしい」

 

 封筒を手に取ろうとしたコナンから、松井はヒョイッと封筒を高く上げて手が届かないようにしながら言った。

 

 ムッとした顔をしたコナンは、その言葉を聞くなり、ますます険しい顔をする。

 

 つまりは、重要な事件の手掛かりということだ。なぜそれを見せてくれないのだ。そもそも、それならば、さっさと警察に渡すべきだ。

 

 そんな非難をにじませたコナンの視線をものともせず、松井は封筒を手に持ったまま続ける。

 

 「あの事件を解決させたのはお前だろう?あのナイアって女は隠れ蓑か協力者か。とにかく、お前にはその手紙を読ませておこうと思った。その権利があると思った。

 

 読んだら、どうしたいか、よく考えてから言え」

 

 松井の声も調子も、落ち着いた静かな物なのに、どこか凄みを感じながら、コナンはようやく渡された封筒――既に開封済みのそれから、便箋を取り出して目を通した。

 

 

 

 

 

 手紙の内容は、旗本武の遺書であり、彼が自殺に至った事件の真相が書かれていた。

 

 義祖父の事件後、遺産を放棄して北海道に移ろう、小さくても牧場の経営をして、生活していこうと、新生活の計画を立てていたこと。

 

 それが間もなく、壊されたこと。

 

 遺産放棄の手続きを行い、それを周囲に周知するより早く。

 

 夏江が、性的な暴行を受けた。下手人は、姉・秋江の夫に当たる、竜男。

 

 暴行の事実をばらされたくなければ、遺産をよこせ。

 

 そう脅迫されたそうだ。だが、既に遺産放棄の手続きは終えてしまっている。

 

 夏江は耐え切れず、自殺。

 

 彼女の遺書から事の経緯を知った武は、復讐を決意。

 

 遺書には、どうか夏江の受けた仕打ちを誰にも告げないでほしい、調べ上げないでほしいということ。かなうなら、豪蔵を殺した犯人を捜した手取ナイアにも、やらないでほしいと伝えてほしいと書かれていた。

 

 

 

 

 

 せっかく祝ってくれたのに、こんな形で終わらせてしまうことを、申し訳なく思う。どうか、お元気で。

 

 そう締めくくられていた遺書から顔を上げたコナンを、松井がサングラスをずらして、金縁の瞳で射抜く。

 

 「先に言っておく。俺は、この遺書の望みに従おうと思う」

 

 「それは!」

 

 「コナン」

 

 間違っているとコナンが叫ぶより早く、松井はサングラスを完全に取り去り、ひざを折って、コナンの視線に合わせながら、言った。

 

 「お前の初恋の相手、いないなら母親を思い浮かべてみろ。そいつが同じ目に遭ったのを、全く見知らぬ大勢の人間に、知られてもいいのか。

 

 それがたとえ、捜査上では正しいことだとしても。

 

 この手紙が警察に届けられて、何か変わるのか?誰か助かるのか?

 

 それを、納得いくように説明してくれ」

 

 ここで松井は言葉を切ると、少し険しい顔で続けた。

 

 「お前、誰かに教わらなかったのか?

 

 “自分がされて嫌なことは、他人にしてはいけない”。

 

 俺は、自分がされて嫌なことだから、やるつもりはない」

 

 コナンは言葉を失い、手の中の便箋と封筒に目を落とした。

 

 

 

 

 

 “自分がされて嫌なことは、他人にしてはいけない”。

 

 こうまでそう、はっきり言われたことがあっただろうか。

 

 ・・・きっと、なかった。だって、自分の気持ちなんて、蘭や両親の前には、些細なことだ。男なら、真実のためなら、嫌なことでもしなければならない。そう、思っていたから。

 

 もし、旗本夏江に起こったことが、身近な女性――例えば、蘭や母・有希子であったなら・・・。

 

 嫌だ、とコナンは思った。

 

 そんなこと――女性としての尊厳を汚されたことなど、誰にも知られたくない。メディア越しに、見知らぬ誰かに「かわいそー」「ひどいめにあったねー」「犯人、許せないねー」と他人事調子に、あるいはしたり顔で、囃し立てられる。考えただけでもぞっとした。

 

 否。

 

 きっと、これは、今までも目の当たりにする機会はあったはずだ。

 

 工藤新一が、見て見ぬふりどころか、認識すらしていなかっただけで。

 

 

 

 

 

 コナンは、キュッと唇をかみ、手に持った便箋に皺が寄るにもかかわらず強く握りしめた。

 

 きっと、この決断は、間違っている。否、正解なんて、存在しないのだろう。それでも、コナンは決めるのだ。

 

 「松井さん」

 

 短く呼びかけ、コナンは手の中の封筒の皺を一度伸ばし、その上でそれをビリビリと適当に引き裂いた。

 

 「ボク子供だからよくわかんなかった!だからこれ、破って捨てていいよね?」

 

 子供らしい無邪気な口調で言ったコナンに、松井は静かにうなずいた。

 

 そうして、コナンから受け取った破られた便箋と封筒を灰皿に中に置き、ライターで火を点ける。

 

 実物は残さない。証拠があれば、それだけで情報を残してしまうから。なかったことにする、隠すと決めた以上、隠滅するに越したことはないのだ。

 

 「・・・悪いな」

 

 燃え尽きたのを確認してからポツリとつぶやかれた松井の謝罪に、コナンは「何のこと?」と無邪気を装って答える。

 

 同時に、彼もまた、これが正解ではないと知っていることを悟る。

 

 いずれにせよ、もはやコナンたちにできることはない。

 

 できるなら、世間が早めにこの事件を忘れてくれることを、彼らは静かに祈った。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、旗本武・夏江ご夫妻の自殺からしばらく。

 

 数日ほどは落ち込んだ様子のコナン君が立ち直られたころのこと。

 

 思い出すだけで不快な出来事が、ありました。

 

 前記しましたが、基本的に私はコナン君が何をしようが、積極的に関知するつもりはありません。私に面倒と迷惑をかけなければ。

 

 だから、コナン君?こんな面倒を持ち込んでくるとは、本当にいい度胸をしていますねえ。

 

 君は私のことを何だと思ってるんです?私は狂信者〈カルティスト〉どころではない、邪神なんですよ?

 

 人間なんて塵芥ではありますが、愛しい愛しい遊び相手です。ですが、例外はあるんですよ?

 

 頭の悪い、自身のレベルをはき違えたバカは嫌いなんです。

 

 そして私は、嫌いな相手に容赦してあげる義理も必要もないんですよ?もちろん、存じてますよねえ?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 「「「こんにちは~!」」」

 

 「た、ただいま、ナイア姉ちゃん・・・」

 

 「お帰りなさい、コナン君。それからいらっしゃい。コナン君のお友達でしょうか?」

 

 その日、元気のいい挨拶とともに古書店『九頭竜亭』になだれ込んできたのは、子供が三人と居候のコナン君でした。

 

 全員ランドセルを背負っていることもあって、学校帰りなのだなと察せられます。

 

 ただ、コナン君の顔が微妙に引きつっています。

 

 ええ。頼むから大人しくしておいてくれと子供たちに目配せしています。

 

 ・・・バカな子ですねえ。おとなしくしておいてほしいなら、連れてこなければいいものを。

 

 大方説得に失敗し、押しかけられたというところでしょうか。

 

 「ここがコナン君のおうちなんだ~!」

 

 「ずいぶんばっちい本屋だな!」

 

 「元太君、ここは古本屋ですよ!そんな本当のことを言っては失礼でしょう!」

 

 元気いっぱいに店の中を駆け回る3名のお子さんに、コナン君はハラハラしながら「おい、お前ら・・・」と止めようとしてます。

 

 チラチラと私の方を見上げてきているのは、なぜでしょうねえ?

 

 私ですか。ええ、笑みを絶やさずに、お子さんたちを見守ってあげてます。

 

 例え、“ばっちい本屋”呼ばわりされて“本当のこと”と切って捨てられようが、子供の言うことを真に受けるなんて、大人げなさすぎますからねえ。

 

 ・・・このガキどもも、鱗や火ぶくれ、粘液や触手で冒涜的にして差し上げましょうかねえ。

 

 ちなみに、にこやかに笑みを絶やさないものの無言の私に、コナン君は徐々に顔色から血の気を引かせていきます。

 

 あらら。そんな顔をしなくても、君には取り立てて何もする気はありませんよ?今のところはね。

 

 どうにかコナン君は彼ら子供たちを店先から引き離そうとなさってますが、子供特有の妙な執着と好奇心が先走ったか、あれ何これ何どうなってるの攻撃がコナン君に炸裂し、彼がそれを説明してたところで、残り一名がやらかしました。

 

 太っちょのグリグリ頭の男の子(小嶋元太君でしたか)が、なぜか店先でサッカーボールでリフティングを始めてしまいまして。

 

 いや、外でやってもらえませんかね?そう言って止めたんですよ?でも、ちょっとムッとしたような顔で見上げてから、私の目が届かない奥の棚のあたりに移動して、再開。姿は見えなくても、音は聞こえるってわかってます?このお店、普通の本屋のようにBGMとかかけてないんですよ?丸聞こえですよ?

 

 で、コナン君が元太君の姿が見えないと気が付いてあわてたときには、時すでに遅し。ガラガタガシャンっと何かがぶつかって本棚の倒れる轟音が聞こえました。

 

 一同で覗き込むと、倒れた本棚、ぐしゃぐしゃに散らばった本の数々、サッカーボールを手に引きつった顔で硬直している元太君が役満で待機なさってました。

 

 さて、どうしてくれましょう?

 

 ちなみに、コナン君蒼褪めた顔で、慌てふためいて「何してんだ元太!」って怒鳴って彼を保護者のごとく怒鳴って、こちらに謝罪させようとしたのには笑いそうになりました。

 

 どう見たって、コナン君の方が小さな男の子なのに、まるで言動がかみ合ってなんですから。

 

 とはいえ、こうなってしまった以上は仕方ありません。

 

 「君、おうちの人のお名前は言えるかな?電話番号はわかるかな?」

 

 ニッコリ笑って言った私に、とうとうコナン君は頭を抱えてうずくまってしまいました。

 

 おや、失礼ですね。一応擬態している身の上なんですから、そんなひどいことは、おや?

 

 ビリッバサバサバサッという、紙の破ける音とぶちまけるような音に振り向けば、残る二人の少年少女が、何をどうしたか貴重な売り物を真っ二つに引き裂いて、バラバラのページを床にぶちまけていました。

 

 わずかな残骸を手に、立ちすくむ子供たちに、私は静かに目を眇めました。

 

 今度こそ、コナン君が今にも卒倒しそうな様子で顔をひきつらせましたとも。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 静かに、私は湯呑に口づけます。

 

 ショゴスさんが淹れてくださった、京都の玉露はとっくに冷め切ってしまっていますが、まあ冷めてもおいしいので問題はありません。

 

 ええ。化身として活動している人間の臓腑の奥で暴れ回る、この名状しがたき感情の波。沸き立つ極寒、あるいは静かなる灼熱の衝動。端的な単語に直すなら、まさしく“怒り”と言う言葉が最も適切でしょう。

 

 

 

 

 

 まったく、嘗めた真似をしてくれますねえ。

 

 ええ。この身は一応一般人を装ってます。ですが、怒りというのも相応に持ち合わせているのですよ。

 

 まあ、本気で怒るというのも大人げないとは思いますが、神としての威厳とメンツというのもあります。

 

 おや、矛盾していると言われますか?例えば、その辺のダンゴ虫が、口を利いていきなり開口一番に罵倒してきたとして、あなた方はそれに腹を立てずにいられますか?隣を歩いている友人に、ダンゴ虫に馬鹿にされてやんのーpgrwwwと言われて、プライドを保てますか?そういうことですよ。

 

 そんな青ざめた顔で、私の顔色をいちいち伺ってこなくてもよろしいんですよ?今なら誰彼かまわず、呪文で拷問にかけてやりたい気分なんです。

 

 ああ。イライラする。イライラする。あのクソと無能と無価値しか詰まってない動物性たんぱく質の塊どもめ。

 

 この世の真理を見せつける前に、死体も魂も原型残さずにズタズタにしてやろうか。

 

 

 

 

 

 まあ、いきなり私が怒り心頭でいる意味が分からないのはごもっともでしょう。

 

 件の店へ被害を出した子供たちからご両親の連絡先を聞き出しまして、ご連絡したんですよ?被害総額の請求(いやあ、総額で0が8つ付くことになりました!これはすごい!)なども合わせてしたんですがね?

 

 3人の保護者、全員が何と支払い拒否しました。

 

 意訳になりますが、「子供たちから目を離したお前が悪い」「子供たちの手の届くところに壊れそうなものを置いといたお前が悪い」「子供たちが壊れた品物のそばにいただけだ。本当に壊すところを見たのか」などなどなど・・・。

 

 フフッ。屁理屈としか言えないひどい言い訳を聞きました。

 

 しかしながら、残念ながら当店は監視カメラなどは置いていません。証拠の映像などありません。コナン君が一緒に見てはいましたが、この手の輩は子供の言うことなんて、と一蹴するに決まっています。

 

 で、そのままこちらにひとしきり罵倒文句を吐き出してから、お帰りになられました。

 

 終始笑みを崩さなかった私に対し、コナン君だけがアワアワしてたのが新鮮でしたね。

 

 どうにか、弁償を受け入れさせようと、あれこれと説得しようとしてましたが、大人たちは、大人の話に子供が偉そうに口をはさむんじゃない!と憤慨して、彼は途中で子供たちと一緒に放り出されてしまってましたし。

 

 

 

 

 

 至る、現在です。

 

 実に、しつけの悪いガキどもと、頭の悪い親どもだと思いませんか。ああいう連中は存在するだけで酸素と有機物の無駄な消費になりそうだと思うんです。

 

 私は人間を愛していますが、ああいうのはいただけませんねえ。生理的嫌悪を感じてしまいます。

 

 ああいうのを見てると、苦しめてのた打ち回らせて血反吐を吐かせて弄ぼうと思うより早く、さっさと失せろ見苦しいものを見せるな最下級生物がって罵倒したくなるんですよねえ。

 

 え?どっちもどっち?おや、だいぶ違うと思いますよ?前者なら、私の気分次第では助け舟を出してあげようという気にもなりますし、頑張ったなら相応の報酬をご用意いたしますよ?

 

 後者はダメです。絶対に、生かしてやらない。そんな資源と時間とスペースと労力の浪費にしかならない無駄、さっさと削除するべきです。

 

 みなさんだって、要らないゴミは早急にゴミ箱に捨てて、ゴミの日に回収場所に出してしまうでしょう?同じことです。

 

 

 

 

 

 まあ、つまり何が言いたいかといえば。

 

 あのガキどもとその保護者、どうしてくれよう。

 

 コナン君が、私に対して、弁償はオレがするから彼らを許してくれ云々言ってますが、もうこれはそんなレベルの問題ではないんです。

 

 ええ。これは、決定事項です。

 

 本来これは、赤井君が来るまで寝かせておこうと思っておいたネタなんですが・・・まあ、いいでしょう。

 

 ネタはあれこれあります。仕込みと経過観察最中のものが大半ですが、良さげなものがいくつかあります。

 

 あとは仕上がりをごろうじろ、ってやつですよ。

 

 

 

 

 

 そうそう、コナン君。

 

 科学者にして随筆家の寺田寅彦という方は、こんな言葉を残しているんですよ?

 

 『天災は忘れた頃にやってくる』

 

 いやはや素晴らしい格言だと思いませんか。

 

 最悪も災厄も罪悪も、忘れた頃にやってくる。平穏に耽溺して臓腑の奥まで安穏で満たしている頃に、全てを引き裂いて台無しにする。

 

 フフッ。まさしく我々らしい!

 

 

 

 

 

 つまりはまあ、非常に腹立たしくはありますが、ほんの数日我慢してから、計画は実行に移したということです。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 うるさいですねえ。見せものは静かに見るというのが私の好みなんですよ。

 

 この前のは、落ち着ける環境とはいえ、トイレの便器の上でしたからねえ。

 

 やはりソファでゆったりリラックスしながら、お茶菓子でも嗜みながらが一番です。

 

 ちなみに、本日のお茶うけは、ショゴスさんの謹製のアプフェル・シュトルーデルです。

 

 蕩けるフィリングと林檎の濃厚な香りと甘み、アーモンドの歯ごたえと生地表面のサクサク感が絶妙な一品です。

 

 ・・・ぶっちゃけ、もうお夕飯終わった時間なんですがね。夜食といっていい時間のお菓子は、非常に背徳的な味がします。

 

 まあ、太りませんがね。私、邪神ですので!

 

 普通の人間ならば栄養やら皮下脂肪やらに転換される食物は、完全に味覚を彩るだけの娯楽でしかないんですよ。

 

 ふふん、うらやましいでしょう?

 

 おやおや、一部の人が血涙を流しながら睨んできてますよ。まあ、所詮動物性たんぱく質の塊という肉身に縛られる人間です。体重だ脂肪だメタボだとくwだwらwなwいw悩みに振り回されているのがお似合いです。

 

 ・・・だからうるさいと言ってるのがわからないんですかねえ?

 

 舌打ち交じりに、一度中継していた遠視魔術を打ち切り、ソファから立ち上がると、廊下に続くドアを開けます。

 

 そこには、息を切らして蒼褪めた顔をしているコナン君がいます。

 

 ・・・ちなみに、今の時間帯は健全な小学生なら、とっくに眠りに落ちている真夜中ですよ?ええ。

 

 コナン君も、とっくにお風呂に入ってパジャマに着替えて、お休みといって自室に引き上げたはずなのですが、なぜ私服に着替えているのでしょうねえ。

 

 「おい!何で玄関が開かねえんだよ!勝手口も開かねえし、店の方の引き戸は開いたけど、外に出られねえって何だよ?!」

 

 「ああ。≪ナーク=ティトの障壁≫を展開していますからねえ。単純に言うなら、不可視の壁を張っているんですよ。この家は現在、外界から隔離しているんです」

 

 しれっと言って、私はコナン君を見下し、目を細めます。

 

 「ところで、君はもうすでに寝たのではないですか?」

 

 「あ、いや、その・・・」

 

 「勘弁してくださいよ。何度も同じことは言わせないでください。

 

 “PTAと児相は嫌です。”こんな真夜中に勝手に一人で外出だなんて、騒動の種を撒くようなものなんですから」

 

 モゴモゴと物言いたげな顔をするコナン君に、私はこれ見よがしにため息を吐いてみせる。

 

 とはいえ、彼には少しお仕置きが必要です。

 

 私が、あれほどイラつく原因を作り上げたのは、この少年の立ち回りがその一因になっていますのでね。

 

 何を怒らせたか、私が何なのか、今一度、その賢い脳髄に刻み込んで差し上げましょうか。

 

 「ところで、今夜の外出理由は、お友達と真夜中の学校を探検しようということでしたか?

 

 確か、今は亡きオカルトクラブの廃部原因と、彼らがしょっちゅうやってたという怪しげな儀式について調べてみようとか?」

 

 ニチャァッと笑って言って見せるや、コナン君は眼鏡の奥の青い目をこれでもかと大きく見開き、ついでに顔色を今度は紙よりも白くして絶句しています。

 

 私には一言も言ってないはずの、件のクソガキどもと、学校で交わした会話を、私が知っているのですから。

 

 「な、んで・・・?」

 

 「さて?なぜでしょう?」

 

 肩をすくめて見せ、続いて私はぐっとコナン君に顔を近づけ、吐息を吐きかけるように囁きました。

 

 「明日、無事にお友達と会えるといいですね?」

 

 ひゅうっとコナン君が大きく息を飲む。

 

 「あ、んた、まさか!!」

 

 「お休みなさい、コナン君。寝不足は発育に響きますよ。さっさと寝てしまいなさい。ショゴスさーん、コナン君を部屋へ!」

 

 「てけり・り」

 

 忠実なメイドさんは、わめいて逃げようとするコナン君の抵抗をものともせず、彼の自室に連れて行きました。そのまま放り込んでくださいな。彼の部屋にも≪ナーク=ティトの障壁≫を仕掛けますのでね。

 

 コナン君のSTRでは、部屋から出ることはかなわないでしょう。朝には≪障壁≫は解除しますよ。それで十分でしょう?

 

 朝には、全てが終わっていることでしょうねえ。

 

 

 

 

 

 さて、続きを見ましょうか!

 

 プレイヤーは“小嶋元太”、“円谷光彦”、“吉田歩美”の計3名。

 

 召喚儀式で呼び出された神話生物から生き残るタイプのシナリオですが、我が書店であれほどの活きの良さを見せつけてくれたんです。

 

 さっさとくたばるなんて、無様な様は見せないでくださいよ?

 

 ま、結末は大体予想が付きますがねえ!

 

 

 

 

 

 なーんだ。やはり、お前たちも、その程度か。

 

 

 

 

 

 冷めてしまった紅茶を飲み干します。シュトルーデルの乗ってた皿はとっくの昔に空になってしまいました。

 

 ダイスの女神もあくび交じりに仕事をなさったのか、ずいぶん退屈なセッションでした。

 

 ま、今回のはお仕置きも兼ねてましたからねえ。

 

 ご本人たちはこれで良し。ご両親へは・・・フフッ、いくつか仕込でもしてみましょうか。面白いことになれば、さらによし、です。

 

 人間を狂わすのは、いつだって渇望と邪悪な囁きなんです。喪失はそれらを後押しする最高のスパイスなんです。

 

 おやおや。そんな最高に嘔吐きそうな顔をしてこちらを見てどうなさったのです?ここ最近大人しくしていたとはいえ、私が最高に邪神らしくしているのがそんなにいやでしたか?

 

 え?お前はやっぱり最低最悪に、クソ100パーセントの邪神だな、ですか?

 

 おや。日本人ならこんな言葉はご存知でしょう?

 

 『触らぬ神に祟りなし』

 

 触ってしまった連中は、祟られても文句が言えないでしょうにねえ。

 

 ま、私は祟る側ですがねえ!

 

 え?祟るどころじゃないだろうって?

 

 もちろんです!

 

 フフフ・・・アーッハッハッハッハッハッハッッ!!!

 

 

 

 

 

 

続く続く続く…そして続く。




【邪神節全力全開のナイアさん】
 久々の邪神節が炸裂。大体コイツのせい。この話のテンプレート。
 旗本一族の事件解決からしばらく後、お店を少年探偵団(現時点では未結成)に荒らされる。
 素直に、荒したことを謝ってもらって、弁償を受け入れてもらえば(毛利探偵がそうしたように)、大事にする気はなかった。多少腹は立てようと、神としての寛容さと人間としての擬態を優先する気だった。
 しかしながら、少年探偵団のご両親がクソ親過ぎた。
 ・・・一つ擁護しておくならば、ナイアさんの見た目は20代の女性である。こんな道楽でやってそうな古本屋、多少どうこうしても大丈夫じゃない?経営もロクに経験してなさそうな小娘だし。と思われた…のかもしれない。(擁護が擁護になってない件)
 結果、ナイアさんの逆鱗を思いっきり逆なでしてしまい、赤井さん用に取っておいたシナリオの解禁を決意された。
 ・・・ベテラン探索者である赤井さん用のシナリオであるため、能力的に学生探索者にも満たないお子様探索者となる少年探偵団の面々(コナン君抜き)にはハードすぎるというのは想像に難くない。
 ちなみに、コナン君を隔離したのは、別に彼を助けたわけではなく、少年探偵団を確実に処分するには、彼の存在が邪魔と判断したため。そして、遠回しに処分宣言をして、何もできない状態というのをたっぷり味あわせてSANを削る。
 邪神ぶりここに極まれり。
 なお、シナリオの全容と、少年探偵団の末路は次回以降に語ることにする。

【パワフルチルドレンに押し切られ、SANが削られることになったコナン君】
 旗本一族の事件の真相を手紙という遺書で知らされ、いろいろ考えたものの、結局松井さんと結託して真実の隠ぺいという探偵らしからぬ行為に踏み切る。思うとことはいろいろあるが、真実を暴く=正義というばかりではないと徐々に気づき始めた。
 今回、少年探偵団のメンツに押し切られ、彼らを『九頭竜亭』に案内する。してしまう。彼としては店からはさっさと引きはがして自室の方へ連れて行くつもりだった。
 一応、事前に「お店だから!売り物だから!」「変なことするなよ?!物壊すなよ?!おとなしくしてろよ?!」と釘を刺しておいた。にもかかわらずあの有り様。
 少年探偵団の言い訳によると、「あんなことになるとは思わなかった」「あんなに簡単に壊れるとは思わなかった」とのこと。
 ・・・原作読んでると、彼らはコナン君の制止をあってないように振る舞ってるシーンがそこそこあり、痛い目に遭いかけてやっとそれを聞く、というようなシーンがたびたびあったような気がするので。
 その後、ナイアさんに対する少年探偵団のご家族の対応を、ハラハラしながら聞いてた。
 そいつ化け物邪神!その気になったらその手下の他の化物と一緒に恐ろしいことやって、正気を削ってくるから!
 一応、仲裁を買って出ようとしたが、如何せん子供の身の上なので、大人が聞いてくれるわけもなく、子供は黙ってろ、と叩き出された。
 ここでも子供の身なりが足を引っ張る。早く元に戻りた~い。
 しかしながら、思っていたよりナイアさんが大人しい。人間の振りしてるようだし、今回は見逃してくれるのかな?
 と思ってたら、のど元過ぎたあたりでやらかされた。
 少年探偵団のメンツと一緒に、昔小学校にあったオカルトクラブの怪しげな儀式のせいで、行方不明者とか出たんだって!真相確かめに行こうぜ!と言われ、オカルトなんて下らねーと思いつつ、面倒見がいいので、行くことになった。
 夜中に家抜け出そうとしたら、出られなくって困惑。あっちもダメこっちもダメとやった挙句に、まさかあいつの仕業か?!とナイアさんを問い詰めに行った。
 最初は自分が知らなかっただけで、防犯都合でそうしているのかなと思うが、直後に続けられた言葉から、自分が少年探偵団と一緒に真夜中の学校探検に行こうとしていたことを知られていたと判断。
 あいつらがやばい!何する気だ!
 残念ながら、その後、気の毒そうな顔をするメイドのショゴスさんに捕まえられて自室に放り込まれる。
 その後、一生懸命脱出を試みるが、徒労に終わる。
 オレが行けなかったせいだ・・・俺があいつらを店に連れてきちまったから・・・。
 削られるSANとメンタル。少年探偵団の説得に失敗した時点で、被害を覚悟しておくべきだったのかもしれない。次回が怖い。



 Q.何で少年探偵団が被害者になったんですか?
 A.メタい話、あんまり人数増やしても扱い切れないから、適度にオミットしようと思った結果。生き残って地獄を見続けるのと、地獄を見て死ぬのと、どっちがいいかという話でもあります。コナン君は前者。少年探偵団は後者。ひっでえ話。
 彼らをオミットするとそれはそれで問題が発生しそうですが、何とかしていきたいです(作文か?)

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