邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 ほう、お前、新顔だな?
 それに見たところ優秀な…読者だ。
 クックックッ…ああ、俺は亜希羅、この前書きの書き手だ。
 この前書きとは、ストーリーの文脈に蠢く汚物すべてを、根絶やしにするための前置きさ。
 お前も読者なら、気持ちは同じだろう?
 穢れた誤字、気色悪い脱字、頭のイカれた矛盾点、みんなうんざりじゃあないか。
 だからこそ、読みつくす。他の読者が、お前に協力するだろう。
 どうだ?お前も、我らの仲間にならないか?


【#21】スクールクエスト!コナン君と始動する探索者たち

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 先日、コナン君が連れてきたまるで糞団子のようなご友人方にお店を荒らされ怒り心頭であった私が、赤井君用に温めておいたシナリオを解禁し、糞団子をコンポストの肥やしにして差し上げたのはご存知かと思います。

 

 え?初っ端から邪神節を炸裂させるな?人のこと糞団子呼ばわりする前に、手前の性根を鑑みろ?

 

 でも、彼らが我が『九頭竜亭』に甚大な被害をもたらしてくれたのは確かですよね?0が8つ付く借金というのは、3人の合計金額ですが、いやはや、毛利蘭君のそれを上回りましたからねえ!加えて、ボールをぶつけて本棚を壊した小嶋元太君のせいで、魔導書にも被害が出てしまいました。せっせと苦労して作り上げた珠玉の一冊が、表紙に傷が入って、ページの一部がちぎれたではないですか!(知識を得るという点で問題はないのですが)

 

 まったく!一応売り物として出している以上、修繕は必須事項です。腹立たしいですが、急ピッチで修復中です。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、修復中の本棚を見かけたご近所のおじいさんに、この件について愚痴れば、おじいさんの方も眉をひそめてお話してくれました。

 

 何でも、件の3人組は幼稚園のころから、問題引き起こす悪ガキとしてご近所で有名だったそうです。

 

 探検と称して他人様のお宅に無断侵入して器物破壊、怪我して泣いて警察沙汰、などなど・・・。今までよく児相のお世話にならなかったですねえ。

 

 徒党を組んで問題を引き起こすのはまだいいでしょうが、問題はその保護者さんの態度なんです。私のように被害を被って苦情を訴えても、屁理屈こねて流される、あるいは徹底無視、最良でお金で解決というね。まあ、お金で解決というのはわからなくもありません。お金というのは古今東西、人類間における共通基準の一つですからね。

 

 ・・・ただ、納得できるかと問われると否と言わざるを得ません。

 

 神様舐めていただいては困ります。

 

 ゆえに、相応の報いを受けていただいたということです。

 

 

 

 

 

 

 え?具体的にお前、あの3人に何を仕掛けた?ですか?

 

 彼らがシナリオをクリアできたかどうか、生き残れたかも知りたい?

 

 うーん・・・今この場でネタバラししてもいいんですが・・・皆さん、どうせなら、コナン君のその後の行動も合わせて知りたくないですか?

 

 ま、コナン君のことです。おとなしくはしておかないでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 では、そろそろ本題に入りましょうか!

 

 あの3人の分も、精々あがいてくださいね、コナン君。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 夜が明けた頃に、家の外、コナン君の部屋、双方に仕掛けておいた≪ナーク=ティトの障壁≫を解除しました。

 

 そろそろショゴスさんが朝ごはんを用意してくれてる頃でしょう。

 

 え?夜中にアプフェル・シュトルーデル食ったくせにまだ食うのかですか?失礼な。いつの話をしてるんです?それを食べたのはとっくの昔の話ですよ!

 

 優雅にダイニングテーブルについて、ショゴスさんが朝食を作る音をBGMに朝刊を広げていると、ドタンバタンと騒々しい音が。

 

 ようやく出られることに気が付いたらしいコナン君が、真っ赤に充血した目をそのままに、とるものとらない格好で走っていくのが見えました。

 

 私が折角「おはようございます。よく眠れましたか?」と声をかけてあげたというのに、コナン君といえばガン無視決め込んでそのまま飛び出して行かれましたよ。

 

 まったく。せっかくの日曜で、学校もやってないんですから、もう少しゆっくりされても・・・え?昨日のことを思い返してから発言しろ?焦っても、結果は変わりませんよ。むしろコンディションを整えて行った方がご自身のためになると思うんですがねえ。

 

 

 

 

 

 

 さてさて。では、見世物の続きと行きましょうか。むしろ第2幕?チュートリアル終了で本番はここからというべきでしょうか?

 

 フフッ。昨日はあっさり終わってしまいました。せっかくですので、もう少し粘ってくださいよ?コナン君。

 

 

 

 

 

 

 我が家を飛び出したコナン君は息を切らして小学校へ向かって行きますね。

 

 ちなみに、帝丹小学校はすでに門の周辺に野次馬がたむろして、警官が立ち入りを規制しています。運動場には、真っ赤なサイレンを光らせるパトカーを始めとした見慣れない車が数台停まっていますし。

 

 たどり着いたコナン君は、野次馬の人たちから事情を聞き出して真っ青になってます。

 

 ええ。飲んだくれの警備員(何でも工藤新一在学当時のままだそうで!)が今朝気が付いてあわてて警察に通報したそうですが、恐ろしく、そして妙な事件が起こったと。

 

 発見された被害者の子供2名のうち、一人、そばかすのついた男の子は低体温症からの死亡、もう一人の女の子は意味不明なことを喚き散らして仮面ヤイバーに助けを求める錯乱状態で発見されました。

 

 おや、もう一人足りませんか?話は変わるかもしれないんですが、校舎内でなぜかチンパンジーが発見されたそうですよ。何処の動物園から逃げ出したんでしょうねえ?警備員さんに噛みついたりして、現在その捕り物真っ最中だそうで。

 

 そうそう。蛇足かもしれませんが、今の時期はそろそろコートは要らなさそうなくらいの気候です。つまり、低体温症で死ぬなんて、少しばかり時期遅れということです。

 

 保護された唯一の生き残りである女の子ですが、錯乱してロクに話も聞けないということで、病院送りにされました。ああ、多分、SANは10を切ってると思いますので、当分まともに話はできないと見た方がいいかと。

 

 ま、奇怪な事件が起こるのは米花町あるあるです。一見事故か不可能犯罪に見せかけて、実は人為トリックでしたというのはこの町では珍しくありません。

 

 なので、野次馬の皆さんを始め――おそらく、この場にいる人間のほとんどがこう思っていることでしょう。

 

 誰かが、チンパンジーを連れ込んだうえ、少年一人を何らかの手段でもって殺し、もう一人の少女にその有様を見せつけた。少女は恐ろしさのあまり錯乱した。と。

 

 ま、そう考えるのが普通でしょう。そんな常識の埒外のことが起こると考えるなんて、恐ろし過ぎますからねえ!(嬉々とした表情)

 

 

 

 

 

 

 コナン君はといえば、おや、どうも野次馬から聞き出した話を元に昨夜何があったか完全把握まではできずと、何かまずいことは起こったのでは?自分が居合せなかったから、こんな大事になったと自責の念でSANチェックに失敗。

 

 幸い、アイデアロールが必要なほどの大きな数字ではなかったので、顔色を悪くする程度で終わりましたが、まあ周囲の大人からしてみれば不審であり、心配でもあるでしょうね。

 

 日曜の朝早くに、子供が一人で小学校にやってきて、何があったか根掘り葉掘りした挙句、顔色悪くしてるんですからねえ。

 

 加えて、コナン君のここぞという胆力が最悪のタイミングで発揮されました。

 

 もっと詳しい情報を望んだ彼は、野次馬をかき分けるように校門に駆け寄り、中に入れてほしい、自分は事件に遭った子たちの友達だと主張したんです。

 

 最初は怪訝な顔をしていた警官さんも、コナン君が「昨日の夜、例の子たちと一緒に夜中の学校を探検する約束をしていた」と告白するなり表情を引き締め、他の人を呼んでくると言って、中に入っていきます。コナン君はそれについて行こうとしましたが、すかさず他の警官に捕まって、外で待たされました。

 

 野次馬たちがヒソヒソしています。ま、当然でしょうねえ。

 

 

 

 

 

 

 前述しましたが、例の子供たちは近所では有名な悪がきです。

 

 加えて人の口には戸は立てられません。特徴聞いたご近所の人たちは、ピンときたでしょうねえ。あの子たちだ、と。加えてこうも思ったことでしょう。「いつか何か痛い目見ると思った」と。

 

 ・・・この分だと、そのうちやって来たマスコミたちが子供たちの素行を調べ上げて、私が手を下すまでもなく、保護者たちに相応の鉄槌を下してくれそうでもありますが・・・まあ、それはおいおい考えていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 話を戻します。

 

 刑事さんたち(皆さんご存知警視庁捜査一課ではなく、少年課らしいです)に話をしたコナン君ですが、彼が現場を見て回る間もなく、「素直に話してくれてありがとう!何かわかったら報告するからね!」(意訳)と言われて現場から返されました。

 

 おやまあ、何とも型通りすぎてつまらない対応ですねえ。

 

 コナン君は、自分にも見せてくれ!自分も解決に協力を!と喚きたてますが、まあ、大人が子供の言うことを聞くわけがありませんよね。百歩譲って工藤新一の姿であれば、まだ可能性はあったかもしれませんがねえ。

 

 ややあって、無駄だと悟ったコナン君は、肩を落としてその場から去ろうとしましたが、そんな彼を呼びとめた存在がいました。

 

 「君、ひょっとしてコナン君?」

 

 「寺原さん?!」

 

 おやおや。やはり、探索者は惹かれあうのですねえ。どこかのスタ●ド使いみたいですねえ。

 

 コナン君の悄然とした様子を見かねてのことだったのでしょう、とりあえず落ち着けるところでと、彼を連れて少し離れた公園に連れて行きました。

 

 喫茶店などの方がいいかもと寺原さんは言ったのですが、肝心のコナン君が人には聞かれたくないと主張したので、そうなったそうです。

 

 で、ベンチで話を聞いていたのですが、見る見るうちに寺原さんの表情がこわばっていきましたねえ。

 

 おやコナン君。君、私のこと槍田探偵事務所の皆さんにお話ししてたんですか。

 

 大方、旗本ご夫妻の事件の後、うちの居候先にも化物がいるんだけど心当たりある?って話してしまったんでしょうねえ。皆さんSANチェック入りませんでした?

 

 これは自分一人の手には負えないと判断したんでしょうねえ。コナン君の了承を得た寺原さんは、彼を連れて槍田探偵事務所へ行ってしまいました。

 

 

 

 

 

 

 おや、小学校からSNS連絡網が回ってきました。

 

 フムフム。学校で事故が起こったので、明日は自宅待機となったそうです。課題も届けるのでやっておくようにということと、必要事項は随時連絡するという旨が記されています。

 

 ふむ。いい機会です。ちょっと、槍田探偵事務所にお邪魔してみましょうか!

 

 え?おい馬鹿やめろ?そんな嫌がられたら、ぜひ実行してみたくなっちゃうじゃないですかーやだー。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 すっかり顔なじみになった槍田探偵事務所で、コナンは定位置となっている来客ソファにちょこんと腰を下ろした。

 

 いつの間にか置かれるようになった黒猫のマグはコナン用のもので、カフェインはあまりよくないからと一杯しか出してもらえないが、ブラックコーヒーが飲めるのは至極ありがたい。よそでは猫をかぶらなければならないので、オレンジジュースなどの子供っぽい飲み物しか飲めないのだ。

 

 今、そのマグの中はブラックコーヒーではなく、ホットミルクで満たされている。

 

 思わず眉をしかめたコナンに、寺原はしれっと「今のあなたは、落ち着いた方がいいわ」と言ってのける。

 

 少し蜂蜜が入れてあるのだろう、ほんのりした甘さと胃の腑から広がる温かさに、コナンは我知らずそっと息を吐いた。

 

 思えば、朝から何も食べてなかった。(加えて、諸事情から徹夜してしまった)

 

 工藤新一は、健全な男子高校生としてはトースト一枚で朝を済ませるという、食の細い方ではあったが、食事は大事なことだと身に染みている。エネルギーを取らねば、回る頭も回らないのだ。

 

 一度空腹を自覚してしまえば、あとは転がり落ちるようだった。来客用に出されているラスクを、遠慮なく袋からつかみ出し、ガリガリとかじる。

 

 甘いものはあまり得意ではないが、今はとにかくエネルギーを補給したい。そうするべきだ。この後どうするにしたって、これは絶対必要なことなのだから。

 

 ホットミルクを飲み干し、砂糖とバターでカリカリのラスクを二枚ほど平らげたところで、コナンは眠気を覚える。

 

 くどいようだが、コナンは昨晩、寝てない。仮眠すらとってない。

 

 「松井君たちが来たら知らせるわ。コナン君、眠いなら少しでも寝ていた方がいいわ」

 

 寺原の微笑みに、コナンはメガネの下の目を必死にこすっていたのをやめてうなずくと、襲い来る睡魔に身をゆだねる。

 

 起きたら、やらなければならないこと、話さなければならないことを、とりとめなく考えながら。

 

 

 

 

 

 

 そんなコナンの様子を横目で見ながら、槍田は郵便物の確認をする。

 

 閑古鳥が鳴いているということはないが、本日は依頼人との打ち合わせや調査で出かけるということもなく、少し掃除や書類の整理でもしようかと思っていた矢先のことだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 コナンがこの事務所にやってくるようになり、血生臭い事件も扱うここに小学生が入り浸るなどいかがなものかと最初は思ったものだが、コナンはその辺の非常勤たちよりも、非常に優秀だった。槍田が頭を痛めていた事件に、わきから口を挟んで、解決のヒントをくれたりしたのだ。

 

 本人曰く、「自分は高校生探偵工藤新一の親戚で、推理の手ほどきや知識の伝授もしてもらった。だから、少しわかるだけ」とのこと。

 

 嘘おっしゃい。初めてそれを聞いたとき、槍田はとっさにその言葉を飲み込んだものだ。

 

 テレビで見かけた工藤新一と、メガネをはずしたコナンは似ている。生き写しに近い。

 

 魔術や化物が実在しているのだ。人間が若返らない保証が何処にあるのだ。

 

 とはいえ、本人が隠していること、言えないと言っている以上は、無理やり暴く必要はないのだろう。

 

 隠されたままそっとしておく方がいいこともある。槍田はそれを、嫌というほど熟知していた。

 

 

 

 

 

 

 寺原が一通り依頼メールと必要な連絡事項の確認を行う一方で、槍田は続いてネットのニュースやオカルト掲示板に目を通す。

 

 こういった場所も、たまにチェックしている。必要とあらば、MSOにも連絡し、助力を乞う。深淵の入り口は、思いのほか人間のすぐ足元で、大口を開いて、狂気と恐怖を練和させて手ぐすね引いて待ち構えているのだ。ネットの情報はいい加減なものが多いが、たまに本当に当たりがあったりするから油断ならない。

 

 ふと、槍田は更新されたばかりのネットニュースが気になり、閲覧してみた。

 

 小学校にチンパンジーが連れ込まれ、子供一人が凍死、もう一人が錯乱の末入院。脈絡がなさ過ぎて意味がわからない。

 

 だが、肝心の小学校の名前に、槍田は眉をしかめる。帝丹小学校。そうだ、今、すぐそばのソファの上で安らかな寝息を立てる少年が、ちょうどそこに通っていたはず。

 

 そして、その少年が、朝早くから、色の悪い顔でやってきた。何があったのか。

 

 「それで?何があったの?」

 

 パソコンから顔を上げた槍田は、コナンを起こさないように声を潜めて、彼にタオルケットをかけて、カップを片付けて戻ってきた寺原に尋ねた。

 

 頷いて話しだした寺原に、一通り事情を聞いた槍田は、頭痛薬はどこだったかと、痛み出した蟀谷を押さえる。

 

 まさかの事件の渦中にいたコナン。しかも、その事件はどうも彼の保護者を担う邪神(らしき存在)が係わっており、現在進行形で直接の元凶(こちらは正体不明)は野放しときた。

 

 「所長、あんまり薬に頼りすぎるのはよくないですよ?」

 

 「ええ、大丈夫。ちょっと休んだら回復するわ・・・いつものことよ」

 

 心配そうな寺原に、槍田はプレジデントチェアの背もたれに体重を預けながら、天井を仰ぐ。

 

 そうとも、いつものことだ。思っていたより身近に騒動の種が転がっていて、狂気と恐怖と冒涜が、またしても日常を食い破ろうとしていると実感してしまっただけだ。

 

 「・・・ちなみに、松井君たちに連絡は?」

 

 「MSO経由ですが、しました。今日は“出勤”らしいですから、来るのは遅くなると思いますよ」

 

 優秀な事務員兼補佐は、さっさと行動していてくれたらしい。

 

 本当に、彼女が事務所に来てくれてから格段に楽になった気がする。

 

 

 

 

 

 

 ここで、事務所の呼び鈴が鳴らされる。

 

 今日は特に依頼のアポは入ってなかったはず。たまにアポなしで来る依頼人もいたりするが、そういう人物も、こんな朝早くは遠慮するかのように、来ることはほとんどないはずだが。

 

 怪訝に思いつつ、寺原は席を立ち、槍田が首を振って姿勢を正したところで、扉を開ける。

 

 「はい。ようこそ、槍田探偵事務所へ」

 

 「おはようございます。すみません、こちらに我が家で預かっているコナン君が伺ってないですか?」

 

 寺原の眼前に、彼女はいた。

 

 目の覚めるような美人。黒髪をポニーテールにし、黒いレギンスと胸元を強調するような黒いベストを着た、豊満な肢体の女性だ。なめらかなハリの良い白い肌は若々しさを演出するが、身に纏う雰囲気はどこか老獪でつかみどころがない。

 

 ソファに案内された彼女は、銀縁眼鏡を押し上げてその奥の黒い双眸をたゆませて、名乗る。

 

 「申し遅れました、私は、手取ナイアと申します」

 

 ヒュッと、その名を聞いた瞬間、槍田と寺原は二人そろって息を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 江戸川コナンの同居人にして、保護者。その正体を聞かされた時、事務所は阿鼻叫喚に陥った。

 

 その名を聞いたことのあったMSOの職員二人、松井と成実はもちろん、槍田と寺原も鳥肌を立てたのだ。

 

 何だかはわからない。わからないが、それが恐ろしい。藪を突いて蛇を出すどころか、もっと恐ろしいものを引きずり出してしまったような。

 

 松井曰く、外なる神の一柱らしい。だが、結局のところ、人間と全く異なる価値観と、正体を携えたそれは、どうあっても相容れない、化物でしかない。それさえ分かれば十分だ。

 

 ・・・おそらく、槍田とコナンだけが気が付いただろう。手取ナイアの正体を聞いた松井が、(最初こそ取り乱したものの)いつになく、険しい表情をしたということに。

 

 

 

 

 

 

 こわばってしまった探偵事務所の女性二人をよそに、ナイアはにこやかに話を切り出す。

 

 「今朝、友人と遊びに行くと聞いてたんですが、どこに行くかまでは聞いてなくて。学校から連絡があったので、家に連れ戻しに来たんです。ご存知かもしれないんですが、今朝、この子の通う学校で事故?事件?なんだかよくわかりませんが、何かあったようで。

 

 そのせいでしょうね、指示があるまで自宅待機と連絡があったんですよ。こちらにはよく遊びに来ていると伺ってましたので、ダメもとで来たんです」

 

 ニコニコとよどみなくしゃべるナイアに、どうにか調子を取り戻した槍田が口を開くより早く。

 

 「あいにくだったな。今は親戚の俺が付いている。また何かあったら、連絡しろよ。コナンの連絡先くらい、把握してんだろ」

 

 事務所の入り口をノックなしに開けて入ってきた松井が、開口一番に言ってのける。

 

 「ああ、旗本一族の結婚披露宴の時にお会いした・・・。

 

 今更ですが、お名前をうかがっても?」

 

 「コナンから聞いてないか?松井陣矢だ。『神代貿易株式会社 営業二課』所属だ。

 

 あの時は、それどころじゃなかったからな」

 

 放り投げるように名刺をナイアに渡す松井に、寺原はひそかにため息を吐く。何だ、あの乱暴な渡し方は。それでも社会人か。容姿も相まってチンピラにしか見えない。あと、サングラスも外せ。

 

 「御親戚ですか。初耳です。文代さんからはうかがってませんでしたので」

 

 「チッ。あのマダムババアとは折り合いが悪いんだよ」

 

 ナイアの言葉に、松井が舌打ち交じりに返す。本当にチンピラに見える。

 

 ついでに言うなら、マダムババアのくだりで、その後ろにいた成実が吹き出していた。一応、文代とは面識があるためだ。名前をコナンから聞いていたというのもあって。

 

 「今朝コナンは顔色悪くしていた。体調を崩したかもしれないから、無理に動かしたくない。俺は仕事が休みだから、しばらくは俺がコナンの面倒を見る。ババアの知り合いは引っ込んでろ」

 

 思わず槍田と寺原は顔をひきつらせそうになった。何て言い草をする。もし目の前の女性の姿をしたものの逆鱗に触れてしまえば、どうなるか。

 

 「・・・わかりました。そうですね、御親戚でしたら、無碍にもなさらないでしょうし」

 

 しかしながら、ナイアは気を悪くした様子も見せずに、困ったように微笑みながら、席を立つ。

 

 「ああ、連絡先を残しておきますね。コナン君が何か言ってきましたら、ご連絡ください。学校からの連絡はこちらから随時SNS通知しますので」

 

 そう言って、ナイアは懐から取り出したメモ帳にすらすらと何事かボールペンで書きつけ、ビリッと破ってテーブルの上に置くと、立ち上がる。

 

 「私もお店番がありますのでね。正直助かります。それでは、失礼しますね。コナン君のこと、くれぐれもよろしくお願いします」

 

 丁寧にナイアが頭を下げる。

 

 一瞬、寺原と槍田は錯覚しかけた。目の前の女性は、本当にただの人間で、何も知らない、常人ではないのかと。

 

 だが、松井は女を見据えたまま、低い声で言った。

 

 「コナンから聞いてる。面白がり屋なんだって?」

 

 「はい?ええ・・・まあ、笑い上戸だとよく言われますね」

 

 「そうか。一言だけ言っておこう。

 

 “お前の思い通りになると思ったら大間違いだ”」

 

 松井の低く唸るような宣言に、ナイアはきょとんと眼を瞬かせる。

 

 ややあってくすくすと喉の奥で笑い声を転がし、そして言った。

 

 銀縁眼鏡の奥の黒い瞳に、そこの知れぬ闇を湛えて。

 

 「何のことかは存じませんが・・・あなたも、面白そうな人ですね。

 

 コナン君と同じだ。きっと、仲良くなれそうです」

 

 「ふざけんな、とっとと帰れ」

 

 「フフッ。怖い人ですね」

 

 肩をすくめて、ナイアは「それでは失礼します」と退室する。

 

 「お仕事、頑張ってくださいね」

 

 そう言い残して。

 

 パタンと扉が閉ざされた。

 

 

 

 

 

続けます続けます。

だから、その警棒でつむじをグリグリするのは

やめてください、松井さん

 





【邪悪に見守る這い寄る混沌にして、NPC参戦したナイアさん】
 前回から引き続き、事の成り行きを邪悪に見守る。大体コイツのせい。皆さんご承知。
 夜明けと一緒に≪ナーク=ティトの障壁≫を解除し、出られるようになったコナン君を邪悪に見守る。
 やっぱり少年探偵団3名は全滅していた。内容は以下の通り。
 小嶋元太・・・現在行方不明。(察しのいい方はすでにどうなったかわかるはず)
 円谷光彦・・・低体温症により死亡。
 吉田歩美・・・不定の狂気により錯乱。
 元々生かす気はなかったので、上々な結果と思っている。ただ、この結果だとMSOに嗅ぎつけられるだろうなとも思っていた。
 コナン君が松井君たちのところに駆け込めば、さらにステップが早まるし!いいねいいね!
 いい機会だし、ちょっと探索者たちに挨拶に行こう!そうしよう!
 ちなみに、今回は本気で顔見せ程度なので、別にどうこうしようとは思ってなかった。
 敵意をむき出しにして睨み付けてくる松井君にニッコリ。こういう顔が似合う子だなあ!君のこと嫌いじゃないから頑張ってね!
 ・・・きっと、確信されているんだろうなあ。
 以前記したが、彼女はスタンスの違いはあれど、対等でいようとする人間、頭のいい人間が特に好き。松井君の言い方はケンカ売ってるように聞こえるが、おそらくナイアさんが少しでも怒るような気配を漂わせれば、うまいことそれを回避したのだろうと思われる。そして、ナイアさんもそれを察している。

【朝っぱらからSANチェックして、徹夜&朝食抜きと、セルフハードモードなコナン君】
 前回からの続き。どうしてこうなった!
 少年探偵団の救援に向かうこともままならず、閉じ込められて一夜を明かす。
 正直気が気じゃなかったが、≪ナーク=ティトの障壁≫突破のための対抗ロールに幼児の貧弱なSTRで勝てるはずもなく、やむなく徹夜する羽目になった。諦めて大人しく寝る?あいつらの命がかかっているのに?そんなのんきなことできるか!
 やっと見えない壁がなくなってることに気が付いて、朝食もなしにそのまま家を飛び出す。もう、気が気じゃない。
 やっとたどり着いた学校ではすでに騒動になっていた。
 オレのせいだ・・・オレが一緒に行けなかったから・・・。自責の念でセルフSANチェック。何でも一人で抱え込もうとするなら、当然自責も人一倍。自惚れに近いのだが、叱ってくれる大人は(少なくとも彼が工藤新一だった頃は)皆無。
 仮に彼が同行できたとしても、被害が増したであろうことは想像に難くない。
 警察に頼み込んで、せめて何が起こったか把握しようとするが、情報だけ置いてけされて、途方に暮れる。(きわめて真っ当な対応ともいえる)
 そこを通りがかった寺原さん(出勤途中)に拾われて、槍田探偵事務所へ。
 事情話すついでに精神分析受けて少し落ち着く。ついでに軽い食事と睡眠をとる。
 ・・・起きたら、松井さんたちと話をしなくちゃ。

【新たな事件の予感と邪神様の来訪に揺れる槍田探偵事務所御一行様】
 最近(休日限定の)常連となりつつあったコナン君が、顔色悪い状態でやってきて何だなんだとなってたら、事情を寺原さん経由で聞いて頭を抱える所長の槍田さん。
 あの子マジ何なん?頭痛薬どこだっけ?
 ちなみに、#17.5ラストから#18冒頭及び、#19ラストから#20少年探偵団来訪までの期間はちょっと空いているので、その期間にやってきたコナン君と一緒に殺人事件に巻き込まれたり、邪神様の正体聞いたりしてた。シナリオもないのにSANチェック受ける羽目になるってどういうことなの・・・?
 ちなみに、コナン君からはそれについては「あいつああなんだけど、何か対策ある?」と訊かれて、みんなで「どうしようもねえだろそれ・・・」となった。
 薄々コナン君の正体を勘付きつつあるが、深くはツッコまない。
 そうこうしているうちに、邪神様の来訪を受けて絶句。
 あいつコナン君が言ってた邪神じゃねーか!
 にもかかわらず平然と喧嘩を売ってみせる松井さん。
 ・・・彼は、邪神様が流出させた本が原因で起こった騒動については、一切忘れていない。まだ何も終わっていない。
 なお、彼は当然江戸川文代の正体(コナン君から聞いた)についても知っているが、あえてその嘘に乗って見せている。変なところ突いてもいいことなんて何一つないし、大事なのはそこじゃないので。
 松井さんと成実さんが槍田探偵事務所に来たのは、当然寺原さんが呼んだからなのだが、本来であれば、彼らはMSO本部に“出勤”する予定だった。居合わせるからには相応の事情がある。それについては次回やっていく。
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