邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 本編が進むといったな?あれは嘘になった。
 もそっと短くするつもりが、気が付いたら24.5話同様、ひたすら喫茶店でだべるだけの話になりました。何でや!工藤!
 そろそろ成り代わりタグをつけるべきかしら?でも、竜條寺さん、主役じゃないし。
 というより、とっくに20話いってるのに、いまだに哀ちゃんのあの字も登場してない件について。めちゃくちゃ亀進行!しょうがないね!
 本文中で語っているのは、原作4巻『新幹線大爆破事件』についてです。毛利探偵事務所一行は不参加で、さらにさらりと流していますので、詳細は各自脳内補完をお願いします。

 今回、おまけの部分で赤井さんが手厳しいことを言われています。私にしては珍しいかもしれませんが、赤井さん、あれについてはかなり擁護できない部分なんですよねえ。
 この作品の世界線においては、赤井さんは大学時代で相当辛酸をなめているので、アフターフォローをしっかりするようになったという裏設定があります。語る機会がなさそうなのでここに記載しておきます。

 追記:敦子さんのお名前、アニヲタwikiで見たら苗字が徳本となっていたので、以降はそちらで統一します。
 失礼しました。


【#25】やったね!竜條寺君!脅迫相手ができたよ!(おい馬鹿やめろ)

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 さて、相変わらず平和とは縁遠い米花町は、血の匂いと混沌を内包しながら日本の首都東都にデデンと存在しております。

 

 我が古書店『九頭竜亭』も健在です。

 

 ついこの前、コナン君が実に腹立たしい、頭の悪いクソガキどもを連れてきてくださったのですが、あれっきり静かに生活できてうれしいものです。

 

 ええ。コナン君、あれから完全に懲りたのか、我が家に一切お友達を連れてこなくなりまして。

 

 せっかく、新しくサッカー好きなお友達を作ったにもかかわらず、「前に別の子に遊びに来てもらったらナイア姉ちゃんがとっても怒って、二度と連れてくるなって言われちゃったんだ」と予防線を張ってしまったようで。

 

 学習能力のある子は嫌いじゃないですよ?感心感心♪

 

 ・・・まあ、また彼がお店を荒らす原因を連れてこようものなら・・・フフッ、どうしたものでしょうね?

 

 まあ、泣き寝入りだけはしないと申し上げておきましょう。表向きは泣き寝入りに見えようと、相応の報いは受けていただきますよ?この間のようにね。なぜなら、私、邪神ですから。

 

 触らぬ神に祟りなしとは言いますが、逆を言うなら、触ってしまえば祟られても文句は言えないものですよ。(ニチャァッ)

 

 え?お前はむしろ時々、自ら触るように仕向けるだろうが、ですか?

 

 もちろんです!よくご存じで!いやあ、こんなに私のことを理解してくださる方に恵まれるなんて、私ってば人気者!うれしい限りです♪

 

 え?自分の都合のいいように曲解してんじゃねえ、クソ邪神?

 

 ああん。いつものこととはいえ、皆さんが冷たい・・・。

 

 

 

 

 

 さて。冒頭邪神トークはこのくらいにしておいて。

 

 以前、ちょっとばかり新参探索者の竜條寺アイル君と親愛なる我らが居候江戸川コナン君のお茶会を出歯亀させていただきました♪

 

 おやおや。あんな面白そうな事情をお持ちだったとは。

 

 なんでも、竜條寺君は、コナン君を小さくした黒の組織の元構成員にして幹部で、コードネームをアイリッシュといったそうです。

 

 ただ、普通と違ったのが、なんと彼は予知夢を見ることができ、将来的に自分が組織から切り捨てられると判断し、組織から脱走して身元を保証してもらえるMSOに再就職したのだとか。

 

 予知夢ですか。出歯亀で収集した情報を総合した限りでは、どうもその予知夢の内容は、攻略本と一致するようなんですよねえ。つまり、『名探偵コナン』の原作そのままらしいんですよねえ。

 

 まさか竜條寺君、攻略本の材料たち〈いわゆる転生者〉と同類なんでしょうか?

 

 ふうむ。以前愚痴ったかと思いますが、あの攻略本、製本した私が言うのもなんですが、かなり記述内容に偏りがあるんですよ。

 

 ・・・あるいは彼なら、その記述内容の偏りを、どうにかできるかもしれませんねえ?(ニチャァッ)

 

 そうと決まれば、邪悪は急げ!さっそく会いに行ってみましょうか!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 「あー・・・ドーモ、ナイア=サン。竜條寺アイル=デス。ハジメマシテ」

 

 「ドーモ、竜條寺=サン。手取ナイア=デス♪」

 

 ニコニコニコニコ。

 

 自慢のAPP18の美貌に、人好きされるだろう笑みを浮かべ、私は竜條寺君と向かい合って腰かけています。

 

 場所は以前コナン君も来たことのある、杯土町の喫茶店『エーブリエタース』です。

 

 まだ負傷と義手の修理で療養休暇中の竜條寺君を捕まえるなんて、私にとっては朝飯前ですよ!(ドヤァッ)

 

 おやおや竜條寺君。せっかく挨拶をしてあげたのに、ガチガチに硬直してひきつった顔をなさってどうしたのです?

 

 「以前松井君と一緒にコナン君の面倒を見てくださり、ありがとうございます♪

 

 その後もお茶をごちそうしてくださったそうで。ああ、コナン君から聞いたわけではありませんので、あの子を責めてはだめですよ?」

 

 にこにこと笑いながらそう言ってあげますと、竜條寺君は「勘弁してくれ」とうめいて天井を見上げます。

 

 「・・・あれ、見てたんですか」

 

 「何のことです?まあ、壁に耳あり障子に目あり。どこで誰が何を聞いているか、わかったものではありませんよね」

 

 にっこり笑って遠回しにもちろんですとお伝えすれば、竜條寺君がひきつけでも起こしそうな勢いで顔を青ざめさせるんですから、いやこれだけでご飯3杯はいけちゃうんじゃないですかね?愉快愉快。

 

 「・・・さ」

 

 「ん?」

 

 「先に言っておきますと、現状はだいぶ俺の知っている予知夢からずれてしまってるんで、俺の知識はだいぶ当てにならないと思った方がいいかと思います!だからいろいろ勘弁してください!」

 

 おやおや。

 

 ガバッと頭を下げる竜條寺君に、ちょっとばかり拍子抜けしました。

 

 

 

 

 

 うーん・・・彼が私の正体を知っているというのは把握していましたが、なんというか、この手の反応をされたのは珍しいですねえ。たいがいは邪神として嫌悪されたり敵視されたりすることが多いのですが(このタイプは赤井君や松井君、コナン君ですね)。

 

 あるいは崇拝されたり尊崇の念を抱かれたり。(蘭君や零君、他カルト信者たちがそうですね)

 

 で、竜條寺君の場合は・・・たぶん、関わり合い自体なりたくない。もちろんどちらかと言えば嫌悪の方が勝っているのでしょうが、敵視までする根性がないのでひたすら頭を下げて耐えてしまおうという感じでしょうね。カツアゲされたいじめられっ子みたいですねえ。

 

 うーん、好きな子ほどいじめたい、反応が返ってきたら手ごたえを感じずにいられない私からすれば、この手のタイプはちょっと物足りないんですよねえ。もうちょっと頑張ってくださいよぉ、って言いたくなっちゃいます。

 

 

 

 

 

 「そんな怯えた顔しないでください。取って食おうなんて誰も言ってないじゃないですか。

 

 ほら、スマイルスマイル。人間、笑顔が一番、ですよ?」

 

 にっこり笑って言いましたが、竜條寺君、なぜか余計におびえた顔をなさるんでうしょね。目ぃ一杯笑おうとしているのは伝わるのですが、それでもひきつった顔をしていらっしゃいます。

 

 ふうむ。なぜでしょうねえ?

 

 「では、話を戻しましょうか。予知夢のことを先に言ってくださるとは、話が早くて助かります」

 

 ああ、そんな「墓穴掘った」という感じの絶望的表情を浮かべないでくださいよ。ついついもっといじめたくなっちゃうじゃないですか。フフフっ♪

 

 「実は、私、以前ちょっと面白そうな方々と知り合いましてねえ。

 

 フフッ。君の予知夢に、“安室透”あるいは“バーボン”という方は登場なさいませんか?

 

 実は彼の周囲を、非常に目障りな方々がうろついてたんで、捕まえてちょっとばかり事情を聴きだしたんですよ。

 

 そしたら彼女たち、なんと別の世界からの転生者とでも言いましょうか。この先起こる出来事を漫画という形で知ってるというものですから。

 

 それは何とも興味深い、とちょっとばかり詳細を聞き出して、詳しく製本してみたんです。

 

 君もちょっと読んでみますか?」

 

 バッグにしまっておいた攻略本をひょいと差し出せば、彼は手に取ろうともせずに、ますます顔を青ざめさせます。もはや青を通り越して、腐ったおかゆ色の顔色ですね。

 

 あらら。【アイデア】ロールがクリティカルして、人皮製と見抜かれたんですね?さらにSANチェックも入って、かろうじて成功したとはいえ、数字自体は減ってしまったようです。

 

 ご愁傷さまです♪

 

 しかしながら、さすがは元とはいえかの犯罪組織の幹部を務め、現在進行形で怪奇事件専門捜査官を担う御仁です。

 

 彼もその気になれば、相応の胆力が発揮できるようで、一つ深呼吸するや、表情を引き締め、仕方なく本をしまった私に鋭い目を向けながら口を開きました。

 

 「あいにく俺はどちらかと言えば頭脳労働より、武闘派なもんでして。

 

 もそっとはっきり要件を言っていただけませんかね?

 

 ただし、その気色悪い本の補完材料に俺を使いたいというなら却下しますし、力ずくに出られるなら、俺も相応の対応を取らせていただきますが」

 

 虚勢は多少入っているでしょうが、まぎれもない、彼の本音でしょうね。

 

 ただじゃ死なねえぞおら!という感じの鋭い目を向けてくる彼に、私は口元がますます緩まるのを感じました。

 

 フフッ。だから人間は愛らしいんです♪

 

 「ああ、すみません。誤解をされてしまったようで。

 

 確かに本の補完をしたいというのはあるのです。何しろ、材料にした子たちが、いろいろあれなものでして」

 

 「はい?」

 

 「確か、『安室の女』を自称したり、救済なんて銘打って、攻略本の情報を身勝手に活用しようとしたりと・・・。

 

 ところで、竜條寺君は、回収予定のゴミが、見知らぬ有象無象の自己判断でその辺に放置されていたらどう思います?

 

 ゴミはゴミ収集車にきちんと回収していただかないといけないと思うんですよね?」

 

 「・・・つまり、本来死ぬ予定の人間を、意図的に勝手に助けて回るのが気に入らない、と」

 

 小首をかしげながら言った私に、竜條寺君はなぜか同意せずに、軽く目を伏せました。

 

 ・・・まさかとは思いますが。

 

 「まさか君も、“予知夢”で見た死ぬ予定の人物を助けようとしたとか?」

 

 私の問いに、竜條寺君は無反応です。

 

 

 

 

 

 いけませんねえ。実にいけません。

 

 そんな身勝手、許されるとでも?死ななければならない人間を、一時の感情で勝手に助けるなんて。それによって誰かがさらに死ぬとか、被害がさらに拡大しそうならともかく!

 

 え?7年前のマンション事変?

 

 何かありましたかねー?(すっとぼけ)

 

 はっはっは。

 

 考えてもごらんなさい。あそこで仮に彼らを救っても、攻略本によれば爆弾の解体現場で防護服を脱ぐようなおバカさんですよ?

 

 きっと、懲りずによそでもっと素敵な大問題を起こしてくれたに決まってます!

 

 蝶の羽ばたきは地球の裏側で竜巻を起こし、蟻の穴から堤は崩れて、政令指定都市も水浸しになるんです!素晴らしいでしょう?!

 

 え?あの時のお前の気まぐれを少しでも良く思っていた自分を殴ってやりたい?

 

 自傷行為もほどほどになさってくださいねー。

 

 

 

 

 

 「・・・考えたことがなかったといえば嘘になりますが、あいにく当時の自分はいろいろ立て込んでまして、そこまで手が回りませんでした。

 

 そこまで万能でもなければ、驕ることもできません。

 

 俺はあくまで、ちっぽけでわが身がかわいい人間ですので。

 

 あなたとは違いまして、ね。

 

 俗っぽくて身勝手で結構。

 

 俺はどこぞのアンパン頭と違い、あそこまで博愛には徹せれないんですよ」

 

 皮肉気な口調で言ってのける竜條寺君。

 

 

 

 

 

 ああ、あのお子様から保護者まで大人気の丸顔ヒーローアニメですか。

 

 ・・・正直、私はあれが大嫌いです。あんな人間味のまるでない気色悪いものに、どうして興味が持てましょうか。

 

 

 

 

 

 「・・・というより、それがあなたのお望みなら、現状はだいぶ不本意では?」

 

 「おや、なぜ?」

 

 「・・・その本をお持ちなら、俺に訊くまでもないかと」

 

 小首をかしげて問い返しましたが、竜條寺君は吐き捨てるようにそう返しただけです。

 

 「松井陣矢。浅井成実。他少数名。主人公〈コナン〉の境遇にしろ俺が把握できているだけで結構、ブレが生じていると思うんですが?

 

 何人か死んでるべき人間が生きてるでしょう」

 

 ああ、なるほど。

 

 「わかってませんねえ」

 

 肩をすくめて、私は口元を歪めて笑って見せました。

 

 「君の夢と、現実。どちらが面白みを感じます?

 

 刺激があるから、じんせい〈神生〉は楽しいんですよ?

 

 誰が生きようが死のうが、最終的にそこに帰結すれば、後は野となれ山となれ、ですよ。

 

 それに人間、生きてる限り、必ず最後には死ぬものです」

 

 ぶっちゃけ、極論すればそうなります。

 

 さっさと死んだ方がすっきりはしますが、生きてのたうち回るならそちらの方が面白みはあります。

 

 ま、基本は面白おかしく、楽しめるように物事が運びますし、私もそうなるように持って行っているつもりではありますが。

 

 「マジで言ってんのか、あんた・・・」

 

 敬語も吹っ飛んで、嫌悪に満ちた顔をこちらに向けてくる竜條寺君。

 

 そして、少し探るような目をこちらに向けてきますが、すぐにそんな表情を消して、無表情を装い、私に向かって口を開きます。

 

 「あー、ちなみに、今、どの辺なんです?」

 

 「どの辺とは?」

 

 「進行具合と言いますか・・・どんな事件が起こったかとか。

 

 それによって、俺の提供できる情報が違ってきますんで」

 

 「おや、私に協力してくださると?」

 

 「あくまで、その本の補完はします。俺自身が材料になるというのは却下しますが。

 

 ・・・あと、きゅう、死ぬ予定の人間を助けないというのは確約しません。

 

 何度も言うようですが、俺はわが身が一番かわいい、身勝手な人間です。

 

 身勝手なもんですんで、そこに助けられそうな人間がいたら、助けますよ。

 

 たとえ、夢でその人が死ぬ予定にあったとしても」

 

 「例えばピスコ君のように、ですか?」

 

 「っ」

 

 「見捨てて組織から逃げ出したくせに、それでも可能ならジン君に殺される前に何とか保護したいとは。

 

 身勝手の極みですねえ」

 

 「・・・言ってろよ、神様。

 

 人間がジタバタすんのがお好みなら、黙って眺めてやがれ。

 

 お好みでお得意だろうが」

 

 反吐が出るといわんばかりに悪態をついてくる竜條寺君に、にこやかに私は「もちろん、そうします♪」とうなずいて見せました。

 

 「ああ、どのあたりまで行ってるか、でしたねえ。

 

 まあ、いろいろ違っているので、何とも言い難いのですが。

 

 ちなみに、君はどのあたりと把握なさってます?」

 

 「まだ、コナンは単騎でジンどもとニアミスをしてる程度ですかね。

 

 協力者や同類の存在はなし。どうですか?」

 

 「はい♪

 

 この前、ちょっと用事で岐阜まで遠出したんです。新幹線で。

 

 そしたら、そこにジン君たちが乗り合わせてまして。

 

 コナン君は必死に手掛かりを突き止めようとされますし、爆弾も持ち込まれてたらしくて・・・いやあ、なかなか愉快でした♪」

 

 「・・・あんた、やっぱ見てただけですか」

 

 「おや、長時間椅子に座ってじっとする退屈に我慢できない子供が爆弾云々と騒ごうと、静かにじっと座ってなさいとたしなめるのは、大人の務めでは?」

 

 「これだから米花町民は・・・!」

 

 「でもちょっとおかしかったんですよねえ。なぜかその列車に風見君・・・君もご存じでしょう?“連絡係”もやってる公安の刑事君が居合わせてまして。

 

 コナン君が“爆発物処理”を終えた直後に駆けつけてきて、即座に事態を把握なさって、捜査指揮をとられたんですよ。私も事情聴取されまして。

 

 彼、あそこにいたと攻略本には記述がなかったと思うんですが?」

 

 「その攻略本よばわりしてるの、補完が必要な偏り情報まみれなんでしょう?

 

 それに、俺の夢の方でも、あとでこうでしたって解説や補完が入れられることも多いから、存在自体最初からあったんじゃないです?」

 

 ・・・まあ、そういうことにしておきましょう。

 

 “予知夢”で知っていたであろう竜條寺君が何らかの入れ知恵をしている可能性も、あるにはあるのですが。

 

 ま、済んだことです。

 

 「めちゃくちゃ序盤、ですね」

 

 「ええ。やったね、竜條寺君!トラブルが増えるよ!」

 

 「おい馬鹿やめろ!その発言は元ネタからしてろくでもねえだろうが!」

 

 顔を引きつらせる竜條寺君に、やはり彼はからかい甲斐がありそうだと確信を深めます。

 

 

 

 

 

 「・・・夢の通りなら、次に起こりそうなのは、満天堂の新作ゲーム発表会だな。

 

 “名探偵毛利小五郎”はいないし、なにがしか変更はされてるんだろうが」

 

 「何かあるんです?」

 

 「あんたの本には載ってないんですか?」

 

 「載ってないんですよ。遺憾なことに」

 

 そのくだりは初耳です。やはり竜條寺君は有用ですね。生かしておく価値が生まれました。

 

 もちろん、だめになったら加工して攻略本に追加記載することにしましょうか。

 

 おや、微妙に竜條寺君が顔を引きつらせました。まさか考えてることが伝わったのでしょうか?

 

 まあ、たとえ悟られたとしても、彼にはいかんともしがたいのですがね。

 

 「オーケイ、わかりました。概要だけ話しておきます。

 

 あと、俺はこの件には首を突っ込みませんので」

 

 「おや、そうなんですか?」

 

 「テキーラが絡んでくるんですよ。俺のツラ見せたら生きてるってばれる可能性があるんで」

 

 ああ、なるほど。それでですか。

 

 「しかし、ゲーム開発って、かなり時間とかかかるから、少なくともあんたがモデルはないでしょうね。されるんだったら、もっと早く話がきててあんたにも心当たりができているはずですから」

 

 確かに。まあ、私は探偵役は引き受けましたが、探偵そのものを本業にはしていませんのでね。

 

 最近はコナン君がネット上に探偵相談用のホームページを運用したり、古書店の方にも『探偵相談引き受けます ※内容によります』というチラシを張ったりしています。事件解決に伴ってメディアに露出しているのもあり、多少そういった相談事が持ち込まれることも出てきてはいますが、まだまだ駆け出し状態ですのでね。

 

 それなら、別のお題を使ったゲームの方が確実でしょうね。

 

 

 

 

 

 そして、竜條寺君の語る『満天堂の新作ゲーム発表会で起こる事件』について聞き終え、私は口元を歪めました。

 

 「仮にも元同僚が、人違いで爆殺されるというのに、見て見ぬふりですか。

 

 素晴らしい人間性ですね♪」

 

 「てめえが言うなやクソ邪神。

 

 ・・・まさかとは思うが、安室透関連を知ってるってことは、お前、スコッチのことにちょっかいかけてねえだろうな?!」

 

 「さぁて、どうしたと思います?」

 

 ニチャァッと唇を割って笑いながら尋ねると、竜條寺君が「クソがぁぁぁ・・・」と頭をかきむしっています。

 

 「まあ、もう済んだことですよ。

 

 過去よりも未来を見据えて、お互い協力していこうではありませんか!」

 

 「お前だけはそれを口にする資格がねえだろうが!!」

 

 何です!画面の向こうの皆さんまでご唱和なさって!

 

 星辰が満ちて、旧支配者が復活し地に満ちる素晴らしい未来が待っているのですよ?ささやかながらその手助けをする私には、この上なくそれを楽しみにする資格があるのでは?

 

 ボブでなくとも訝しむに決まっています!

 

 「・・・もう、いい、です。

 

 何かあんたの中で俺には理解不能な冒涜的超理論が展開されてるでしょうから。

 

 用が済んだなら、とっとと帰れください」

 

 おやおや、敬語がおざなりですよ、竜條寺君。

 

 額を抑えて天井を仰いで疲れたように溜息を吐かれて、本当にどうしたのです?

 

 あまり頭痛がひどいようでしたら素直にお医者様にかかられたほうがいいですよ?

 

 「ああ、では最後に、連絡先を交換いたしましょう。

 

 また何かありましたら、連絡してください。私からも、お伝えいたしますので。

 

 吉報をお待ちしてますよ、竜條寺君♪」

 

 「悲報の間違いだろうがよぉ・・・!」

 

 口先ではそう嘆きつつ、渋々といった様子で竜條寺君はスマホを取り出してくれました。

 

 素直な子は嫌いじゃないですよ♪

 

 連絡先を交換し、伝票をもって席を立ちます。

 

 あまり長く店先を留守にするわけにもいきませんしね。

 

 「おい。一個だけ、聞かせてくれ」

 

 「はい?何でしょう?」

 

 「“10億円強盗事件”、あんたが言うところの攻略本に載ってますか?」

 

 はて?竜條寺君の言葉に、足を止めて少し考えます。

 

 あー・・・概要は載ってませんでしたが、なんかそんな単語はあったような気がします。

 

 ふむ、竜條寺君が気にされるということは、そこそこ重要な事件なのかもしれませんが・・・まあ、私がそれを素直に教えてあげる義務はないですよね?

 

 「それは、秘密です♡」

 

 ウィンクと一緒に、人差し指を唇に当てて笑って見せますが、竜條寺君は吐きそうな顔をされて、視線をそらされました。

 

 ひどいですねえ。このAPP18の美女を捕まえて、そんな反応をされるなんて。

 

 「どうしたもんか。・・・勘弁してくれ」

 

 ぼやくように呻かれた竜條寺君に、軽く手を振ってから、私は喫茶店を後にしました。

 

 

 

 

 

 さて、次のお楽しみの手がかりも得られました。

 

 せいぜい私を楽しませてくださいね♪

 

 

 

 

 

 

次回に来たまえ、ヘンリー。見せたいものがある。




[おまけ☆]





 手取ナイアが去った後も、竜條寺アイルは、喫茶店『エーブリエタース』のボックス席でぐったりとしていた。

 一時的にPOWがごっそり削れたような気がしてたまらない。

 何が悲しくて、あんな超絶邪神と一対一〈サシ〉でお茶会などせねばならないのだ。

 組織時代もえぐい仕事は何度もやったし、場合によっては天敵〈ジン〉と一対一で密室ということもあった。

 それでもここまでひどいことはなかった。なぜだ。

 ・・・たぶん、それは竜條寺が知ってしまっているからだ。あの女の本性を。

 だから、本能が拒否したがる。距離を取りたがろうとする本能を、理性で無理やりねじ伏せた。ゆえに、精神と体力が摩耗された。

 そんなところだ。

 そもそも、前世というものがあろうとそこでは平々凡々な平成から令和にかけてを適当に生きた男の記憶を持つ竜條寺からしてみれば、犯罪組織の悪行も神話生物絡みの冒涜的事件も、ベクトルこそ違えど吐き気を催すことに変わりはないのだ。

 ただし、身元の保証が利かず使いつぶされる可能性がかなり高い前者の手先に対し、後者の捜査官は一応国家公務員である。どちらがマシかと言えば、言わずもがな。





 ともあれ、元凶は去った。

 ひとまず精神衛生は保証されたと判断した竜條寺は、だいぶ冷めたコーヒーを飲み干し、マスターにお代わりを注文する。

 この店のコーヒーはサイフォンだ。よそではなかなか味わえない。

 ちなみに竜條寺は、酸味が強くて香り高い豆を好む。この店のモカ・マタリは好みにドンピシャなのだ。

 漂うコーヒーの香りと、緩やかなBGMをバックコーラスに、竜條寺は頬杖をついて思索にふける。





 どういう事情かは定かではないが、この世界では灰原哀の実姉である宮野明美は、10億円強盗事件を起こしていないらしい。

 竜條寺が組織を抜けたのは、赤井秀一がNOCバレを起こして去ったのと同じ、2年前である。

 当時周到に脱走算段を計画していた竜條寺は、周囲を気にする余力がほとんどなかった。

 下手に何某何事かに興味を持ったそぶりを見せようものなら、そのまま難癖付けて食い物にされても文句が言えないのが、あの組織であり、その処刑人のジンなのだ。

 放っておいてもどうせ赤井は安全圏に勝手に逃げ出すと確信していたから、ちょっかいは出さなかった。

 スコッチのことにしても、粛清後にその話を耳にして、ああやはり原作通りになったか、と少し悲しく思った程度だ。

 ナイアにも語った通り、竜條寺は自他ともに認める武闘派だ。下手な小細工は自分の首を自分で絞める羽目になりかねないので、手を出さなかった。情けない話、保身に走ったわけだ。

 一応、バーボンにはちらっと警告はした(バーボンが一人きりの時に、スコッチが怪しい、NOCじゃないのか、俺でも疑るんだから、お前の方からあいつの立ち振る舞いについて言っとけよと)のだが、結局無駄骨に終わったわけで。





 少し前に、トロピカルランドのジェットコースター殺人事件が新聞に取り上げられ、ああ原作が始まったんだな、と竜條寺も感じた。

 その時にはすでにある程度都合が利く身分になっていた竜條寺は、せめて宮野明美だけでも救えないものかと思ったのだ。





 そもそも、彼女に関しては赤井秀一が3割悪い。(残り7割のうち3割は子育てより自分たちの研究を優先した宮野夫妻で、他4割が手を下した組織の連中である)

 百歩譲って組織に近寄るためのハニトラは許せても、尻拭いもせずに自分だけケツまくってスタコラ逃げ出すというのは、はっきり言ってクソのすることだ。そして、亡くなってから愛情に気が付くなど、朴念仁では片付かないほどのクソバカだ。莫迦でも馬鹿でもなく、クソのつくバカオブバカだ。

 潜入がばれた時点で、引き入れた彼女にもリスクが課されるとわかるはず。ならば、どうにかして彼女だけでも保護するべきだったのだ。

 妹の方は組織で重要な研究を任されて立場もそこそこ高いなら、そう簡単に切られないはず。ならば、立場も低くて妹の足かせになっている姉の方を、たとえ彼女が抵抗しようと、それこそ力ずくで保護でも何でもするべきだった。

 それをしなかった時点で、身勝手の極みだ。特にジンの身柄確保なんて、博打に打って出るなら、失敗時の保険も完ぺきにしておくべきなのに、それも怠った。

 バカ以外の何物でもない。少なくとも、竜條寺はそう断じた。

 実の親同然のピスコの死の運命を知りながら、組織を脱走した竜條寺が非難できた義理ではないのだろうが。





 どうでもいいが、竜條寺が組織の脱走にあたって、FBIに身を寄せなかったのは、この辺りの事情が大きい。(要は赤井が気に入らないのだ)

 公安に関しては、スコッチのNOC情報が漏れた元凶である可能性があると、前世でネットで知っていたので、警戒して近寄らなかった。





 話を戻す。

 肝心の10億円強盗事件は起きてない。原作が始まったと確信してから、毎日、新聞とネットニュースをチェックしているが、そういった話は聞かなかったのだから。

 どころか、毛利探偵事務所は、『所長の病気療養につき、しばらく休業します。ご迷惑をおかけします』という張り紙一枚で、休業中である。

 この間の小学校の事件がなければ、竜條寺は主人公たるコナンの所在もわからないままであっただろう。





 そもそも、この世界は竜條寺の知る『名探偵コナン』とはかなりズレがある。(クトゥルフ神話要素を抜きにしたって)

 松井の正体こそかなり後に気が付いたが、浅井成実と初めて顔を合わせた時、彼は絶句してその顔をまじまじと見てしまったのだから。

 あんた月影島で、復讐目論んでるはずだろ?!なんでこんなとこにいるんだよ?!というのをこらえられたのは、組織で身につけた腹芸のおかげだろうか。

 ほかにも、ちらちらと、原作と違うだろ?!と叫びたくなる要素があるのだ。

 もっとも、うちいくつかは、竜條寺はけして他人面ができないのだが。





 竜條寺が現在付き合っている女性、徳本敦子は、原作では2年前に死んでいるはずの女性だ。

 多分、何もしなかったら、彼女は2年前に潔く天国に旅立っていただろう。

 だが、結局竜條寺は、身勝手ではあるが善性を捨てきれてないのだ。敦子を助け、叱咤激励をし、立ち直らせてしまったのだから。

 現在、彼女は小説家として生計を立てている。

 工藤優作とまではいかずと、新人の作家としてはかなり売れているという話だ。

 竜條寺も、彼女の本は毎回欠かさず新刊を購入している。





 「で?君は手取ナイアとどういう関係なんだ?竜條寺」

 「仲良しに見えたなら、視力検査かカウンセリングをお勧めするぜ、風見さん」

 いつの間にか正面に座っていた風見に、竜條寺はうんざりと返す。

 さすがは公安。それもゼロのエースの右腕と称されるだけはある。隠密ぶりはかなりのものだ。

 まあ、竜條寺の身体スペックはかなりのものだ。特に肉体労働に関してはずば抜けており、風見が座ったことにもとっくに気がついていた。気が付いてはいたが、声をかけられなかったので、そのまま思考を進めていたのだ。

 どのあたりから見ていたかは定かではないが、あの質問が出るあたり、話の内容までは聞けていないのだろう。おそらく。

 もっとも、公安からしてみれば腹芸など必須スキルだ。顔色一つ変えずに嘘や演技を作ってしまうに違いない。

 「どちらかと言えば嫌がっているように見えたな」

 「面倒な事件を片付けて、ひと段落ついてる中で、好き好んであっち側の連中にかかわりたいとは思えねえからな」

 しれっといった竜條寺に、風見はお冷にむせた。

 ああ、やっぱりこの男、気が付いてなかったのか。

 まあ、あちら側に対する耐性は持っているようだが、どちらかと言えばかなり低く、認識力も最低限しか持ち合わせていないらしい。

 ものすごくわかりやすく言えば、竜條寺や松井であれば、あちら側の連中の偽装(人間に化けたり)などを見抜けるが、風見にはそれができない、というところだろうか。

 ゆえに、風見は、手取ナイアをただの人間と思い込んでいたのだろう。

 ・・・まあ、それが至極当然、なのだろうが。

 「か、彼女が?ま、まさか?」

 「また聞きだが、ま、たぶんそうだろう。雰囲気もそうだし、本人も誤魔化そうとしてなかったしな」

 顔を引きつらせる風見は、しかし大きく首を振って、深呼吸するや、まじめな顔をする。

 「彼女は、お前がタレコんできた新幹線の事件の際にも乗り合わせていたのだ。彼女が爆弾を発見した・・・ということになっているな」

 どうやら、聞かなかったことにするようだ。賢明だ。

 この手のことは、被害も出てないのに穿り回したところで、自傷になるだけだ。もちろん、竜條寺も、できるだけナイアの正体は意識の外に締め出すように思考する。

 彼とて健全健康な正気でいたいのだから。

 「何だ?優秀な公安刑事殿は、最近売れてきた美人探偵が新幹線車内に持ち込まれた爆弾を発見したことに、納得がいかないのか?」

 「自分にとっては、彼女より車内をうろちょろしていた、連れの子供の方が気になった。

 彼が、一等一番に爆弾に気が付いた様子で、デッキに駆け込むや電話をかけようとした女性の足元にあったアタッシュケースを、桁外れの力で車外に蹴りだしたのだ」

 ここで、風見は言葉を切る。

 同時に運ばれてきたコーヒーを、一口飲んでから、マスターが再びカウンターに戻ったのを確認してから、続ける。

 「・・・情けないが、彼がいなければ、新幹線は大惨事に陥っていただろう。自分の命も、なかったかもしれない」

 風見は、そういうや視線を伏せた。

 「ちなみに、その子供は事情聴取の際、何と?」

 「“ナイア姉ちゃんの言葉で、もしかしてって思って!間に合ってよかった~”だそうだ」

 「キッモ」

 ご丁寧にあざとい幼児口調まで再現した風見に、思わず竜條寺は身震いした。あれは7歳児の幼児だから許されるのだ。30ちょいのおっさんが口にしていい言葉ではない。鼓膜に対する暴力だ。

 「名誉棄損で逮捕するぞ、貴様」

 「いや、あんたのところの上司に同じこと言ってみろ、絶対同じことを・・・ああ、その前に精神科の受診を勧められるか」

 ぼやいた竜條寺に、風見はふんと鼻を鳴らす。

 「誰が言うか。ついでに言うなら、あの爆弾を車外に放り出したのは、手取ナイア本人ということになっている」

 「はあ?何で」

 「常識で考えろ。どこの世界に小学校低学年ほどの子供が、新幹線の窓をぶち破る勢いで、アタッシュケースを蹴りだせるのだ。

 自分以外、捜査にかかわった警察官はだれ一人、ケースの持ち主の女の証言を、錯乱と決めつけて信じなかったぞ」

 「さいですか・・・」

 運がいいのやら、悪いのやら。

 現状、コナンは旨い事目立たずに済んでいるらしい。

 「竜條寺。貴様は何を知ってる?」

 「いろいろと」

 すっと、眼鏡越しの視線を鋭くして問いかけた風見に、竜條寺は肩をすくめてしれっと答える。

 どう答えても、都合が悪いのだ。お茶を濁すしかない。

 特に、あの邪神に目をつけられてしまった、現状では。





 とはいえ、全部が全部竜條寺にとって悪い方向に向かって作用しているわけではない。

 特に、風見がコナンに目をつけているのは、いい方向と言えるかもしれない。

 風見は、公安警察の一員であり、降谷零の腹心の部下だ。彼と協力体制を構築すれば、無駄にバーボンと敵対は避けられる・・・かもしれない。

 それに。

 竜條寺も、わかってはいるのだ。コナンに非難されずと、ナイアに嘲られずと。

 逃げたところで、誰が助けられるわけでも何が変わるわけでもないことを。

 だが、竜條寺一人には、できることに限度がある。

 だから、行動に移せなかった。

 だが、あの邪神が出てきた。腹をくくらなければ、黙って全てが平らげられるのを待つしかない。冗談ではない。

 しかし、一人でないなら?コナンや風見らの力を借りることができれば、あるいは。

 そのためには、まずは自分を信用させるところから始めなければ。

 打算的で結構。目的のためなら、四の五の言っていられるか。





 「今話せることには限りがあるんだよ。察しろよ」

 ワシワシと暗い金髪を掻いて、竜條寺は身を乗り出すように低い声で囁く。

 「ところで風見さん。会ったついでに一つ。

 タレコミを聞き入れちゃくれねえか?情報源〈ソース〉は秘密で」

 「・・・言ってみろ」

 不審気に風見は眉を寄せたが、新幹線のことがあったためか、静かに話を促した。

 そうして、竜條寺は、邪神に話したのと同じこと――“満天堂の新作ゲーム発表会で起こる事件”を、風見に告げることにしたのだ。





いつものだと?
ああ・・・いい奴だったよ(遠い目)
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