邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 おお。ゴース、あるいはゴスム・・・我らの脳に瞳を与え、獣の愚かを克させたまえ・・・!
 最近知り合った頭に檻かぶった変人(友人に非ず)は、折につけそんなことを喚いてきます。Oh!Majestic!って言おうが、お前が閉所で神秘を乱発してくるのが許されるわけねーだろ、ミコラーシュ。
 ようやっとのことで、ミコラーシュをシバけたと思ったら、義足に車椅子のご老人が、鎌を片手に「今は何もわからなくてもいい。君はただ、続きを書くんだ」と穏やかな声ながら、啓蒙ガンギマリで凄んできたら書くしかないですよねえ?!
 おお、アメンドーズ・・・アメンドーズ・・・!


【#1】邪神が救済?いいえ。上げて落とす前フリです。

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 さて、月日が経つというのは早いもので。悠久の時をあり続ける、邪神にとっては刹那の時でしかないのですが、あの小さな少年があっという間に私の背丈に追いついてしまいました。

 

 ついこの間までランドセル背負ってたと思ったのに、もう警察学校ですって!

 

 やだ・・・私ってば、言ってることがおばあちゃん臭い・・・!うーん、年でしょうかねえ?

 

 

 

 ああ、もちろん、彼――降谷零君との友人付き合いも続いていますよ?

 

 もう、10年以上になろうかというのに、彼は凄まじいですよ?うーん、私が言うのもおかしな話ですが、彼は心臓に鉄筋でも仕込んでいるんですかねえ?あるいはSANが底なしなのでしょうか?

 

 だって、私、10年近く見た目変わらないんですよ?そりゃあ、ご近所づきあいの関係で、付き合いの長い人たちには深層意識に働きかけて、違和感を持たないようにしていますよ?

 

 でも、彼にはそれ、やってないんですよ。普通、違和感の一つや二つ持たれそうなもんですがねえ?

 

 

 

 え?理由ですか?

 

 その方が面白そうだからに決まってるじゃないですか、やだー。

 

 ここで発狂でもして、例の悪の組織(笑)に心身ともに完全に堕ちてくれた方が、私としては笑えるんですがねえ?え?全然笑えない?降谷さんに何てことを?

 

 ええー?ご理解いただけませんか?これでも最先端の邪神ギャグですよ?

 

 え?意味が分からない?『月に吠えるもの』形態に変身して、あなた方の体中の穴という穴から触手を不法侵入させたら、お分かりいただけますか?

 

 そんな青ざめた顔をして、猛烈な勢いで首を横に振らなくてもいいんですよ?どうせ人間はみんな死ぬんです。遅いか早いか、まともか狂ってるか、という死に方の違いだけなんですから。遠慮せずに、早急に狂い死にしたいなら、ぜひおっしゃってくださいね♪

 

 

 

 まあ、藪をつついて蛇を出す必要ありませんよねえ?面白そうではありますけど、ワインと女と神話生物事件は熟した方がおいしいんですよねえ。

 

 え?一番最後は早期食い止めが最善?ええー?みんなそう言うんですよねえ?シュルズベリィ教授も最近後継者に最もふさわしいお弟子さんを迎えたとかで、張り切ってくれてるんですよねえ。

 

 せっかく、苦労してばら撒いた神話器物〈アーティファクト〉を回収されたり、邪神崇拝をやっと根付かせた村を壊滅させてくれちゃったり、頑張ってこっそり解き放った神話生物を殺処分してくれちゃったりと・・・!

 

 テメェらの血は何色だぁぁぁぁ?!

 

 私の人類への愛に、何土つけてくれとんじゃああああ!あのキ○ガイクソ神も、何余計なやつに余計な加護渡しやがんだぁぁぁ!

 

 おっと失礼。つい、キャラが崩れてしまいました。

 

 

 

 話を戻します。

 

 とにもかくにも、私が出会った当初から見た目が全く変わってない、ピチピチの若い女の姿ということに、何もしていないというのに、ツッコミを入れてこないんですよねえ、零君。

 

 それどころか、今日もきれいです、とか褒めてくれるんですよ。容姿に特にこだわりはないのですが、あの子に褒められるとまんざらでもありませんねえ。

 

 ・・・まあ、幾度か、あの子、神話生物にチョッカイかけられそうになってたんですよねえ。APP〈容姿〉もいいですし、他のステも滅茶苦茶有能なんですよねえ。加えて好奇心も強くて頭がいいせいか、猟奇事件に出くわして神話生物にたどり着くそうになること数回。邪教の信者に生贄として狙われること数回。

 

 やだ・・・襲撃数が片手の指では数えきれないんですけど。

 

 あー、チミたち?彼は私の友人〈オモチャ〉なんですから、勝手にちょっかいを出されては困りますよ?!プンプンっ!

 

 とまあ、そんな感じで、神話生物とか、邪教徒たちを追っ払っておいたんですよねえ。

 

 あの子はあの子で、何を察したか、その後に必ずお礼を言いに来ますし。とぼけはしたんですが、誤魔化し切れた確信が持てないんですよねえ。

 

 おかしいですねえ・・・ちゃんと製本した攻略本にはこんなこと書かれてないんですがねえ。

 

 

 え?

 

 ああ、そのままだと、ちょっと不便なので、いくつかあれこれやって例の知識を製本したんですよ。

 

 もちろん、只人が目を通せば、SAN値がぶっ飛んで狂気の世界へ一直線な代物ですがね。素材はちょっと張り切って、例の知識の“提供者”の同類がいたので、彼らから提供していただきました。

 

 え?もちろん、転生者とそうでないものの見分けくらいつきますよ。ほら!私ってば、邪神ですから!

 

 それ言っときゃ何でも許されると思ったら大間違いだぞって?えー?邪神メソッドの定式ですよ?お分かりいただけませんか?

 

 ユゴス産の甲殻モドキのカビどもにお前らの脳髄いじくり倒させるぞゴラ。

 

 ハハッ!お分かりいただけたならいいんですよ!

 

 

 

 え?私の邪神トークより、零君の方が気になる?SANが減りに減って不定の狂気に入ってないか、ですって?

 

 はうん・・・皆さんが冷たい・・・。

 

 えー、それではリクエストにお応えしまして、零君について説明していきましょうか。

 

 

 

 

 実はですねえ・・・警察学校を卒業して間もなくくらいに、ふらりと彼はうちの古書店『九頭竜亭』にやってきまして。

 

 いつにもまして、思いつめた硬い表情で口を開いたんですよ。

 

 「ナイア姉さん・・・訊いても、いいですか?」

 

 あー・・・これは、今度こそ、SANチェック入っちゃいますかねえ?

 

 なんて、内心ハラハラしながら、話を促したわけですよ。

 

 ええ。けしてニヤついてなんていませんよ?いやだなあ、皆さん、そうやって疑るから、私の顔が邪悪に見えるんじゃないですか。え?だったら笑顔は隠せ?無っ理で~す☆

 

 「姉さんは・・・何者、なんですか?」

 

 おや、今更それを訊きますか。急ですねえ。

 

 んんー?おやおや。【目星】してみたら、緊張してるみたいですねえ。ガチガチですよ。顔も強張って、微妙に青ざめてますし。

 

 ふーむ。どうやら、今までは無意識に気にしないようにしていたようですねえ。やはり防衛本能を働かせていたようですねえ。

 

 しかし、こんなバレバレでは、トリプルフェイスなんて務まりませんぞ、少年!おっと、もうそんな年ではありませんねえ。

 

 

 

 いけませんねえ。“攻略本”の情報をもとにざっと逆算してみたら、彼、今からほんの1~2年で潜入任務に就くんですよ?こんな調子では、いけませんねえ。実にいけません。

 

 このまま潜入任務に就こうものなら、即行ばれて首チョンパですよ?それじゃ何の面白味も旨味もないじゃないですか!実にいけない!

 

 では、今から少々調教、もとい教育しましょうか。

 

 え?大丈夫、大丈夫。なぁに、少々、SANに鑿を突き立てて砕き落とすだけですよ。

 

 

 

 「では、答え合わせと行きましょうか?零君」

 

 にっこり笑って、私は口を開きました。

 

 おや?詳細が聞きたいんですか?

 

 いいですけど、SAN値が抉れますよ?削れるんじゃなくて、直葬しますよ?

 

 え?何したって・・・いやだなあ、ちょっぴり本性を現して、この世の真理を解いて見せただけですよ?

 

 おやおや?どうしました?みなさん、顔色が真っ青ですよ?

 

 いやあ、しかし、零君は実に意外でした!私としては、ちょっぴり虚ろな目になって(ハイライトが消えて)、しばらくブツブツ言いだすとかと思ってたんですよ?

 

 ハハッ!SANチェックが成功しようと、喪失量次第では一時的狂気も待ったなしですもの。

 

 現実の零君をごらんなさい!

 

 青ざめた顔をしながらも、毅然と言い放ったんですよ!

 

 「・・・納得は、できました」

 

 「フフッ。私のことが怖くなりましたか?」

 

 「・・・少しだけ」

 

 「少し?もっと怖がられると思ってました」

 

 意外に思って返した私に、零君は硬い表情を少しやら和げて答えてくれました。

 

 「知ってますか?ナイア姉さん。日本は、八百万の神の国なんです」

 

 「ほう?」

 

 「日本の宗教は、仏教と思われがちですが、実際は日本教と言い換えてもいいような、独特の価値観が無意識に潜んでいるんです。

 

 言葉には力があるから、悪いことを口にしたら実現するかもしれない。

 

 死んだ人のものは穢れているから触らない。

 

 などが、代表的な物でしょうか。

 

 日本人は物を大事にするんです。なぜなら、そこには神様が宿るから。長く使えば、使うほど。付喪神、なんてものもありますしね」

 

 よく回る舌だねえ。さすがは探り屋バーボンと言われることになる零君だ!

 

 内心感心する一方で、いささかムッとしました。いくら私が魔王アザトース様の使いっパシリとはいえ、便所の神様辺りと十把一絡げ扱いとは・・・いくらなんでもあんまりじゃありません?

 

 そんな私をよそに、話すうちに調子が出てきたか、したり顔になって零君が続けています。

 

 「そんな国に邪神がいたって、神様の一人であることに変わりはありませんよ。

 何より、あなたが僕の大切な・・・その、大切な人であることに変わりはありませんから!」

 

 おやおやおやあ?

 

 最後の言葉を叫ぶや、零君は門限が迫ってるから!と叫んでダッシュで出て行ってしまいましたよ。

 

 ・・・耳まで赤くしちゃって、相変わらずかわいらしい子だ。

 

 あの顔が絶望に歪めば、さぞや見ごたえのある顔をしてくれるに違いないでしょうねえ。その時が今から楽しみですねえ。(ニチャァッ)

 

 

 

* * *

 

 

 

 とある秋の暮れ。

 

 具体的には11月7日ですね。場所はとあるマンションの廊下の片隅です。

 

 せっかくですから、私も“救済”というものをやってみようかと思いましてねえ。

 

 え?やめてくださいお願いします?そんなに嫌がられたら続行したくなるじゃないですかー!え?この鬼!悪魔!邪神!ですか?邪神ですが?(邪笑)

 

 ところがどっこい、マンションに踏み込んであららと眉をしかめます。

 

 うーん・・・この臭い・・・魔術の臭いですねえ・・・。

 

 うぬー?あ。そういえば、数日前に屍食教典儀の写本が欲しいとかって来た子がいましたねえ。いやあ、明らかにSANがもう20代の秒読み段階に入ってて、一目でわかりましたよ。あ、面白そうだな、って。

 

 え?そこで面白そうって言える当たり、お前はやっぱり邪神だ?フフフッ。今更ですねえ。

 

 でまあ、格安で売ってあげたら(だって、ちょっと私がいろいろ手を加えてたので♪)それはもう嬉しそうに帰って行ったんですよ。ああ、面白いことになるなあってワクワクしてたんですが。タイミングがいいんだか悪いんだか、わかりませんねえ。

 

 一歩マンションに踏み込んであらあらとさらにため息をつきました。

 

 ここ、もうダメっぽい♪いやー、邪神的には面白いんですが、人間的感性としてみると、もうダメっぽいですねえ。

 

 マンションの住民さん、ことごとく生ける屍〈ゾンビ〉に改造済みみたいなんですよねえ。多分、魔術とかでそうと認識されてないと思うんです。

 

 だって、爆弾仕掛けに来た人たちが発狂&殺害の挙句、生ける屍〈ゾンビ〉の材料にされてたなんて、爆笑案件じゃないですかー。やだー。

 

 あっはっはっはっは!マジ受けるー!

 

 君たち何しに来たのー?爆弾仕掛けて脅迫前に生ける屍〈ゾンビ〉化とか!私の腹筋を殺す気ですかー?!

 

 あ、でも、これじゃあ、爆弾止める人がいないんじゃないですか?脅迫がないってことは、爆弾の存在を知ってる人がおらず、勝手に爆発・・・。

 

 うーん・・・これはこれで面白いですけど、ほら!やっぱり、止めようとして四苦八苦した挙句、結局どうにもできず爆発四散!の方がもっと面白いと思うんですよね!

 

 皆さんはどう思います?え?面白いのはお前だけだろって?ええー?腹筋直撃ものじゃないですか?

 

 ほら、面白いだろ?笑えよ。(ペットのシャンタク鳥を背後に従えながら)

 

 そうですよね?!やっぱり爆笑ものですよね?いやあ、涙を浮かべるほど笑っていただけるとは!やはり皆さんとはこれからも友好的にお付き合いできそうですね!

 

 とはいえ、やはりこのままではつまらない!ということで、適当に上がらせていただいたお宅(私の【鍵開け】技能は99だぁ!)でお電話お借りしましょうかー。

 

 あ、ここの住民さんも例にもれず生ける屍〈ゾンビ〉化しちゃってるんで。

 

 と、つながりましたねえ。万が一私と勘付かれても面倒です。声帯だけ変化させて、男のものにしてっと。

 

 あー、もしもし?警察さんですか?このマンションに爆弾を仕掛けちゃいました。さっさと解体しないと大変ですよー。

 

 ふざけた電話ですけど、これで確認の警察官くらいはよこされるでしょう。

 

 これで良しっと。さあて、あとは高見の見物と行きましょうか。

 

 

 

 やっちゃった♪テヘペロッ♪

 

 

 

 例の生ける屍〈ゾンビ〉作りの人をうっちゃらかしたまま警察呼んじゃったから、生ける屍〈ゾンビ〉を見かけた警官が発狂&発砲のコンボをやらかしてパニックになっちゃいました♪

 

 テヘッ♪私ってば失敗失敗♪(舌を出しながらセルフおでこコツン♪)

 

 え?キモいことやってないでさっさと収拾つけろ?

 

 えー?これはこれで面白くないですか?

 

 ほらほら。生ける屍〈ゾンビ〉と駆け付けた機動隊の殺し合いですよ。ウフフッ。発狂して恐慌状態に陥った人が、警棒を同僚にブチ当てて、ヘルメットごとぐしゃあ!うっふふふふ。面白いですよねえ。

 

 ほらほらほぉら。爆弾もあるんですから、もっと頑張らないと。

 

 それでも人間ですか?もっとしぶとく、もがき苦しみながらも、生き抜こうと頑張らないと。

 

 「萩原!先に行け!この化け物は!俺が食い止める!」

 

 「松田!」

 

 おやあ?ウフフフフ。面白そうなお二人を発見です。

 

 確か、“攻略本”によると、彼らが爆発物解体の天才、萩原研二君と松田陣平君でしたかねえ?かわいいかわいい零君の同期でもあるんです。ぜひ、生き延びていただきたいものです。

 

 ただ・・・単独行動というのは、あまり推奨できませんねえ。ほら、そんなことをしたら、ダイスの女神様のご機嫌次第では、何ともなりませんよ?

 

 まあ、私はしょせん、高見の見物客ですからねえ。

 

 必死に生ける屍〈ゾンビ〉に武器を振りかざし対抗する松田君をよそに、どうにか萩原君が先へ向かっていきますねえ。

 

 うんうん。通報した爆弾のある場所へ一直線です。素晴らしい。

 

 「あ」

 

 唐突に、マンションの空気が変わった。

 

 あらあ、あの子、やらかしたんだ。まあ、写本とはいえ、書かれてましたしねえ。

 

 何がって・・・神格の招来/退散呪文です。原典〈オリジナル〉の屍食教典儀にも、とある神格の招来/退散呪文が書かれてるんですが、彼女の招来は手順がちょっと面倒なので、もっとお手軽な招来呪文を手順込みで追加しておいたんですよねえ。

 

 常人なら重苦しい、息苦しいと感じる空気に、鼻がひん曲がるような腐臭。

 

 ・・・確かに、あのお方でしたら、比較的呼び出すのが簡単なんですよねえ。しかしまあ、だからと言って呼び出そうなんて、何考えてたんでしょうねえ。ま、狂人に論理なんて求める方が無茶なんでしょうがねえ。

 

 とはいえ、ここで“あのお方”にシチャメチャにされると、いささか今後の予定が困るんですよねえ。

 

 ま、知らぬ顔でもありませんし、ちょいと説得してみましょうか。

 

 で、私!参上!ですよ!

 

 ちょっと遅刻しちゃいましたけどね。テヘペロッ♪

 

 え?具体的被害ですか?

 

 うーん・・・マンションの屋上、呪文≪平凡な見せかけ≫で誤魔化してある石の塔、その頭上の空間を引き裂いて、既に“あのお方”が現れかけてるんですよねえ。

 

 ま、せっかくですし、人間の感性に沿った表現で、彼の容姿を表現してみましょうか。

 

 ダイスの準備はいいか?人間〈PC〉ども。

 

 

 

 それは、玉虫色のたくさんの球の集合体だった。弾は絶え間なく形を変えたり、お互いに近づいていってくっつきあったり、また分かたれたりを繰り返している。

 

 網の目のようにも、分裂増殖しつつある細胞塊のようにも見えるそれは、空を覆いつつある。

 

 そう、それは全てにして一つのもの、副王、ヨグ=ソトースだった。

 

 

 

 来られちゃった♪上司。いや、直属の上司は魔王アザトース様ですけど、副王ヨグ=ソトース様も一応上司ってことになるので。

 

 何しろ、全ての時と空間の法則を調節し、全ての時間とともに存在し、あらゆる空間に接しているという超常存在ですからねえ。

 

 いやあ、アザトース様もすごいですけど、この方も大概ハチャメチャですからねえ。

 

 ・・・ちなみに、以前魔導書をお買い上げいただいた顔色悪い山羊面の男が、廃人と化して屋上の片隅に座り込んでおります。

 

 SANチェック失敗なさったんですね?呼ぶだけ呼んで放置とかやめていただけませんかね?

 

 え?お前のせいだろ、責任取れって?うーん・・・確かに、米花町のお空にこのお方を鎮座させるのも、よろしくありませんよねえ?

 

 既になんか、下の方から悲鳴じみた絶叫とか、狂気に満ちた笑い声とか聞こえてくるような気がするんですよねえ?

 

 ・・・これ、私が後始末するんですか?

 

 え?自業自得だろって?うーん・・・面倒臭。まあいいか。どうせみんな、勝手に見なかったことにするでしょう!

 

 「えー・・・遠路はるばるお越しいただいて恐縮なのですが、お帰りいただけないでしょうか?」

 

 私が一声かけるなり、その無貌じみた球の集合体の意識が、私の方へ向けられる。

 

 ああ、これは私が誰かわかってないなあ。

 

 直後、彼の放った銀色の球が、私のすぐそばのセメントを抉る。

 

 お、おっかない・・・。かろうじて命中判定が失敗したようで、助かりました・・・。

 

 直後、バタンとドアが蹴破られる。

 

 「まだ住民がいるの・・・か・・・」

 

 おやおや、バッドタイミング。

 

 入ってきたのは、先ほどの萩原君。

 

 屋上に出てきた彼が目の当たりにしたものを分かりやすく表現すると、空高くに出現しているヨグ=ソトース様と、彼女を見上げる黒髪美女(つまり私)。

 

 ま、外なる神〈アウターゴッド〉との接触によるSANチェック入りますよねえ?

 

 「くぁwせdrftgyふじこlpっっ!!!」

 

 声にならない悲鳴を上げるや、膝をついて彼は倒れ伏す。体中の穴という穴から体液をたらし、その感覚器官は現実との接点を断絶させることを選んだらしい。

 

 ああ。これだから、脆弱な人間は。零君の幼馴染の割に、大したことのない。

 

 いやいやいや!今はそれより、目の前の驚異の説得から!さすがに米花の住民をまとめて発狂させるわけにはいきませんから!

 

 「いえいえいえ!帰れというのはぶしつけ且つ不敬でした!申し訳ありません!

 

 ほら!私が誰か、お分かりになりませんか?!忠実なる僕の一人、ニャルラトホテプであります!

 

 あなた様を呼んだのは、ほらこの通りですので!あー!あー!そう!そうです!せっかく来てもらったことですし、お茶でもいかがです?!いい玉露が手に入ったんですよ!」

 

 廃人をつま先でゲシッとド突いて見せて、にっこり笑う。

 

 ちなみに、その拍子に彼はコロンと横倒しになる。自立活動もままなりませんか。致し方なし。

 

 笑顔が引きつってる?当たり前でしょう。邪神といえど痛いのは御免です。

 

 一拍の沈黙。ややあって。

 

 「お茶菓子もある?」

 

 そんなどこか眠たげな声と一緒に、玉虫色の球の集合体を、瞬時にヴェールを羽織った中学生ほどの美少女(具体的にはAPP18)へと変貌させる。長い銀髪を三つ編みにしています。

 

 ええ、御存じ、あのお方の化身、タウィル・アト=ウムルです。え?容姿が違う?そりゃ、邪神だって時代のニーズやその時の気分に合わせて変貌しますよ。仏像だって初音ミ●をモデルにツインテールになるご時世なんですもの。

 

 「もちろんです!」

 

 気をつけ!とばかりに姿勢を正してコクコク頷く。

 

 こ、これはちょっと高価なお菓子を出さないと、下手をすればフォーマルハウト逝き(誤字に非ず)にされる・・・!

 

 「ん。どこにあるの?」

 

 「はいはい、ただいま!」

 

 大急ぎで、呪文≪消滅≫を使い、タウィル・アト=ウムル様ともども、九頭竜亭へ。

 

 ああ、急いでお茶の支度をメイドのショゴスさんにお願いしないと!

 

 

いあ!いあ!続き!いあ!次回!

 




【邪神アバターだけど上司には頭が上がらないナイアさん】
 相変わらずの邪神ぶり。人間がもがき苦しみ、それでも前に進もうとするのを高見から見物しつつ嘲笑うのが趣味という、どうしようもない邪悪ぶり。
 自分の正体を面白半分で大事にしている(はずの)降谷さんにばらして、SANをガッツリ削り取ろうとした。その際の零君の反応が斜め上過ぎた。ただし、せっかくの好意を寄せられても、上げて落とすことを即座に考えるあたり、やっぱりどうしようもない。
 コナン本編7年前の爆弾事件にて、救済(の皮をかぶった何か)をしようと思い立って現場のマンションに訪れるが、以前魔導書売ってあげたキ●ガイさんがよりにもよってやらかしてた。
 うっかりうっかり(CV櫻井●宏)。
 ついでにそのキ●ガイさんが、上司(副王ヨグ=ソトース)召喚してきた。
 米花町のど真ん中で、全住民のSAN値直葬待ったなし。
 ちなみにCoCのルルブによると、ヨグ=ソトースとの接触によるSANチェックは1D10/1D100という、ダイス次第では本当に直葬待ったなしだったりする。また、本来なら生贄も必要なのだが・・・まあ、劇中では省いたけど、誰かが適当に生贄になったと思っておいてください。
 どうにか上司の説得に成功。ついでに魔導書も回収した。
 この後、本拠たる古書店で、高級緑茶と和菓子を、すっからかんになるまでご馳走することになる。私のおやつがあ・・・。
 あ、爆弾忘れてた・・・まあいいか。

 余談ながら、多分米花町で殺人が頻発するのは、ヨグ=ソトース様を見かけて、SANチェックに失敗して、低SANになった住民が多いためと思われる。

【邪神を知ろうと平然となさってたくせに、うっかりポロッとこぼした降谷さん】
 知り合ったお姉さんが、優しくて物知りだけど、いつまでたっても容姿が変わらないということに真っ先に気が付いた。
 大好きだから疑りたくないと思ってるけど、とうとう我慢の限界が訪れ、質問してしまった。
 お姉さんが化物化物した正体を見せつけて来るが、想定以上に精神的にタフだった。
 日本大好きな零君なら、八百万の国の住民の精神で、神格との接触によるSANチェックは強制成功させるに違いない!(偏見)
 勢い任せで、つい恥ずかしいことも言ってしまった。
 邪神だろうと、ナイア姉さんのことは大切なんだ!
 ・・・彼の今後は、さらに不安。

【うっかり副王の姿を目撃してSAN値直葬が直撃した萩原さん】
 今回完全な被害者枠。
 爆弾あるぞーっといういたずら電話(?)のもと、出動した警官が化け物ナンデ?!と連絡食らい出動。
 どうにかゾンビ軍団の襲撃をいなし、念のため爆弾処分に行ったら、屋上へ向かう黒髪美女の姿を目撃。危なぁぁぁぁい!と追いかけて行ったら、この世の裏側にいる常識破壊する副王様の姿を目撃してダイスロール。失敗して、さらに出目がとんでもなく悪く、もれなくSANがマイナス域に突入した。
 廃人になって屋上でひっくり返る。
 この後、警察上層部が、一連の騒動を神経ガス散布テロによる集団幻覚とし、犯人不明の爆弾(当然処理は間に合わず爆発した。爆発による犠牲はゾンビ以外いない)事件ともども処理。
 精神病院に入院する羽目に。
 ・・・なお、このことで彼の親友はただ事ではない、と独自調査を開始することになるのだが、それはまた、別の話。
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