邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 ♯25ラストで語っているのは原作12巻『ゲーム会社殺人事件』です。まあ、それについては前半でダイジェスト風味にさらっと流します。大まかな流れ自体は変わらないのです。参加している人物が違うだけで。
 一応、これについては、
コナン君が毛利探偵事務所に居候していない
→ナイアさんは原作毛利小五郎ほど売れてない
→ゲーム化企画が持ち込まれず、蘭ちゃんや小五郎さんが参加されない、
という裏事情がありますので。
 そして、バタフライエフェクトで、いささか遅いながらようやっと、西の高校生探偵が参戦なさいます。
 が、のっけからこの有様です。狂人女子高生とKY関西探偵を組ませると、こうなります。
 なお、これでもかなりマイルドになったほうです。
 最初、彼は子供たちの襲撃を思い出してカリカリなさってた邪神様を再激怒させて、シャンタク鳥のおやつにされてました。
 ただで楽に退場させるってどうよ?と内なるサディスト根性がささやいてきたので、こうなりました。


【#26】西の高校生探偵の登場!狂人蘭君を添えて☆

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 『名探偵コナン』がスタートしてそこそこ経ったわけですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

 ごく一部の方々は、つい先日までの平穏な生活とはおさらばして、あの世という別次元に旅立たれたり、はたまた格子の奥で裁判の順番待ちをなさったりするようになったようです。

 

 ついでに、その犯人探しや前後の事情をめぐって、周囲の人々も醜い人間模様を繰り広げられてくださいます。

 

 ええ。私もその有様を指さして大爆笑・・・したいのを堪えて、コナン君の身代わりとして探偵役を演じさせていただいてます。

 

 そろそろ、警察の皆様にも顔なじみになってきたでしょうか?

 

 

 

 

 

 ま、どこぞの世界にいらっしゃる剣豪も「注意が一秒、後遺症は死ぬまで」とおっしゃられてますし。

 

 極論してしまえば、自己責任ですよね?手を下した方も下された方も、どのような形であれ、ご自分の発言や行動の責任は持たなければならないと思うんですよね?そのために人間は法律なんて面倒なものを作り上げて相互管理をなさっているわけですし。

 

 おや。誤解や事故のような形で殺された人々に謝れ?

 

 なぜです?彼らはこの世の真実を垣間見ることなく、苦しみもせずのたうち回りもせず、呪われも狂いもせずに、安寧な死を迎えられたのですよ?

 

 むしろ祝福すべきでは?

 

 ボブだって訝しみますよ、そりゃあ!

 

 

 

 

 

 さて。冒頭邪神トークはこのくらいで切り上げましょう。

 

 きっと皆さん、待ち焦がれているのでしょう?

 

 先日、予知夢を見るという竜條寺君が予言なさった“満天堂の新作ゲーム発表会で起こる事件”について。

 

 いやあ、私も参加したかったのですが、いかんせん伝手がなくて。

 

 仕方なく、魔術でのぞき見ということに落ち着きました。

 

 あれはあれでなかなか愉快でしたがね。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 その日、コナン君は朝からお出かけです。

 

 名目としては、“将来探偵になりたくて、修行のために特別に出入りさせてもらっている槍田探偵事務所の事務員のお姉さんが招待してくれたゲーム発表会に、友達と参加”ということです。

 

 この“事務員のお姉さん”は寺原君で、お付き合いしている男性(お察しですよね?)が新作ゲームのテーマソングを歌ったから、特別優待で行けるということになったそうで。

 

 で、知り合いに声をかけたものの、何人か都合が悪く、コナン君を誘ったそうです。

 

 

 

 

 

 まあ、私は知ってるんですがね。

 

 竜條寺君から、その発表会に組織の連中が絡んでくる可能性があると聞いたコナン君が目の色変えて食いついていることを。

 

 肝心の竜條寺君は、ブッキングからの生存バレを恐れて不参加を表明されてましたが。

 

 しかし、それで十分とコナン君は気合満点に、絶対連中の手がかりをつかんでやる、と意気込まれているわけです。

 

 

 

 

 

 前記しましたが、招待されているのはコナン君だけ、私は参加チケットが手元にないので『九頭竜亭』でお留守番です。

 

 さみしいですねえ。

 

 ・・・せっかく、爆弾で勘違いからの爆殺があって、人間同士の醜い疑り合いがあるというのに、参加できないなんて。残念。(悲しげなため息)

 

 まあ、一応、コナン君から「見たいなら勝手に見とけよ、クソ邪神」と出がけに吐き捨てられましたのでね。

 

 許可は得られたということで、遠慮なく出歯亀させていただきました!

 

 

 

 

 

 あ、ちなみにゲームのタイトルは『Linking Fire~呪われた王国~』ということで、何と新進気鋭のダークファンタジー作家をシナリオライターに起用されているのだとか。

 

 竜條寺君曰く、「予知夢では『名探偵毛利小五郎~推理の館~』だけど、毛利小五郎は名探偵じゃないし、あんたはあの人ほど名が売れてないから、別のゲームになるんじゃないか?」とのことでしたが。

 

 

 

 

 

 私が毛利小五郎と同じく、コナン君の保護者兼隠れ蓑というのに、彼より売れてない理由ですか?

 

 こちらも前記しましたが、コナン君は槍田探偵事務所にも出入りしていて、そこでも事件解決の手助けをしています。

 

 つまり、本来毛利小五郎氏お一人に降りかかるはずの事件が、私と槍田探偵事務所の二か所に二分割されているんです。

 

 そりゃあ、かかわる事件が少なくなれば、自然と知名度も低くなりますよ。

 

 

 

 

 

 ところで・・・このダークファンタジー作家、竜條寺君のお付き合い相手の探索者じゃありません?

 

 確か、徳本敦子君という名前で、2年前に自殺未遂を引き起こしたらそのまま意識不明で、クローズドからの脱出タイプのセッションに参加なさって、無事生還、という経歴をお持ちだったかと。

 

 いやあ、世間って狭いんですねえ。

 

 コナン君がそこまでご存じかは知りませんが。

 

 ちなみに、デビュー作はあらゆるものが塩ででき、怪物も徘徊する島に迷い込んだ、男女4名の苦悩と葛藤を描いたサバイバルサスペンス、『塩の孤島』です。

 

 お察しの通り、竜條寺君も以前参加した、クローズドタイプのセッションをノベライズしたものですね。

 

 私も読んでみましたが、なかなか楽しめました。

 

 本の中では全員生還なさってますけど、実際は1名ロストなさってますからねえ!

 

 

 

 

 

 さて、話を戻しまして。

 

 会場に到着したコナン君が一緒にいるのは、寺原麻里君の他には・・・おや、設楽蓮希君も一緒ですか。

 

 ああ、この前の旗本一族の事件で、ご友人が亡くなられましたからね。大分立ち直られはしたようですが、気晴らしになればと、仕事で誘いを断らざるを得なかった松井君からの言葉で、来ることになったようですね。

 

 「こういうところ来るの、初めてで・・・」

 

 「ボクもなんだ!蓮希お姉ちゃんはゲームとかやらないの?」

 

 「全然。学生の頃、友達とプリクラなら撮ったけど、そのくらいかな。麻里さんは?」

 

 「ゲーセンのダンスゲームやリズムゲームなら多少ね。他はさっぱり」

 

 などと和気あいあいとお話しされています。

 

 いやあ、これからあの朗らかな雰囲気が、ぶち壊しになるんですね。すばらしい、楽しみです♪

 

 

 

 

 

 そうして、メインの新作ゲームの他にも、いろいろ出ている出し物のゲームを3人で見て回っていきます。

 

 もっとも、コナン君は黒ずくめを探すべく、周囲に必死に目を向けています。

 

 で、ある程度回ったところでジュース休憩をしようと、一度会場を抜けたところで、コナン君はついにお目当ての人物と出会いました。

 

 一度トイレでとある人物とぶつかった黒ずくめの大男は、公衆電話で関西弁丸出しであれこれと報告中です。

 

 これ幸いと、コナン君は小銭入れをばらけさせ、大男の足元に転がった小銭を拾うふりをして、発信機&盗聴器を靴底に仕込んでいます。

 

 で、そのまま追跡しようとしたところで、大男がトイレの個室に入り――ドガンッ!と大爆発。まあ、至近距離の大男が無事なわけがありませんよね?

 

 おやおや、竜條寺君の予言が当たりましたよ。

 

 コナン君、ご愁傷様でした。

 

 

 

 

 

 で、その後はコナン君が第一発見者として、警察の捜査に協力。

 

 途中、寺原君に呼び出された槍田君も一緒に事件の捜査に加わり、無事犯人は特定されました。めでたしめでたし、です。

 

 まあ、事件は解決しても、コナン君は黒ずくめの連中の取引先のビルに行こうとして、そこが先に爆破されてたというオチがあったりするのですがね。

 

 爆発オチなんてサイテー!

 

 

 

 

 

 そうそう。

 

 なぜか、現場に居合わせた風見君が、事件関係者の一員にして、大男と取引をしていた…中島君でしたっけ?何かそんな感じの人の身柄を引き取っていましたよ。

 

 これは多分、竜條寺君の“仕込み”でしょうねえ。

 

 

 

 

 

 

 以上が、“満天堂の新作ゲーム発表会で起こった事件”の概要でした。

 

 せっかくの気晴らしがとんだ事件に巻き込まれ、蓮希君は少しくたびれた様子でした。

 

 事件後に迎えにやってきた松井君に、抱き着いてそのまま泣きじゃくる始末です。

 

 ま、彼女、“黄衣の夢幻貴公子”のセッションでだいぶSANが摩耗なさってましたからねえ。

 

 直接死体を目の当たりにしたわけではありませんでしたが、それでもかなり精神的負担になったようです。

 

 しょうがないですねえ。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 そんなことがあってから数日。

 

 どこでもらってきたか、コナン君が質の悪い風邪をこじらせて寝込みました。

 

 鼻水はズルズル、コンコンッと咳き込んで、熱で顔を真っ赤にしています。

 

 まったく、しょうがないですねえ。

 

 ショゴスさんにはスポーツドリンクを大量に買ってきてもらい、病人食を作ってもらいます。

 

 「風邪だね。薬を出しとくから、毎食後に飲むこと。お風呂は今日はだめだよ。

 

 水分を大量にとって、お粥とか消化にいいものを食べること。汗をかいたらちゃんと着替えるんだよ。

 

 解熱剤も一応出しとくから、高熱が続くようなら、飲んでね」

 

 聴診器などの診察器具を片付けながらつらつらといった、成実君。

 

 ああ、そこらの小児科医よりは、顔見知りの方がいいだろうと、彼をお呼びしました♪

 

 しかし、なぜ一応保護者の私ではなく、コナン君ご本人に言うのです?!

 

 「・・・失礼ですが、あなたがコナン君の看病を面倒がるかと思いまして。

 

 それに、コナン君はかなりしっかりしているので、本人に直接言った方が理解が早いかと」

 

 警戒している様子でそう言ってくる成実君に、私は呆れたように両手を腰に当てて言いました。

 

 「あなたが私を何と思われているかまでは存じませんが、今の私は一応、この子の保護者です。看病を放り出すなんて、保護者失格ですよ。そんなことするわけないでしょう」

 

 困ったように笑って首を振って見せましたが、対する成実君は無言で視線をそらされただけです。

 

 何ですか!まるで信用されてないようじゃあないですか!

 

 え?お前は日ごろの言動を思い返してから、信用というものを求めてみろ?

 

 何ですか皆さんまで!

 

 「コホッ・・・ありがとう、成実さん・・・」

 

 「お大事にね、コナン君」

 

 冷却シートを額に貼って、ベッドの中でぐったりするコナン君に、ニコリと笑みを返して、成実君はそのまま出ていかれました。

 

 

 

 

 

 やれやれ。看病の詳細はショゴスさんにお任せして、私はちょっと店先に出ます。

 

 寝ているコナン君には申し訳ないのですが、あのガキどもに破壊された本棚の修復と、ついでに固定の工事をしようと、その見積もりを業者さんとお話しする必要がありまして。

 

 タイミングが悪いのですが、致し方なし、ですよ。

 

 

 

 

 

 で、ちょっとお話していると、生活スペースのあたりがギャースカ騒がしくなって、叫び声やらなにやら聞こえた挙句。

 

 「うあああああああ!」

 

 「待たんかい工藤!オレと勝負や!」

 

 「新一ぃぃぃ!待ちなさぁぁぁい!」

 

 バタバタと、私と業者さんが座る応接セットのすぐそばを、彼らは通過していきました。

 

 トップバッターは、ゼエゼエ荒れた息と、汗だくの工藤新一君です。一応洗濯してお返ししておいた、トロピカルランド時の服を着てますが、大急ぎで着られたのか、細部がぐしゃぐしゃです。しかも素足です。

 

 彼を追うように続いて飛び出して来られたのが、蘭君と・・・見知らぬ色黒の青年・・・ああ、攻略本に載ってましたね。確か、西の高校生探偵、服部平次君でしたか。

 

 とはいえ、見過ごせませんねえ。

 

 部外者の君らが、なぜ我が家のプライベートスペースから出てくるんです?不法侵入ではありませんか?

 

 もちろん、私の領域たるこの店で、好き勝手にやらせる道理も理由も、ありませんよね?

 

 というわけで。

 

 「ストップです」

 

 一言言い放ち、私はすぐそばを通過したばかりの、服部君のジャケットの裾をつかんで、呼び止めました。

 

 同時に、止まり木に留まっていたオカメインコモードのシャンタク鳥が蘭君の前に飛び込み、ギャーギャー鳴きながら爪とくちばしを向けて、止まらないと痛い目見せるぞ!と威嚇アピールです。

 

 いいですよ!シャンタク鳥!これは、近いうちに生贄おやつの増量といきましょうか!

 

 「な、何や、姉ちゃん!放してんか!工藤が逃げてまうやろが!」

 

 「キャア?!やめ!やめて!な、ナイアさん、助けて!」

 

 「どこから入り込んだんです?そして君は誰です?」

 

 いくら私が寛容な方とはいえ、物事には限度があるのです。仏様でもご尊顔をお見せするのは3度までとおっしゃられて・・・実は、あれって猶予は2回で、3回目からアウトらしいのですが・・・とにかく、返答次第では、そろそろお仕置きも視野に入れますよ?

 

 どうにか私の手を振りほどこうと、喚いて身をよじる服部君と、シャンタク鳥から逃げようとかがんで手で防御する蘭君。

 

 やれやれ。

 

 「おい、工藤待たんかワレェ!オレが怖ぉて、逃げんのか!よぉもそれで平成のシャーロック・ホームズなんて舐めたこと言えたのぉ!」

 

 私にジャケットの裾をつかまれたまま、店の外に向かって叫ぶ服部君ですが、全く格好がついてませんよ?

 

 ちなみに、新一君はとっくに姿を消しています。戻ってくるわけもないですよ。

 

 ・・・はて?新一君?おや、いつ、コナン君から元に戻ったのでしょう?

 

 いや、確か攻略本にも、何か一時的に元に戻る手段があると書かれていましたね?それでしょうか?

 

 そんな私たちのドタバタに困惑しきった様子の業者さんに、私は少し困ったような笑みを向けて、「すみません、騒がしくしてしまって」と謝罪します。

 

 まあ、お話自体はとっくに済んでいますのでね。

 

 業者さんの方も、また来ますねー、と挨拶してお帰りになられました。

 

 では、改めまして。

 

 「そのお耳は飾りですか?名無しの権兵衛君。

 

 蘭君、あまり私を失望させないでください。

 

 ここは私のお店です。今の君たちはお客様にも満たない、無粋な侵入者です。

 

 名乗って、要件を言わないのであれば、相応の対応を取らせていただきますよ?」

 

 グイっとジャケットを引き寄せるように服部君を引きずりよせ、蘭君と併せて嘲笑を向けます。

 

 途端に、不満そうな服部君はともかく、蘭君の方は分かりやすい勢いでさあっと顔色を青ざめさせます。

 

 ですが。ですがね?反省なんて、猿でもできるものです。SANがゼロであろうと、人間であるならば誠意というものを見せていただかないと。

 

 「す、すみません!け、けど、か、あ、ナイアさんなら新一のことを知ってるんじゃないかと思って・・・新一・・・そう!新一よ!どういうことですかナイアさん!!

 

 まさか新一を捕まえて監禁してたんじゃないでしょうねいくら神様でもそれは許せないですよ新一は私のものなんだから私の私の大事な大事な」

 

 Wait。ちょっと待ちましょう?セルフ起爆ですと?いつからそんな高次機能を搭載したのです?!蘭君!

 

 「な、何や、この姉ちゃん・・・」

 

 対する服部君は、そんな蘭君を不気味そうに見てから、私の方に視線を戻し、ややあって、名残惜しげに店の出口を見てから、ややあって私の方へ向き直ります。

 

 もう逃げそうにないと判断し、私は彼のジャケットから手を放してあげます。

 

 「そりゃすまんかったな。毛利の姉ちゃんが大丈夫言うから、てっきりオレらがここにおるのを知っとるか思とったわ。

 

 ああ、自己紹介がまだやったな」

 

 と、ここで彼は言葉を切ると、不敵な笑みとともに高らかな名乗りを上げてくれました。

 

 「オレは服部平次!高校生探偵や!

 

 東の工藤に対し、西の服部といえば、オレのことや!」

 

 「存じ上げませんねえ。ローカル限定では?」

 

 「何やと?!」

 

 正直聞いたことがなくて(攻略本に載ってたから知ってただけで)、首をかしげて見せるや、あからさまにショックを受けた顔をなさる服部君。

 

 なかなかのリアクションぶりですねえ。探偵よりも芸人の方がお似合いな感じですが。

 

 「クッ・・・これだから、関東は・・・せやから、オレは工藤打倒のために、はるばるここまで来たんや!

 

 どちらが探偵として上か、証明するためにな!」

 

 「はあ」

 

 ビシィッと指さされても、何と申しますか、咬ませ犬感が半端ないですねえ。

 

 気の抜けた返事を返す私に、服部君は面白くないといわんばかりに眉を寄せます。

 

 ちなみに、この探偵を自称する芸人君を歯牙にもかけず、蘭君は相変わらず、狂人トークを垂れ流されています。

 

 いつものことですよ。(遠い目)

 

 「はい。そろそろ現実に戻ってきましょうね~」

 

 ぱぁんっと、蘭君の目の前で猫だましをして差し上げれば、彼女はびくっと肩を揺らし、「はっ?!」と我に返った顔をなさいます。

 

 「ああ、自己紹介が遅れました。

 

 すでに蘭君からお聞きかもしれませんが、私は手取ナイアと申します。

 

 この古書店『九頭竜亭』の店主であり、最近、探偵相談も引き受け始めました。まだまだ駆け出しですがね」

 

 「おお。この前も、テレビにちらっと出とったな」

 

 「恐縮です」

 

 にっこりと笑みを浮かべる私に、服部君はしかし険しい顔になって睨みつけてきます。

 

 おや?何か敵意を持たれるようなことは・・・しましたね、彼の執着する新一君を逃がすことになってしまいましたし。

 

 「で?どういうことや?」

 

 「と、おっしゃいますと?」

 

 「とぼけんなや。何で行方不明のはずの工藤が、姉ちゃんの店の裏手、それも自宅の方に匿われとったんや」

 

 鋭い目つきで睨んでくる服部君は、嘘やごまかしは許さない、と視線で語ってきています。

 

 フーム。さて、どう答えたものでしょうね?

 

 「答える前に、なぜここに来たのです?

 

 その返答次第では、私が答える必要はないと思いますが。

 

 君も立派な探偵とおっしゃるなら、ね」

 

 あえて挑発するように言ってみれば、ぐぬぬっと悔しげに顔をしかめる服部君。

 

 これは、素直に答えてくれるのは難しいですかね?

 

 さて、蘭君、どういうことです?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 蘭君が言うには、入院している小五郎氏の都合があって、現在自宅に妃英理女史が一時帰宅なさっている状態なのだとか。(借金していることについて何とコメントなさっていたんでしょうねえ?)

 

 で、本日は妃女史が弁護士事務所の方へ出勤なさって、蘭君一人であれこれやっていたところに、服部君がやってこられたのだとか。

 

 で、彼は帝丹高校近くで、鈴木園子君から新一君と幼馴染にして恋人(まだ告白もされてないのですがそれは)たる蘭君のことを聞き、彼女ならば新一君の居場所がわかるのでは、と突撃をかけてこられたようです。

 

 そして、蘭君は(崇拝する神様にして)頼れる相談相手であり、最近では新一君張りの推理もできる(ように演出させられている)私なら、新一君の居場所・・・までは分からずとも、何か手掛かりが得られるのでは?と考えたご様子で、彼をここまでお連れしてしまったようです。

 

 ですが、肝心の私は何やら業者さんとお取込み中。邪魔したら悪いからと、鍵を開けておいた勝手口から中に入り込み、そこでたまたま枕もとのスポーツドリンクを切らして、お代わりをキッチンまで取りに来たコナン君と遭遇。

 

 風邪ならこれがいい!と服部君が手土産に持ってこられた白乾児〈パイカル〉を飲ませて、そのまま図々しくも勝手に中で私を待たれていたと。

 

 そうこうしているうちに、悲鳴が聞こえ、駆け付けるや新一君がいたというので、二人して捕まえるべく追いかけたということだそうで。

 

 

 

 

 

 

 あ、ちなみに新一君は以前の“ご両親主催のなんちゃって誘拐事件”の後、ご両親を代理人に高校に休学届を出していますのでね。

 

 後、この間の小学校での事件の後、コナン君も何を思ったか、変声機越しに蘭君に電話をかけて、「厄介な事件に出くわしてしばらく戻れない。連絡もできなくなる。自分は弱い人間だから待っててくれたらうれしいが、待てそうにない、待ちきれないと思ったら、待つのをやめて構わない」などと格好をつけて言ってましたよ。

 

 いやあ、はたで聞いている私にさえ聞こえるほどの大音量で、蘭君がキャンキャン喚いているのが聞こえましたねえ。

 

 まあ、コナン君、気にせずにパッパと通話を終えて、続いて目暮警部や高校の担任教師などにも、個人的な電話をかけて「厄介な事件に巻き込まれて、しばらく姿が見せられない。とても危ないので、身近な人を巻き込まないためにも、自分の行方不明は大事にしないでほしい。心配かけて申し訳ない」などと根回しされていましたね。

 

 なぜでしょうねえ?攻略本に、そうやっていると書かれて・・・そもそもあれ、情報偏りまくってましたねえ。

 

 え?この間の事件でお前のそばにいるという危機感があおられたから、いつ蒸発してもおかしくない根回しをしているんじゃないか?ですか?

 

 なるほどなるほど。準備と根回しは探索者の基本ですからね。自ら災害に首を突っ込む彼らにとって、それらができてない=自殺宣言と同じです。いやあ、新一君も基礎がしっかりしてきましたね。感心感心。

 

 え?お前が言うな?

 

 何かしましたかねー?(すっとぼけ)

 

 

 

 

 

 

 話を戻して。

 

 コナン君、前の事件で少し精神的に弱られていましたしねー。ただでさえ組織から身を隠してフラストレーションをため込んで、さらに熱で弱っているところを、知らない顔と知ってる顔(ただし狂人全開)に追い回されそうになったら、見栄もプライドもかなぐり捨てて逃げてしまったというところでしょうか。

 

 いやあ、あの瞬間の彼の顔は、実によかった!まあ、すぐに服部君に台無しにされたんですが、それさえなかったら指さして大爆笑してあげたかったです♪

 

 え?フラストレーションの大きな要因の一つはお前だろうが、ですか?でもまあ、それは彼の自業自得、ですよ。私を保護者に選出したのは、コナン君の決断ですよ?高校生にもなってるんですし、自主性は重んじてしかるべきです。

 

 え?本当にそう思っているなら、そのニヤニヤ笑いは何だ?いやですねえ、愉悦に口元の緩まない邪神が、どこの世界にいるんです?(ニチャァッ)

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 至る、現在、ですか。

 

 ふーむ。さすがに、コナン君と、幼児化した工藤新一君をつなげて考えられてはいないようですね。

 

 むしろ、あれをあっさりつなげて考えられる方がおかしいんでしょうね。我々のような存在を知っている人間なら、割とその辺の敷居が低めではあるのですが。

 

 

 

 

 

 とはいえ、まずは新一君が我が家にいた釈明から、ですね。

 

 以前、コナン君との“取引条件”の追加で、江戸川コナン=工藤新一という情報を直接ばらすのは禁じられてますからね。

 

 まあ、それができたら、いろいろ面白そうではあるのですが、楽しみ方は、他にもいろいろあるのですよ。たとえば、こんな感じで。

 

 「うーん・・・話していいものか・・・。

 

 一応、口止めされているんですよねえ・・・」

 

 「何か知ってるんですか?!ナイアさん!」

 

 「おい姉ちゃん!もったいぶらずに教えてんか!オレは探偵やで!コンプライアンスの重要さは知っとるつもりやで!」

 

 少し困った感じを装って言うや、二人とも目の色を変えて、身を乗り出してきました。

 

 ヒット〈食いついた〉。フフッ。ですが、焦ってはだめです。いくら釣り針と疑似餌〈ルアー〉がいいものとはいえ、持っていき方次第ではだめになりそうですしね。

 

 「そこまでおっしゃるなら・・・くれぐれも内密にお願いしますね?」

 

 ちょっと困ったように、私は語りだしました。

 

 

 

 

 

 

 おや、ちょっと長引きましたか。

 

 いつものこととはいえ、すみませんねえ。(ちっとも誠意を感じられない?気のせいでは?)

 

 それでは皆さん、ご一緒に!

 

 続く!

 

 

 

 

 

 

続くとは、実に牛歩ではありませんか?

(彼は狂っていた)





【爆発事件をのぞき見して、西の高校生探偵に突発訪問されたナイアさん】
 竜條寺さんに予告されていた満天堂の新作ゲーム発表会で起こる事件は、もちろん楽しみにしていた。
 伝手がなくて、直接行くことができず、魔術でののぞき見に限定されるが、それでも十分楽しんだ。
 本人も気が付いている通り、原作コナンでは毛利小五郎一人に降りかかる事件が、この世界では槍田郁美とナイアさんの二人に二分されているので、自然とかかわる事件自体が少なく、そのため、原作コナンではこの時点でゲーム企画が持ち込まれるほど名を挙げた毛利小五郎ほど、名が売れていない。
 やっぱり、黒ずくめの一員であるテキーラさんは爆死なさった。推理は表向きは槍田さんがメインの探偵役を務め、コナン君と竜條寺さんの彼女にしてゲームのシナリオライターを務めた小説家の徳本敦子さんがアシストする。
 なお、この事件にたまたまかかわることになった設楽蓮希さん(旗本一族の事件のダメージがまだ完治しきってない)の様子もしっかりのぞき見した。もう探索者としてはかかわってこないんだろうなあ。残念。
 コナン君が風邪でダウンしたので、成実さんを呼んで診察してもらうが、なぜか保護者扱いされないのに不満を見せる。・・・正体を知る方からしてみれば、上げて落とす前動作にしか見えないので、関り自体持ちたくないと見られている。もちろん、それもわかっているが、それ自体を面白がっている節もある。
 コナン君の看病をショゴスさんに任せ、以前本棚を倒されたので『九頭竜亭』の本棚の固定工事のために、業者さんとあれこれ相談する。
 相談中に、まさか勝手に自宅の方に蘭ちゃんと、突撃上京してきた平次君に上がり込まれるとは予想してなかった。
 逃げる新一君(一時解毒中)を追う二人を捕まえて、事情を訊く。
 平次君のことを咬ませ犬っぽい、芸人みたいなどと散々に言うが、最初の反応が反応なので割と好感度が低い。
 お店を荒らされてから、そんなに日も経ってないので下手をしたら、不機嫌になった挙句の冒涜的お仕置きもあり得てた。
 24話ラストに、コナン君と“取引条件”について話し合ったので、コナン君の正体をばらすことはできない。
 が、ろくでもないことを、二人に吹き込む気満々のご様子。詳細は次回に。

【幹部にはあの世に逃げられて、事故で一時解毒したけど逃亡することになったコナン君】
 前回ラストでやる気になった竜條寺さんから、組織の幹部の情報が予知夢だよりだけど手に入ったから、聞く?と言われ、遠慮なく聞き出した。
 ナイスタイミングなことに、寺原さんからも会場に行く手段がもたらされ。よっしゃー!絶対手掛かりつかんでやるもんね!と意気込む。
 が、やはり幹部は爆殺された。しかも、人違いで。(なお、彼は幹部が来ることは聞いていたが、その人物が爆殺されることまでは聞いてなかった)
 とりあえず、駆け付けた槍田さんの助力もあって爆弾犯は特定&逮捕してもらう。
 聞き出した大黒ビルにも駆けつけるが、やっぱりそこも爆破された。
 道のりはまだ遠い。
 風邪ひいて寝込み、成実さんに診てもらう。・・・普通の小学生は、風邪ひいたらちゃんと保護者に説明をしてもらうものなんですが。オレ、小学生扱いされてない?
 ともあれ、おとなしく治すことに専念。
 何か騒がしいなと思いながら、スポーツドリンクが切れたのでキッチンに行ったら、なぜか蘭ちゃんと平次君がいた。
 自己紹介されても、熱でボーっとして頭が回らない。鼻も詰まっていたので、匂いで察知できるはずのお酒も区別できず、風邪によく効くという名目で白乾児〈パイカル〉飲まされた。さらに気分も悪くなった。
 あいつ〈ナイア〉宛ての客だし、なんか体調悪化してきたと部屋に引き上げる。
 が、間もなく、一時解毒して、工藤新一の姿に戻る。
 たまたま取っておいたトロピカルランド時の服を身につけ、どうしよう、どういう状況だ、これ、誰かに相談しようかな、でもやばいよな?とまだ熱でボーっとする頭で必死に考えようとするが、解毒時の絶叫で駆けつけてきた蘭ちゃん&平次君に姿を見られた。
 鬼の形相で追いかけられた(少なくともこの時の彼にはそう見えた)ため、取るものもとらずに逃亡。
 なお、ただでさえも組織から身を隠しているうえ、普段は小学生たちとやりたくもない低レベルな会話をせねばならず、自宅は友人3名を再起不能に追いやったクソ邪神の本拠と、フラストレーション満載環境に身を置いている。
 このため、SAN回復が、他探索者よりも自然と少なくなる。
 逃げた彼がどうなったかは次回で。

【探偵勝負に来たけど、発言次第では命と正気が爆散しかねない服部平次君】
 大体は原作通り。後半になればなるほど、いい奴感と頼れる奴感が満ち満ちてくるが、コミックスでの初登場時の発言を見たら、咬ませ犬感が半端ない。(なので、あんな感じ)
 ナイアさんの持つ攻略本にはそこまで書かれていないが、散々に言われている。
 ちなみに、上京してからの彼の経路としては、
① 帝丹高校周辺(他学生と思しき人間)を捕まえて、居場所を聞きこむ
② 鈴木園子ちゃんを捕まえて、蘭ちゃんのことを聞き、毛利探偵事務所へ
③ 毛利探偵事務所(休業中)にて、蘭ちゃんからナイアさんのことを聞き、『九頭竜亭』へ
という、原作よりも、少々込み入ったステップを踏んでいる。
 正直、勝手に上がり込むのどうなのと思ったが、蘭ちゃんが大丈夫と力強く言うので、じゃあ中で待たせてもらおうかな、とお邪魔した。まさか無許可とは思わなかった。
 ちなみに、劇中では省いたが、このときショゴスさんはお夕飯の食材の買い出しに出かけていて、不在。
 そうこうしているうちに、体調悪そうな男の子が、キッチンにスポーツドリンクのボトル取りに来た。
 誰や自分。この家の居候?風邪ひいとるんか!ええもんあるで!と、白乾児〈パイカル〉飲ませた。飲酒に厳しい現在だと、お酒持ち歩いてるだけで怒られそうなのだが。あと、病人にお酒飲ませるわけがない。卵酒のような感覚だったのだろうか?
 その後、なんか叫び声が聞こえたと思ったので見に行ったら、捜し人がいた。
 待てや工藤!オレと勝負や!逃げるんか!逃がさへんで!
 逃げられたら当然追う。
 追った先で、家主がお客さんとお話ししてた。
 挨拶とかは後回しにしようと思ったが、先に家主に捕まえられた。そして、一番の標的には逃げられた。何でや工藤。
 理論理屈より、本能的に逆らったらまずそうと察して、とりあえず謝ってから自己紹介。
 剣道やってるので、そこら辺の動物的感覚は、実は新一君よりも上。ただし、彼は神話耐性が一切ないので、万が一関わろうものなら、コナン君のように事態に順応せず、ひたすら逃避or即発狂の二択が待ち受けている。
 対応次第では、ろくでもない死に方ができる邪神様とお話し会真っ最中だが、無事生きて大阪の地を踏めるか?
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