正規ヒロインのはずの蘭ちゃんは、永久発狂により狂人に覚醒済み。
本来の居候先となるはずの毛利探偵事務所は借金で閉業危機。
スコッチさんは磯臭い魚面となって海の底、赤井さんは冒涜的知識塗れで、安室さんは邪神様の愛玩家畜。
ヤダ・・・字面に直すと、原作に対してものすごい冒涜感・・・。
そして邪神様はまだまだ楽しむつもり満々のご様子。
今回のタァゲットは、湯川理央ちゃんと命名された新規参入幼女だぞ!
なお、直接いじるのは、邪神様ご本人ではなく、先行潜伏組のコナン君&竜條寺さんだ!邪神様はいつも通り出歯亀中だぞ!
阿笠博士?残念ながら被害者でしかありませんな!
いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。
前回までのあらすじはぁ!
湯川理央「お姉ちゃんを死なせて形見も取り上げる組織なんて知りません!毒薬なんてもう知らない!たしゅけてコナンえもん!竜條寺太君!」
公安所属のモブ女改めシャンタク鳥のおやつさん「そうはいかねえぞ!お前は俺たちのおもちゃになるんだよ~!げっへっへ!」
私☆「ピピるピルピルピピルピ~♪エスカリボルグチックな素敵魔術で、転送!お前がシャンタク鳥のおやつになるんだよぉぉぉぉ!」
大体そんな感じです♪
え?ふざけんなまじめに話せ?
いやいや、この上なくまじめに話しているつもりなのですが?
まあまあ、そうエキサイトなさらずに♪
現在、コナン君と湯川理央ちゃんこと幼児化した宮野志保君、そして竜條寺君、以上3名が、空気化している阿笠博士をしり目に、阿笠邸でああでもないこうでもないと、話し合われています。
お昼間事件に巻き込まれ、現在はお夕飯時というのに、いや~、実に元気ですねえ。
私、もうおなかがすいてきました。あ、ショゴスさん、今日のお夕飯は何です?ほほう!時鮭のバターソテーですか!いいですねえ!
え?見世物見ながら食べるのは行儀が悪い?そこを何とか!今面白いところなんですから!録画が利かないんですよ、これ!
ありがとうございます♪すみませんね。以後、気を付けます。
さて、視点を阿笠邸に戻しましょう。
腹立たしげに通話を終えるコナン君に、竜條寺君が同情を交えた視線を向けられてますね。
対する理央君は、静かな声で2,3言葉を交わし、そのまま表情も変えずに通話を切られています。
で、そのまま理央君が、コナン君の正体を勘づいていた云々に、話題がシフトしています。
何でも、開発段階の件の毒薬――正式名称:アポトキシン4869(以降APTX4869)は、マウスだかラットだかの実験の段階で、幼児化個体を低確率で出してしまっていたようです。
そこに、薬の被験者としてのリストとして挙がった工藤新一、彼は死亡がはっきりしない生死不明状態。
理央君は理由こそ語りませんでしたが、そのリストにあった生死不明という文字を、死亡確認に書き換えたそうです。勝手に。
え?生死確認のための、組織による工藤邸内の勝手な捜査?ええ、もちろん、参加なさったようですよ?
ただ、幼少の服は持ち出されておらず、確信までは持てなかったそうで。
え?じゃあ、コナン君が日ごろ着ている服はどうした、ですか?あれはこちらに住まうようになって、何着かは私のポケットマネーで購入し、残りはコナン君が自費でご購入なさってました。(後日、それらのお金も返していただきました。)
コナン君、私の「家探しされるかもね!」って発言を相当深刻に受け止められたようで、以前のなんちゃって誘拐事件の後、有希子君が気を利かせて工藤邸からお持ちいただいた子供服を、「家探し食らった時に不審がられるかもしれねえだろ!幼児化がばれたらどうすんだ!」と、血相変えて戻すよう怒鳴られてましたからねえ。
なんと勿体ない。
なお、有希子君は「考えすぎよ~。新ちゃんってば、大げさなんだからぁ」とガン無視して、強引に置いて帰られました。優作君ですか?「有希子がせっかく気を利かせたのに、わがままを言うんじゃない」って、失望したように溜息つかれただけでしたねえ。
その服の入った段ボールは、即日コナン君がショゴスさんに頼み込んで工藤邸にどうにか戻されていました。
・・・子供服にも流行り廃りはありますしねえ。いささか時代遅れのあれらを着られては、かえって目立っていたでしょうしねえ。
話を戻します。
理央君がコナン君の幼児化を疑い始められたのは、何と別口、成実君からでした。
拾われたばかりの理央君を心配なさった徳本敦子君、最初小児科に担ぎ込もうとなさっていたのですが、竜條寺君がそれを止めて、知り合いの医師だと成実君を紹介されました。
で、成実君はコナン君の事情をご存じなので、同じようにだぶだぶの大人服を着ている理央君を見て、うっかり「もしかして、コナン君と同じ?」と小声で口走られました。
幸い、敦子君はそれを聞いてなかったのですが、理央君本人はばっちり聞いてしまったということです。
そして、その疑惑は、本日の学校における様子や、失踪事件の捜査を見て確信に至ったとのことでした。
おや、竜條寺君のご様子が変ですね?
んん?コナン君もなんだか険しい顔をなさってますが?
「それで、質問なんだけど、あなたの幼児化を知っているの、成実先生とそこの人たち以外、誰かいるの?」
「・・・っバーロォ!!お前、何てことしてくれたんだ!!」
「ハッハー・・・詰んだな。勘弁してくれ・・・」
涼しい顔で質問する理央君をよそに、怒鳴りつけるコナン君と、乾いた笑いと一緒に頭を押さえて天井を仰ぐ竜條寺君。
んん?どうなさって・・・ああ。なるほど、そういうことですか。
予想はしていましたが、なるほど、面白くなりましたね?
「シェリー?お前の姉ちゃん死んだの2年前だろ?お前、そん頃から組織に反抗的にしてたんだろ?
そんな奴に監視をつけてないと思うか?そして、お前が勝手にいじくったデータを、あの組織が確認してないと思うか?」
「ああ。連中はこう考えただろうぜ。
“シェリーと工藤新一はグルだ。工藤新一は確実に生きていて、自らが死んだことにしてもらうのと引き換えに、奴を保護した”ってな」
ひきつった顔で、わかりやすく説明する竜條寺君と、憎々しげに睨みつけながら言うコナン君。
「あ・・・」
「し、新一?!しかし、いくらなんでもそれは!」
瞬時に青ざめた理央君に対し、短絡的すぎると言いたげにされる阿笠博士ですが、すかさずコナン君に睨みつけられます。
「百歩譲って幼児化のことはばれずに済んだとしてもだ!
工藤新一が生きてるって連中にばれたら、一番危ないのは誰だ?!
父さんと母さんは海外だし、警察ともかかわりが深い!ICPOにだって知り合いがいるくらいだからな!
じゃあ蘭は?!博士は?!高校のクラスメートは?!目暮警部や高木刑事みたいな警視庁捜査一課の人たちは?!工藤新一をおびき出すために、誘拐されて、拷問でもされたら?!
コイツ一人の、勝手な行動のせいで!!」
暗に、あんたもやばいといわれて、博士も黙り込まれました。
そうして、ちらっと理央君を振り向かれる彼の視線には、完全におびえの色が混じっています。
もう、これは攻略本のように、間違っても保護者になろうとはされないでしょうねえ。
「わ、私は、単に、組織への当てつけで・・・。
それに、書き換えたのは、あなた一人じゃないわ。他にも数人、生死不明の人がいたし・・・」
「ああそうかよ!ありがとうな!そいつらもお前とグルだって思われて、生き残っているほかの関係者も軒並み、殺されるか拷問されてるだろうぜ!
一緒に苦しんでもらえてよかったな!!」
思ってもみなかったと狼狽した様子でうめいた理央君に、コナン君が怒鳴りつけます。完全に八つ当たりですねえ。
「ああっ!くそ!父さんと母さんに連絡して・・・ちっくしょう、あと、難しいけど、蘭と博士も証人保護プログラムを受けれるようにできるかな・・・。
あの人たちにも、連絡入れないと・・・!
日本にいられるの、ここまでか・・・」
「・・・いや、まだ猶予はあるかもしれねえぞ?」
「は?どういうことだよ?!」
ガリガリ頭をかきむしって、今後の方針もブツブツと思索されるコナン君に、しばし黙考されていた竜條寺君が口を開かれました。
「シェリーの脱走から現在まで、連中が何の動きも見せてないからだ。
すでに数日経つってのに、何の音沙汰もない。
もし、怪しんでいたら、絶対何らかの行動を起こしているはず。
監視くらいつけられているかもしれなかったが、この家の付近にそんな気配はない」
「つまり?」
「希望的観測にはなるが、シェリーの監視役が、コイツのデータ書き換えを上に黙っているってパターンだな。
あの組織、連携がド下手クソなんだよ。互いに監視させあうか、うまく手柄立てて抜け駆けするか。逆にスパイ疑惑なんかをうまくかけて追い落とすか。そういうところばかり目立ったもんだ。
クソッタレの馬鹿ジンは、口割らす前に怪しいってだけで脳幹ブチ抜くしな。況や、他の連中もや、ってな」
「つまり、シェリーの監視役も、自分の手柄のために上に黙ってる?
工藤新一も一網打尽にして、捕まえるために?」
「希望的観測でしかないがな」
「なら・・・あるいは・・・」
竜條寺君の言葉に、コナン君は顎に手を当てて、考え込まれています。
「・・・おい。俺はあそこのやり口や居心地の悪さってのがわかる。それに、敦子もお前のこと気にしてたから、あんまり口汚くは言うつもりはねえよ。
・・・ほかになんかやらかしたと思い当たる節があるなら、さっさと言え。できる範囲になるが、わかっていれば対応もできるだろうからな」
青ざめてうつむいてた理央君に、竜條寺君が声をかけられてますねえ。
「まあ何だ。思うところはお互い色々あるだろうが、さっきも言ったとおり、一蓮托生だ。
仲よくしろとまでは言わねえが、喧嘩もほどほどにしておけ」
おやおや。そういえば。
コナン君は、そっぽを向いて考えこまれたまま、もはや理央君なんて一顧だにされませんし、対する理央君も青ざめてうつむかれています。
ま、当てつけ半分、打算半分で行ったことが、完全に裏目に出て、首絞めにしかなってないってなったら、上がる好感度も上がりませんよね!
え?ずいぶん原作と違う、ですか?
味噌となるのは、宮野明美君の死亡時期です。
原作コナンにおいては、本編開始から間もなくに10億円強盗の末に(例の公安女が保管してくれました♪)亡くなられていますが、この世界では2年前(つまり赤井君の組織脱退の直後)に自殺偽装されて、そのままアメリカに渡っています。つまり、表向き、彼女は2年前に亡くなっているということです。
おそらく、原作ではこのラグがなかったため、組織に従順な志保君には監視はつけられず、データの改ざんも見つからなかった(志保君が反抗したのは、この後でしょう)、このため、話がかなりイージーモードで進んでしまったということです。
ですが、この世界では違います。お姉さんがいなくなってしまったため、フラストレーションをため込んだ志保君は、非常に反抗的で、間違いなく監視がつけられていたでしょう、そしてそんな監視役が彼女のデータ改ざんを見逃すはずがないということです。
いやー、ハードモードになりましたねえ♪白米が美味しいですねえ♪
元凶の元を辿ればお前のせいじゃねえか!このピタゴラスイッチ犯が!ですか?
何をおっしゃるんです!確かに私はきっかけを作ったかもしれません!ですが、他の仕掛けに関しては、無罪ですよ!無罪!
いえ、この際、有罪無罪はどちらでも構いません。こんなにご飯が美味しくなるイベントが起こったんです!些末なことですよ!そうでしょう?!
「・・・周囲に警戒は必要だが、ひとまずは安心、か」
「幼児化って最大のジョーカーはおそらくばれてないだろうからな」
結論を口にしたコナン君に、竜條寺君が同意されます。
「と、とにかく、そういう事情ならば優作君たちにも連絡を」
「駄目だ」
「今はまだ駄目だ、博士」
慌てて電話を手に取ろうとする阿笠博士の手をつかんだ竜條寺君が首を振り、コナン君も大きく頷きます。
「直接の被害はなくても、監視の可能性は否定しきれていない。監視状況がはっきりしていない以上、うかつにあちこちに連絡網を広げるのは悪手だ。姿は見えなくても、電話回線を盗聴されている可能性は十分ある」
「工藤新一とシェリーがグルなら、新一の潜伏をアシストする人間を特定し、その居所の把握から始めるはずだ。二人まとめて身柄を確保するために。
今、一番危ないのは、幼児化がばれてないオレや、身元を隠しきれている竜條寺さんじゃない。
シェリーの脱走から、まだ日も浅い段階で、工藤新一の周囲の人間がいきなり警戒を強くしたら、組織の疑惑をより強く確信させることになるんだ。
今は、何もしないのが、最善だ」
すらすらと立て板に水と論理展開させるコナン君に、阿笠博士はやむなく、受話器を戻しました。
「で?シェリー。お前、こんなリスクばらまいて駆け込んできたわけだが、当然手土産の一つや二つ、あるんだろうな?
あいにく俺は慈善事業家ってわけじゃない。
お前が単純に、身元の保護を求めてっていうんだったら、お前の正体と一緒に警察に引き渡す」
びくっと身を震わせ、信じられないという青い顔で、竜條寺君を見上げる理央君ですが、彼は容赦しません。
顔に影を差させ、一切の表情を消した――いわゆる、裏社会の人間そのものの表情で、彼は静かに恫喝します。
「警察にも奴らの手足目耳が紛れ込んでいるだろうからなあ。
たっぷりかわいがってもらえるだろうぜ」
「おい!あんた何言ってんだ!」
さすがに顔色を変えたコナン君が止めようとしますが、対する理央君も負けていません。
「っ・・・いいの?私の幼児化をばらすってことは、彼のことも、芋づる式にばれるわよ?
一蓮托生って言ったのは、どこの誰かしら?」
「何だ、知らないのか?」
せせら笑うように、竜條寺君は言いました。
「江戸川コナンは、戸籍を持った一個人なんだよ。
俺の意思一つで消せる偽造戸籍持ちの湯川理央〈お前〉と違ってな。
警察が調べ上げたところで、戸籍があるから別人ってはねられるのがオチだぜ?
一蓮托生ってのは、俺とこいつだけだ。お前はその気になったら除外できるんだよ」
はい♪コナン君の戸籍は、彼の小学校入学に合わせて、そのほか手続きなどの利便性を鑑みて、作ってみました♪
ちなみにこれ、今の取引契約の終了の際、消すことになってます。後始末もやってあげるなんて、私ってば優しいと思いません?
顎を上げ、シニカルに笑う竜條寺君の姿は、完全に悪役のそれですね。
そんなの訊いてない!と言わんばかりに目を白黒させる理央君に、一方のコナン君はなぜか遠い目をされています。
戸籍事情を思い出されているのでしょうか?感謝してくれてもいいと思うのに、なぜあのような表情をされるのでしょう?不思議ですねえ。
「自分の立場が分かったか?
物事はギブ&テイクだ。現状で、お前が知ってる組織の情報、あるいは毒薬についての手がかりを吐き出せ。
そうしたら、少なくとも、俺はお前の身元の保証と保護はしてやる」
「・・・いやな男。敦子さんの気が知れないわ」
「心配すんな。こんな態度をとるのは、あそこの出の女くらいなもんだ。
自分は違うなんて、寝言は言うなよ?お前にそのつもりがなかろうが、結果的用途は毒になった薬を作ったんだからな。
あそこにいる人間で、真っ白潔白なんざ、いるわけねえだろ」
負け惜しみのようにつぶやく理央君に、竜條寺君は肩をすくめます。そこに、コナン君が呆れたように口を挟まれました。
「・・・あんた、やっぱり悪人だったんだな。今、すごい生き生きしてる感じだった」
「あそこに所属してたらな、いやでもうまくなるんだよ。根回しと恫喝が。
出来ない奴は死ね、が暗黙の了解だ」
そう言って、いつの間にか吸いきっていた煙草に変わり、2本目を取り出して咥えて火をつけられます。
「それに、こうでも言っておかないと、この女、貝を決め込んで逃げるぞ」
「逃げる?」
「せっかく、あの危ねーとこから手を切ったんだ。幼児化して身元の誤魔化しも効くようになった。
好き好んで危険に首突っ込むマゾ趣味はねえだろうよ」
「あんたと一緒で?」
ジト目で見上げて尋ねるコナン君に、竜條寺君は飄々と言ってのけます。
「俺は博打は嫌いでな。一人で勝ち目のない負け戦で野垂れ死には御免だ。
共闘相手がいるなら、話は変わるがな。
あとはどっかの覗き見女にケツに火を付けられたら、やるしかない。まったく。勘弁してくれ、だ」
「・・・急に協力的になったのは、そういうことかよ」
「情けねえか?」
「いや。あんたも不運だな、って思った」
「お互い様だろ」
おや、二人して疲れたような顔をされて、いったいどうなさったんでしょうね、竜條寺君とコナン君は。
え?お前に絡まれた苦労を思い出したんだろ、ですか?おや、ひどいですねえ。そんな苦労を掛けた覚えなんてありませんが。なぜ、あんな顔をされるんでしょうねえ。まったくもって心外です。
なるほどなるほど。疲れてるんですね、お二人とも!次回は、疲れも吹き飛ぶ素敵企画を実行しようではありませんか!ネタはよさげなものがあります!いいですねえ!人魚採りとかロマンチックではありません?
皆さん!ぜひご期待ください!
「覗き見女?」
「こっちの話だ」
「お前には関係ない」
怪訝そうにされる理央君に、竜條寺君とコナン君はいっぺんに切って捨てられます。
「変に気を利かせて、また変なことされても困るからな」
ジト目で理央君を見やるコナン君。まあ、すでに前科がありますしねえ、彼女。
「・・・っ、いいの?そんな、強気に出て。
秘密が漏れるリスクがどこにあるかわからない以上、情報は共有すべきじゃないの?」
「現状一番のリスクをこさえた奴は言うことが違うな。
何度も言うが、ギブ&テイク、等価交換だ。知りたい情報があるなら、等価の情報やブツの在処を吐け。あるいは、それに相当する行動の約束だ。話はそれからだ」
紫煙交じりに皮肉を吐き出される竜條寺君と、ひたすら冷たい視線を向けるコナン君に、困ったような顔をされるだけの博士。
ご自分の味方がいない、と悟られたのでしょうか。こんなはずでは、とでも言いたげに唇をかむ理央君は、やむなく口を開きました。
「・・・あなた、あの組織のやり口を知ってるでしょう?
私が薬を研究して、監禁されてた製薬工場、とっくに処分されてるわ。
新聞やニュースでやってるはずだもの」
竜條寺君に視線を向けながら言う理央君に、しかし彼は態度を崩しません。
「ああ、知ってる。なら、この話はおしまいだな。警察へ行くか。敦子には、引き取り先が見つかったとでも言っておくさ」
「ま、待って!
・・・、そう、薬のデータよ!」
煙草を携帯灰皿に押し付け、立ち上がろうとする竜條寺君に、慌てた彼女はそう口走りました。
「薬のデータだぁ?お前、膨大すぎて覚えきれてないって」
薬の制作者なら解毒剤の作成は可能かと問いかけたコナン君に、理央君が否を返したのはつい先ほどのことですからねえ。
「あるかもしれない、いいえ、あるのよ」
そう言って、理央君は組織にいたころに送ってもらった知人の写真データの入ったディスクを、返却の際に自分の手元にあった薬の部分的データ入りディスク(不幸なことに、見た目が同じだったようで)と混在して送ってしまった可能性があり、その送り先についての情報を話したのです。
「竜條寺さん」
「とにかく、確認してみるか」
コナン君の言葉に、竜條寺君はうなずいて取り出したスマホに電話番号を打ち込んでから、阿笠博士に差し出します。
「繰り返すが、この家の電話回線は盗聴の可能性があるから、俺のを使え。
とはいえ、知らない相手が電話かけてきても、俺とあんたじゃ警戒度が違ってくるだろうからな。
こういうのは、第一印象が肝心だ」
ああ。見た目も声も、強面で子供には敬遠されそうな竜條寺君と、朗らかで優しげな初老の阿笠博士では、とっつきやすさが違いますからねえ。
「それなら、オレに任せろよ」
「ああ・・・確かに、随一の演技派が、そこにいたな。
アドリブに弱そうな阿笠博士より、そっちがいいか」
ニッと不敵に笑って、口元に蝶ネクタイ型変声機を当てるコナン君に、竜條寺君は改めてスマホを差し出しました。
「夜分恐れ入ります。私は、阿笠と申します。広田教授のご自宅でしょうか?
・・・。
実は、親戚の志保が、そちらに送ったディスクについて、お話がありまして。今、お時間大丈夫でしょうか」
早速蝶ネクタイ型変声機を通して、阿笠博士に扮するコナン君が話し始めます。
ものの数分で、それらしいディスクの在処を聞き出したコナン君は、それが宮野志保の仕事に関係するもので、至急取りに行くという約束を取り付け、そのまま通話を終了させます。
「お前、詐欺師の才能あるぜ、絶対」
「失礼なこと言うな!探偵なら、弁論術も身につけてなくちゃいけねえんだよ!」
呆れたように言う竜條寺君に、ぱっぱと手早く身支度を整えるコナン君が言います。
「竜條寺さん、場所は分かるよな?」
「横浜なら車で3時間だな。いいのか?俺たち二人だけで」
「保護者なら一人いりゃ十分だよ。先方にも、用事で行けないから代理人に行ってもらうって言っただろ?
博士、急に押しかけてドタバタしちまって悪いな!」
「いや、構わんよ」
ひきつった笑みを浮かべる阿笠博士に、竜條寺君はちらっと理央君を振り向かれます。
「ご苦労さん。あとは好きにしろ。敦子に迷惑だけはかけんなよ」
「・・・私も、一緒に行くわ」
「へえ?」
「は?!」
少し感心したような声を出す竜條寺君と、聞いてないというかのようなコナン君に、理央君はそのまま立ち上がります。
「貝を決め込んで逃げるですって?決めつけないでもらえる?」
むっとしたような顔で見上げる理央君に、竜條寺君は「そーかよ、好きにしろ」と肩をすくめただけです。
対するコナン君は、警戒を解かぬまま険しい視線を向けましたが、結局何も言わずに、ただ玄関に向かいました。
そんな彼らの後姿を見ながら、阿笠博士はぽつりと疲れたようにつぶやかれました。
「・・・ワシ、何でここにおるんじゃろう?」
そりゃ、あなたがこちらの家主だからですよ。
いろいろ濃い方が参入なさったようですが、数少ない凡人枠として頑張ってくださいね。
さて、結果は攻略本にも書かれてましたので、手短に。
ざっくり言えば、出先の広田教授宅で殺人事件に遭遇し、お目当てのディスクも持っていかれた後でした。
その事件は、竜條寺君を探偵役にしたコナン君が見事解き明かし、犯人から取り戻したディスクも警察からの精査を経てから返却されたそうです。
が、あらかじめ竜條寺君が警告なさっていた通り、ディスクにはウィルスが仕掛けられ、組織外部のパソコンでデータを開封したと同時に、中身をまとめて吹き飛ばしてしまわれたそうです。
竜條寺君がお持ちになられてた、オフライン・スタンドアローンのパソコンでやってなかったら、目も当てられない状態になられてましたね。
とまあ、以上の経緯を持ちまして、元組織の幹部、毒薬製作者のシェリー君改め、1年B組転入生、湯川理央君が参戦なさってくれました。
楽しんでいってくださいね♪
続くんかい!!じゃあ何だ、歴代犯人?!
めちゃめちゃグランドフィナーレ感出してたじゃん!
【ギスギス潜伏対黒の組織チームを邪悪に見守る、実質戦犯のナイアさん】
大体コイツのせい。(トラブルの起点的意味で)
ようやく参戦してくれた湯川理央ちゃん(原作における灰原哀)のやらかしの、原因の発端中の発端。
① 幼少の宮野明美さんの死亡後、蛇人間ハーフの新明美さんを紹介
② 新明美さんを、赤井さんが保護して、表向きは自殺したよう偽装する。
③ 原作より2年早く明美さんが退場したため、志保ちゃんの組織への反抗が早めに開始される。
④ 組織の監視が強化され、工藤新一の死亡データ書き換えも筒抜けの可能性が高くなった。
という、極高死亡フラグの詰め合わせに発展する。
やったね!難易度がイージーからハードモードに移行したよ!
なお、まだルナティックではない。だって、零君や赤井君という、優秀だけど危険な人たちが参戦してきてないからね!
そして、コナン君と竜條寺さんによる、理央ちゃんのつるし上げ大会をきっちり出歯亀。
原作では緩衝材になってくれた阿笠博士が空気化しているうえ、やらかしのせいで周囲が危険にさらされているコナン君は原作よりも理央ちゃんに対する好感度は低くて、態度が悪い。
本来ならいないはずの竜條寺さんは、ナイアさんとの会談以降腹をくくったか、率先して理央ちゃんの逃げ道を塞ぎにかかる。
力を合わせるどころか、一緒に突っ走るコナン&竜條寺に、無理やりいうこと聞かされている理央ちゃんという、ギスギス話し合いをニヤニヤ見守る。
もちろん、横浜の広田教授宅での殺人事件の解決もきっちり出歯亀。
彼女は描写しなかったが、本来この事件で哀ちゃんの本音がコナン君にもこぼれ、共闘・心を許す切っ掛けとなるのだが、そもそも一番最初のとっかかりから最悪状態だったうえ、本音がこぼれるきっかけとなるお姉さんのことにコナン君が関わってないので、そんなことは微塵も起きなかった。
ハードモードだからね!そう簡単に共闘できて、心を許しあえるわけねえだろ!いい加減にしろ!
【どうしてこうなった!と叫びそうになりながら、軌道修正を図った竜條寺さん】
前回から引き続き、阿笠邸にて新規参入の理央ちゃんの話を聞く。
とある雨の日に、途方に暮れた徳本敦子さんからのお電話に、どしたー?と訪ねていったら、ずぶ濡れダブダブ服の幼女がいて、大困惑。
原作知識持ちゆえに、速攻正体を看破した。
おい!なぜこいつがここにいる?!
とっさに元の場所に戻して来い、と言わなかったのは、長年の忍耐力と演技力による。昔の職場のせいでストレス耐性は高め。
もしかして、あっち方面の関係者?!と不安がる敦子さん(現役探索者)をどうにかなだめ、気が付いた理央ちゃんから、おおざっぱに事情を訊く。
その時、雨に濡れてちょっと体調崩しているみたいだし、と敦子さんが気を利かせて病院に連れていこうとしたため、それなら知り合いの医者を呼ぼう、となり、成実さんが呼ばれる。成実さんなら、コナン君〈幼児化した人間〉のことも知っているし。
その後、彼女の身の振り方を考えた時、竜條寺さんは面倒を見れないとなったため、敦子さんが身元引受人となる。
なお、敦子さんはMSOについては知ってはいるが、組織云々の話は知らない。竜條寺さんも、昔マフィアだか暴力団だかにいて、今は危ないけれどまっとうな仕事(怪奇事件専門捜査官)をしていると思っている。
この時、彼は理央ちゃんの脱走理由については聞いたものの、やらかしたデータ改ざんにまでは聞き及んでおらず、あの組織にいたなら監視についても考えてるだろうし、まさかそんなことしてねえだろ、と高をくくっていた。
結果、工藤新一の周囲に死亡フラグがばらまかれ、監視網設置の可能性があるという、ハードモード開始の可能性をまんまと看過することになる。
ゆえにこそ、阿笠邸で話を聞いた時に頭抱えた。
あの組織のやばさ知ってるだろ?反抗してたって自覚あったんなら、監視の可能性考えとけよ・・・。お前には危険はないかもしれないが、他が殺されたら目も当てられねえだろうが・・・。
結果、コナン君の理央ちゃんに対する好感度が原作の邂逅時点よりもかなり低いと察し、どうにか話を軌道修正するべく、自分を悪役配置して理央ちゃんを脅して情報を引き出す。
ぶっちゃけ、彼は自覚している通り、自分とその周囲が一番大事なわけで、現時点で仲間の輪に入り切れてない理央ちゃんは、自分にとって不利益や危険をもたらしてくるなら、切り捨てる所存。ただ、冷徹にもなり切れないので、冷たくはしても完全に切り捨てることも難しかったりする。
敦子さんから完全に引き離したり、組織で毒薬作ってた云々言ってないのは、そういう事情もある。
後は、同じ元組織の幹部(しかも好きで所属してるわけじゃない)という、同情できる部分もあるので。
ただ、だからこそ慎重に動かなきゃいけないというのも身に染みているので、実は当事者であるコナン君とほぼ同等に、彼女の勝手な行動を怒ってる。
情報を得たら、コナン君と一緒に出動。
この後の事件も、探偵役を務める。以前も言ったが、彼は武闘派で自覚もあるので推理云々はあまり得意ではない。
邪神様との会談以降、グズグズしてたら全部邪神様に台無しにされる可能性がある、と気が付いてからは腹をくくった。なので、できる範囲はコナン君に協力していくつもり。
もう少し、コナン君が余裕持てるようになったら、ピスコのことも告白して助けたいと頼み込んでみるつもりでもある。
理央ちゃん?敦子に迷惑かけなきゃ好きにしてろよ。迷惑かけたら、正体と一緒に風見経由で公安に突き出してやるからな。
・・・なお、彼はその行動は邪神様のアウトゾーンに触れると知らない。
潜伏組の最年長であるが、一番凡人的感性の持ち主であるため、ストレスも大変だろうことは想像に難くない。
【家主なのにおろおろして置いてけぼりワンサイドな阿笠博士】
原作ではコナン君の頼れる協力者の大きな一人。
でも、今作ではたよれる大人の数が大幅増員されているうえ、本来なら拾って居候にするはずの灰原哀ちゃんがいないので、かなり空気となっている。
加えて言うなら、コナン君が冒涜的分野にも片足突っ込むようになったので、そこに踏み込ませてはいけないと線引きしたため出番が減った、少年探偵団の退場がそれに拍車をかけたという事情もある。
いつも通り、コナン君のサポートメカやら他発明やらをごちょごちょ作っていたら、唐突にコナン君と同級生らしき幼女、あとはガタイのいい強面の外人男がやってきて、組織云々の話を始めた。とりあえず自分も無関係ではないし、と参加して話を聞く。
が、間もなく、幼女の正体と事情を聞いて、さらに幼女のやらかしをコナン君たちに解説され、ワシそんな危ないことになってたの?!とビビった。
基本的にいい人で、原作でも少年探偵団の保護者枠を務めていただけあって、面倒見もいいのだが、そんな危険に好き好んで首突っ込めるアドレナリンラバーではない。
なので、理央ちゃんの保護者になる=危険がマシマシということを、ここまでの段階で察知してしまった。間違っても、もう保護者にはならない。そんな根性もない。他に引き取る人がいなかったら、考えないでもなかったが、引き取り先がいるならもう立候補はしない。
その後、竜條寺さんとコナン君による、理央ちゃんのつるし上げ&脅迫大会を、おろおろしながら見守る。それしかできない。
その後、情報を得て嬉々として手掛かり捜しに行くコナン君と竜條寺さんに、ふてくされながらついていく理央ちゃんを茫然と見守る。
家主なのに、この仕打ち。
今シリーズでの彼のポジションは、大体こんな感じになりそう。
組織云々の内緒話できるロケーションって、限られるからね!しょうがないね!