邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 アヤさんの話を書いてた時から思ってた疑問。
 APTX4869って幼児化云々言ってる割に、記憶とかはそのまんまなんやな。ということは、脳みそ内の細胞は薬の効果を免れてるということか?つまり、脳みその大きさとかは変わらんのか?
 それに、急激に大きくなったり小さくなったりって、細胞への負荷がやばない?そんなボンボン負担かけたら、うっかり癌とかできたりしない?
 もし、小児癌とか出来たら、元に戻るどころじゃないんだが?
 完成版解毒剤の副作用で病弱になったとかいう設定はよく聞くけど、幼児化中に癌とか腫瘍できちった♪ってのは聞かねえな。何でじゃろ?
 その辺どうなんですかね?哀ちゃん。
 ・・・などと作者のリアル職業がばれそうな心配をしてみる。
 そういった観点からも、コナン君は解毒剤乱用を控えるべきだと思う。


【#30】人魚の島美國島!旅は道連れ冒涜付随!

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 長らくお待たせしました、ようやく薬の制作者こと、コードネーム:シェリー、本名:宮野志保、幼児化偽名:湯川理央君が合流してくれました♪

 

 いやー、長かったですねえ!

 

 しかも本来なら、阿笠博士宅に居候して灰原哀と名乗るはずが、いろいろトラブルが重なった結果、竜條寺君の彼女さんになる徳本敦子君のお宅に居候して湯川理央なんて名乗ることになりましたしねえ。

 

 加えて、理央君、なんか薬の被験者のデータをいじくって、それが絶対に筒抜けになってるだろうとかって糾弾されてましたし。可哀そうに。

 

 おや、何他人事調子に言ってんだ、お前が元凶の一端だろうが、ですか?

 

 何かしましたかねー?

 

 いやですねえ、皆さん!私がやったことは、お子さんを亡くして精神的に不安定な女性(当時妊婦)とそれを支える旦那さんのご夫妻に、身寄りのいないお子さんをご紹介したこと、理央君を追い回す謎の女をシャンタク鳥のおやつにしてあげたくらいじゃないですか。

 

 いえ、むしろ無事理央君が参入できる足掛かりを作った私は褒められてしかるべきでは?

 

 え?どうせ、次の騒動の火種にする気なんだろ、とぼけるなクソ邪神?

 

 もちろんです!赤井君が参入した時には、彼があの怒った顔を全開にして、ガトリング砲を持ち出したくなるようなとびっきりのシナリオをプレゼントするつもりですからね!

 

 皆さんもぜひ、楽しみにしててください!

 

 

 

 

 

 ところで。

 

 理央君の参入から数日、コナン君が妙に疲れた顔をなさっているんですよ。

 

 隠そうとはなさっているんですが、多分、つけられているだろう組織の監視網をあぶりだそうと、必死にあれこれやっていると思うんですよねー。

 

 最近は、槍田探偵事務所に行くのも控えられて、あれこれと工藤新一周囲の人々を見て回られているようです。

 

 特段目立つ変化はないらしいのですが、油断できないようですね。

 

 とはいえ、彼も人間です。このままでは、心身を壊してしまいかねません。

 

 彼の保護者として、一つここは心身をリフレッシュさせるべく、旅行にでもお連れしましょうか!

 

 よさげなネタ、ゲフンッ、面白そうなシナリオ、ン゛ン゛っ、とにかく、少し田舎の離れ小島に行ってみようじゃありませんか!

 

 え?絶対リフレッシュじゃなくて、クラッシュにしかならない事件を起こす気だろう、ですか?

 

 ひどい・・・せっかく、彼のことを思って企画したのに・・・!(ウルウル)

 

 これっぽっちも信用してくださらないなんて、あんまりです!

 

 え?だったら、そのニチャァッて邪悪な笑みを隠せ?フフッ、すみません。想像しただけで、笑みがこぼれてしまって。

 

 コナン君、今度の連休は遠出しますから、予定をあけておいてくださいね~♪

 

 行先は、福井県の美國島ですよ!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 その日、東都有数の大病院は休日ということで外来はしまっていたが、成実はちょっとした職権乱用で、そこの機材とスタッフを拝借して、非公式の定期検診を実施していた。

 

 対象は、新たに出現した幼児化した少女、湯川理央である。

 

 結果の数値や画像データをひとしきり確認した成実は、丸椅子の上で淡々と結果待ちをする少女に「問題なし」を言い渡した。

 

 すでに、幾日も前に同様の検査を行い、同様に問題なしを言い渡されたコナンも、少し離れたところにいる。

 

 「できれば、君たちの主治医は私が担当するわ。

 

 それから、定期検診もしてもらった方が、より安心できるかな」

 

 「・・・問題なしなら、その必要はないんじゃない?

 

 マウスでの実験でも、幼児化個体に他の異常は見られなかったわ」

 

 不服そうな口調で、理央が口をはさむ。

 

 彼女からしてみれば、自分の作った薬が、幼児化以上に問題を引き起こす、トラブルの集大成扱いされているのだ。不服を覚えざるを得なかった。

 

 「今異常はなくても、今後はそうとは限らないわ。

 

 癌の一つの原因には、細胞分裂における、遺伝子複製の失敗が要因にあげられているの」

 

 強い口調で成実が言う。

 

 「細胞が分裂する際、核内部の遺伝子情報は複製され、その後、核の分裂とともに細胞質や他細胞小器官も二つに分けられて細胞分裂は完了する。知ってるわよね?

 

 けど、遺伝子情報の複製は、完璧じゃない。たまにバグを引き起こすの。

 

 もちろん、そのバグを修復する機構も、人間は兼ね備えているけど、それが修復されなかった場合、癌などの腫瘍になる場合がある。

 

 幼児化なんて、細胞や遺伝子そのものに負担がかかっているでしょうに、今が無事だから、今後が大丈夫なんて、どこにも保証はないわ。

 

 その幼児化したってマウス、その後の経過観察をした?」

 

 「・・・幼児化のことを隠すために、処分したわ」

 

 ぽつりと言った理央に、それ見なさい、と成実は軽くため息をつく。

 

 おかげでコナンは助かったかもしれないが、だからと言って、今後を見逃す理由はどこにもない。

 

 「今は大丈夫でも、今後は分からない。癌や骨肉腫の早期発見にもつながるから、定期検診はした方がいいわ。

 

 ・・・とはいえ、コナン君や君の様子から、脳までは影響がいってない・・・つまり、中枢神経は無事ってことかしら。

 

 未知の薬だから、まだまだ分からないことの方が多いわね」

 

 つらつらといった成実に、コナンが顔を引きつらせている。

 

 今更ながらに、癌などの可能性に思い至ったらしい。

 

 「とにかく、今日はもう大丈夫だから、帰っていいわよ。

 

 あ、コナン君はちょっと残ってくれる?そんな顔しなくても大丈夫。プライベートの話だから」

 

 微笑みながら言った成実に、理央はひょいッと丸椅子から飛び降り、そのまま出ていく。コナンはといえば、怪訝な顔をしながら成実のそばに歩み寄った。

 

 「なぁに?プライベートの話って」

 

 「うん。たいしたことじゃないんだけど、今度の連休、暇だったら一緒に旅行に行かない?」

 

 「旅行?」

 

 「ええ。いろいろ事件とかあったから、気分転換になればって。

 

 私と先輩の仕事ついでだけど」

 

 「・・・それ、本当はボクが一緒に行くのはまずいやつなんじゃない?」

 

 少し顔色を悪くして言ったコナンに、成実は笑って首を振った。

 

 もちろん、そんなことであれば、最初からコナンを誘わない。大丈夫と判断したから誘ったのだ。

 

 「まさか。うーん・・・何て説明したらいいのかしら。

 

 ええっとね、すごく簡単にざっくり言ってしまうと、あっち側に関連深い人たちの集落があってね、基本的にひっそり暮らしてて害はないんだけど、万が一があっても困るから、年に一回ぐらいの割合で、私たちみたいなのが様子見に行ってるの。

 

 で、今回は私たちがその当番に当たって、様子見に行くことになって。

 

 何か起こったって前例もないし、まず大丈夫だろうから、視察ついでに観光しようって」

 

 「へー・・・」

 

 「だから、ちょっと友人とか誘って、ついでにみんなでわいわい旅行しようってことになって。

 

 どうかな?」

 

 いいなあ。とっさに喉から出そうになった言葉を、コナンは済んでのところでかみ殺した。

 

 もちろん、そんな楽しそうなこと、誘われたのならぜひ一緒に行きたい。ただ、それはできない。

 

 「ごめんね。次の連休、先約が入ってて・・・」

 

 そう、次の連休は出かけると、コナンは保護者邪神〈手取ナイア〉に言い渡されていたのだ。

 

 何か起こると決めつけるのはよくないが、あの邪神がただの旅行に出かけるとはどうにも考えづらい(新幹線の例がある)。そして、何か起こるなら、それを食い止め、被害を極小にするのが、知っているコナンの務めだろう。

 

 「そっか・・・まあ、また機会があったら、一緒に出掛けようね。

 

 後、困ったことがあったら連絡してね。力になるから。

 

 もちろん、お土産買ってくるから、楽しみにしててね!」

 

 「うん!ボクもお土産買ってくるね!」

 

 にっこり笑った成実に、コナンもまた笑みを返した。

 

 組織に監視されている可能性があるとはいえ、頼れる大人がいるというのは、それだけで肩の力を抜きやすいものだ。

 

 コナンにとっては、それだけで十分だった。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 いやー、潮風がいいですねー。

 

 お天気も快晴、ちょいと波高しですが、許容範囲でしょうねー。

 

 ここは若狭湾の一角に浮かぶ孤島、美國島へ向かう連絡船の甲板です。

 

 おや、なぜか空気が重苦しい?気のせいでは?

 

 「こ、コナン君、何でここに?」

 

 「そ、それはこっちのセリフだよ?!」

 

 「あ、どうも、成実先生。松井さんも。お二人も、“儒艮祭り”へ参加を?

 

 楽しみですよね!」

 

 面食らった様子の成実君に、同じく驚いた様子のコナン君をしり目に、私はにこにこと挨拶して見せます。

 

 「・・・今度は何を引き起こす気だ」

 

 「何の話です?私は確かに、最近探偵なんてやってますが、本職はしがない古本屋の店主です。そんな、テロリストじゃあるまいし。

 

 あ、むしろ探偵を本職にされている方でしたら、何か起こるかご存じかもしれませんよ?」

 

 低い声で唸るように尋ねてこられる松井君に、私はコテンと首をかしげて見せます。

 

 フフッ。ネタバレはあなた方プレイヤーにしてあげませんよ。がんばってくださいね♪

 

 「陣矢君?何かあったの?」

 

 おや、お久しぶりですね、蓮希君。

 

 大分SANが危ういというのに、参戦ですか?引退なさったと思ってたのですが。まあ、元PCが別セッションでNPC参戦することもありますしね。参戦するからには頑張っていただきたいですねえ。

 

 「は、蓮希・・・」

 

 「あれ?その人、前に・・・あ・・・」

 

 私の方に視線を向けられるや、顔を伏せて悲しげな顔をされる蓮希君。

 

 ああ、直接お会いしたのは旗本一族の事件でしたね。で、その後ご友人が一人亡くなられてますから・・・まあ、無理もありませんか。

 

 「おや、どうなさいました?大丈夫ですか?」

 

 「あ、いいえ。なんでもないんです。すみません、自己紹介が遅れました。

 

 設楽蓮希といいます。ヴァイオリニストを務めてます。陣矢君のご友人ですか?」

 

 気を取り直すように微笑まれる蓮希君に、私も礼儀正しく挨拶を返します。

 

 「これはご丁寧に。私は手取ナイアと申します。古書店『九頭竜亭』店主の片手間、探偵を務めさせていただいてます。

 

 松井君とは・・・そうですね、よい友人でありたいものですね」

 

 おや、松井君が誰が貴様なんぞと言わんばかりの鋭い視線を向けてこられていますよ。あんまりひどい顔をしていると彼女に嫌われますよ?

 

 加えて言うなら、そのそばにいらっしゃる成実君とコナン君すら、よく言うなお前と言わんばかりの呆れた視線を向けてきています。なぜでしょうねえ?

 

 おや、少し離れたところでブウッと噴き出す音が聞こえました。

 

 振り返ってみると、盛大に顔をひきつらせた竜條寺君がいらっしゃいます。

 

 「ど、どどどど、どういう状況だこれは?!」

 

 「見ての通りだ」

 

 「ええっと・・・竜條寺さんも、ナイアさんのこと、ご存じなんです?」

 

 端的に言い放たれる松井君に、成実君が口を挟まれます。

 

 重々しく頷かれる竜條寺君は、即座に周囲に視線を走らされます。

 

 「・・・来てるの、お前らだけか?」

 

 「寺原は体調崩して、キャンセルだ。藍川はその看病だそうだ。

 

 羽賀は元々仕事で来れてねえ。

 

 槍田も何か別件で来れてねえ。代わりに、別の奴が来ている。この島に関連する依頼が入ったらしい。現地集合だ」

 

 松井君の言葉に、なーんだとちょっぴり残念に思いました。

 

 ふうむ?しかし、彼の言葉草からは、新規参戦の方がいらっしゃるようですね?楽しみです♪

 

 「ええっと、竜條寺さん、休暇中だったんじゃあ・・・?」

 

 「ああ。休暇取って、敦子の取材旅行に付き合ってたんだ。こんなの想定外だ。

 

 勘弁してくれ・・・」

 

 おや?敦子?ということは・・・。

 

 「竜條寺君、どうしたの?

 

 あれ?松井さんと成実さんに・・・ええっと、どちら様ですか?」

 

 黒髪をおかっぱ頭にした、そばかすの女性・・・言っては何ですが、地味な感じの女性が、竜條寺君の背後からひょこんと姿を現します。

 

 ああ、彼女が噂の徳本敦子君です。そして同時に。

 

 「ああ!潮路敦紀先生ですね!私、大ファンなんです!

 

 サイン・・・ああ!なんでこんな時に限って色紙とか『塩の孤島』の単行本持ち歩いてないんですか!

 

 握手!握手、お願いします!」

 

 ええ、私、彼女の本の大ファンなんです!

 

 デビュー作の『塩の孤島』から、今連載中の『ダークサーチャー』シリーズまで、きっちりフォローしているんです!

 

 大分アレンジしてますが、冒涜的な方々のシーンとかもあったりと・・・。

 

 多分、MSOの方も彼女をフォローしてるんじゃないですかね?もろまずいネタとか入ったら、多分検閲が入ったんじゃないですかね?

 

 「え?え?な、何で、その・・・」

 

 「以前、米花ショッピングモールの本屋で、サイン会をしてたじゃないですか!あの時はこちらも忙しくて参加できなかったんです!」

 

 目を白黒させる敦子君に、うきうきと私は手を差し出します。

 

 「は、はあ・・・ええっと、私のようなものの作品を読んでもらって、ありがとうございます」

 

 「いえいえ!これからも頑張ってください!応援しています!」

 

 おずおずと差し出された敦子君の手を取って、そのままポンポンと弾むように握手します。

 

 ほっそりした女性ならではの手ですが、ペン胼胝の目立つ物書きの手をされてますねえ。

 

 「はあ・・・あの」

 

 「はい?」

 

 「ひょっとして、あなたは、神様ですか?」

 

 おやまあ。彼女、【クトゥルフ神話技能】でクリティカル出しましたね?

 

 ポロリと言った敦子君の言葉に、ガチンと周囲が音を立てて硬直されてます。

 

 「何でお前、そんなこと見抜いちまうんだよぉぉ・・・」

 

 と竜條寺君が頭を抱えられています。

 

 「え?え?え?」

 

 シパシパと目をしばたかせる蓮希君以外、全員が硬直する中、そんな空気を切り裂いた人間がいました。

 

 「何やってるの?敦子さん」

 

 「あ、理央ちゃん」

 

 呆れたような声を出す理央君に、敦子君が我に返ったように言いました。

 

 「フフッ。神様ですか。それだけ浮世離れして見えましたか?」

 

 「はあ・・・ええっと、その、ご期待に応えられるよう、これからも頑張っていきます」

 

 肯定も否定もせずに、ちょっと茶化すように言って見せると、彼女も困ったようにそう返してくれました。

 

 「敦子さん、あなたね・・・あなたが夜更かしと朝寝坊の常習犯で、部屋が本に埋もれるほどの活字中毒者で、時々変なこと口走ったりするのは分かったつもりだったわ。

 

 でも、初対面の女性を神様呼ばわりっていうのはどうかと思うわ」

 

 呆れと軽蔑をないまぜにした視線を送ってくる理央君に、「あはは・・・」と誤魔化し笑いを口にされる敦子君。

 

 「あなたも、よくこんな変な人と付き合えるわね?」

 

 「その変な人に保護者してもらってるガキが、よく言えたもんだな」

 

 どうにか立ち直った竜條寺君に、そのまま視線をシフトされる理央君。

 

 「・・・おめーも来てたのかよ」

 

 「悪い?」

 

 「しょうがねえだろ。敦子が担当さんに言われてきた取材旅行で、コイツだけ置いていくわけにもいかねえだろ。

 

 外聞的にもな」

 

 不服そうなコナン君に、ツンと冷たい視線を返す理央君に変わって、竜條寺君が答えました。

 

 最後の部分は、コナン君というより、何事か口をはさみかけた理央君に対しての返答でしょうが。

 

 「取材旅行だぁ?またか!」

 

 「ええっと・・・はい、“また”なんです」

 

 松井君の呆れた声に、おずおずと敦子君がうなずかれています。

 

 ええ、彼女、小説の題材にする取材旅行先で、しょっちゅうセッションに参加する羽目になって、その際に松井君たちと顔を合わせられてますからねえ。

 

 「ははは・・・せっかく視察ついでの旅行で、何にも起こらないだろうって思ってたのになあ・・・儚い夢だったなあ・・・」

 

 乾いた笑いで遠い目をされている成実君。そんなことをしても現実は何一つ変わりませんよ?潔く、セッションに参加なさってくださいな♪

 

 「あいつの担当、どうなってんだ?その手のセンサーか何か搭載してんのか?」

 

 「んなことない、はずなんだがなあ・・・」

 

 ひそひそと小声で話し合われる松井君と竜條寺君。残念ながら私には丸聞こえですがね。邪神ですからね!

 

 おおっと、そろそろ船が島につくようですよ!下船の準備をしましょうか!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 「やあ!先に来てたよ!

 

 ・・・どうしたんだい?ずいぶんげっそりしてるけど」

 

 茶髪をショートにしてイヤホンで音楽を聴いていた、ボーイッシュな格好の女性が、サングラスをずらしながら、我々の前に立ってこう言い放ちました。

 

 彼女こそ、槍田探偵に変わってこの島の調査に訪れていた探偵です。

 

 名前を越水七槻〈こしみずなつき〉君と言います。彼女、以前とあるセッションで槍田探偵と一緒にシナリオをクリアされてからは、彼女の事務所に所属という形で活動されています。主に、遠方すぎる依頼や、槍田君が手が回らないような依頼を、彼女の代理で解決に行っています。

 

 「何でもねえよ・・・」

 

 「やめとけやめとけ。精神すり減らすだけだ」

 

 げんなりした様子を隠しもしない松井君と竜條寺君に、怪訝そうにしながらも七槻君も頷かれます。

 

 「そんじゃ、俺たちは御暇させてもらうぜ。

 

 面倒は勘弁してくれ。いいな?敦子」

 

 「うん。荷物を旅館に置いたら、まずは神社に行きたいの。巫女さんとかから、この島の伝説について、もっと詳しく聞きたいし!」

 

 「そっかー・・・そうだな・・・取材だもんな・・・」

 

 荷物を担ぎ上げて歩き出す敦子君に、それはフラグだ・・・と言いたげな顔をされる竜條寺君と、退屈そうな顔を隠そうともせずに、そのあとに「じゃあ」という短い挨拶を残して理央君が付いていきます。

 

 「では、コナン君はどうされますか?」

 

 「え?」

 

 「おや、伝えてませんでしたか?この島に来たら、私は友人に会いに行くので、君にはちょっと退屈になるかもしれません。

 

 ですが、ここにはご親戚の松井君がいらっしゃいます。

 

 夜に旅館に戻ってくればいいので、お昼間は好きにしてくださって全然大丈夫ですよ?」

 

 「わ、わーい・・・そーするよー・・・嬉しいなー・・・」

 

 せっかく気を利かせて言ってあげたのに、コナン君とくれば微妙にひきつった顔で棒読み調子で返されて、いかがなさったのでしょう?

 

 え?最初っからこのつもりだったんじゃないかって?コナン君もきっとそう思ってる?

 

 もちろんです!私がそばにいたら、緊張でダイスロールも失敗するかもしれませんからね!やはりセッションは自然体で挑むのが一番でしょう!

 

 「それでは失礼します。

 

 コナン君のこと、くれぐれもよろしくお願いしますね」

 

 一礼して、その場を後にします。

 

 では、頑張ってくださいね♪

 

 「そんじゃ、俺たちは越水の調査を手伝うとするか」

 

 「え?えっと、松井さんたちの仕事は?」

 

 「んなもん、観光ついででいいんだよ。調査しとけば自然と分かる」

 

 「ええー・・・いい加減じゃない?」

 

 困ったような顔で口をはさむコナン君に、苦笑しながら成実君が言ってます。

 

 「まあまあ。以前も言ったけど、今回のは本当に遊びついでにかたづくような内容だから、気にしないで」

 

 「悪いな、蓮希。せっかくの旅行で」

 

 「ううん。私も何か手伝いになれるかもしれないし。

 

 それに・・・」

 

 「それに?」

 

 「なんか、ワクワクするじゃない?探偵ごっこみたいな感じで。

 

 ちょっと、不謹慎だけどね」

 

 舌を出していたずらっぽく笑う蓮希君に、彼らの目元が緩み、空気が和まれます。

 

 何ですかー!私が場を離れるや、そんな和気あいあいとなさって!うらやましい!

 

 いいですよいいですよ!ふんだ!人気のない場所へ行って、呪文≪消滅≫発動!『九頭竜亭』へ移動!

 

 ショゴスさん!お茶とお菓子!飲まずにはいられない!

 

 

 

 

 

次回!続かずにはいられない!





【美國島への旅行ついでに新規セッション参加を計画したナイアさん】
 大体コイツのせい。
 コナン君が組織の監視網を割り出そうと四苦八苦しているのを見て、たまにはリフレッシュしようぜ!とばかりに連休を利用して福井県の美國島への旅行を計画する。
 もちろん、リフレッシュどころかあわよくば心身ともにクラッシュする気満々。そしてその模様を見て、メシウマする気満々。
 連絡船の甲板にて集う探索者たちの、ブッキング模様にニヤニヤする。
 いやあ、偶然ってすごいですね!
 もちろん、彼女は何事もないだろうと高をくくっていたMSOの二人の楽しい旅行計画も知っていた。そのうえでぶち壊した。
 ・・・ただ、彼女の観点からすると、事件が起こりそうな感じになったので、コナン君を連れて行こうかという程度。MSO側の視察の時期が重なったのは、偶然。でも、それをも利用する。
 徳本敦子さんこと、潮路敦紀さんの本の大ファン。割とマイルドだったり、アレンジ利かせてたりするが、神話事件絡みの話が多いので。
 探索者としても作家としても応援しているからね!がんば!
 ・・・なお、正気の人間に初対面で邪神と見抜かれたのは手取ナイアとしては初めて。
 敦子さん、探索者としてはまっとうなことを言ってるのに、一般人から見ると頭がおかしい人に見える。不憫だなあ。(探索者なんて、そんなもんです)
 なお、島に到着後、セッションを楽しむためにコナン君を松井さんに渡して、離脱した。
 自分が離脱するなり和気あいあいとし始めた探索者たちにすねた。
 ふんだ!いいもんいいもん!私は私で楽しむもんね!
 ・・・これでも、最低最悪の邪神である・・・はず。

【ピリピリ警戒中でも暫定保護者には逆らえないコナン君】
 前回からのあれこれで、おそらく周囲に仕込まれたであろう、組織の工藤新一探査用警戒網を特定しようと、あれこれと動き回る。
 うかつに接触持ってしまうと、さらに怪しまれるかもしれないと、槍田探偵事務所にもしばらくいけないという旨の連絡は入れている。
 ちなみに、正体がばれてからは、積極的協力はできないけど、黒ずくめの連中に関する情報が入ったら、お知らせくらいはするからね、と事務所のメンバーには言ってもらった。
 ありがとう。それだけでも十分。
 後日、検査を行う理央ちゃんに同行。彼女の心配をしなかったわけでもないが、万が一があれば、コナン君も再検査にもなったので。
 成実さんの指摘に、あ・・・その可能性あった・・・と思い至った。
 それもあって、解毒には原作以上に慎重になっている。元の姿には戻りたいけど、ハイリスクを進んでひっかぶりたいわけじゃないので。
 旅行に誘ってくれた成実さんに感謝。自分も行きたかったけど、邪神様から先約を入れられてた。
 あいつが何かやらかす気なら、止めるのがオレの仕事だ。・・・そこで、それを成実さんに言おうとしないあたり、まだまだ背負い込み癖が直っていない。
 でも、ナイアさんに連れられて乗った旅行先の連絡船では、旅行に行ったはずのいつものメンバーと鉢合わせ。
 何でここに?!あのクソ邪神、全部知ってやがったな?!
 徳本敦子さんとは、実は初対面じゃない(#26前半で語られた満天堂の新作ゲーム発表会の爆発事件で共同捜査している)
 でも、冒涜的分野にも片足突っ込んでるっぽいのは初めて知った。
 ハイテンションで握手を求める邪神に応じながら、爆弾落としたダークファンタジー作家に真っ青になって硬直した。
 竜條寺さん、あんたの彼女何なんだよ?!
 島に上陸したら、唐突な邪神の離脱宣言に困惑。同時に、最初からこうするつもりだったかこの野郎、となる。
 まあ、邪神と一緒にいるより、松井さんたちと一緒に探偵の仕事をこなした方が万倍マシ。
 七槻お姉ちゃん、蓮希お姉ちゃん、よろしくね!

【福井県美國島集合!の探索者たち】
 メンバーはいつもの松井さん、成実さん、竜條寺さんに加え、継続探索者として設楽蓮希さん、新規参戦組として徳本敦子さん、越水七槻さん。
 湯川理央ちゃんの名前がないのは、彼女はNPC参戦であるため。
 なお、島への来訪目的は以下の通り。
 松井、成実、蓮希・・・松井&成実はMSOからの仕事で島の視察任務があり、そのついでの旅行で蓮希さんを伴った。
 竜條寺、敦子・・・敦子さんの小説のための取材旅行。竜條寺さんは休暇で彼女の付き添い兼ボディーガード。居候の理央ちゃんも同行。
 七槻・・・槍田郁美に入った依頼の代理調査のため。
 松井さんたちからしてみれば、今回は久々の低難易度調査であり、骨休みを兼ねた旅行だった。
 連絡船に邪神様が乗り合わせた時点で、骨休みが骨砕きに強制変更となったのを悟る。
 敦子さんは、原作コミックス5巻『山荘包帯男殺人事件』に登場。本編2年前に自殺済みの、事件のきっかけとなった女性です。詳しい経緯は外伝で語っていますので、ここでは割愛します。なお、♯25に追記したとおり、アニヲタwikiにて徳本という名字で乗っているので、こちらでもそれに合わせておきます。原作コミックスでは苗字がなかったと思うんですがね。作者の勘違いでしょうか?
 ちなみに、彼女は以前も別セッションに何度か参加し、その際にMSOの面子と顔を合わせたことがあるので、そういう組織があるのは知っている。(彼氏も在籍されてるし)
 そして、諸事情でカスステとクソ技能持ちのくせに【クトゥルフ神話技能】は高めでSANチェック用ダイスがボイコットを決め込んでいるという、バグっぷりを誇る。(赤井さんと違うのは、彼はバリバリ単騎で生き残れるのに対し、彼女は発狂しない代わりに物理的にめちゃ弱い)
 高めの神話技能のせいで、初見でナイアさんの正体を見抜いて、パーティーを阿鼻叫喚に叩き落す。悪気はなかった。
 越水七槻さんは、原作コミックス54巻『服部平次との3日間[2]』に登場してました。本シリーズでは槍田探偵事務所所属の探偵。
 以前別セッションに参加したことをきっかけに、槍田探偵事務所に籍を置くことにした。
 ・・・なお、彼女は原作における仇敵をいまだに探し続けており、事務所に所属しながらも、全国各地を飛び回っている。それもあって、今回までコナン君と面識がなかった。
 彼女が任せられた依頼内容については、次回で!
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