邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 この事件の結末どうしようか、クッソ悩みました。
 叩き落すのもいいし、救い上げるのもありだし。・・・ここで叩き落したら、蓮希ちゃん諸共松井さんが再起不能にならなくね?
 蓮希さん、ただでさえもちょい役で事件に首突っ込んで、いろいろひどい目見てるのに。そろそろ、報われてもええやん。そう思った結果、この結末となりました。
 ま、SAN回復したら、さらに事件に首突っ込むことが確定したようなもんですがね。可哀そうに。
 不穏なフラグを立てて、次回へ。


【#33】人魚の島美國島!さらばまた今度!

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 いやー、素晴らしいセッションでした!

 

 個神的には、君恵君にはあのまま全部をあきらめて真っ平にしてくれた方が好ましかったのですが、それも人間、ということにしておきましょう。

 

 深淵に見えてなお、生き残ろうと探索者が足搔く様こそ、私としても面白おかしく見れますしね。

 

 七槻君なんか、新規参戦で一時発狂の挙句、深きものに素手で殴りかかろうとなさってましたしね。

 

 あっはっはっは!いやー、本当に笑った笑った。

 

 おかげで、白いご飯が美味しいのなんの。

 

 え?ほっぺに白いご飯粒が付いてる?おや、失礼。みっともないものをお見せしました。

 

 え?お前のメシウマはどうでもいいから、続きはよ!はよ!ですか?

 

 んもう!皆さんってば、せっかちなんですから!

 

 

 

 

 

 では、いささか短いですが、冒頭邪神トークはこのくらいにして、本編に行ってみましょうか。

 

 もう、セッション自体はほとんど終わってますので、エピローグ的位置ですがね。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 一晩明けて、翌朝です♪

 

 私は慌てふためいてるのを装って、人込みをかき分けて、そこに駆けていきます。

 

 町中から少し離れたところにある砂浜です。

 

 そこには、ずぶ濡れ砂まみれで打ち上げられた探索者たち+理央君が転がっています。

 

 もちろん、全員生きてますよ、ええ。

 

 ですが、まあ、私は今、コナン君の保護者ですのでね。

 

 「コナン君!ご無事ですか?!」

 

 叫びながら、私は彼に駆け寄って、ゆすりながら意識確認です。さも心配している風を装ってますが、まあ、彼がこの程度でくたばるはずがありませんよ。彼、劇場版のたびに似たような目に遭って、それでも頑張って生き残られるほど、悪運強いわけですし。

 

 え?メタァ?何の話です?(ニタァッ)

 

 「う・・・う、わ、お前・・・」

 

 「こら!お前じゃなくて、ナイア姉ちゃん、でしょう!

 

 じゃなくて!お怪我はありませんね?!

 

 心配したんですよ?!昨夜、旅館に帰ってこられなくて、島中探しまわってたんです!

 

 他の皆様にもご協力いただきまして!

 

 そしたら、明け方近くにズドン!と大きく島が揺れて、何事かとみんなで心配してたら、君たちがここに打ち上げられていると・・・!

 

 ああ、もう!無事でよかった!」

 

 と、気が付いて目を白黒させるコナン君に、涙目で表向きの状況をまくしたてて見せます。最後に、大事な養い子を心配するお姉さんらしく、抱きしめるのも忘れてはいけません。

 

 え?お前、昨日セッション出歯亀してただろうが、ですか?

 

 おや皆さん、私を誰だと思ってるんです?私にとって、事実の改変なんて、ちょいと面倒ですが、できなくもないんですよ!

 

 ニャルラトマァジックでこれこの通り、ですよ!

 

 「クッソ・・・ひでえ目に遭ったぜ・・・!」

 

 「ははは・・・何でボクたち生きてるんでしょうね・・・」

 

 おや、他の探索者たちも気が付きましたね。

 

 頭を振る竜條寺君に、虚ろなから笑いをする七槻君(一人称がおかしいですよ?)に、周囲を見回してから、一気に涙ぐみ、松井君に抱き着いて号泣し始める蓮希君。

 

 同様に、茫然とされている敦子君は、ややあって項垂れます。

 

 理央君は一人、状況がわかってない様子で、少々いぶかしげにされています。

 

 ・・・浜に流れ着いているのは、彼らだけです。他の深きものやその眷属、何より、禄郎君と君恵君は、そこにはいません。

 

 「どいてください!けが人や重傷者はいますか?!」

 

 「大きなけがはありません。私たちより、こちらの子供二人と、あとは彼女を。彼らは落ち着く必要があります」

 

 担架を担いでこられた救急隊員の皆さんに、成実君はそういうや、よろよろと立ち上がり、松井君に何事か言い、頷いた松井君がそのまま蓮希君を抱き上げます。

 

 やれやれ。予定よりも滞在が長引きそうですねえ。

 

 「おい!放せよ!」

 

 「駄目ですよ。恥ずかしくても、今は我慢してください!君は混乱してるんです!

 

 怖かったんですね!もう大丈夫ですよ!」

 

 「放せぇぇぇぇ!」

 

 そして、私は腕の中のコナン君を、心配を装って目い一杯からかうことにしました。

 

 本当に、かわいいんですから♪

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、いくつかは省きます。

 

 その後、島にあるそこそこの病院であれこれ検査して、一晩だけ入院し、それが終わって帰宅ということになりました。

 

 蓮希君は、いよいよSANが減ってしまったらしく、松井君に慰められながら、泣きっぱなしです。

 

 ま、勇気を出して、トラウマソングを歌ったにもかかわらず、助けたいと思った肝心な人が行方不明ですしね。当然かと。

 

 一人蚊帳の外の理央君は、何があったの、どうなったのと、敦子君と竜條寺君にお尋ねしてました。

 

 で、敦子君が馬鹿正直に事実(魚みたいな顔をした人たちに捕まって、鮫の神様の生贄にされそうになった!)を言ったにもかかわらず、まったく信じようとせず、竜條寺君の常識的返答(誘拐犯を海際の崖に追い詰めたが、そこに爆弾を仕掛けられてて避難するのに失敗して犯人諸共海に転落。助かってよかったな!という感じ)にとりあえず納得されてました。

 

 常識的な世界を信じる人たちに、探索者の知る真実なんて、妄想甚だしい作り話なんですよ。

 

 

 

 

 

 そんな、恐ろしい事実なんて、知りたくもないでしょうに!

 

 それでも聞こうとするなんて、愚か極まりないですねえ。

 

 

 

 

 

 ちなみに、蓮希君から目が離せない松井君の代わりに、竜條寺君と成実君が神社の地下へ向かおうとしましたが、無駄足に終わりました。

 

 何と、神社は地震にでも遭ったかのようにバラバラぐしゃぐしゃに壊れて、がれきと木材の山と化していたからです。

 

 どうも、最後の津波の一撃が地下室を通って神社まで噴出したようです。

 

 その証拠に、雨など全く降ってなかったというのに、神社の木材はそこだけ水をかぶったようにびしょぬれでした。

 

 そんな状態ですから、あの地下空間へ行くすべもまた、失われてしまったということです。

 

 「何て報告すりゃいいんだ・・・っつーか、絶対危険手当上乗せもんだぞ、この案件。

 

 生き残れただけマシだが・・・マジ勘弁してくれ」

 

 などとぼやいていた竜條寺君が印象的でした。今の職場のことを思って、いい加減あきらめられたらいかがです?少しは楽になるかと思うんですがねえ。

 

 「あ゛?!義手、海水につけちまった?!」

 

 「・・・私もフォローしますから、おとなしく技術部に怒られましょうね?」

 

 「俺のせいじゃねえええええ!勘弁してくれぇぇぇ!」

 

 気の毒そうな成実君に、竜條寺君が頭を抱えられてました。本当に、いろいろ笑える人ですよねえ、彼。

 

 

 

 

 

 さて、事情聴取など、もろもろ落ち着いて、ようやく帰宅できることになりました。ちなみに、連休はとっくに終わってます。しょうがないですよね?

 

 現在、定期船の甲板です。

 

 目を真っ赤に泣きはらした蓮希君に、松井君がつきっきりでいます。

 

 そして、最後尾の手すりで、敦子君がぼーっと空を見上げられてますね。

 

 そのそばには、竜條寺君と理央君ですか。ふむ。【聞き耳】!

 

 「・・・大丈夫か?」

 

 「私、アンデルセンの人魚姫、嫌いだったの。王子様が好きで好きでしょうがないくせに、横取りされちゃって、かといって海に帰ることもしないで、自分一人が消えたら解決なんて、結論出して。

 

 多分、同族嫌悪も入ってたんだろうけど」

 

 「・・・」

 

 「かと言って、あのアニメーションの奴はもっと嫌い。ハッピーエンドもいいけど、アンデルセンが言いたかったのって、そういうことでもないと思うし。

 

 ・・・今思えば、きっと、人魚姫は家族が大事だったから、一人で消えたのかもね」

 

 「家族が大事だから?」

 

 「人魚姫が王子様を短剣で刺し殺せば、人魚姫は人魚に戻って、家族のもとには帰れたかもしれない。

 

 でも、王子様を大事に思ってた女の人は?その家来たちは?国の人たちは?絶対悲しんで怒って、海に逃げた人魚姫を探し出して復讐しようとしたと思う。その結果、家族がひどい目に遭ったかもしれない。

 

 ひょっとしたら人魚姫は、そこまで見通したからこそ、自分一人が消えようとしたのかもしれない。

 

 ・・・あの島の、伝説の始まりになった最初の一人目も、そう思ったから、以降は自分一人でやろうとしていたのかもね。推測でしかないけどね」

 

 「・・・いい話は書けそうか?」

 

 「うん。ネタはもう頭の中にあるからね。がんばるよ。

 

 物語の中でくらい、幸せになる権利はあるはずだから」

 

 拳を握って大きく頷く敦子君の頭を、ポンポンと弾むようになでる竜條寺君。

 

 チッ、爆発すればよろしいのでは?

 

 おや、コナン君。私に大事な話ですか?

 

 ・・・まあ、いいでしょう。それで、何です?

 

 場所は、少し離れた、日陰になる甲板です。冷え込むので、こちらに人通りはほとんどありません。

 

 「沙織さんの日記にな、書かれてたんだよ、全部」

 

 「・・・というと?」

 

 「あの3人が、美國神社の蔵に火をつけた日。

 

 彼女たちは、島の居酒屋で飲んでたそうだな?そして、彼女たちのそばでこれ見よがしに話をしていた客がいたそうだ。

 

 黒髪に眼鏡の、目が覚めるような美人だったそうだ。

 

 その客も矢が外れたらしく、酒場の店主相手に管をまいてたらしい。

 

 “大体、本当に不老不死かどうかも怪しいんだから、外れてもいいんですよ!

 

 あーあ、誰かが事故とかに見せかけて、本当に不老不死を証明しませんかね?そうしたらきっと、命様とやらも信心に応えて、矢が当たるようになると思うんですよね”ってな。

 

 それを聞いた彼女たちは、面白がって命様を蔵に閉じ込めて火をつけることにしたそうだ。

 

 で?あんた、3年前の火事の日に、どこで何をしてたんだ?」

 

 「おや、コナン君。まさかこの私をお疑いに?」

 

 まったく、余計なものを残してくれましたねえ、門脇沙織君も。

 

 君がすべきなのは、そんな余計な情報を残すべきではないかったというのに。

 

 ま、もうすでに“すべてのサメの父”の腹の中に行ってしまっているでしょうから、言っても詮無いのでしょうが。

 

 ですが。ですがね?詰めが甘いですよ、名探偵君。

 

 「いいから答えろ!」

 

 「ふむ。そんなとっさに思い出せませんよ。それにですねえ、コナン君。一つ、大事なことをお忘れですよ?」

 

 目を吊り上げて怒鳴りつけるコナン君。嗚呼、ゾクゾクする。赤井君もそうですが、彼には実に、こういう顔が似合います。

 

 フフッ。だから、彼らをからかうのはやめられないんですよねえ?

 

 「証拠はどこにあるんです?名探偵君。

 

 例えば、その居酒屋に私がいたという証拠の写真はあるんです?あるいは証人は?

 

 その日記に書かれていた人物が、私だという証拠は?どこにあるんです?」

 

 ニチャァッと口を割って嗤いながら、私はコナン君に言いつのります。

 

 あるわけないですよね?居酒屋の店主は深きものの眷属で、昨夜の騒動でいまだに行方不明です。その場にいた女性三名は生贄にされて正気を失って同様に行方不明ですし、他の客をコナン君が探し出して連れてくるなんて、不可能です。

 

 ・・・何より、あの時の私は手取ナイアより少し姿を変えてましたしね。証明不可能、です。

 

 

 

 

 

 そう。これが、松井君が私へ手を出さない、出せない理由でもあります。

 

 私は確かに、邪神ニャルラトホテプの化身として、あちこちに悪意や混沌を振りまいて楽しんでいます。

 

 ですが、それを知っているのは私だけ。そして、証拠の類は残してませんし、私が教唆したという確定的な情報の類も一切残してません。

 

 証明不能であるがゆえに、私が邪神であると確固たる証拠もなく――コナン君がいますが、それも私が「何のことです?」の一言で終了ですしね。

 

 つまり、限りなく黒に近い、白としか判断されないんですよ、私は。

 

 MSO上層部も、私が邪神という確定ができない限り、手を出すことはできないんです。

 

 ざぁんねんでした!あっはははははははははは!!!

 

 

 

 

 

 ほぉら、今もコナン君は悔しげに奥歯をかみしめ、こぶしを握りながら私を睨みつけています。

 

 「まったく・・・私は優しいですからね。今は気分もいいことですし、聞かなかったことにして差し上げますよ」

 

 にっこり笑って、踵を返す私には、コナン君が悔しげに手すりを蹴る音が聞こえました。

 

 ものに八つ当たりしても何もいいことなんてありませんよ。落ち着いたらいかがです?

 

 「お前の思うとおりになると思ったら大間違いだ!絶対、証明してやるからな!」

 

 「・・・ええ。その時を楽しみにしておきますよ、名探偵君」

 

 小さく振り向いて、嘲るように言って差し上げました。

 

 ま、そんなときが、来たらいいですね、コナン君。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、新幹線を乗り換え列車に揺られて、米花駅です。

 

 ここで解散ということになりましたが、その時でした。

 

 スマホの着信音が聞こえました。おや、七槻君のものですね?

 

 「はい。槍田探偵事務所所属の探偵、越水七槻です。

 

 ・・・っ!」

 

 通話に出るなり、彼女は大きく息をのみました。

 

 「無事だったんですね!よかった!ああ、今すぐ替わりますね!彼女たちもそばにいるんです!」

 

 そう言って、彼女はスマホを目を真っ赤に泣き腫らさせた蓮希君に差し出しました。

 

 「出てみて!きっと驚くから!」

 

 不思議そうにしながらも、彼女は通話を替わりました。

 

 「もしもし・・・?

 

 ・・・っ・・・君恵さん?!

 

 無事だったんですね!禄郎さんは・・・そうですか!よかった!」

 

 

 

 

 

 その後、スピーカーモードにしたスマホから聞こえてきたのは、間違いなく島袋君恵君と、福山禄郎君の声でした。

 

 何でも、彼らは我々が島から出た直後ほどに沖合をプカプカしているところを発見されたそうです。

 

 禄郎君は相変わらずですが、君恵君は元の人間の姿に戻った状態で。

 

 で、病院に担ぎ込まれ、検査などがひと段落ついたところで、ご自宅に置いて行かれた七槻君の連絡先を思い出し、無事を伝えておこうとご連絡なさったのだとか。

 

 そして、今、あちこちで同様に浜に流れ着いたり、沖合に浮かんでいたりと、一部の島民が見つかってきているようです。

 

 全員は無理でも、一部のものは、戻ってくるだろうということ。

 

 そしてもう一つ。

 

 『ねえ、蓮希さん。・・・ありがとう。だいこうふ様も、あなたに感謝してるようだった』

 

 「・・・え?」

 

 さあっと青ざめる蓮希君ですが、次の言葉を聞いた途端、彼女は安堵の息をこぼされました。

 

 『ああ、ええっとね、だいこうふ様、あの歌に満足されたの。私一人じゃできなかった。

 

 だいこうふ様、深くて遠い場所に、行ってしまわれたの。

 

 多分、もうすぐこの島の人たちも、加護を失って、そのうち普通の人間しか生まれなくなると思う。

 

 あくまで推測だけどね。

 

 それに伴って、儒艮の祭りも取りやめにしようと思うの。元々だいこうふ様の慰めのためだったけど、あの方がいなくなられるなら、続ける意味がないから。

 

 表向きは、命様のからくりを、よそから来た人たちに見抜かれたからってことにしてね』

 

 「え・・・でも、それじゃあ・・・」

 

 『大丈夫さ。確かに、この島は儒艮の祭りの観光業でも稼いではいたが、新鮮な魚介料理でも有名なんだ。

 

 時間はかかるだろうが、立ち直って見せるさ』

 

 口をはさんだのは禄郎君です。

 

 『あんたたちには迷惑をかけてしまった。俺の事情と我がままに付き合ってくれて、感謝する。それから・・・君恵を助けてくれたことも』

 

 「気にすんなよ。好きな女の力になりたい男の気持ちは、理解できるつもりだからな」

 

 「ああ。式がいつになるか決まったら、教えてくれ。休暇取ってみんなで駆けつけてやるぜ」

 

 『式って!』

 

 『さすがに、今はまだな・・・もう少し時間はかかるだろうしな。気長にやるさ。だろ?君恵』

 

 『知りません!禄郎君の馬鹿!』

 

 『・・・ふっ・・・じゃあな』

 

 そこで通話は終了です。

 

 再び蓮希君は涙ぐまれて、松井君に抱き着いて泣かれています。

 

 「蓮希?!大丈夫か?!」

 

 「違うの・・・陣矢君・・・嬉しくて・・・!

 

 よかった・・・私の歌・・・余計なものじゃなかった・・・!

 

 ずっと気にしてたの・・・! 2年前のあの時、あれを演奏したから、かえって事態が悪くなっちゃったんじゃないかって・・・!

 

 あれが、本当に、人を救うことになった・・・!それが、嬉しくて、仕方ないの・・・!

 

 よかった・・・!君恵さん・・・禄郎さん・・・!」

 

 わあっと声を上げて、再び泣き出す蓮希君の背をさすりながら、松井君も嬉しそうに笑みをこぼしました。

 

 「・・・アンデルセン原作の人魚姫ってのは、元々宗教色が非常に強い作品でな。日本じゃその辺が難しいから、和訳の際に削除・改変されたんだ。

 

 永遠に近い命を持つ人魚には転生の概念がなく、死は消滅でしかない。

 

 だが、人魚姫は人間になったことで、その輪に入れた。

 

 彼女は、空気の精という、天使に近い存在になったんだ。

 

 そして、空気の精には、多分鳥が寄り添ってたんだろうさ。海の底の人魚姫に恋い焦がれていた、な」

 

 竜條寺君が穏やかに言いながら、敦子君を見ました。

 

 「うん!陸の王子様にも負けない、素敵な人が、待ってたんだよね!」

 

 涙ぐみながら、笑顔で敦子君がうなずかれます。

 

 や~れやれ。何ですか、このありさまは。しらけますねえ。

 

 クイクイッと袖を引かれるのを感じ、下を見下ろせば、そこにはどこか勝ち誇った様子のコナン君が。

 

 「よかったね!ナイア姉ちゃん!」

 

 ・・・このガキ。

 

 「ええ。君は、何にも、できませんでしたがね」

 

 「うん。でも、負けなかったよ?これからも、負けるつもりなんて、ない」

 

 ・・・フン。まあ、いいでしょう。

 

 では、そろそろ帰りましょうか。愛しの『九頭竜亭』に。

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 『次のニュースです。

 

 ×日、未明に女性が殺害されるという事件が発生しました。

 

 東都××区東奥穂村にて、東都新聞記者の河内深里さんが刺されたもようです。

 

 第一通報者の高校生探偵、時津潤哉さんの証言によりますと、被害者の悲鳴が聞こえたところに駆けつけたところ、被害者が倒れているのを発見したということです。

 

 これに伴い、当時被害者のそばで凶器の包丁を持っていた、同じく高校生探偵の工藤新一さんを、容疑者として現行犯逮捕しました。

 

 また、詳しい情報が入りましたら随時報道いたします』

 

 モニターの中の美人アナウンサーが既定のニュースをすらすらとしゃべるのを見届け、ピッと彼はテレビのモニターを消す。

 

 見ぃつけた。

 

 ニタァッと彼は唇を割って笑う。

 

 ジンのアキレス腱。これで俺が幹部だ。

 

 

 

 

 

死亡フラグぅ?知りませんな、そんなことは!

 

続くんですよ!必死に!





【やっぱり元凶で、勝ち誇ったけど最後の最後にしてやられた感があるナイアさん】
 前回ラストから、微妙に事実改変をして、行方不明の養い子を必死に探していた保護者を演出する。
 真実を知る者からしてみれば、片腹痛い。
 助かったにもかかわらず泣き崩れる探索者たちに、ついでとばかりにコナン君を心配するふりしてからかい倒す。邪悪愉快犯。
 そのまま、いろいろやって方東都への帰路に就く。
 帰りの船の中で、コナン君と一対一でお話合い。
 やっぱり、今回の事件の元凶中の元凶もやらかしていた。具体的には、遠回しであれ、件の女子3人に、火事を起こすように仕向けさせた。
 ただし、それが彼女本人であるとはだれにも何物にも証明はできない。
 コナン君の詰問をのらくら躱して、勝ち誇ってみせる。
 人類に長きにわたって悪意と混沌を振りまく邪神が、たかだか10年ちょい生きたお子様にしっぽをつかまれるなんて、あるわけがない。
 多分、【アイデア】がクリティカルしたんだろうなとは思うが、素直に答えてやる義理も義務もない。
 悔しそうにするコナン君相手に勝ち誇って見せるが、駅前の和気あいあいの様子に、だいぶ白けた。
 ・・・彼女が、今東都で進行中の別の事件の知れば、どうなることやら。

【バッドに見せかけて、実はグッドエンドを迎えられ、SAN回復できたであろう探索者たち】
 前回ラストにて、地下空間から“すべてのサメの父”の【津波】に押し流され、地上の砂浜に打ち上げられる。
 ・・・彼らだけ。
 つまり、君恵さんや禄郎さん、他のさらわれた女性3名の行方は不明のままで、やっぱ何もできなかった!と蓮希ちゃんは泣いて後悔する。
 それぞれ、探索者たちも思うところを抱えながら帰路につく。
 東都の米花駅に到着して、解散し四日となったところで、お電話が。
 生きてたよー!という君恵さん&禄郎さんからのお電話でした。
 その後、島についての事後報告などを聞いて、よかったね!となる。
 蓮希ちゃんはこれでかなり大量のSAN回復が入る。多分、現役復帰可能なくらいには。
 なお、その後、敦子さんが書き上げた『ディープマーメイド』という新作は、またしてもヒットを飛ばす。人魚を題材にした、ホラー系の話。彼女が書くのはそんなのばっかり。
 ・・・なお、次の事件の不吉な胎動には、いまだに誰も気が付いていない。







Q.そういえば、結局原作で殺害された女性3名は?

A.そんなの、邪神様もおっしゃられたとおり、“すべてのサメの父”の腹の中ですよ?
仮に生きてたとしても、深きもの一歩手前の変貌済みで、精神も発狂済みというどうあがいてもまともな生活できない状態です。詰みですよ、詰み。
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