邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 いつ公開されるんだ、『緋色の弾丸』・・・。待ちかねすぎて自家発電に手を出さざるをえねえじゃねえか・・・。
 いろいろ探索者登場させてるけど、放置気味な人も多くて、あれこれ引っ張り出そうとして、こんがらがりまくります。
 久々登場の阿須那羽こと赤井さんは、今回は探索者仕様です。
 阿須那羽教授用マスコットが欲しいな、なんか冒涜的なの→(『マレウス・モンストロルム』ぱらぱらして)お、これなんかええんちゃう?→戦闘技能皆無やでえ・・・?まあ、マスコットやし!ええやろ!
 となった結果、敵神話生物だけじゃなくて、味方神話生物も出ることになりました。
 赤井さん、あっち側とは縁を切りたがってたくせに、ふたを開けてみたらどうあがいても逃げようがない交友関係を構築なさってるんですよね。


【#37】そして終結。工藤新一の汚名?それより赤井君です

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 いやー、笑った笑った。久々に大爆笑させていただきました♪

 

 工藤新一に汚名を着せようと、彼そっくりに成形なさった日原誠人君も頑張られていたようですが、最終的に七槻君、コナン君、松井君の即席トリオの前に、泣き崩れられましたし。

 

 いやー、正直まぁたハッピーエンドですか(はぁ)ってなってたんです。

 

 で、そこにおバカさん→愚か者(Rank up!)の時津潤哉君が、沈静化した火にガソリンを叩きこんでくれました♪

 

 いやー、将来有望ですね、彼。そのうち凶器でフルボッコにされてから、トリックで殺人偽装されるんじゃないです?米花町あるある、ですよ♪

 

 え?原作では大体そんな感じ?ちょっ!そこのところkwsk!私の情報偏り攻略本、彼の記述は抜け落ちているんです!

 

 え?お前は絶対悪用しかしないだろうから、御免被る?仕方ありませんねー。あとで竜條寺君に聞きだすとしましょう。彼なら補完できるでしょうし。

 

 

 

 

 

 話を戻します。

 

 時津君、せっかく七槻君&コナン君、そして何より新一君と警察の皆さんが伏せようとした、心中の真実を村人たちと、当事者たる日原大樹君の前で暴露しちゃいました♪

 

 おかげで、大樹君の目のハイライトは、那由他の彼方へ失踪なさってしまいました。

 

 それを見た周囲は大慌て、毛利探偵は怒って時津君に殴りかかられるし、狂人蘭君も一緒に怒るし、村人たちは慌てて大樹君を慰めにかかられて・・・う~ん、カオス☆

 

 あっはっはっは!自分たちが知りたい言ったくせに、真実突き付けられてへこむなんて、頭おかしくないですか~?

 

 時津君を恨むなんて、筋違いですよ~。恨むなら、動機を隠された理由に思い至らなかった自分たちの無能さにすればよろしいのに~。

 

 ま、これでさらなる方向に怨恨を振りまく準備ができたわけです。よかったですね!時津君!また一段と有名になられましたよ♪

 

 

 

 

 

 え?それよりも、前回最後の爆発?あれ、どういうことだ?何があった?早く説明しろ?

 

 はいはい。それでは話していきましょうか。

 

 以前も言いましたが、ハッピーエンドなどクソ食らえです。そんなもの、むしり取って靴底で踏みにじって差し上げたいくらいですが、手を出すのは最終手段。

 

 事件は片付いても、まだひと騒動あるようですのでね。楽しみです♪

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 ドンッという大きな爆発音に、全員何事かと一斉に振り向きました。

 

 「何だ?!」

 

 「日原邸からだ!」

 

 口々にそう言いながら、彼らは一斉にそちらに向かって駆け出していきました。

 

 濛々と煙を吐き出す日原邸に、真っ先に飛び込むのは松井君、コナン君、七槻君です。毛利探偵が素早く消防車に連絡をなさっていますね。

 

 煙と炎に紛れ、倒れこんでいる刑事や警官たちを助け起こして、安全なところに避難させながら、彼らは素早く視線を走らせ、ややあって愕然とした顔になられています。

 

 ああ、気が付かれたんですね?日原誠人君――工藤新一君そっくりに整形した坊やのお姿がない、という事実に!

 

 「松井さん!後を頼む!」

 

 「あ!おい、コナン!」

 

 倒れこんだ家具などをどかして救助活動にいそしまれている松井君は、駆け出したコナン君を咎めるような声を出しますが、この場を放置するわけにもいきませんよね?

 

 素早く邸宅から飛び出したコナン君は、野次馬連中と、それらをかき分けるように到着された救急・消防など一顧だにせずに、必死に何か探されているようです。

 

 もう、遅い、ですけどね。

 

 気絶した日原誠人君を乗せた、黒塗りの車は、あざ笑うように村を離れ、高速の入り口に差し掛かられています。

 

 日原誠人君は、手足をまげてスーツケースに押し込められてますし、Nシステムのような路上監視システムのカメラには引っかからないでしょうねえ。

 

 はい♪残念でした~♪

 

 やがて、コナン君は何か大きな荷物を持った人を見かけなかったかと、村人たちに問いかけて回り始めますが、時津君の推理ショーに気を取られていた彼らからはまともな証言が出るわけもありません。

 

 時間切れと手おくれを痛感なさったんでしょうねえ。

 

 コナン君は、悔しげに顔を歪め、膝をついて地面をたたかれています。

 

 あっはっはっは!原作では君が主人公ですから、何もかもが君に都合のいいように動いたかもしれませんがね?そう簡単にいくわけないでしょう?!

 

 以前のお言葉を熨斗を付けて返して差し上げますよ、コナン君!

 

 “お前の思い通りになると思ったら、大間違いだ!”とね!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 もうどのくらいここにいるのか、誠人にはわからなくなっていた。

 

 気が付いたら、どこか薄暗い場所にいて。椅子に身動きできないように縛り付けられていて、見知らぬ目つきの悪い男に意味の分からない質問をされたのだ。

 

 シェリーの居場所を吐け、どうやって毒薬から助かった、今までどこにいた、組織のことを誰にしゃべった、仲間はほかにいるのか。

 

 そんなの知らない。

 

 だって、自分は工藤新一ではないのだから。この顔は、彼をはめるために整形という人工手段をもって用意したものだ(そして真実が判明した今、それも無意味になった)。自分は、日原誠人だ。

 

 誠人はそう主張した。

 

 だが、そう答えるたびに、嘘を吐くな、本当のことを言えと、罵声とともに苦痛が誠人に襲い掛かった。

 

 肘かけに固定された手の爪を引き抜かれ、苦痛に悶えて絶叫した誠人の頭を、男は容赦なくつかんで、問いかけを繰り返す。

 

 つまらない嘘を吐くな。さっさと吐け。工藤新一。

 

 ここまで来て、誠人は震え上がった。

 

 これは、単なる質問、尋問、取り調べの類ではない。スパイ映画、あるいは極道ものに出てくる、誠人とは徹頭徹尾縁のない単語――拷問だ。

 

 

 

 

 

 誠人の、かつて工藤新一を信奉していた脳から引き出された知識は、断片的に彼に告げた。

 

 犯罪を許さない正義の人、平成のシャーロック・ホームズが、その辺の有象無象の犯罪者の逮捕程度で活動を済ませるわけがない。彼は、何らかの犯罪組織を相手にし始めたのかもしれない。

 

 そして、その組織は工藤新一の命を狙い始め、そのために彼は身を隠した。

 

 だが・・・考えたらずな誠人は、そんなこと知ったことではないと、彼への成り済ましを謀った。

 

 その結果がこれだ。成り済ましは、確かに成功した。

 

 誠人が騙そうとした世間ではなく、工藤新一の命を狙っていたであろう、犯罪組織に対して。

 

 

 

 

 

 「おら。いい加減疲れてきただろう?さっさと吐けよ、工藤新一」

 

 何度も殴られ、爪を引き抜かれた手は血まみれになり、ぐったりとした誠人に、男は容赦してくれない。

 

 なおも頭をつかみ上げ、嘲るように質問を繰り返す。

 

 「あ・・・し、しらな・・・ぎゃああああああああああっ!」

 

 「誰が嘘吐けっつった?!ああ?!てめえが工藤新一だってのは、幼馴染の家族どもが証言してるんだよ!!

 

 記憶喪失なら、さっさと思い出せ!

 

 それを吐いたら、お前だけは助けてやるよう、ジンに進言してやるよ!」

 

 太ももに走った激痛に絶叫した誠人に、男はあざ笑うように右手に持ったペンチから、ひねりちぎった肉片を振り落とした。

 

 「あ・・・うう・・・しらない・・・ほんどうに・・・じらないんでずぅ・・・」

 

 もう無理だ。ついこの間までただの学生だった誠人には、こんな苦痛、これ以上耐えられない。

 

 誠人はグズグズと泣き出した。股間はすでにびっしょり濡れてアンモニア臭を放っている。手の自由も利かず、殴られ続けた顔は腫れと鼻血、涙と唾液でぐちゃぐちゃだった。口の中も切れて血の味がする。硬いもの感触もあるから、歯だって折れたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 こんなこと想像もしてなかった。

 

 犯罪者として後ろ指刺されようと、それは工藤新一にすべていくことになる。

 

 すべて覚悟していたはずだ。

 

 ・・・本当に?あのまま計画通りにいってたら、ひょっとしたら刑務所で、工藤新一が捕まえた犯罪者たちに恨まれて、今のような目に遭っていたのでは?

 

 一度思い至ってしまえば、もう駄目だった。

 

 ただでさえも、計画の中枢を支えていた、工藤新一への怨恨がへし折られた誠人に、この拷問はきつすぎた。

 

 

 

 

 

 「はっ!これが平成のシャーロック・ホームズか!

 

 ざまあねえな!さっさと吐け!」

 

 「じらない・・・じりまぜん・・・おねがいじまず・・・もう・・・あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 「何で人体にはパーツが二つあると思う?拷問で片っぽなくしても大丈夫なようにさ。

 

 大丈夫、耳なし芳一がいるだろ?今のは耳たぶなんだ。なくなっても生きていける。

 

 さあ、シェリーの居所を吐け」

 

 「じらないんでず!ヴぉんと!ヴぉんとうに!ぼぐあ、びのばあ、ぎゃああああああっ!!」

 

 「へたくそな嘘は、そのツラ鏡で見てから言えや!!次は指だ」

 

 逃げ出したい、と誠人は強く願った。だが、意識の放棄すら許されず、誠人が気絶するたびに、水に頭を突っ込まれ、窒息しかけて意識を取り戻させられ、苦痛の続行となった。

 

 どうして、こんなことに。

 

 どうして。

 

 

 

 

 

 

 ちっと男は舌打ちした。

 

 さすがに、温室育ちのお坊ちゃんに、男の丹精込めた拷問はいささか刺激が強すぎたようだ。

 

 目が虚ろになっている上、水につけて窒息寸前に追い込もうと、完全に無反応になってしまったからだ。

 

 にしても、嘘を言うにしても、ずいぶんとへたくそなものだ。“平成のシャーロック・ホームズ”も、案外大したことのない。

 

 推理ミス、記憶喪失、挙句の殺人。

 

 お綺麗な正義の探偵の看板の下など、虚栄と売名にまみれたプライドの塊らしい。一つ崩れれば、あとは坂を転がり落ちるようではないか。

 

 男はせせら笑った。

 

 自分は日原誠人だと?偽名を名乗るにしても、もう少しましなものを名乗ってもらいたいものだ。

 

 その時だった。閉ざされていた廃屋の扉が開かれた。

 

 「誰だ?!」

 

 男の問いに、入ってきた人物は答えなかった。

 

 静かに、右手に持っていたスマホをかざした。そこには、ニュースのアナウンサーが淡々とニュースを述べている画像が映し出されていた。

 

 『繰り返しお伝えします。

 

 刺殺容疑で逮捕・拘束されていた工藤新一君が、本人でないとわかりました。

 

 DNA鑑定の結果、日原誠人容疑者19歳と判明しました。

 

 日原容疑者は、工藤新一君の推理の結果に不満を持ち、彼を陥れようと成り済ましを謀ったということです。

 

 現在、日原容疑者は、拘束されていた日原邸の謎の爆発以降消息がつかめておりません。

 

 何か情報がありましたら――』

 

 アナウンサーの述べるニュースに、男はひゅうっと大きく息をのんだ。

 

 同時に、スマホをかざしていた男が、それを下ろすと同時に、踏み込む。

 

 「何なんだ、てめえはああああ!」

 

 同様と困惑で混乱する男は、乱入者めがけて破れかぶれに拷問に使っていたペンチを投げつけようとするが、彼はそれを軽々と一歩体をそらすだけでよける。

 

 「こんなところで、人違いの拷問などするから、そんなものに目を付けられるんだ。

 

 バカが」

 

 吐き捨てる乱入者は、懐から取り出した拳銃を、男――否、男の背後めがけてぶっ放していた。

 

 ギヂィィィィィッ!

 

 弾丸が命中したそれが、甲高い、昆虫めいた悲鳴を上げる。

 

 何だ?とっさに男は振り向いた。振り向いてしまった。

 

 

 

 

 

 それは、背丈は150センチほどあるピンクがかった色の生き物だった。

 

 甲殻類のような胴体にバカでかい背びれというか、膜のような翼と言った方がいいかもしれないようなものが付いており、関節肢が数組み付いていた。

 

 普通なら頭のあるはずのところには、非常に短い触手に覆われた渦巻き状の楕円体が付いていた。

 

 

 

 

 

 男は知らなかった。それは、ユゴスよりのもの、ミ=ゴとも呼ばれる、神話生物であることを。

 

 ここは、東奥穂村より高速で少しばかり離れた小さな町の、小さな廃屋だ。

 

 ・・・この街で、頭部に穴が空いて脳みそがゴッソリ抜き取られる猟奇事件が起こっているなんて、知りもしなかったのだ。

 

 そして、そんな常識の埒外の生物を目の当たりにしてしまった、男の正気は現実逃避を選択した。

 

 ばかばかしい、あんまりにも、目の前の小僧が頓珍漢なことしか言わないから、疲れて幻覚を見てしまったのだ。

 

 「おい、ガキ!お前が変なことばっかり言うから、おかしなものが見えちまったじゃねえか!さっさと本当のことを」

 

 「グラッドストーン!頼む!」

 

 放心状態の“工藤新一”になおもつかみかかろうとする男をさえぎり、乱入者が叫んだ。

 

 唐突に、男の襟首を何かがつかみ、椅子に縛られたままの工藤新一諸共、あらぬ方向に放り投げられる。

 

 男たちが先ほどまでいたところに、白い光線が当たったのは、その直後だ。

 

 ミ=ゴが、手にしていた電気銃を男たちめがけて放ってきたからだ。

 

 「よし。よくやったぞ、グラッドストーン」

 

 「♪」

 

 乱入者の男の言葉に、それは犬のように駆け寄り、褒めて!というかのように身を擦り付ける。

 

 そして、男はまたしても、その人知を超えた生き物の姿を目の当たりにしてしまった。

 

 

 

 

 

 それは、不格好な黒い生き物だった。脂っぽく滑らかなクジラのような皮膚、内側に向かって曲がっている角、羽ばたいても音のしない蝙蝠のような翼、物をつかむのに適している醜い手、意味もなく打ち付けるいやらしい棘のついた尾。

 

 特筆すべきは、顔のあるべきところに、その存在を暗示するような空白があるだけということだ。ゆえに、彼らは笑わない、微笑まない。

 

 

 

 

 

 それは、夜鬼〈ナイトゴーント〉と呼ばれる、つかんで、飛んで、くすぐることだけを得意とする生き物だった。

 

 ああ、絶対こんなの夢だ。

 

 男は確信した。

 

 ありえない。あんなピンクのエビじみた生き物も、聖書に出てくる悪魔のような生き物もいるわけもなければ、それを従えるのがあの裏切り者のNOC――赤井秀一というのも、まったくもってばかげている。

 

 これが夢でないなら、何とする?

 

 赤井は、男が昔遠目に見たのとは、全く異なる格好をしていた。

 

 黒一色ではあるが、マントのように肩に羽織ったコート、ダブルブレストのスーツに、深紅のアスコットタイ、深々とかぶった中折れ帽と垂らした長い黒髪という――男が知る由もないが、それは阿須那羽椎夜の装いである――をしていた。

 

 ついに男は座り込んだまま、放心して、思考放棄することにした。

 

 状況に思考が全く追いつかない。考えることすらばかばかしい。いや、考えたら、なくしてはいけない何かを、失ってしまう。だから考えない。本能がそう、叫んだからだ。

 

 

 

 

 

 足元でお座りをする夜鬼の頭を、角をよけながら撫でた赤井は、ミ=ゴを睥睨する。

 

 「おとなしくここから去るがいい。ユゴスへと戻るのだな」

 

 鋭い緑の双眸に睨みつけられたミ=ゴはたじろぐように、楕円型に生えた短い触手を揺らしたが、次の瞬間電気銃の銃口を赤井に向ける。

 

 だが、赤井の方が早い。

 

 いかに武器の性能に差があろうと、それが銃というカテゴリにくくられるものなら、技量自体なら赤井に分がある。

 

 ミ=ゴの体が地球上のものでなく与えられるダメージが限定されるとはいえ、魔力装甲貫通弾とそれを装填できる拳銃が相手では、また話が違う。

 

 赤井の早撃ちは、ミ=ゴから電気銃を弾き飛ばした。

 

 加えて、赤井は一人ではなかった。

 

 「ア?!」

 

 ミ=ゴが悲鳴を上げた。高々と飛び上がって空中待機していた夜鬼が、飛び上がったドアノブほどの大きさの、突起のついた黒い金属塊――電気銃をキャッチして取り上げてしまったからだ。

 

 「カ、返セ!」

 

 ブーンと、羽虫の羽音のような声音で、それでも人間の言葉であわてるミ=ゴに、夜鬼はすいすいと空中を踊るように跳ね、馬鹿にするように電気銃をお手玉して見せる。

 

 彼に顔があれば、アカンベーか、あるいはケラケラ笑って見せたかもしれない。

 

 ミ=ゴも飛べることは飛べるが、いかんせん機動力が違うのだ。狭い場所の追いかけっこなら、夜鬼に軍配が上がるだろう。

 

 「本来なら、奪った被害者の脳髄も返してもらいたいところだが、見逃してやる。

 

 それとも、まだ続けるか?」

 

 シャリンッと、赤井がコートの懐からナイフを引き抜く。

 

 左手に一振り。魔力が込められているのだろう、光沢がいささかおかしい。無手の右手は軽く引かれ、反撃に対応する準備がされている。

 

 そして、その腰に下げられたホルダーから、魔導書らしき革表紙、そして黄金の蜂蜜酒が詰まっているらしいボトルが見える。

 

 ここまで来て、ミ=ゴは悟る。

 

 この男は、そこらの人間ではない。冗談抜きで、自分を滅ぼす力があるのだ。

 

 だが、とミ=ゴは、奥に転がる人間二人を見た。

 

 優秀だと、人間の間では、評判の男――工藤新一、だったか?彼を、自分は連れ帰らねばならないのだ。その脳髄は、彼らの一族にとって、必要になるのだから。

 

 「先ほどのニュースを聞いていなかったのか?

 

 彼は、工藤新一とは、顔が同じだけの別人だ。別人をそうと称して連れ帰ったほうが問題になるぞ?」

 

 赤井の言葉に、ミ=ゴはぎょっとしたようにたじろいだ。

 

 ・・・そういえば、先ほど、彼がかざしていた機械から、何やらそんな言葉が聞こえたような気がした。

 

 となれば。

 

 「何タル無駄足」

 

 ミ=ゴは、悔しげに呻く。

 

 

 

 

 

 もともと、彼がここに潜伏していたのだって、上層部から、この地域で一等優秀な人間たる工藤新一の確保命令が出され、調査した結果この付近で目撃が相次いだためだ。

 

 付近の住民の脳髄を抜き取ったのは、調査と資源確保のためだ。工藤新一の情報を教えてほしいと彼らに頼めば、そうすれば肉体に戻れるとでも思ったが、脳髄たちは素直に情報をさえずってくれた。

 

 だが、すべてはまったくもって無駄足だったらしい。

 

 

 

 

 

 ああ、でも、それだったら自分が殺されるだろうか。高々、この場に現れた人間に都合よく言いくるめられたと、上層部は信じないかも。

 

 そう思い悩んで、考え込むミ=ゴに、赤井が口を開く。

 

 「ユゴスの連中が疑ってきたら、こう言えばいい。

 

 工藤新一が別人だというのは、ミスカトニック大学の阿須那羽が保証してくれた、とな」

 

 ハッと、ミ=ゴは楕円体を赤井に向けた。

 

 ミスカトニック大学の阿須那羽。なるほど、聞いたことがある。流出したアーティファクトの返還に協力してくれた、人間にしては話の通じる方だ、と。

 

 「・・・イイダロウ」

 

 ミ=ゴはうなずくと、羽を広げる。コンクリートの天井を粉砕して、彼はそのまま空高くに姿を消した。

 

 どうせ、連中は写真に写りもしなければ、目撃が信じられることはない、と赤井はナイフもしまって一息ついた。

 

 グラッドストーンと名付けられている夜鬼を、本来の次元に送還し、ついでに電気銃を銃撃でもって破壊する。

 

 さて、あとは。

 

 赤井は、いまだに放心したまま、ついでに失禁までしている男と、ボロボロズタズタで同様に放心状態の少年に目を向けた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 ああん?何で赤井君がこちらにいらっしゃるんです?

 

 攻略本によると、君が来るのは、あの女がこちらに来た頃だったと思ったのですが?

 

 そもそも、あの拷問シーンでミ=ゴが登場することも少々想定外だったのですがね?どういうことです?

 

 まあ、楽しめたから良しとは致しますが。

 

 ふうむ。ま、補完は後回しにしましょうか。

 

 赤井君が、ひとまず男を拘束して、日原誠人君の手当てを黙々としていると、誰かが廃屋に入ってこられました。

 

 おや、橘君。

 

 小学校のセッション以来ですね。相変わらず、特注パンツスーツに、左肩に刀の入った鞘袋を担がれています。負傷なさっていた右腕は、どうやら完治なさったようです。おめでとうございます。

 

 「阿須那羽先生!遅くなって申し訳ありません!」

 

 赤井君の姿を見るなり、橘君は素早くかけていき、続いてそのそばにいる放心状態の人間2名を見ると眉をしかめられました。

 

 「・・・連中の仕業、ですか?」

 

 「いいや。この子のケガは、彼がやったようだ。拘束しているし、この状態だ。暴れることはないと思うが、十分気をつけろ」

 

 「・・・ああ、なるほど」

 

 一瞬彼女は怪訝そうな顔をしますが、その顔――腫れと血や体液でグシャグシャですが、かろうじて見える面影や髪形などから、誰か悟られたようです。

 

 「逆恨みからの拷問、ですか?馬鹿じゃないです?」

 

 「しかも人違いだ。ネットニュースを見てみろ」

 

 「え?失礼します・・・ああ、そういうことですか」

 

 眉をしかめられた橘君は、断りを入れてスマホを確認するや、痛々しげに顔をしかめました。

 

 「それで?首尾は?」

 

 「大当たりですよ。連中の言いなりになって、情報提供していた男を確保しました。別れた恋人をあきらめきれなくて、脳缶にして保管してたんです。

 

 ・・・男は捕まえましたが・・・その・・・」

 

 「・・・中身の本人は、何と?」

 

 「体が死んでいることは、理解しているようでした。

 

 ・・・彼女自身の希望通りに、処理する予定です」

 

 首を振って、苦痛を押し殺すように橘君は言いました。

 

 ふむ?彼女がいるということは、MSOとウィルマースの合同捜査、というところでしょうか?

 

 「彼らは・・・見た、んですね?」

 

 「ああ。片方はその前からこの状態だったがな」

 

 そう言って、赤井君は男をじっと見つめます。

 

 ややあって、彼は舌打ちしました。

 

 おや、どうやら正体――君が潜入していた組織の一員だと気が付かれたようですね?

 

 男の懐をあさり、連絡用の端末を引っ張り出しながら、赤井君が言います。

 

 「面倒な・・・橘。君の古い友人に連絡を入れろ」

 

 「え?古い友人って・・・ええ?!いやですよ!なんであんな慇懃眼鏡なんか!」

 

 「この男を野放しにするわけにはいかんのでな。

 

 ・・・ジェイムズに連絡できないのが痛いな」

 

 端末をいじりながら、ポツリと赤井君がつぶやきました。

 

 「・・・それって、先生の本業の方ですか?」

 

 「先生はやめてくれ。俺は彼の連絡先を知らないんだ」

 

 橘君の問いかけに、赤井君が渋面で答えられています。

 

 言外に、肯定しているような返答ですよね?それ。

 

 「先生は先生でしょう。客員教授でしたら、呼称に問題はないはずです。・・・あなたからの頼まれごとでしたら、仕方ありませんね。

 

 でも、この有様ですよ?大丈夫なんです?」

 

 橘君の問いかけに、赤井君は端末からマイクロSDカードを引っ張り出し、残った本体を男の懐に戻してから答えました。

 

 「問題ない」

 

 しれっと言いますがね、赤井君。その手に持った君お手製の魔導書から見ても、魔術で記憶をいじくっておこうと言ってるようなものですよね?!

 

 ・・・ま、その方が只人にとっては幸せなのでしょうがね。神話生物の目撃なんて、記憶にも残しておきたくないのでしょうね。

 

 橘君は目をキラキラと目を輝かせて、赤井君が魔術を使うところを凝視なさってます。

 

 大ファンですもんねえ・・・彼女。

 

 その結果、SANが減ろうが悔いはないと言わんばかりの全力姿勢には、敬意を表します。

 

 で、終わったところで、改まった様子の彼女は、スマホで連絡を入れています。通話相手は・・・なるほど、風見君ですね。

 

 

 

 

 

 橘君は“協力者”としての手は切りましたが、怪奇事件専門捜査官と“連絡係”としての付き合いは続いていますからね。連絡先はまだ把握されたままでしょうね。

 

 もっとも、橘君は公安を嫌って、この手の連絡はほかに人員がいるならそちらにお任せするようにしているようですが。

 

 

 

 

 

 で、つながった先で、橘君がさっくりと事情を説明したところで、男の方について何と言おうか困っているようです。赤井君の本業〈FBI関連〉というのは分かるのでしょうが、具体的にどうするべきかと困られているようです。

 

 そこに、赤井君が通話を代わって、説明にはいられました。

 

 曰く、君たちも追っている組織の一員が、連中を目撃して放心状態に陥っているので、そちらで確保しておいてくれと。ついでに、片方は拷問を受けたので、救急車の手配も頼むと言い渡されてますね。

 

 通話先の風見君が阿鼻叫喚になっているのが目に見えるようですねえ。

 

 彼、今日だけでいくつ爆弾を落とされたんでしょう?新一君のことと言い、赤井君のことと言い、この組織の男のことと言い。

 

 しかも、HPL案件が絡んでいるなら、赤井君のことは零君には伝えられないでしょうし。

 

 可哀そうに(ニチャァッ)

 

 

 

 

 

 そうして、通話を終えた赤井君は、スマホを橘君に返すと、踵を返します。

 

 「引き上げるぞ。公安に見とがめられる前にな」

 

 「はい!」

 

 コートと長髪をひるがえして廃屋を後にされる赤井君に、橘君が子犬のごとく追従されます。

 

 そうして、放心状態の人間二人を置いて、二人はその場を後にされました。

 

 

 

 

 

 

 なるほどなるほど。

 

 それでは皆さん。お察しの通りのセリフをご唱和していただけますか?

 

 続く!

 

 

 

 

 

真の強者とは、続くのだよ!





【時津君を好評価して、予想外の赤井さんの再登場に動揺してしまったナイアさん】
 前回から引き続き、東奥穂村での騒動を見物。
 悲劇のトリガーを引くだけ引いて知らん顔をした時津潤哉君への評価は高い。騒動生成機的意味合いで。
 ついでに、時津君が村人集めて推理ショーをやらかしたので、人目がかなり薄くなっており、このどさくさで組織の人間が潜入、“工藤新一”誘拐の下ごしらえを進めていたこともしれっと見ていた。
 まんまと誘拐を看過して、悔しがるコナン君を見てニヤニヤする。
 や~いや~い。お前の思い通りになると思ったら大間違いだからな~!
 その後、誘拐された日原誠人君の拷問からの放心発狂もリアルタイムで見物していた。
 が、途中でミ=ゴと赤井さんが乱入してきて、ふぁい?!となった。
 何度か記しているが、彼女とて全知全能ではない。加えて、彼女自身が仕込みに加担してない場合、騒動の火種を感知しきれてない場合があり、今回のはそれに当たる。
 乱入者たち(ミ=ゴ&夜鬼)によって、誘拐犯も放心発狂。
 阿須那羽モードの赤井さん&飼い犬状態の夜鬼VSこの辺で悪さしていたミ=ゴの対決も、驚きながらもサプライズ!いいね!と気を取り直して出歯亀続行。
 あらら。あの戦闘能力皆無に近い夜鬼を、こうもうまく使役しますか。さすが赤井君ですねえ。
 久々登場の橘さんの回復ぶりと、赤井さんへの懐き振りにも苦笑。
 ものすごい懐きようだし、魔術もかぶりつきで見てる・・・たぶんあれで発狂しても悔いないんだろうなぁ。
 その後、橘さんが風見さんに連絡入れて、途中で通話を代わった赤井さんの会話もきっちり盗み聞きした。
 風見さんの苦労を思って、ニヤニヤする。がんばえ~!

【唐突な登場&本編参戦を果たした赤井さん】
 本編登場は実に久しぶり。#10以来ではなかろうか?
 諸事情から来日し、MSOと合同捜査で、東都郊外の田舎町で悪さしていたミ=ゴを追い回していた。
 ミ=ゴのいる廃屋へ乗り込んだら、なんか悲鳴が聞こえる。
 断片的に漏れ聞こえる会話から、内部にいる人間に検討をつけた。
 彼が、殺人犯“工藤新一”をどう見ていたかは現状では不明だが、そのニュースを知っていたため確認のためスマホを見たら、速報で人違いでした!というのが入り、マジかー。人違い拷問かー、とチベスナ顔になる。
 でも、ここにミ=ゴがいるのは確かだし、拷問続行させるわけにもいかないからと乱入。そいつ人違いだよ、とジャストタイミングで流れているニュース動画も流してあげた。
 今回、大学時代に仲良くなった神話生物を従えての探索。
 魔導書で召喚したのは、夜鬼〈ナイトゴーント〉のグラッドストーン君。
 お名前は、ガイ・リッチー版映画の、ワトソンの飼い犬から。
 なお、劇中に書いているが、夜鬼は飛んで、つかんで、くすぐるというのを得意とする。くすぐりに堪えられない人間を空中からポイするが、それ以外の戦闘技能は皆無という、同様に飛べる能力持ちのミ=ゴにぶつけるのには不向きだったりする。
 今回、赤井さんはあらかじめ、グラッドストーン君には自分以外の人間を安全な場所につかんで運んでおく、ミ=ゴの武器を取り上げる、という二つだけを言いつけていた。
 あくまで、ミ=ゴと直接戦闘・交渉をするのは自分だけと決めていた。
 無事、ミ=ゴを言いくるめ、撤退させることに成功。ミ=ゴは人語を話せるので、場合によっては交渉が成立したりする。
 その後、放心発狂している二名を確保&手当て。
 偽物工藤新一こと、日原誠人君を間近で見て、ああ、整形っぽい感じの顔だなー、と納得。
 ・・・たぶん、あの世界の特殊捜査官なら、そのくらい見抜けるんじゃないですか?(適当)
 途中で橘さんと合流。・・・何で俺、こんなに懐かれてんだ。あと、先生って呼ばれても、弟子入りは絶対認めないから。
 彼のセリフから察しはつくと思うが、今回彼は単独来日しており、FBIの他メンバーはいまだにアメリカにいる。
 他のFBIメンバーがいれば拷問男をそちらに引き渡したのだが、いない以上、日本の警察に任せるしかない、くわえて公安には一応伝手があるということで、そちらに引き渡すことにした。
 所属チームは違っても、目指す先は同じだし、有効活用してくれるはず。
 でも、情報はちゃっかりいただく。落ち着いたら解析しよっと。
 あとは頼むぞ、風見君。
 こうして、意図せず風見さんの胃痛を増やしていくのでした。
 ちなみに、彼は『名探偵コナン』現代登場時は髪を短くされていますが、本シリーズでは短くする理由がないので長いままです。
 ・・・彼が単独来日した事情は、次回で!

【FBI内にある赤井ファンクラブにでも加入しそうな橘さん】
 こちらも随分お久しぶり。#24以来の登場になります。
 小学校セッションにおける負傷は、無事完治。期間が短い?MSOはその手の魔術が使える方も所属しているからということで一つ。
 他の面子や、バディ組んでるだろう竜條寺さんが美國島でジタバタしている間、彼女は彼女で、東都郊外で悪さしているミ=ゴを赤井さんと一緒に追い回していた。
 セリフから察しのつく通り、今回もやっべーもんを色々見てきたご様子。SANも減ったはずなのに、あこがれの人が一緒にいるせいで、全然そうとは感じさせない・・・どころか、多分SANが回復してるのではなかろうか。ハイテンション。
 言いつけられてた調査終わりましたよー、と合流したら、赤井さんが誰か手当てしてる。
 あれ?負傷者?ん?この子、テレビで見たような・・・え?!もしかして、あの工藤新一君?!逆恨みからの拷問?!
 え?違うの?人違い?ここにいて、なおかつこの様子からして・・・見ちゃったかー。気の毒に。
 憧れの赤井先生の、本格的魔術!すごいなー!やっぱり、私もこのくらいできるよう、頑張らなくちゃ!
 いくら拒否されようと、心意気はすでに弟子なので、呼称は先生に固定。いつか絶対一番弟子と認めさせるんだから!
 2年たった今でも、公安は嫌い。仕事の関係で、今でも風見さんの連絡先は把握しているけど、自分から進んで連絡とろうとは思わない。
 先生からの頼まれごとだからしょうがなく連絡とった。
 うっわ、眼鏡うぜえ。赤井さんからの連絡に、なんか通話先でギャースカ騒いでる。
 ・・・赤井先生って、本業があるって言ってたよね?眼鏡の感じといい、この放心してる拷問男、そっち方面の関係者なのかな?
 松井さんたちと違い、コナン君との付き合いはそこまで深くないので、組織云々のことは全く知らない。
 ただ、これからも赤井さんと関わっていくつもりなら、いずれそれも知っていくことになる・・・かもしれない。





Q.何で赤井さんが出てきたんですか?唐突すぎません?降谷さんの方がしっくりきませんか?

A. ここで降谷さんを投入させたら、赤井さんの参戦機会が永遠に失われることになります。そうすると、ナイアさんが痛い目を見ない野放図状態が確定になります。
FBI陣営は未参戦だから許して。
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