邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 書いててちょっとしんどかったです。
 ここまで、救いのない話、私書いたことない。#αとは別方向に救いがないんです。
 東奥穂村も、日原兄弟も、コナン君も、みんなダメージ食らってますもん。
 こんなん、私だったら再起不能になりそう。コナン君、前回セッションじゃあSANも減らなかったのに、今回でがっつり抉れただろうなあ。
 やはり時津少年は鈍器で殴打されるべきだったのでは?ボブは訝しんだ。
 いや、鈍器で殴打されずと、冒涜的な目に遭って発狂死すればいいのでは?
 まあ、邪神様は平常運転でいろいろおっしゃられていますが。
 またしても名探偵に手厳しいことをいろいろおっしゃられています。
 ・・・それは果たして、このお話でご指摘する必要があるのでしょうかね、邪神様。


【#38】そして事件の行方とその波紋を。工藤新一の汚名の行方も併せて。

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 パンパカパーン!ついに赤井君が日本に来てくれましたー!

 

 いやー、待ちくたびれましたよ!

 

 何でも、宮野志保こと湯川理央君が、宮野明美改め宮島赤理君が開設、共同利用していたボイスメールの預かりサイト(蛇人間のコミュニティが管理・運営)を利用し続けて、それが黒の組織に感づかれたようでして。

 

 赤井君は、それをやめさせるために、志保君と、黒の組織のハッカー探しに来日されたようなんです♪

 

 彼が来るにあたって、『名探偵コナン』のストーリーステップがゴソッと無視られているようなのですが、些細なことでしょう。

 

 ・・・それで阿鼻叫喚になられるのは多分、私ではなく竜條寺君だと思うんですよね?

 

 彼、見捨てて組織から逃げ出したくせに、ピスコ君を助けるのをあきらめてないご様子でしたし。

 

 これで、前後の事情無視して、赤井君が来日なさっていると知られてごらんなさい。

 

 アバーッ?!赤井秀一ナンデ?!と泡でも吹いて卒倒なさるんじゃないです?

 

 加えて、赤井君は竜條寺君の事情など知りませんが、アイリッシュとしてのお顔はご存じでしょうしねえ。

 

 ・・・(いいこと思いついたといわんばかりのゲス顔)

 

 特に聞かれもしてませんし、内緒にしておきましょうか。(キラキラした笑み)

 

 その方が面白そ、ゲフンッ、ほら、彼もただでさえも色々お忙しく事情もお抱えなんですから、これ以上面倒を抱え込ませるのもいけないでしょう?

 

 え?理央君のやらかし?

 

 お言葉ですが、なんで保護者でもない私が、彼女のやらかしをお伝えしなきゃいけないんです?

 

 え?何不思議そうな顔してやがんだこのクソ邪神?

 

 では逆にお聞きしましょう。コナン君や竜條寺君のお二人に、勝手なデータ書き換えを相当怒られたにもかかわらず、この期に及んでお姉さんの音声目当てに、生前にくぎを刺されていたのを無視して、サイトにアクセスし続ける、愚かな彼女のことを、私がどうにかしてやる義理があると思います?

 

 指さして嘲笑ってあげるならともかく。

 

 ・・・はい♪皆さん、悔しげに黙り込まれて、素敵ですよぉ♪

 

 いつだったかの、船上のコナン君そっくりです。大変好ましいですよぉ♪

 

 

 

 

 

 ではでは、冒頭邪神トークはこの辺りにしておいて、本筋に行ってみましょうか。

 

 赤井君のことも非常に興味深いのですが、めでたく負け犬が確定なさったコナン君たちも見ていきましょうね♪

 

 あっはっは!目の前で組織のいいようにされた気分はいかがです~?工藤新一君!

 

 肩を落として帰ってきたら、もれなく大爆笑して差し上げますよ!!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、爆発の救助活動を終え、負傷者たちを救急車に担ぎ込んだり、事情聴取を受けたコナン君たちは、ようやく帰途につくことになったようです。

 

 これ以上現地に残られても、できることなど何一つありませんからね。

 

 悄然としたコナン君と、到着と同時に帰ることになったも同然の浅井成実君が後部座席に、松井君が運転をして、むっすり不機嫌そうな越水七槻君が助手席にいます。

 

 ま、見事にしてやられたようなもんですしねえ。

 

 “工藤新一”君の別人確定というのは、かろうじてメディアで流されましたので、どうにか組織の疑惑は躱せはしたでしょうね。

 

 おっと、お電話ですね?出られたのは浅井君です。

 

 ふむふむ?通話相手は、槍田探偵事務所の寺原君からのようです。・・・何やら、非常に不満そうな声ですね?

 

 「・・・そんなのありか?そんな・・・いくらなんでもふざけてる・・・!」

 

 話を聞き終えた成実君、眉を吊り上げて怒ってます!と言わんばかりに悔しげな顔をされていますねえ。

 

 え?会話内容ですか?

 

 それはですねえ・・・みんな大好き、時津潤哉君に関してです。追加ニュースがあるんですよ。喜ばしいことに♪

 

 松井君が、おっしゃられてたじゃないですか。

 

 “今回のことは、奴も根回しと口止めしようと、さすがに効果はないだろう。

 

 仁野にもリークしておく。奴のようなのには、これが一番効果的だ”とか何とか。

 

 あれ、ダメでした♪

 

 何か圧力がかかったらしくて、結局マスコミ連中、時津君のことを報道できなくなったんですよ♪

 

 行儀が悪いながらも舌打ち交じりに、成実君は通話を終えました。苦虫を20回ほど咀嚼しろって言われたら、こんな顔になるんじゃないです?

 

 何事かと視線と耳を向けてくる同乗者たちに、成実君は通話で聞いたことを説明され始めました。

 

 何でも、時津潤哉君、有名な四井グループと懇意になさっているとか。お嬢様のペット探しをしたり、彼女が中心に運営されていたヨットクラブの不祥事を解決なさったとか?

 

 ・・・ま、後者に関しては少し怪しいところなのですがね?

 

 とにかく、四井グループという強力なバックがあるため、トラブルを避けたがったマスコミによってもみ消されたという感じです。

 

 いやあ、それを聞いた七槻君が、阿修羅もかくやという形相になってました。

 

 「ふざけるな!!あんな・・・小さな子を傷つけておいて、何の報いもなし?!

 

 あの子だけじゃない!あいつのせいで・・・!」

 

 「・・・ままならねえもんだな」

 

 「・・・そうだね。結局今回、何もできなかった」

 

 唸るような松井君の言葉に、悄然としたままコナン君が答えられてます。

 

 「どうかな?少なくとも、新一君の名誉は守れた。彼に冤罪をかぶせることは防げた。別人と証明もできたしね」

 

 気を取り直すように成実君が言ってますが、それで気が晴れたというような顔をされる方は誰一人いません。

 

 

 

 

 

 それが本来の目的ですから、達成はできたといえばそれまでなのでしょうが。

 

 多分、後味最悪とか思われてるんじゃないです?

 

 

 

 

 

 「・・・誠人さんについて、寺原さん、何か言ってた?」

 

 「・・・ううん。多分、まだ見つかってないんだと思う」

 

 コナン君の問いかけに、成実君は静かに首を振りました。

 

 

 

 

 

 見つかりはしているんですがねえ。いかんせん放心発狂なさってますし、赤井君が応急処置をしたとはいえ、ちょっとばかり後遺症もひどそうな大けがを負われてますので、いまだにマスコミに発表できない感じでしょうか。

 

 拷問相手のことも、どう説明するか、公安内部で揉めているんでしょうねえ。組織のことを表ざたにするわけにもいきませんし、放心発狂状態なのをどう整合性を持たせるか、という問題もありますし。

 

 ・・・神話生物の目撃は、赤井君の魔術で記憶をいじられているので、正気に戻られようが、証言のしようがないのでしょうがね。

 

 ま、彼らがそれを知る由はありませんしねえ。

 

 

 

 

 

 「大樹君は・・・」

 

 続けて言ったコナン君に、今度こそ車中の人間は全員沈黙してしまいました。

 

 

 

 

 

 ああ、あの子もひどかったですねえ。

 

 あれから、誰が何を言おうと、沈黙して何にも言いませんでしたし。

 

 まるで、声をどこかに無くしてしまったかのように。

 

 そればかりか、村の人が少し目を離したすきに、キッチンにあった包丁を手に取って自殺しようとしてましたし。

 

 慌てて取り上げようとすると、火が付いたように泣きわめいて抵抗されますしね。

 

 ・・・そんなに死にたがられているなら、さっさと死なせてあげた方がいいと思うのですがねえ。

 

 ま、それでも生かそうとするのは、人間の性〈さが〉、ですかね。

 

 その後どうなるか?さあ?私は存じ上げませんねえ。このまま城山巡査のところで静養なさるか、あるいはその手の施設に入居されて、よりしっかりした療養をされるか。そんなところでしょう。

 

 

 

 

 

 「・・・ろしてやる。あの男・・・」

 

 ボソッと、七槻君が唸られました。いまだに、女性としていかがなものかというような形相をされてます。

 

 ぎょっとしたように顔を上げて、コナン君が七槻君を見ました。すぐ後ろですからね。思いっきり聞こえたのでしょう。

 

 「駄目だよ!!」

 

 金切り声のような絶叫で、コナン君が懇願されています。

 

 おや?止めるんです?人間素直が一番というのに。理性で無理やり押さえつけたところで、いつかそんなものはじけ飛びますよ?

 

 「何がだ!あいつのせいで、あの子だって・・・自分の輝かしい探偵歴のためなら、他人の心をいくらでも踏みにじれるんだよ、あの男は!!

 

 社会的に抹殺できないなら、物理的に殺すしかないじゃないか!」

 

 きっと振り返って睨みつける七槻君に、コナン君はそれでもだめだと首を大きく振っています。

 

 「七槻さん!槍田さんが言ってことを忘れたの?!

 

 “くれぐれも、探偵として自覚を持って行動するように”って!

 

 あなたは、探偵なんだ!謎を解いて、真実をもって、依頼人を救う人なんだ!

 

 その手を血に染めたら、もう、そんな資格、なくなってしまうんだよ?!」

 

 「じゃあ、あの男を野放しにしろってのか?!

 

 またあいつに踏みにじられる人間を、指をくわえて見ていろっていうのか!!」

 

 「違う!そうじゃない!」

 

 「う・る・せ・え!!」

 

 二人の怒声にたまりかねた様子の松井君が怒鳴って会話を打ち切らせました。

 

 「越水!お前は頭を冷やせ。

 

 言っておくが、力づくに出るのは、獣の手段だ。

 

 そんな奴は、俺は徹頭徹尾、認めない」

 

 じろりっと、隣を睨んだ松井君は、続いてコナン君をバックミラー越しに睨みつけます。

 

 「コナン。お前もだ。

 

 お前、心底誰かに腹を立てて殺したいって気持ちが理解できないタイプだろう?

 

 そんな奴に何言われたって、越水が納得できるわけがねえだろ。

 

 ・・・理屈だけで成り立たねえから、心ってのは厄介なんだよ」

 

 ぽつりと最後に付け加えられました。

 

 そうですねえ。理屈だけで人間の心というものが成り立つなら、松井君がMSOにいらっしゃることも、ありませんでしたからねえ。

 

 「・・・臥薪嘗胆、だね」

 

 ポツリと成実君がつぶやかれました。

 

 「薪に臥せて、胆を嘗めて、時が来るまで耐え続けること。

 

 ・・・時津君のことも、日原兄弟のことも、今の私たちにできることはもう、何もない。

 

 だったら、その時が来たときに、今度こそ出遅れないようにするしかない。

 

 忍耐というのは難しいけれど、物事を成し遂げるには一番大事なことだわ」

 

 取りなすように成実君はそう言いました。

 

 さすがに、月影島で長きにわたって真実を求め続けた人は、言うことが違いますねえ。

 

 「まだ、耐えなくちゃいけないのか・・・!」

 

 膝の上に置いた拳をふるえるほど握りしめ、七槻君が呻きましたが、大きく深呼吸して、頭を振りました。

 

 「ごめん。一番近い駅で下ろしてくれる?電車で自分で帰るよ。歩いて頭を冷やしたいから。

 

 ・・・ごめんね、コナン君。君が正しいってのは、わかってるんだ」

 

 「・・・ううん。ボクの方こそ、ごめんなさい。

 

 七槻さんの気持ち、もっと考えなくちゃいけなかったのに」

 

 二人が謝りあいます。

 

 そして、要請通り、松井君は七槻君を最寄りの駅で降ろされました。

 

 「じゃ!また事務所で!こっちからも連絡しておくけど、槍田さんによろしくね!」

 

 あえて明るい調子になられたのでしょう、ウィンクされてから七槻君は駅の構内に入っていかれました。

 

 「それじゃ、あとはお前だな」

 

 「一応、嘔吐下痢症の診断書、書こうか?公文書偽造になりそうだけど」

 

 「・・・今更だけど、お願いします」

 

 ハンドルを切った松井君に、苦笑するように成実君が言うと、コナン君が絶妙にいやそうな顔をされています。

 

 ははは。君、早退の言い訳におなかが痛いって言って、私がそれに肉付けしちゃいましたからねえ。

 

 よかったですねえ、都合をつけてくれるお医者さんが身近にいらっしゃって。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 『どうにか、日原誠人は保護した。

 

 彼を誘拐した男も一緒に、確保できた』

 

 「そりゃよかった。・・・あのガキ、有名人になるリスクをこれでちっとは理解したらいいんだがな」

 

 東都の某所。

 

 人通りの少ない路地の片隅にある、公衆電話で、竜條寺は風見と連絡を取っていた。

 

 竜條寺の言う“あのガキ”が、工藤新一を指すのか、日原誠人を指すのか、それは定かではない。あるいは両方か。

 

 『もっとも、拷問の後遺症がひどくてな。

 

 当分入院だ。両手の指何本かと、足の指、耳たぶを欠損している。他にも、あちこち、な。

 

 ・・・回復しても、車いすは確定だろうな』

 

 「・・・そうか」

 

 足の指というのは、歩行バランスを担う上で重要な器官だ。これがなくなっただけで、人間はろくに歩けなくなる。

 

 竜條寺も、風見も、それをいやというほどわかっていた。

 

 『精神的にも相当ひどくてな。受け答えできるようになるまでどのくらいかかるか。

 

 放心状態で、ろくに言葉も交わせないんだ』

 

 「・・・誘拐犯の方は?」

 

 『・・・』

 

 「おい?」

 

 『・・・実は、今回発見の連絡を入れてきたのは橘でな』

 

 渋々といった様子で、風見が口を開いた。

 

 それが嘘ではないが、事実すべてではないことを、竜條寺は知らない。

 

 「は?あいつが?」

 

 『拷問の現場になっていた廃屋に、そちら側の分野の、例のあれらがいたらしい。

 

 もろに目撃してしまって、放心状態になってしまってな』

 

 「何だその最悪の上塗り・・・」

 

 竜條寺は冷や汗しながら呻いた。

 

 「ちなみに、何見たって?」

 

 『確か・・・ミド?ゴミ?とか何とか言ってたな』

 

 「あー・・・ミ=ゴね・・・確かに、あれは刺激が強いか・・・。

 

 っつーか多分、ミ=ゴなら・・・奴さんらも“工藤新一”を狙ってたのかもな」

 

 『は?狙う?』

 

 「奴さんらはな、簡単に言えば宇宙人で、人間の脳みそコレクションしてんだ。優秀な人間ほど、狙われやすい」

 

 『~~~っ!!』

 

 ざっくり説明した竜條寺は、風見が受話器の向こうで声にならない悲鳴を上げたのを察した。

 

 ああ、SANが減ったのかもしれない。気の毒に。まあ、こんな分野に関わるなら、あきらめてくれや。

 

 竜條寺は気の毒に思いつつも、そう突き放すしかできなかった。

 

 「ま、橘がいたなら大丈夫だろ?あいつ、居合の名手だし、呪文も覚えてるしな」

 

 『・・・橘が言うには、人違いと分かったのもあって、手を引いてくれたそうだ』

 

 「よく聞き入れたな・・・奴さんに限らず、あっち側の連中は人間見下してる傾向が強いってのに」

 

 ここで、風見がしばし黙した。

 

 赤井のことを言うべきか、迷っていたが、彼は結局言わずにおくことにしたらしい。

 

 

 

 

 

 ・・・そもそも、同じ元組織の幹部である竜條寺が、赤井のことをどう見ているか、あるいは赤井のもう一つの顔を知っているのか、風見には分らなかった。

 

 そして、どこから赤井のもう一つの顔が、降谷に知られるかわからない以上、少しでもその可能性をつぶしたかったのだ。

 

 赤井秀一は、日本を土足で踏み荒らす異国の捜査官である。

 

 だが同時に、風見にとってはまったくもって理解したくない、異質で冒涜的な分野の住人なのだ。

 

 前者はつぶしたかったが、後者の仕事を邪魔した場合、どんな災厄が降りかかるか、風見にとっては全く見当もつかない。

 

 ・・・だから、非常に不本意ながら、放置せざるを得ないのだ。

 

 

 

 

 

 風見は、自分の知ってしまった分野に関しては、できるだけ周知させないよう努力していた。

 

 基本的に彼の部署の人間は聞き分けのよいものが多かったが、それでも尻の青い新任捜査官などは、好奇心とお節介で首を突っ込んで来ようとするのだ。

 

 ・・・大体その場合、発狂して病院送り、あるいは死亡か行方不明、それでも無事に生き残ったら警察を出奔というパターンが多い。

 

 以前、風見が調べた限りでは、そんな統計が出ている。

 

 冗談ではない。こんな冒涜的分野、かかわるのは風見一人で十分だ。(そして風見自身もかなうなら逃げたい)

 

 

 

 

 

 「どしたー?急に黙り込みやがって」

 

 『何でもない。それよりも、工藤新一とシェリーから、くれぐれも目を離すな。

 

 今回はどうにかなったが、次もうまくいくとは限らん。

 

 こちらで匿えない以上、貴様に保護を一任する』

 

 「言われるまでもねえよ」

 

 風見の言葉に、竜條寺は肩をすくめて答えた。

 

 もっとも、工藤新一こと、江戸川コナンがおとなしく保護されるのをよしとするとは到底思えなかったが。(そして竜條寺もそんなコナンの行動を容認し、アシストする気満々だった)

 

 『それから』

 

 「何だ?」

 

 『降谷さんがお前と橘に会いたがっている』

 

 「断固断る。そして橘も絶対無理だろ。

 

 報告書で我慢するように伝えろ」

 

 『自分の協力者として伝えているのだ。橘は、今回の発見者として事情聴取をしなければならないと』

 

 「やなこった!探り屋バーボンが俺〈アイリッシュ〉のツラ知らないわけねえだろ!

 

 前も言ったが、奴に絡まれるのなんざ、御免被る!

 

 あと、橘がどんだけ公安嫌ってると思ってんだ!絶対罵倒しかしねえぞ?!煙草一パックかけてもいい!

 

 あいつから事情聴取したいってんなら、まずはそれをどうにかしてからにしろ!

 

 ・・・一応警告しておくが、今の俺や橘を犯罪者として拘束しようとしたら、そちらさんが公務執行妨害で訴えられるからな?」

 

 『・・・そうなのか』

 

 「俺たちの業務は年がら年中人手不足なんだよ。

 

 そちらさんと違って、先天的才能がものをいう分野でもあるからな。

 

 それとも、そちらさんが正気と引き換えに化け物退治を頑張ってくださるか?」

 

 『・・・わかった。どうにか降谷さんを説得しよう』

 

 深々としたため息とともに吐き出されたそんな返答とともに、風見からの通話は切れる。

 

 竜條寺もまた、ため息交じりに受話器を電話機本体に戻す。

 

 「こりゃ、下手すりゃ、早めにバーボンが参入してきかねんぞ・・・」

 

 竜條寺と邪神程度しかあずかり知らぬことではあるが、原作よりも早めに、である。

 

 壁に耳ありなので、竜條寺はあえてすべて言ってない。盗み聞きされて首を絞める羽目になるのは1回で十分のはず。

 

 

 

 

 

 バーボンこと降谷に関して言うならば、彼は有能ではあるが、面倒な男なのだ。

 

 竜條寺からしてみれば、あの男はどうにも近寄りたくない。

 

 完璧すぎて、二次元だからこそ存在が許されているような男が、三次元に這い出して来るなど、軽くホラーだ。

 

 ついでに言うなら、能力構成がフィジカル方面に全振りされている竜條寺は、推理や駆け引きがあまり得意ではない。組織時代の経験で多少はできるが、それもあくまで多少の域を出ない。

 

 探り屋の異名を持つバーボンを相手にしたら、転生者の事情や原作知識を丸ごと裸にされかねないのだ。

 

 赤井秀一と相手にするならどちらのほうがマシなのだろうか?根本的には似た者同士なので(基本的に仲良くないくせに)、どちらの相手も御免被りたい。

 

 独り言ちながら、竜條寺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 ・・・後日、フラグでしかなかったな、あれ!と竜條寺が頭を抱えたのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、それから数日後。

 

 コナン君は、我が家に帰還して、普段通りに過ごされています。

 

 ま、それでもやはり元気がなくて、上の空気味なのですがね。

 

 そして、ようやく放送されたそのニュースを見て、彼は顔をほころばせます。

 

 「日原誠人さん、見つかったんだ・・・!よかった・・・!」

 

 おやおや。ずいぶんあっさりなさってますね?

 

 しかし、間もなくコナン君の喜びは、打ちのめされます。

 

 何でも、日原君、組織の連中に相当痛めつけられたせいで、全治何か月だかの重傷だそうですよ?表向きは自力逃走の末、自動車事故に遭っての入院とされてますが、事情を知るコナン君からしてみれば、情報操作乙!としか感じられませんよね?

 

 あっはっは!そりゃ、誘拐されたとなったら、次に待っているのは拷問ですよ?そんなもん受けた人間が無事に済むわけないじゃないですか!

 

 「いや、実によかったじゃないですか」

 

 「どこがだ!」

 

 「だって、あれ、本来は君が受けるものを身代わりにしてくれたんですよ?実際に組織に捕まったらどういう目に遭うか、見本を見せてくれたわけです。

 

 おまけで、別人とは判明したわけですし」

 

 「だからって、あの人が組織に痛めつけられていいわけねえだろ!!」

 

 「え?君、そんなリスク考えずにマスメディア出演なさってたんです?」

 

 「え?」

 

 「いや、君、普段あんなにトリックやらアリバイやら見抜くくせに、何でピンポイントでそこだけ想像力が欠落なさってるんですか。

 

 ホームズ君も、君のようなのが弟子名乗ったら鼻で笑い飛ばしますよ?想像力が足りない、と。

 

 マスメディアなんて、不特定多数に発信するものですよ?顔と名前が売れたら、リターンと同じくらい、下手をすればそれ以上にリスクを被るものです。

 

 君ご本人だけならともかく、その周囲に危害を加えようとか、お名前だけ利用して悪事を働こうとか、いくらでも利用しがいがあるんですから。

 

 一部の芸能人やらアイドルが派手なメイクやサングラスやらをかたくなに手放さないのは、身元を守るためです。必要以上の売名を防止するためです。

 

 日原君なんかは、身をもってそのリスクを証明してくださったわけです♪」

 

 「い、今までそんなこと、なかった!」

 

 「そりゃそうですよ。誰が、ご高名で狂信者を大量に味方につけている、君のご両親を敵に回したいと思います?」

 

 青ざめたコナン君に、私はきっぱり言って差し上げました。

 

 おそらく、彼の周囲が、誰一人として指摘しなかったであろう、現実を。

 

 「ほらほら♡Twi●terの最新トレンド、凄いことになってますよ!

 

 “偽工藤”とか“ざまぁ”とか。“当然の報い”ともあります。

 

 ふむふむ。ハッシュタグ検索してみれば・・・あはは!

 

 東奥穂村もやり玉に挙がっているようですねえ。

 

 “工藤君が推理間違うわけねえだろ!いい加減にしろ!”

 

 “有希子さんが悲しむのでは?有罪不可避!”

 

 “殺人犯二人も出した過疎村の癖しやがって!”

 

 “優作先生の息子さんになんてことを!”

 

 これは近いうちに、観光にかこつけてあの村も荒らされるのでは?

 

 事件を必死に解き明かした工藤新一君に冤罪をかけようとした挙句刺殺まで犯した人間を出した、鬼畜村として、一躍有名になるでしょうねえ!

 

 工藤フリークたちが、勝手に拡散してくださるのではないですか?!

 

 あっはっはっは!愉快愉快!

 

 いやあ、応援してくれる味方が大勢いて、よかったですね!」

 

 にこやかに笑いかけた直後、ばしゃあッと音を立てて、顔面が白に覆われました。

 

 ・・・そこには、空になったコップを持ったコナン君が、心底軽蔑すると言いたげな顔で、肩で息をしながら立っています。

 

 「・・・ごめんね~。手が滑っちゃったぁ、ナイア姉ちゃん!」

 

 こめかみを引くつかせながらも、にっこり笑ったコナン君は、おざなりな謝罪とともにコップを置くと、そのままランドセルを担がれました。

 

 「じゃあ、ボク、学校行ってくるね~。

 

 ・・・くたばれ、クソ邪神」

 

 最後だけ吐き捨てて、コナン君はそのまま出て行ってしまわれました。

 

 やれやれ。牛乳を女性の顔面にぶちまけるなんて、いったいどのような教育を受けられたのでしょうねえ?

 

 まあ、それを言うなら、赤井君ならショットガンで脳髄吹き飛ばしてきましたし。

 

 え?今のはお前が百パー悪い?

 

 落ち込んだコナン君に追い打ちかけて爆笑なんてするからだ?

 

 何を言ってるんですか!落ち込んだ人間に追い打ちをかけない邪神がいると思ってるんですか?!(信じられないものを見る目で)

 

 ・・・私が言ったのはほぼ事実ですし。そして、潜伏という立場をとる以上、コナン君がそれらを止めるのは不可能です。

 

 これが笑わずにいられることでしょうか!いいえ、無理です!笑いますよ!私は!

 

 あーっはっはっは!!

 

 

 

 

 

 

次回を続かせるな!

 

いいや限界だ!続くね!




【基本は傍観主義、傷口に塩を塗り込むのがモットーのナイアさん】
 前回から、待ちに待った赤井さんの来日にwktkしている。
 でもそれを誰にも言うつもりはない。以前のコナン君同様、土壇場でそれを知った面々(特に竜條寺さん)が慌てふためくのを楽しむため。
 ついでに、理央ちゃんのやらかしについても同様。彼女の手は誰かの尻拭いのためにあるのではなく、冒涜的騒動の仕込みのためにある。
 落ち込みモードで帰途についた槍田探偵事務所の面々もこっそり見守る。
 完全勝利!ハッピーエンド!などクソ食らえな精神の持ち主なので、現状は文字通りの愉悦&爆笑物でしかない。
 NDK?NDK?
 コナン君と七槻さんの言い争いももちろん聞いてた。そうそう、竜條寺君に時津君についての補完してもらわないとね!( ..)φメモメモ。
 翌日、テレビを見ながら落ち込むコナン君に、さらなる追い打ちをかける。
 過激派工藤フリークは、割と有名。あの一家を敵に回す=あの連中を敵に回すということ。工藤新一単品を恐れられてたとか、正義感に駆られてとか、そんなことありえないから。
 お前単品なんか、両親のおまけでしかねえんだよ、と遠回しに言って、新一君の無自覚コンプレックスを盛大に踏み抜いた。
 したら、牛乳ぶっかけられた。正論しか言ってないんだけどにゃ~。おかしいにゃ~。
 相変わらずのクソ邪神ぶり。くたばれとまで言われても、ニヤニヤしている。
 好かれるにしろ嫌われるにしろ、意識してもらっているというだけで、テンションを上げられる、ストーカーのような思考をしている。
 無視した場合は、何で無視するんですかー?!アピールが足りないのですかー?!と手段がエスカレートする。どうしようもない。

【冒涜的事件に関わってないにも拘らずSANが減ったであろうコナン君】
 いまだかつて、彼が関わった事件でここまで後味が激烈に悪いものがあったであろうか?多分、ない。
 原作では、おそらく月影島の一件(7巻『ピアノソナタ“月光”殺人事件』のこと)で、いろいろ考えるようになったのだろうが、本シリーズでは未経験。その分、周囲にいろいろ言われ、邪神様に指摘された分、自分でもいろいろ考えるようになりました。
 アヤさんの時に言いましたが、コナン君って実年齢は17歳ですよ?高校生なんですよ?色々問題視されてますけど、彼の実年齢であれだけ出来たらかなり上等な部類に入ると思うんですがね?
 ついでに言うなら、今回の事件(62巻『殺人犯、工藤新一』)も、本来ならもう少し救いのある終わり方してたのに、このざまです。ハードモードですから。
 原作のあの村、あれからどうしたんでしょうね?多分、あそこでは工藤新一は嘘つきって憎まれて誤解されたままなんだろうな・・・新一君は多分気にしてないのでしょうが。自分一人が泥かぶって誤解されたままでほかが救われるならいいや、とか?やっぱ、原作ってすげえな。
 原作との違いは、死者が出て、新一君が隠したがった事実が暴露されて、誠人君も大樹君も精神に大打撃食らってますし。バタフライエフェクトェ・・・。
 ここまで何もできずに、やることなすことすべてが後手後手に回ったのは、おそらく初めてだったのではなかろうか?
 それも、元をただせば、彼が推理の結果を誠人君にきちんと伝え、アフターフォローもしっかりしておけば・・・と自責の念に駆られてもおかしくない。
 落ち込んでも仕方ないのは分かっている。もう自分にできることがないのもわかっている。
 ・・・正論だけじゃ、人は動かないのもわかっている。七槻さんにひどいこと言っちゃったな。
 後日、ニュースで日原誠人君の行方を聞いて、生きてた!とほっとしたが、すぐにまた落ち込んだ。重傷なんだ・・・障害残るかもしれないんだ・・・工藤新一の事情に巻き込んじゃったんだ・・・。
 そして、さらに邪神に追い打ちかけられる。
 無自覚コンプレックスを攻撃されたら、17歳のチャキチャキ江戸っ子は怒るに決まってる。
 ・・・工藤フリーク云々の事情のあたりは捏造ですが、原作コミックス95巻『マリアちゃんをさがせ!』あたりを見ていると、やらかしかねないなーとうっすら。
 それでも立ち上がるのは確定的に明らか。なぜなら彼は、名探偵コナンなのだから。






Q.結局、日原誠人君と、日原大樹君、どうなるんです?

A. 大体は文中で書いてる通りですが、拷問にかこつけて日原誠人君は余計な事(シェリーとか薬とか)を見聞きしてしまいましたから、かえって連中の抹殺リストに加えかねられないという、気の毒ぶりです。

誠人君は、放心状態でろくに話も聞けませんが、拷問されたというシチュエーションから、おそらく公安の保護は確定したでしょうね。顔はまずいから元に戻すのは確定として。・・・あと、すでに語ってはいますが、車いすは確定です。

大樹君は邪神様も語った通り、城山巡査の下で静養するか、本格的施設で療養するか。ただ、彼を支えられる唯一の身内となる誠人君は公安の保護を受けなければならないので、二度と会えなくなりました。
・・・まだ幼く若い少年ですし、村の人たちも気にかけてくれるなら大丈夫では?

拷問男?神話生物や赤井さんとインパクトした辺りの記憶は、魔術でいじられて思い出せなくなっています。そもそも、彼も放心状態でろくに話が聞けませんがね。
彼についても、公安に確保された組織の接触者たちのその後も併せて、やっていきたいですね。

Q.四井グループって・・・?

A. 原作登場は9~10巻『資産家令嬢殺人事件』から。
ぶっちゃけ、あの事件や2年前の水難事故のことが表ざたになったら、四井グループって大打撃を食らいそうです。
だったら、その前にもみ消しそうな人員(時津君です)配置しちゃえば、バラ色だよね!と。・・・バラは枯れるものですよ?
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