邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 #27で極高死亡フラグが建築された服部平次君。
 アヤさんの時はほとんど出番なくて、本作は群像劇っぽいから参入させようと思って、どうしようかな~っと思った挙句こうなりました。
 ・・・予想以上に困ったちゃんな感じになって、亜希羅困っちゃう。
 いずれにせよ、邪神様は笑って出歯亀なさる気満々のご様子ですが。
 併せて怪盗キッドもミックス。難しいし、彼もお気に入りだからこそいじりたくなかったという裏事情があるのですが・・・やっていきましょう!
 竜條寺さん、多分前世は『まじっく快斗』もフォローなさってたんじゃないですかね?


【#39】VS怪盗キッド。2人目の転入生・青島裕二君を添えて

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 いやー、やはりこの街は最高ですね。

 

 つい先日など、抱腹絶倒大爆笑の事件がありまして。

 

 概要だけ語っておくと、工藤新一君の偽物が出てきた事件で、偽物と、1年前の事件の真実を知ってしまった少年がメンタルブレイクしました☆

 

 時津潤哉君は、実にいい仕事をしてくれました!

 

 さらに、時津君に一同が気を取られていたら、その隙を突かれて、工藤新一君の偽物はさらわれて、拷問受けちゃいました☆

 

 間一髪で赤井君が助けてくれたのですがね。ついでにそこにいたミ=ゴとインパクトしたせいで、拷問男も発狂していました。可哀そうに(ニチャァッ)

 

 そして、マモレナカッタ・・・となったコナン君が落ち込んだのも、周知の事実です。

 

 え?私ですか?そりゃもちろん、ニコニコ印の追い打ちをかけて差し上げましたが?

 

 何なんでしょうねー?私としては、正論しか言ってないと思ったのに、なぜかコナン君からは汚物でも見るような目で見られた挙句、牛乳ぶっかけられて「くたばれ」と言い渡されてしまいました。

 

 育ちの割にあまり口がよろしくないというのは存じておりましたが、ああまでストレートにおっしゃられたのは稀ですねえ。

 

 ま、面白いものが見れましたし、彼の無礼は許して差し上げましょう。

 

 私ってば、何て深い懐の持ち主なのでしょう!皆さんも称えてくださってよろしいのですよ?!(ドヤァッ)

 

 え?寝言は寝て言えクソ邪神?

 

 んもう!皆さんが素直じゃないのは存じてましたが、それはあんまりなのでは?

 

 そのようなことばかりおっしゃられていると、今起こっている面白そうなことについて教えてあげようという気がそがれてしまうでしょう?

 

 え?面白そうなことって何だって?

 

 そりゃ、皆さん!きっと、お待ちかねにしてた方もいらっしゃるのでは?少ぉしいじって、方向性を調整してあげた、あの子ですよ♪

 

 フフッ。

 

 面白そうな事件が目白押しで、それを眺める目も、実況する口も忙しいというのに、きちんと経過観察してたんですよ?

 

 どうなったんでしょうねー?とね。いやあ、とっても面白いことになりました♪

 

 さて、コナン君。落ち込んでる暇はないですよ?楽しんでくださいね♪

 

 

 

 

 

 それでは、冒頭邪神トークはこのくらいにして、本編に行ってみましょうか!

 

 始まり始まり~!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 大あくびをかみ殺しながら、江戸川コナンは椅子に座っていた。

 

 帝丹小学校1年B組の教室。いつもの席にいつも通り、である。

 

 少々寝不足だが、授業は出なければならない。

 

 手元にあるのは、破いた紙をつなぎ合わせ、それをコピーしたかのような紙である。

 

 そこに書かれているのは、少々キザったらしい言い回しで書かれた、窃盗予告、である。

 

 

 

 

 

 先日、行った槍田探偵事務所で、槍田が苦笑交じりに「見てみる?」とコピーしてくれた紙である。

 

 何でも、槍田が以前依頼で鈴木財閥が絡んだ事件を解決しており、それ以降、奥方である鈴木朋子に非常に気に入られたそうだ。

 

 そして、そんな朋子がいら立ちを隠さずに持ち込んできたのだ。

 

 盗人猛々しく、我が家の家宝を荒らすなど言語道断、予告状の暗号を解いて、怪盗気取りの犯罪者を捕まえてくれ、と。

 

 

 

 

 

 多分、槍田はコナンがこの間の東奥穂村の事件のことで落ち込んでいることを知っている。

 

 そして、少しでも気分転換になればと、渡してくれたのだろう。

 

 血生臭さや、殺意・憎悪といった負の感情からは縁遠いであろう、しかし探偵としては興味をそそられてたまらない――極上の謎を。

 

 

 

 

 

 紙は、彼女の夫であり、現財閥会長である鈴木史朗が怒りのあまり破いてしまったものだが、怪盗の名前の部分以外はどうにか読める。

 

 読めはするのだが・・・いかんせん、コナンの頭脳をもって、一晩にらめっこしたにもかかわらず、いまだに解けていない。

 

 「コナン君、何読んでるの?」

 

 「あー・・・えっと、怪盗?大泥棒?何かそんな奴からの予告状、らしいぜ。

 

 槍田お姉ちゃんが、見たかったらいいよって、コピーしてくれたから。

 

 お前も見てみるか?」

 

 話しかけてきた知史に、コナンは苦笑交じりに応えて、紙を見せる。

 

 「何々?」

 

 「かいとーからのよこくじょー?すっげー!本物?」

 

 「なんか、汚くねえか?これ」

 

 すると、知史以外のクラスメートが興味津々という様子で口々にそう言いながらのぞき込んできた。

 

 「コナン君、これ、なんて書いてあるの?」

 

 「英語もあるし、漢字がいっぱいだぜ。こんなの読めねえよ」

 

 困ったようにコナンを見てくるクラスメートたちに、ああ、そういえばとコナンは思い至る。

 

 

 

 

 

 ここにいるのは、みんな小学校1年生なのだ。読める漢字も、簡単なものに限定され、それすら危うい。足し引き算がやっとで、掛け算割り算に至っては未習だ。

 

 コナン――新一は、同年代より頭の出来がずば抜けていたから、このころにはすでに一通りの漢字の読み書きどころか、英語すら理解できた。シャーロック・ホームズを原文読みし始めていた。

 

 当時の新一は不思議に思ったものだ。何でこんな簡単なことが、みんなにはわからないのだろう?と。

 

 ・・・そこに嘲りや見下しはなかった。ただ、単純に不思議だったのだ。

 

 自分の頭の出来が、周囲と違うのかもしれない。うすうすとした予感が、確信に迫りつつあった時期でもあった。

 

 

 

 

 

 しかし、今のコナンは、見た目はどうあれ、中身は17才だ。

 

 彼らに合わせ、事情を誤魔化すのは、簡単だ。

 

 「ああ。読み方は槍田お姉ちゃんから教わったから、わかるよ。

 

 読むぜ。“April fool 月が二人を分かつ時、漆黒の星の名の下に、波にいざなわれて、我は参上する”」

 

 途端に、周囲から感心したようなため息が漏れだす。

 

 「すっげー・・・」

 

 「なんかかっこいいな!なんていうんだっけ?怪盗?」

 

 「ええっと・・・1412号って聞いたかな?」

 

 「せんよんひゃくじゅうにごう~?かっこわるい・・・」

 

 ワイのワイのと騒ぎだす周囲を、コナンは苦笑気味に見やる。

 

 その時、朝のホームルームを告げる予鈴が鳴った。

 

 「あ・・・」

 

 「コナン君!あとでまた予告状、見せてね!」

 

 「オレ!オレにも!」

 

 「ずっりぃぞ!オレだって!」

 

 言いあいながら、クラスメートたちは自分たちの席に戻っていく。

 

 コナンも予告状をしまい、教科書を出した。

 

 ・・・一度勉強した内容といえど、まじめに勉強しているふりくらいはしなければならない。

 

 「は~い!みんな席について~!」

 

 出席簿を持った、小林教諭ががらりと引き戸を開けて、教室に入ってくる。

 

 

 

 

 

 授業中は厳しく、浮ついた子供がいれば容赦なく叱り飛ばす鬼教師――という、彼女の偽装は、ある日あっけなく崩壊した。

 

 授業参観で、立って移動する途中にこけた女生徒を、慌てて助け起こし、それ以降はペースが乱れたかしどろもどろで授業を進めることになってしまったからだ。

 

 ひどいあがり症らしい。加えて、そんな様子から彼女が子供たちにあっという間に懐かれたのも、当然の結果ともいえた。

 

 

 

 

 

 無邪気なクラスメートと、厳しく見えて、実は優しい担任教師。

 

 かつて友達になってくれようとした3人は失ってしまったけれど、時間は人の心を癒す一つだ。

 

 いつの間にか腫物扱いはなくなり、彼らは、コナンのささくれだった心を癒すようになってくれていた。

 

 

 

 

 

 「今日は、転入生がいます!さあ!入ってきなさい!」

 

 またか、今の時期に珍しいな、とコナンが目を瞬かせるのをよそに、小林教諭に促された、彼はランドセルを背負って、入室してきた。

 

 角を思わせる跳ねた黒髪に、色黒の肌に、生意気そうな青みがかった瞳。背丈は若干コナンより、高いだろう。

 

 「はっと、やない、青島裕二、いいます。よろしゅう頼んます」

 

 たどたどしく名乗る少年のイントネーションからして、関西圏の出身らしい。

 

 「変な言葉~!」

 

 「何、今の言い方?!ダッセ!」

 

 「こらっ!何てこと」「今何言うた?!」

 

 かつてコナンのキラキラネームをはやし立てた子供たちが、同様に少年の言葉遣いをはやし立て、小林教諭がそれをたしなめようとしたが、それをさえぎって少年が唸った。

 

 眉を吊り上げ、歯を見せて怒る様に、思わず誰もが浮かべていたであろうクスクス笑いを、引っ込めさせた。

 

 「オレの言葉遣いが変やと?

 

 ほんなら、関西に住んどる奴は全員変なんか?!外人のしゃべる外国語も変なんか?!

 

 嘗めるんやないで!!クソガキども!!」

 

 ビリビリと空気が震撼する。少なくとも、コナンはそう感じた。

 

 ・・・小学校1年生が出すレベルの、怒気ではない。

 

 

 

 

 

 静まり返った教室を一瞥し、青島裕二と名乗った少年はふんと鼻を鳴らすと、そのままヅカヅカと机の間を歩いていき、コナンのすぐ横に立つ。

 

 「お前が江戸川か」

 

 「・・・そうだけど」

 

 わきから値踏みされるように見降ろされ、コナンは少々居心地が悪そうに身じろぎした。

 

 何なんだ。この少年は。

 

 見覚えは・・・あるような、ないような。どこか、引っかかるようなものが、あるような気はするのだ。だが、肝心のそれが何なのか、コナンの優秀な頭脳をもってしても、思い出せない。

 

 「ええか?ずいぶん調子に乗っとるようやが、見ておけ。オレんが凄腕の探偵ってことを見せたるからな」

 

 「はあ?」

 

 鋭い目と不敵な笑みでいきなり宣戦布告され、コナンはそんな間の抜けた声しか出せない。

 

 「はい!それまで!青島君は、奥の席、湯川さんの隣に座ってね!」

 

 「は~い。すんません、せんせ」

 

 どうにか気を取り直したらしい小林教諭がパンパンと手を叩くと、青島はニカッと人好きする笑みを浮かべ、そのまま指定された席について、ランドセルを下ろす。

 

 「よろしゅうな」

 

 「・・・ええ」

 

 にこにこと笑いかけられるが、理央は普段通りに・・・よく言えばクールに、悪く言えば不愛想に、答えた。

 

 「それじゃあ、出席を取ります!」

 

 出席簿を開いて、生徒の名前を呼ぶ小林教諭をよそに、コナンは首をひねった。

 

 ・・・湯川理央といい、転入生多すぎやしないか?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 どうやら、コナン君は“彼”と接触したようですね。

 

 さぁて、どう転ぶか楽しみですね。

 

 とはいえ、今は目の前の事態に対応しましょうか。

 

 ようこそ、『九頭竜亭』へ。歓迎しますよ、竜條寺君。

 

 「何なんすか、このやっべー店・・・」

 

 「おや、わかりますか?コナン君もお気づきになられているようで、本が好きなくせに、この店の本棚には絶対お近づきにならないんですよねえ」

 

 入店なさるなり、青ざめてそうこぼされた竜條寺君に、私は首をひねりながらそう返しました。

 

 多分、彼は魔導書の気配を察知してしまったんでしょうねえ。

 

 「・・・そりゃ、見るやつが見たら垂涎ものなんでしょうがね。

 

 あいにく俺はまっとうに長生きしたい方なんで、遠慮したいんですよ」

 

 鼻を鳴らすようにそうおっしゃられる竜條寺君に、ガサリッと奥の本棚が不服そうに音を立てました。

 

 本というのは、知識を保管し、それらを広めるためにありますからね。自らのアイデンティティを否定されたら、不服も申し立てられるでしょうねえ。

 

 

 

 

 

 「で?俺に訊きたい事ってのは?」

 

 「君、時津潤哉君についてご存じですか?」

 

 「一応。・・・夢の範囲でって話ですよね?」

 

 「ほかに君を呼び出す理由、あると思います?」

 

 「・・・ない、はずですよね?」

 

 「おや、理由が欲しいんですか?ふむ、それなら」

 

 「なしで!なしでお願いします!さっきも言いましたけど、俺はまっとうに長生きしたいんです!」

 

 何ですか、ノリが悪いですねえ。

 

 あ、ショゴスさん、お茶をお願いしますよ。茶葉は・・・そうですねえ、たまには、ピーチのルイボスティーでお願いしますよ。

 

 竜條寺君はどうされますか?あいにく、コーヒーはインスタントしか置いてないのですが。

 

 「俺も、同じのでお願いします。あと、冒涜的なものは抜きで」

 

 「まさか。お客様も飲むのですから、飲食物にはそういうものは混ぜないことにしているんです。私は食屍鬼〈グール〉や、食人趣味のある方々とは違いますので。

 

 にしても意外です。君は、こういうフレーバーティーの類はお嫌いかと思ってました」

 

 「いや別に。好物はありますけど、基本、飲み食いにこだわりはないので。

 

 ・・・おなかいっぱい食べられるって、幸せなことなんですよ。

 

 まともなものが食えるってだけありがたいのに、好き嫌いなんざクソのやることだって学習したんです、昔」

 

 ふっと、竜條寺君が遠い目になられます。

 

 ふむ?ひょっとしたら、以前所属なさっていた犯罪組織に入るよりも大昔、ピスコ君に拾われる以前のことを思い出されているのでしょうか?彼も苦労なさってたんですねえ。

 

 「と、時津潤哉に関して、でしたか」

 

 「ええ。君の夢で、彼はどんな感じでしたか?」

 

 気を取り直して尋ねてきた彼に、私はうなずいて話を促しました。

 

 「と言われましてもね・・・俺も、見た夢に多少ムラがあるので。

 

 ・・・あいつが、越水はともかく、槍田と関係があったってのには、むしろ俺の方が驚いてるんですがね?」

 

 「そうなんです?」

 

 「越水と、槍田は基本、別々の事件に一回こっきり出てきたっきりなんすよ。

 

 で、越水が出てきた事件の被害者が時津なんすよ」

 

 ふむふむ。

 

 その後、竜條寺君から七槻君と時津君が出てくる事件と、槍田君が本来出てくる事件を別々に聞き出しました。

 

 ふうむ。しかし、後者はともかく、前者は関わるのが絶望的かもしれませんねえ。

 

 だって、事のきっかけとなる“彼”が、あれですからねえ。

 

 ま、そうなるかもしれない、と思いはしたんですが、その前にこの世から退場なさる可能性の方が高いと思ってたんですよ?

 

 いや実に面白いことになりましたよね!まさしく、事実は小説より奇なり、ですよ!

 

 

 

 

 

 「・・・あの、一つ、質問いいっすか?」

 

 「どうぞ」

 

 おずおずと尋ねてきた竜條寺君に、ルイボスティーで喉を潤しながら私はうなずきました。

 

 ま、正直に答えるとは一言も言ってないんですけどね☆面白くなりそうな返答ならしてあげますよ♪

 

 「・・・大分前に、ちょっとある事件に同席したんすよ。

 

 あれ、夢の通りだったら、西の高校生探偵を名乗る、服部平次ってやつが来るはずだったんですが・・・何かご存じないっすか?」

 

 「ほう?ちなみにどのような事件でした?」

 

 「・・・タイトル名は『外交官殺人事件』。コナンが風邪をひいてる最中にぶち当たって、あいつは偶発的に元の姿に戻ったから、工藤新一としてフェイクに引っかかった服部平次の推理を訂正し、正しい犯人を探り当ててます」

 

 ほうほうほう。

 

 “風邪をひいているさなか、偶発的に元の姿に戻る”、ですか。

 

 いや~、どこかで聞いたようなシチュエーションですねえ。(キラキラした笑顔で)

 

 「いえ、存じ上げませんねえ」

 

 「おい、【言いくるめ】失敗してんぞ、クソ邪神。百パーセント嘘です笑顔やめーや」

 

 速攻でツッコミを入れてこられる竜條寺君をよそに、ちらっと私は時計を確認します。

 

 ふむ♪そろそろですか。

 

 「まぁまぁ、答え合わせも結構ですが、お茶を楽しまれてはいかがです?

 

 ショゴスさんの作った、ブラウニーもおいしいですよ?」

 

 「・・・さっきから思ってたんですけど、ショゴスって」

 

 「見ます?彼女の本性」

 

 「想像しただけで精神力が削れたんで勘弁してください」

 

 青ざめた顔で首を振る竜條寺君は、自己申告通りSANチェックされたようです。若干数字も引かれたようです。よかったですね♪

 

 「・・・あいつはよくこんなところで生活できるもんだ」

 

 「いやー、さすがは主人公ですよね。SANもオリハルコンマウンテンじゃないかって疑いがあるんですよね、彼に関しては」

 

 ま、オリハルコンマウンテンの疑いがあるのは、他にお二人ほどいらっしゃるんですがね。

 

 「あ、うまい・・・」

 

 「でしょう?」

 

 ブラウニーを口に運んで目を瞠った竜條寺君に、にっこり微笑んで見せます。

 

 「てけり・り♪」

 

 ルイボスティーのポットを片手に、得意げに微笑まれるショゴスさんに、しかし竜條寺君はすぐに顔を引きつらせて、「やっぱそう言うのか・・・」と呻かれています。

 

 「ただいま~」

 

 「おや、お帰りなさい、コナン君」

 

 ランドセルを背に、どこか疲れた様子のコナン君が、のれんをくぐります。

 

 「今日の学校はいかがでしたか?」

 

 「・・・何で今日に限ってそんなこと訊いてくるわけ?」

 

 「おや、保護者が養い子を気にしてはいけませんか?」

 

 「はっ、臍で茶が沸かせんぜ、クソ邪神」

 

 せっかくお尋ねしたというのに、ジト目で疑り深く見上げてくるコナン君と、鼻で笑う竜條寺君。

 

 あんまりじゃありません?

 

 え?お前は日ごろの言動を鑑みてからものを言え?

 

 皆さんまでひどい!

 

 「そんじゃ、俺はそろそろお暇させてもらうぜ。ごっそさん。旨かったぜ」

 

 「てけり・り♪」

 

 「あ、竜條寺さん、槍田探偵事務所に行くなら、ボクもつれてって!

 

 ちょっと待ってて!今部屋にランドセル置いてくるから!」

 

 ブラウニーの乗っていた皿とティーカップを空にした竜條寺君が立ち上がると、ショゴスさんが礼儀正しく一礼し、コナン君が慌ててランドセルをもって奥のプライベートスペースへ向かいます。

 

 ほとんど間を空けずに、コナン君は戻ってきました。

 

 「じゃあ、ナイア姉ちゃん、行ってきまーす」

 

 「・・・しょうがないですねえ。遅くなるようなら、連絡してくださいね、コナン君」

 

 ぱたぱたと出て行ったコナン君と、「邪魔したな」と短い辞去の挨拶とともに、竜條寺君が出ていきました。

 

 ・・・本当に、しょうがない子ですよねえ?

 

 せっかく、初日の感想をお聞きしたかったというのに。

 

 ま、今日は許してあげましょうか。

 

 

 

 

 

 お楽しみは、これからなんですから。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 「ねえ、竜條寺さんは、怪盗1412号って知ってる?」

 

 槍田探偵事務所へ向かう道中、竜條寺の愛車であるシルバーのスバル・レガシィに揺られながら、コナンは尋ねた。

 

 「ああ?1412号って、紛らわしい呼び方すんなよ。それよか、世間的に通ってる名前があるから、そっちで呼んどけ」

 

 「何だそれ?」

 

 「・・・お前、本当、自分の得意分野以外興味の範疇外なんだな?

 

 ま、ホームズも地動説知らなかったらしいから、らしいっちゃらしいが」

 

 「悪かったな」

 

 むっすりと言ったコナンに、竜條寺は小さく笑う。

 

 「ある作家がな、走り書きされた1412の文字を見て、洒落てこう読んだんだよ。

 

 K、I、D・・・人呼んで、怪盗キッド、てな」

 

 「怪盗キッド・・・竜條寺さんは、知ってるの?」

 

 「知らねえな。俺の前職考えてみろ。泥棒に意識割く時間があったら、より効率の良い人殺しと人騙しの方法を考えさせられたもんだ」

 

 「・・・ごめんなさい」

 

 竜條寺の苦々しげな言葉に、コナンは気まずげに謝った。

 

 「気にすんな。どっちかっていうと、詳しいのは敦子の方だな」

 

 「そうなの?」

 

 「ファンというより、趣味考察勢って感じだな。

 

 ・・・新聞に載った怪盗の予告状をクロスワード感覚で解読してるの、あいつくらいじゃないか?」

 

 「ええ・・・」

 

 竜條寺の言葉に、コナンも呆れ声を出した。

 

 「あ、じゃあ、今回の予告状は?」

 

 「今回は新聞には未掲載だったろ?ま、槍田も敦子が怪盗の情報を集めているって知ってたから、よかったら解いてみるかと予告状のコピーよこしてきたらしいからな。

 

 ・・・執筆そっちのけで解読に没頭してるだろうよ」

 

 「・・・そっちのけって・・・締め切り大丈夫?」

 

 「どうせ間に合わなくて徹夜する羽目になるだろうな」

 

 苦笑するように言った竜條寺は、続けて話す。

 

 「ちなみに、怪盗考察勢の敦子が言うには、今の怪盗は2代目なんじゃないかってことだ」

 

 「そうなの?」

 

 「元々、怪盗キッドは世界各地で、ビッグジュエルを専門に窃盗を行っていたんだ。

 

 それが、8年前に突然活動を休止。最近になって活動を再開したんだが、その当時は妙だった、らしい」

 

 「妙?」

 

 「ウォーミングアップかのように、ちんけな宝石窃盗から、絵画、古代の宝飾品と、有名どころを手当たり次第という感じだった。手段も稚拙だったらしい。

 

 そして、ブルーバースデーというサファイアの窃盗から、本格的にビッグジュエルの窃盗に乗り出した。その頃には、復活前とほぼ同等の腕前になってたそうだ。

 

 加えて、復活してからは日本を中心に活動をしている。

 

 同一人物というより、後を継いだと考えた方が自然なんじゃないかってな」

 

 「フーン・・・復活前と別人なら、年齢とかが違ってても、おかしくないか・・・」

 

 顎に手を当てて考え込むコナンに、竜條寺は小さく笑う。

 

 「んで?暗号は解読できたか?名探偵」

 

 「・・・誰に向かって言ってんだよ」

 

 不敵に笑うコナンに、竜條寺はさすが、と小さく口笛を吹く。

 

 しかし、すぐにコナンは不機嫌そうに眉をしかめる。

 

 「どうした?」

 

 「なあ、竜條寺さんの夢に、“青島裕二”ってやつはいないか?」

 

 「はあ?誰だそりゃ」

 

 唐突に話題を変えてきたコナンの問いに、竜條寺も聞き返す。

 

 「転入生だよ。今日1年B組に入ってきた」

 

 「転入生?湯川以外に?どんな奴だ」

 

 「んー・・・色黒の関西出身。あと、手の胼胝の位置から、剣道をしてる。

 

 それから・・・竜條寺さん?」

 

 ここでコナンは竜條寺の異常に気が付いた。

 

 彼は、青ざめて顔を引きつらせていた。

 

 「1年・・・B組に・・・?」

 

 「ああ」

 

 怪訝に思いながら、コナンはうなずいた。

 

 「変な奴なんだよなあ。

 

 いきなりオレに突っかかってきたんだぜ?“自分の方が凄腕の探偵だってことを見せてやる”とか何とか。

 

 怪盗キッドの予告状も、休み時間に話を聞きつけるなり、どっちが早く捕まえられるか勝負だ!とか言い出しやがるし」

 

 「そ、そうか・・・」

 

 ここで竜條寺はしばし黙した後、恐る恐るという様子で言った。

 

 「多分、お前の保護者なら、全部知ってると思うぞ?

 

 俺も、半信半疑ってところだからな・・・確信が持てねえんだよ」

 

 「保護者って・・・また何かやらかしたのか?!あのクソ邪神!

 

 いや、待てよ?

 

 今日帰ってくるなり、いつもはしてこない質問をしてきたってことは・・・!」

 

 ハッとしたコナンに、竜條寺は重々しく頷いた。

 

 「十中八九、知ってるんだろうな。

 

 で、そのうえで面白がってるんだろ。そういう奴だからな、あれは」

 

 「あいつが面白がるってことは・・・どっちだ?!どっちの関係者なんだ?!」

 

 冒涜的か、まともか。あるいは、組織関係か、それ以外かという区分ができる。どちらにしても、ろくでもないのは確かだ。

 

 「・・・本人に確認してみたらどうだ?青島ってやつに」

 

 「バーロォ!どんな爆弾抱えてるかわからねえのに、そんなリスク冒せるか!」

 

 だよなあ。

 

 問題ばかりが詰みあがる。何でこんなことになったんだ。

 

 竜條寺は遠い目をした。

 

 

 

 

 

 いくら、彼がかつては積極的に物語に関わるつもりなく、できればドロップアウトしたかった根性なしであろうと、普通転生者が関わることになった話というのは、大体イージーモードで話が進むはずなのに。(下手をすれば原作主人公がドロップアウトとなろうと)

 

 これではまるでハードモードではないか。誰だ、シナリオライター。否、どんなシナリオが用意してあろうと、邪神がわきから赤ペン入れるのであれば、ハードモードも無理はないだろう。

 

 

 

 

 

 「・・・ま、いいや。

 

 青島については、あんまり気にしないでおく。下手にちょっかい出したら、自爆しそうだし。

 

 何かあるなら、向こうから言ってくるだろ?」

 

 「賢明だな。着いたぞ」

 

 言って、竜條寺は車のエンジンを落とした。

 

 

 

 

 

続きじゃ~!続きを恵んで、下されよ~!




【某人物の参入にwktkなさるナイアさん】
 前回の胸糞悪さMAX案件もヘラヘラして、まだ余韻でニヤニヤしている。
 実は、とある人物のことを、ちょくちょく様子見していたらしい。その人物も、彼女がいじくった結果待ちをしていた様子。
 そして、その人物がコナン君と接触したと察するなり、帰宅した彼にどうだった~?と聞いてみる。
 ・・・日ごろの言動から、まともな返答が返るわけがないのに。
 前回予定立てした通り、時津さんのことを訊くべく竜條寺さんを『九頭竜亭』に呼び出す。
 一応古本屋である『九頭竜亭』は、以前も記したとおり、一般的な古書に交じって邪神様お手製の魔導書が何冊かおかれている。
 竜條寺さんのような探索者(いわゆる耐性持ち)だと、その気配を察知してしまう。そして誘惑に抗えず目を通してしまう場合もある。
 当初の予定通り、時津さん(&七槻さん)の事件と、おまけで槍田さんの事件を聞き出す。
 槍田さんの事件は攻略本には一応載っているが、情報の誤差がないか、すり合わせに聞きだした。
 前職が前職の竜條寺さんも、昔苦労してたんだね。特に食べ物関係に。
 ・・・なお、まっとうなものを飲食しているというが、仕込みに必要だと判断したら、容赦なく冒涜的なものも飲み食いする。(番外編#ε参照)
 帰宅と同時に、出かけてしまったコナン君にちょっぴりしょんぼり。
 帰ってきたら、今日の感想訊かないとな~。
 怪盗キッドについて彼女がどう思っているか、今回彼女が気にかけていた人物などについては、次回に!

【小学校のクラスメートたちと新たな謎に心癒され、謎転入生に振り回されそうなコナン君】
 前回の事件は散々だった。後手後手回るし、隠そうとしたことは暴露されて、誠人君は人違いで誘拐されて、挙句保護者邪神には追い打ちをかけられて、おでのこころはぼどぼどだぁ!
 そんな彼を見かねたか、槍田さんがよこしてくれた怪盗の予告状に、興味津々。
 名探偵にとって、謎解きは一番の特効薬。(原作における某事件では口内炎の痛みもなくすほど)
 加えて、学校では無邪気なクラスメートたち(原作少年探偵団ほど距離は近くないものの)や、あがり症があるが心優しい小林先生などに囲まれて、心癒される。
 ・・・4歳の時点で子供向けになっているとはいえ、ホームズを読んでいたとは、やはり彼はギフテッドなのでは?多分、通常の子供は、もっと優しい絵本が限界と思うのですが。
 そして、やってきた新たな転入生の青島裕二少年に首傾げ。何か、どこかで見たような、そうでもないような。
 と思ってたら、いきなり宣戦布告され、挙句怪盗の予告状のことを聞きつけられるや、どっちが先に捕まえられるか勝負だ!と言い出された。
 ・・・なお、彼はそれを受けて立つとは言っておらず、一方的に言われただけである。
 正直、何だコイツ感がぬぐえない。
 そして、帰宅するなり、保護者邪神が普段は絶対訊いてこない学校の様子を笑いながら尋ねてきた。
 どういうつもりだ?今度は何を企んでいる?
 それも気になるが、予告状の暗号の答え合わせもしたいから、多分同じように解けているだろう槍田さんたちのところに行ってこようっと!
 竜條寺さん、連れてって!…また、邪神に何か脅されてたのかな、この人。
 車中で、怪盗キッドの情報について、竜條寺さんにいろいろ聞く。
 まだ見ぬライバルについて、今のところ興味は大きい。・・・たぶん、青島少年よりも。
 ついでに、青島少年について、竜條寺さんに相談した。
 夢には出てこないって言いながらも、竜條寺さんの顔色がおかしい。
 え?!やっぱあの邪神が絡んでんの?!ヘタに藪を突くのもやばいし・・・とりあえず様子見で!

【謎転入生第2号だけど、理央ちゃんほどミステリアスじゃない青島裕二君】
 色黒。関西弁。コナン君の観察眼によると、胼胝の位置から剣道をしている。
 なぜかコナン君をライバル視して、自分の方が凄腕の探偵だと言い張る。
 正体は、大体お察し。詳しくは次回以降で!
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