邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 あの世界、コナン君の行動範囲と出会う人種に偏りがあるせいか、推理力が高い人物が結構ごろごろしてますよね。
 怪盗キッドの予告状も、きっとそういう人たちならさらっと解けちゃうんじゃないかな。
 メインは、江戸川コナンVS青島裕二の口喧嘩ですがね。・・・ぶっちゃけ、青島君は、ありえていたかもしれないコナン君の未来像でもあります。
 原作のコナン君は、本当に運もよかったと思うんです。夢小説とかでやってるみたいに、公安で保護とかだったら安全かもしれないけど、多分好奇心と行動力に満ち溢れたコナン君の精神が死んでた。(そして多分、組織はつぶれない。主人公の力がないので)
 公安に保護されてたら、事件に出会う、参加する機会をことごとくつぶされて、大人がやってるのを歯噛みしながら見てるしかできない。口挟んでも素人ガキは黙ってろっていなされるだけ。暗躍に用いれそうな探偵グッズも手に入らなかっただろうし。正しくはあっても、納得できるかは別問題だし。
 ・・・やっぱ、原作ってすげえな!


【#40】VS怪盗キッド。青島裕二君の正体について

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 コナン君も通う帝丹小学校1年B組に転入生がやってきました♪

 

 関西弁をしゃべる色黒の少年は、名前を青島裕二君といいます。彼は、転入早々にコナン君にライバル宣言をなさり、挙句コナン君がお持ちになられていた怪盗キッドからの予告状を見るなり、どちらが先に捕まえられるか勝負だ!などと言い出されたりしています。

 

 ま、肝心のコナン君は、変な奴・・・近寄らんとこ・・・(((((゚ω゚;)となられたようですが。

 

 そんな邪険にされるのもいかがなものかと思いますがねえ?

 

 だって彼、君の(将来的な)親友ですよ?

 

 おっと。

 

 ・・・。

 

 聞かなかったことにしてください。いいですね?うっかりコナン君や竜條寺君に告げ口してごらんなさい。

 

 あらゆる方法をもってこの世から退場したくなるような、冒涜的悲劇をご用意して差し上げますよ?

 

 お隣の吉浦さんに。

 

 おや、なぜ吉浦さん?!というツッコミ、ありがとうございます。

 

 理由としては、お隣にいらっしゃったから、ですかね?何の罪もない隣人が、発狂の挙句死亡なんて末路、見たくないでしょう?でしたら・・・ね?

 

 フフッ。悔しそうに歯噛みなさりながらも、首を縦に振られる皆様は、やはり素直で素敵な方々ですね♪

 

 

 

 

 

 さて、少々話変わって、怪盗キッド君ですね。

 

 いやはや、懐かしいですねえ。

 

 もちろん、皆様ご想像の通り、私も彼のデビューをつぶさに見守らせていただきましたからね。さすがに間近で見るというわけにはいかないので、新聞・テレビなどの各種メディア越しにですがね。

 

 え?今のキッド君が2代目?もちろん、よく知ってますよ♪

 

 何しろ、今の彼のクラスメートの一人が、かの有名な魔女、ケザイア・メーソン君の流れを汲む、列記とした魔女でして。

 

 ま、その割に冒涜的なことには、あまり深くは手を染められてないようなんですがね。

 

 で、彼女から時々お便りをいただくのですよ。

 

 怪盗キッドが落とせません!どうしたらいいですか!って。

 

 あ、でも最近は、お便りの内容が少し変わってまして、怪盗キッドは私が落として見せます!今日は彼はこんなことをやって、こういうところが危なっかしいと思いました!という、惚気のような内容に変化していました。

 

 ・・・悪気はないんでしょうが、接触魔術で呼び出された端末に、そういうことを惚気られるって、大丈夫です?高校生の小娘といえど、腹が立ったら、やることはやりますよ、私は。

 

 

 

 

 

 おや、少々話がずれましたね。

 

 ついでに言っとくと、たまに観察した限り、2代目怪盗キッド君はどうも、深きもの(あるいはその眷属)と接触経歴があるようで、極度の魚嫌い(視認することもダメ)という不定の狂気じみた状態を患われているようです。

 

 幸か不幸か、そのせいで耐性を持っているので、件の魔女っ子(まだまだ半人前でしょう、あれは)の魅了魔術に、抵抗しまくられているようなのですがね。

 

 折を見て、彼もセッションに参加していただきましょうか。いやー、楽しみ楽しみ♪

 

 多分、あの子は反対するし、あとで怒ってきそうではあるのですが・・・ま、彼女の言うことを聞く義理も義務もありませんしね☆

 

 さっさと落としておけばちょっかい出さなかったのに、と言えばイチコロ、ですよ♪

 

 

 

 

 

 さてさて、それではそろそろ冒頭邪神トークはこの辺りにして、本編に行ってみましょうか!

 

 今回は冒涜的なものはなさそうですが、ま、楽しんでいってくださいな♪

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、槍田探偵事務所は、本日も盛り上がっていた。

 

 正確には、所長を務める槍田郁美と、最も若手のホープとも称される江戸川コナン、そして小説のネタ作りと称して時々やってくる徳本敦子、本日非番の松井陣矢の4名が、怪盗の仕掛けた暗号予告状について、答え合わせをしていたからだ。

 

 結果は、満場一致で“深夜12時半~4時半の間に、杯戸シティホテルの屋上”に出現する、ということだった。

 

 やっぱこいつら、頭の出来が違うなと竜條寺は遠い目をする。

 

 ・・・いくら彼が、原作知識というカンニングのような反則持ちの転生者であろうと、細かな部分までは覚えきれていない。今回の暗号解読など、その最たるものだ。

 

 「よし!じゃあ、今夜はここに泊まっていい?

 

 今時予告状なんてものを送り付けるレトロな怪盗のツラを拝んでやるぜ!」

 

 「・・・反対はしないけれど、夜6時半になったら、この事務所は閉めるわよ?」

 

 張り切るコナンに、槍田が困った顔をして口をはさんだ。

 

 「え?!槍田さん、暗号解読があってるか、気にならないの?!」

 

 「それは今から警察と鈴木朋子さんに伝えるわ。それにね、コナン君。大事なことを忘れているわ」

 

 「大事なこと?」

 

 槍田の言葉に、コナンは首をかしげた。

 

 何だろうか?また自分は、何か大事なことを見落としていたか?

 

 「夜更かしは、美容の天敵なの」

 

 キリッと真面目な顔で言い放った槍田に、コナンはずるっと肩を落とした。

 

 そんなことで?!と言いかけた口をつぐんだのは、この事務所に出入りするようになって、多少身につけた分別によるものだ。

 

 「明日も私は仕事なのよ?この仕事は接客業でもあるの。顔色の悪い探偵じゃ様にならないわ。化粧でごまかせないこともないけど、厚化粧は目立っちゃうでしょう?」

 

 「夜更かしすると化粧のノリが悪くなりますしね。あとでパックとかでケアしないといけませんし」

 

 「後は体調とかにも響くし・・・冷え性がひどくなって口臭も出たりするのよね~。

 

 ほんっと、最悪」

 

 「・・・思考能力にも響いちゃいますし。生活リズム崩したらもっといろいろ影響でますし」

 

 「「わかる」」

 

 うんうんと訳知り顔で頷きあう女性陣(なお、ナチュラルに成実が会話に交じっている)に、コナンは閉口した。

 

 黙っててよかったとも思った。下手にそんなこと呼ばわりしたら、一斉に非難が向けられたに違いない。

 

 「お前は口をはさむ権利はねえぞ、敦子。夜更かし朝寝坊の常習犯め。理央から俺が何も聞いてないと思ってんのか?」

 

 「し、締め切り前だけのことだもん!・・・締め切り・・・締・・・きり・・・。

 

 か、帰らないと!」

 

 締め切りの言葉に、瞬時に顔色を青くした敦子は、「お邪魔しました!」とショルダーバッグを肩にかけ、立ち上がった。

 

 「敦子、帰るなら送ってやるぜ。じゃあな、名探偵。俺も気になることがあるから、今夜は付き合えねえぞ」

 

 続き、竜條寺がもたれかかっていた壁からスッと背筋を伸ばし、踵を返しながら言った。

 

 そして槍田は電話機の受話器を取り上げて番号をプッシュし始めるのをよそに、松井がただ一人、ニッといたずら小僧のような笑みで声を潜めてささやいた。

 

 「さすがに宿泊先はどうにもできないが、暗号解読の答え合わせなら俺も気になるからな。一緒に行こうぜ、コナン」

 

 「・・・ありがとう、松井さん。

 

 じゃあ、宿泊先は博士に頼むか。・・・あと、一応あいつにも外泊の連絡入れとくか」

 

 ぼそっと言って、コナンは槍田の邪魔にならないよう、一度事務所の外に出てから、取り出したスマホをタップした。

 

 コナンとしては一人でもよかったが、さすがに真夜中を小学生が一人でうろつくのはよくないだろう。

 

 ・・・それがばれて警察から注意を受けようものなら、手取ナイアから怒られるのはコナンなのだから。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、週が明けた月曜日の朝。

 

 コナンはいつも通りに登校して、1年B組の自分の席に着いた。

 

 ランドセルを下ろし、授業の準備をしながら、土曜(正確には日曜)の深夜にあった腹立たしい怪盗の発言を思い返した。

 

 怪盗キッドめ。ぜってー捕まえてやる。

 

 探偵が批評家だと?馬鹿にしやがって。

 

 

 

 

 

 ・・・怪盗キッドは知らなかっただろう。

 

 彼にとっては、ある種の挑発でしかなかった。

 

 だが、この前の東奥穂村で、自らの無力さをいやというほど味わわされたコナンにとっては、地雷にも等しい発言だった。

 

 

 

 

 

 相手は2代目とはいえ、その実力は初代と寸分劣らぬという。

 

 変声機もなしに声を自在に変え、容姿でさえもよほど(小さな子供など)でなければ変幻自在という。

 

 さらには閃光と煙幕の中で、一瞬にして姿をくらませる。

 

 まるで、魔術のように。

 

 確かに、そういうものは実在している。だが、ここまでの経験で培われてしまったコナンの直感(メタ的に言うならば、【クトゥルフ神話技能】だろう)が、あれは違うと言っている。

 

 あれは、魔術ではない。種も仕掛けもある、手品だ。

 

 だったら、それを暴くのは探偵たる自分の務めだ。

 

 

 

 

 

 怪盗キッドは去り際に次の予告状を残していった。

 

 次に現れるのは、約2週間後、鈴木財閥所有の豪華客船クイーン・セリザベス号の船上だ。

 

 幸い、コナンはそこに乗れる宛がある。というか、できた。

 

 毛利蘭を通じて、鈴木財閥がメディアにも出るほどの探偵ということで、ナイアに声をかけてきたのだ。

 

 今度こそ、怪盗から宝石を守ってくれ、と。

 

 そして、ナイアの連れという形ではあるが、コナンの乗船も認められたのだ。

 

 

 

 

 

 ・・・コナンは知らない。手取ナイアと竜條寺は知っている。

 

 本来、この事件に同道するはずの毛利探偵は、鈴木財閥の依頼で最初の予告状解読にも挑んだが、その際に全く見当はずれの推理を警察に披露してしまい、一挙に信用を失い、乗船候補から外されてしまっていることを。

 

 辛うじて、毛利蘭は鈴木園子の友人枠で許可されている。毛利蘭だけは。

 

 そして、彼女が、「お父さんってばしょうがないんだから!・・・そうだ!ナイアさんならどうかな?」と、言い出し、その結果ナイアが招かれることになったということを。

 

 

 

 

 

 準備の期間はたっぷりある。

 

 ・・・まずは、目の前の授業をこなさなければ。いくら2度目でうんざりしていようと、小学生への擬態は必要だ。小学生への擬態なので、彼の大好物である推理小説(大量の漢字搭載のハードカバー系のそれ)はもちろんお預けだ。

 

 うんざり思いながら、コナンは頬杖をついて、視線を窓に向けた。本日も、良い天気である。

 

 意識を、ぼんやりと明後日の方向に飛ばそうとした直後、ドンッと机を叩かれ、彼はハッと視線を前に戻した。

 

 そこには、険しい表情で、コナンの机に手をついている、青島裕二の姿があった。

 

 「あ、えっと、おはよう。

 

 ごめん、ぼーっとしてた。何かあった?」

 

 ひょっとしたら話しかけられていたかもしれない、と思ったコナンは、青島に話しかけた。

 

 「“深夜12時半~4時半の間に、杯戸シティホテルの屋上”」

 

 「え?」

 

 「この間の予告状の答えや!オレかて行きたかったんに、おっさんが許さんかったんや!

 

 何やねん、あのおっさん!オレのことガキ扱いしくさりおって!」

 

 いや、実際ガキだろ。

 

 正面でプリプリ怒る青島に、内心コナンはツッコミを入れる。

 

 その一方で、彼は感心した。

 

 あの暗号を、自力で解いたのか、コイツ。

 

 「ええか?!オレがあそこに行けんかったんは、暗号が解けんかったからやない!

 

 家から抜けだそ思ったら、おっさんが帰ってきて許さん言い出しおったんや!

 

 負けたわけやないで!ええな!」

 

 「あ、ああ・・・」

 

 言いつのる青島に、コナンは気圧されたように、反射的にうなずいた。

 

 わかればいいと言わんばかりに、青島は大きく頷く。

 

 「せやけど、お前も案外だらしないやっちゃな~。

 

 逃げられたんやろ?怪盗キッドに」

 

 「・・・だったら何だよ?」

 

 カチンと来たコナンは、ニヤニヤする青島を睨みつける。

 

 鼓膜に再び、腹立たしい怪盗の、腹立たしい発言がリフレインし始め、彼の機嫌は急激に下がり始めていた。

 

 青島だけは気が付いていないのだろう。

 

 コナンの様子に気が付いたらしいクラスメートたちが、一歩下がったことに。

 

 「やっぱりお前、大したことないわ」

 

 「~~~~っ!!うるせえ!!

 

 だったら、次こそ捕まえてやるよ!」

 

 地雷を踏みつけられ、頭に来たコナンが椅子を蹴倒して立ち上がり、売り言葉に買い言葉で叫んだ。

 

 「は?次?」

 

 「怪盗キッドは、次の予告を出してるんだよ!クイーン・セリザベス号で、今度こそ漆黒の星〈ブラック・スター〉をいただくってな!」

 

 ふと、コナンはその言い回しに、待てよ?と違和感を覚えた。

 

 あの予告状の文面から、まるで最初に盗もうとしていたのは偽物とわかっていたといわんばかりだったではないか、と気が付いたのだ。

 

 だが、コナンが考えこむより早く、泡を食ったような青島の発言がそれを吹き飛ばした。

 

 「何やと?!クイーン・セリザベス号?!鈴木財閥の豪華客船やないか!」

 

 「ああ。財閥の60周年記念パーティーが、そこで開催されるんだよ」

 

 椅子に座りなおしてうなずいたコナンに、青島は顔を引きつらせていたが、すぐにふふんと鼻で笑いたそうにしている顔になる。

 

 「さよか。鈴木財閥のパーティーやったら、各界著名人も目白押しやな。

 

 高々小学生のガキは入り込めんな」

 

 「オレ、行けるけど」

 

 「何やと?!何でや!」

 

 しれっといったコナンに、青島が叫ぶ。

 

 「青島君知らないの?コナン君の保護者って、手取ナイアさんだよ!有名な、美人探偵!」

 

 「その、財閥?が江戸川の姉ちゃんに宝石守ってくださいって言いに来たのか?」

 

 「うん。大体そんな感じ。オレも、少しは手伝えるかもしれない、子供だったらさすがに変装できないだろうからって、連れて行ってもらえることになったんだ」

 

 話しかけてきたクラスメートたちに、コナンはうなずいてみせる。

 

 そして、コナンは目の前の少年が、顔を引きつらせている様子から、察する。

 

 コイツ、クイーン・セリザベス号に搭乗する伝手、持ってないらしいな、と。

 

 「・・・じゃあ、留守番よろしくな♪凄腕探偵君」

 

 にんまり笑って言ったコナンに、青島はぐっと悔しげな顔をするや「お、覚えとれよ~!」と回れ右して、走っていった。

 

 ひょっとしたら、目元が光っていたかもしれない。完全に負け犬の構図である。

 

 ・・・けんかを吹っ掛けられて辟易していたのだ。このくらいはかまわないだろう。

 

 フンと一つ鼻を鳴らして、コナンは留飲を下げた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 「おや、いらっしゃいませ、竜條寺君」

 

 本日も薄暗い古書店『九頭竜亭』の片隅で悠々自適に過ごしていた私の下へ、やってこられたのは、もはや顔なじみと言っていい彼です♪

 

 どうやら、お気づきになられたようですが、時すでに遅し、ですよ。

 

 険しい顔で私を見られる彼は、ヅカヅカと応接セットまで歩み寄られると、唸るように尋ねてこられました。

 

 「いつだ?何を吹き込みやがった?・・・いいや、お前絶対何か余計な事吹き込んで、煽りやがったな?」

 

 「何のことかさっぱりわかりませんねえ?」

 

 ニチャァッと笑いながら訊き返すと、竜條寺君はとてつもなくいやそうな顔をされながら、懇切丁寧に説明し始めてくれました。

 

 「服部平次だ!改方学園に休学届が出されていると、ファンクラブのTwi●terで話題になってたぞ?!そして、ホームグラウンドの大阪でも姿を消したらしい!

 

 加えて、コナンから聞いた青島裕二の特徴!やたらあいつに突っかかる様子!

 

 服部平次は黒の組織にちょっかいかけて、APTX飲まされて幼児化しやがったんだな?!」

 

 「ふむ?ですが、少し抜け落ちていませんか?竜條寺君。

 

 大阪にいらっしゃる方が、わざわざ東都にやってこられる意味が分かりませんよ?

 

 幼児化されているなら、なおのことこちらに来られるのは不便では?」

 

 「服部平次の父親は、大阪府警本部長の、服部平蔵だ。

 

 幼児化した奴が自宅に駆け込まないわけがない。そして、曲がりなりにも警察の高官が、黒の組織のうわさを知らないわけがない。

 

 おそらく、服部本部長は自分の手には負えないと判断し、対策チームのある警察庁に打診し、身柄の保護のためにあいつを東都に移したってところだろう」

 

 「だ~いせ~か~い!花丸あげちゃいましょう!竜條寺君!」

 

 パチパチと手を叩いて見せます。

 

 

 

 

 

 ええ。服部平次君、こちらにいらしてからというものの、黒の組織を独自に追いかけ始めました♪

 

 一度父親に危ないからやめろと釘刺されたにもかかわらず、反抗期とプライドに突き動かされる形で無視されまして。

 

 結果が、ジン君&ウォッカ君の例のコンビに近寄った挙句、彼らの殺人現場を目撃して、逃げようと飛び乗ったバイクを撃たれて吹き飛ばされてからの、毒薬強制嚥下コンボとなりました♪

 

 いやー、幼児化で済んでよかったですね!

 

 

 

 

 

 「そういうことかよ」

 

 おや、コナン君お帰りなさい。

 

 ランドセルを背負ったまま、彼は竜條寺君の隣に来て、険しい表情で私を見上げられます。

 

 「服部平次・・・そうか、あの日にここに来てたな。確か、そんな名前だった」

 

 「あの日?」

 

 「オレが偶然元に戻った日だ。あの日、白乾児〈パイカル〉を持ってきたのが、服部平次だったんだ。そんなに深くかかわりを持ったわけじゃなかったが・・・通りで見覚えがあるはずだ」

 

 竜條寺君の問い返しに、コナン君は答えて続けられます。

 

 「オレの正体はしゃべらない約束だったな?ということは・・・待てよ?あの時、蘭もいたよな?

 

 オレが混乱して逃げ出した後、あいつらを捕まえて、まさか組織云々のことをばらしたのか?!」

 

 「まさかまさか!私はただ、蘭君に君がいなくなる直前に、何かおかしな様子はなかったかとお尋ねしただけですよ?服部君の目の前で、ね。

 

 そうしたら、服部君が急に捜査開始だとか言ってお帰りになられただけです。

 

 蘭君は、ちょぉッと記憶をいじりましたので、多分覚えてないと思いますが」

 

 「ばらしたも同然じゃねえか!」

 

 「この、邪神め・・・!」

 

 二人して、どうしようもないものを見る目で見てこられてどうしたんです?

 

 別に大した事実はしゃべってないと思いますがね。

 

 「いやですねえ、私はちゃんと、内密にお願いしますね、と付け加えましたよ?」

 

 にっこり笑ってそう言っても、二人とも、ダメだコイツ早く何とかしないとと言わんばかりに深々とため息をつかれていますよ。

 

 「・・・竜條寺さん、何とかしてくれよ」

 

 「・・・その様子からして、青島絡みか?」

 

 こっくりと頷いて、コナン君が困り果てた顔で言いました。

 

 「あいつ、クラスメートの前でオレのこと工藤って呼びやがったんだよ、大声で。

 

 顔が引きつりそうになったけど、湯川と知史が何とか取り繕ってくれて助かった。

 

 オレも、何とか必死にとぼけて誤魔化したし。

 

 それでも、気が気じゃないんだ」

 

 ダメだこりゃ。早く何とかしないと。と言わんばかりに、何とも言えない声で呻いて額に手を当てて天井を仰ぐ竜條寺君に、たまらず私は吹き出しました。

 

 いやー、青島君、予想以上にご自身の身に起こったことを軽く受け止められているようですね。

 

 「・・・たぶん、オレの幼児化のことも気が付いてて、情報を共有したいってところだと思うけど」

 

 「その前に余計な情報が拡散しそうだな」

 

 「ああ・・・」

 

 深刻そうに考え込むお二人を見やりながら、私は紅茶に口づけました。

 

 ふむ・・・いい香りです♪

 

 「で?どうする名探偵?」

 

 「・・・悪いけど、竜條寺さん、いつ頃暇?

 

 今日とか、多分暇じゃないでしょ?胸元のふくらみを見たらわかるよ」

 

 「正解だ。今、準備の合間を縫ってきている。今夜から仕事だ。

 

 しかも、出張でちょいと遠出しなくちゃいけなくてな。

 

 そうだな・・・たぶん、クイーン・セリザベス号乗船前日くらいなら、何とか・・・」

 

 「結構先だね・・・」

 

 「それまで誤魔化しきれそうか?」

 

 「女優の息子嘗めんなよ?

 

 想定外のアドリブならともかく、想定されてたら、何とかしてやるさ」

 

 マドレーヌも一口。うん、しっとりふわふわで、甘さ控えめ。いい出来ですよ、ショゴスさん。

 

 「オーオー。頼もしいな。あとは・・・そうだな、松井か浅井あたりを巻き込むか。あいつらなら都合もつくし、それっぽく見える」

 

 「・・・それ、二人が聞いたら怒りそうだね」

 

 「だったらあのグラサンと黒ずくめやめりゃいいんだよ、あいつらも。

 

 シナリオは任せていいか?」

 

 「ああ。

 

 それから」

 

 「あん?」

 

 「仕事なら、気を付けてね」

 

 「おお。行ってくるぜ」

 

 あ、お話終わりました?

 

 紅茶とショゴスさんお手製のマドレーヌを楽しんでいた私の前に、ごとりっと箱が置かれました。

 

 うん?これは・・・ディゴバのパッケージ?!

 

 「あそこはチョコレートが有名だが、プリンもそこそこいける。それをやるから、今回はおとなしくしていろ、クソ邪神」

 

 「ええぇ、今回私大したことは、ああー?!」

 

 いやそうな顔をした私に、竜條寺君は容赦なく箱を持ち上げられました。

 

 「いやなら没収だ。余計な事も吹き込まず、おとなしくしていろ。

 

 約束できるなら、コイツをやる」

 

 ウー・・・まあ、この間目ぃ一杯楽しめましたし、今回はおとなしくしてあげましょうか。

 

 別に、プリンにつられたわけではありませんからね!

 

 「・・・仕方ないですねえ」

 

 渋々頷いた私の下に、一つ息をついた竜條寺君が箱を置きなおしてくれました。

 

 おっほー♪定番のカスタードに、期間限定のいちごと抹茶もありますよ!

 

 何ですか、コナン君。それでいいのか、邪神・・・と言わんばかりの呆れた目を向けてこられて。

 

 「ところで、君たちのたくらみは見物してもよろしいので?」

 

 「どうせダメって言っても勝手に見るんだろ?だったら見ればいいだろ、勝手に!」

 

 「ちょっかいはだめとは言ったが、見物はだめとは言ってねえしな。

 

 見物だけにしとけ。約束は守れよ、邪神様」

 

 ショゴスさんに頼んで、冷蔵庫にプリンをしまってもらいながら訊くと、彼らはどこか投げやりにそう答えられました。

 

 はい♪そうします♪

 

 

 

 

 

 そうして、時間はあっという間に過ぎて――クイーン・セリザベス号の乗船の前日となりました。

 

 

 

 

 

其処元・・・続くぞ!さらに続くぞ!

 

 




【新たなる幼児化少年の参入にwktkしつつ、プリンのためにおとなしくすることにしたナイアさん】
 開始早々に口を滑らす。自分のミスを第三者の命で償わせようとするあたり、口封じをしようとする犯人と思考回路が一緒。
 怪盗キッドは初代・2代目ともども見守っていた。見世物にしていたという方が正しいか?初代はともかく、2代目の方は、彼のクラスメートが魔女の一員だから。
 化身の数が山ほどあり、(『マレウス・モンストロルム』中でも断トツ。多分、KPの数だけ増えていく)魔女っ娘(『まじっく快斗』登場の、小泉紅子さん)曰くの『ルシュファー様』も、化身の一つ。(本シリーズ独自設定)
 魔女っ娘のことは嫌いじゃないけど、まだまだ半人前扱いしている。
 ・・・うっかり、ナイアさんモードでインパクトしようものなら、SANが減りそう。
 冒涜的なものがないのはちょっぴり残念だけど、基本的に人間がジタバタしているのを見て指さして笑い転げるのが大好きなので、面白ければいーや、とあまり気にしていない。
 コナン君と怪盗のファーストコンタクトの後日、お店に凸してきた竜條寺さんと、再度お話し会。
 竜條寺さんが、青島君の正体に気が付いたことについては、予想の範疇だったので、ヘラヘラしているだけ。
 そして、タイミングよく帰宅してきたコナン君と顔を合わせた竜條寺さん。二人がその場で相談に突入したのをよそに、紅茶とマドレーヌを楽しむ。
 大変だな~と完全に他人事。大体コイツのせいなのに。
 相談聞きながらどんなちょっかい出そうかなと考えてたら、竜條寺さんからディゴバのプリンをわいろにされた。
 ディゴバ・・・劇場版『14番目の標的』で妃弁護士に送られた毒入りチョコのメーカー。現実のあのメーカーも、チョコレートが有名ですが、作者はもっぱらプリンを買いに行ってます。
 以前言ったが、彼女は割と食にうるさい方なので、今回はプリンに屈した。
 出歯亀はするけどね!

【バタフライエフェクトと、積極的にシナリオに赤ペン入れしてくる邪神に頭を抱えたい竜條寺さん】
 槍田探偵事務所で、頭のいい面子による怪盗謹製の予告状の謎解きを間近で見物。
 久々に、『名探偵コナン』をリアタイ視聴していたころを思い出す。そして、この面子の頭のよさを思い知る。以前記したが、彼は能力構成がフィジカルに全振りされている。
 『名探偵コナン』のシナリオについて覚えてはいても、細かなトリックや謎解きの詳細は、思い出せない部分も多い。
 コナン君のなぞ解きしたから怪盗に会いに行こうぜ!というお誘いは、敦子さんのことにかこつけて断る。
 見に行きたくはあったけど、名シーンに自分が首突っ込んでいいか迷ったため。
 そして、それ以上に前回、コナン君に車中で聞いた青島裕二なる人物に戸惑いが隠せない。誰だそいつ?!原作にいねえだろ!そんな奴!
 一応、特徴訊いた時点で、ふと思い当たった人物がいたため、裏取りに走った。
 案の定、その人物が現状行方不明となっていたため、即座にすべてを知っているだろう(そして前回とぼけて見せた)邪神に確認を取りに走る。
 ・・・ファンクラブ云々は捏造。でも、新一君ならありそうだし、平次君も本人非公認といえど、ありそう。
 案の定、邪神が肯定して見せて頭抱えた。
 バタフライエフェクトォ・・・。
 そして、帰宅して話を聞いてたコナン君ともお話。
 ええぇ・・・服部君改め青島君、そんな困ったちゃんなの・・・。何で、そんな面倒くさいことになってんの。
 コナン君に何か妙案がありそうなので、とりあえず彼の案に乗ってみることにする。
 どちらにせよ、野放しにすればコナンが困ったことになり、コナンがいなくなればピスコを助けたい彼の悲願が台無しになるため。
 ・・・胸元のふくらみは拳銃。今夜からまた神話性事象の調査に赴くことになる。死ぬつもりはないけど、危険なことに変わりはない。
 心配してくれて、ありがとう。行ってくるよ。


Q.何で怪盗キッドの出番がないんですか。

A. 原作と変わらないシーンだったから、カットしました。あれをノベライズするなんて、何とも恐れ多い。怪盗キッドの登場する原作16巻はいいぞぉ!
作者はコミックス派だった上、初見時は青山先生の他作品を知らなかったので、誰だコイツ?!感が凄まじかったです。
あと読み直して気が付きました。最初の予告が4月1日で、クイーン・セリザベス号が4月19日なんですね。大分間が空いてたんですねえ。









Q.ちなみに青島裕二君のお名前って元ネタが?

A. もちろん。『踊る大捜査線』の主人公、青島俊作と、演じた俳優の織田裕二からとりました。『踊る~』は劇場版の第1作と第2作しか見てないんですがね。面白かったですが。
・・・青羽さんとかぶっちゃったなあ。まあ、いいか。

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