邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 読者よ!ご覧あれ!私はやりました、やりましたぞ!
 この殺人ラブコメ漫画を、潰して潰して潰してこねくり回して、殺人ラブクラフトTRPGモドキの何かに変えてやりましたぞ!
 どうだ、素晴らしき登場キャラどもめが!
 如何にお前が読者をキュン死させる萌えの塊とて、このままずっと公開させられるのなら、何ものも誑かせないだろう!
 すべての邪悪、混沌と啓蒙をさらけ出した駄文の有様こそが、いやらしい貴様には丁度よいわ!
 ヒャハ、ヒャハッ、ヒャハハハハハハァーッ
 見てください!あなた方のお蔭で、遂に3話目に突入ですよ!
 どうです!素晴らしいでしょう!これで他の素晴らしき書き手の皆様を、列聖の殉教者として祀れます!
 ヒャハ、ヒャハッ私はやったんだあーっ!ヒャハハハハハハァーッ


【#3】探索者松田君の奮闘記!グシャリもあるよ!

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 そろそろお馴染みになってきましたかねえ?

 

 え?お前の顔も邪神トークもうんざりだ?今度はどんな邪悪なことを企んでやがる?

 

 いやん・・・皆さんが冷たい・・・。

 

 え?そう思うなら、前回のことを思い返してよくよく胸に手を当てて考えてみろ?

 

 ええーと?

 

 ふむ・・・零君の成長のために必要と思って、ちょっとばかり彼の幼馴染をインスマス面に変貌する出来事を作ってあげて、赤井君のご助力のもとインスマスの海にリリースさせてあげただけですがねえ。

 

 その後で、零君が赤井君を殺意と憤怒満点に睨み付けたのも、それに気が付かないふりしている赤井君も抱腹絶倒ものでしたがね。

 

 皆さんも笑えたでしょう?

 

 え?それが邪悪なんだって?ありがとう!

 

 え?どちらかというと、その後お前の頭蓋が吹っ飛ばされた方が笑えた?

 

 ええー?私は痛い目見ただけで、さして愉快な出来事じゃなかったでしょう?あれ。赤井君は、もう少し短気を直さないと女性にもてないと思うんですよねえ。

 

 

 

* * *

 

 

 

 さて。

 

 先日、我が古書店『九頭竜亭』を訪れた松田陣平刑事、改め、新米探索者松田陣平君の様子を見てみましょう。

 

 私、これでも邪神ですからね。

 

 シナリオ眺めるのも大好きなんですよ。特に、途中でダイスに嫌われた探索者諸君が、発狂して奇行に走るのを見るのが、たまらなく大好きです。

 

 さぁて、松田君はどんなエンドを迎えるか、実に楽しみです。

 

 

 

 ほほぉ、私が与えたヒントを元に、無事魔導書の購入先を特定なさいましたか。

 

 ふむ。さすがは零君のお友達です。実に有能です。

 

 たどり着いたのは、メンタルクリニック――いわゆる心療内科、ってやつですね。

 

 おろろ。いわゆる探索者そろい踏み、ってやつですね。

 

 個別導入がそれぞれあったのでしょうが、今回の主人公は松田君ですからね、彼の視点に主眼を置いてみましょうか。

 

 

 

 おや?他の探索者のキャラシ〈プロフィール〉が気になりますか?

 

 ふむ。細かな能力値や技能をイチイチ話すのは面倒ですので、ざっくりとご紹介しましょうか。

 

 

 

 まずは言わずもがな松田君です。能力値的にも優秀、技能も探索戦闘とオールラウンダーですね。非常に優秀ですから、彼が死んだら詰むんじゃないですか?このシナリオ。

 

 

 

 次は羽賀響輔君、職業:音楽家ですね。松田君より少し上くらいの顎髭がダンディな男性ですね。戦闘寄りの技能を持ってますね。【芸術〈音楽〉】とありますし、本来は音楽家でしょうか。【聞き耳】技能がえらく高いですねえ。ファンブルでもしない限り、まず成功ですよ、これ。ちなみに戦闘技能は・・・なぜか、【棍棒】持ってますねえ。

 

 

 

 三人目は、その姪っ子に当たる設楽蓮希君、同じく職業:音楽家ですね。成人はしているようですが、かわいらしい女の子だ!この子も【聞き耳】高いですねえ。【芸術〈音楽〉】もありますし。弱冠SANが低めですが、【目星】、【コンピューター】と【図書館】も持ってる、探索系技能持ちですね。

 癒し系だからか、【信用】と【応急処置】があるみたいですねえ。

 

 

 

 四人目は、これまた美人ですが・・・整形してますね。明らかにAPPが書き換えられた形跡あるんですよね。寺原麻里君、職業:アイドルマネージャーといいます。何で彼女も【聞き耳】が高くて、【芸術〈音楽〉】持ってるんです?おやおや。【説得】と【言いくるめ】、【心理学】に【精神分析】と、対人技能の見本市のような感じですねえ。【回避】と【投擲】【応急手当】を持ってるのが意味不明ですが。この初期値成功した感じの【薬学】って何でしょう?

 

 

 

 それから五人目と。藍川冬矢君、職業:シンガーソングライターですね。・・・今回の探索者、えらく職業に偏りがないですか?何で、6人中4人が【芸術〈音楽〉】持ってるんです?・・・ちなみに彼も戦闘寄りの探索者ですね。高STRにダメボ持ちって・・・。微妙に【心理学】高いのって何なんでしょう?ちなみに戦闘技能は【棍棒】に【武道】と【キック】・・・お若い頃、何されてたんでしょう?今も若いようですけど。

 

 

 

 最後のお一人。ほほう、職業:探偵ですか。槍田郁美君、と。ふむ、クール系美女ですね。こちらは探索技能は【目星】【医学】【応急手当】【薬学】と、・・・なぜか【拳銃】技能持ってますねえ。日本ですよ?ここ。まあ、米花町民なら、なぜか【棍棒】【拳銃】【日本刀】などの戦闘技能が高くてもおかしくないんですよねえ。

 

 この間なんて、道端でJCが素手で電柱破壊してるの目撃しちゃいましたからねえ!うっかり通りかかって同じく目撃しちゃった幼稚園児がSANチェック失敗して大泣きなさってましたけど。

 

 

 

 雑談は置いといて、以上6名の探索者でシナリオに挑むことになりました(ドンドンドンパァフパフ♪)

 

 シナリオ名?さあ?私は知りませんねえ。ま、いいんじゃないです?面白ければ。

 

 

 

 さて、話を本筋に戻しましょうか。

 

 松田君は、流石に魔導書云々は口にせずに、探し物をしているということを言いますか。

 

 他の探索者たちはといえば・・・こんな感じでしょうか?

 

 羽賀響介&設楽蓮希ペア・・・蓮希の友人が行方不明になった。手がかりを探している。

 

 寺原麻里・・・メンタルクリニックには人間関係に悩んでカウンセリングに来ている。クリニックの奇怪なうわさを聞き、実際に怪物も目撃した。

 

 藍川冬矢・・・クリニック院長と交友関係がある。最近、彼女の動向がおかしく、心配して来た。

 

 相田郁美・・・人探しの依頼で来た。クリニック患者の連続失踪について、調べる。

 

 

 さぁて、途中の探索パートはいくつか、略しましょうか。

 

 何人かNPC〈モブ〉に聞き込みしたり、新聞とかで情報調べたりして、探索自体は非常に順調ですね。

 

 大きな致命的失敗〈ファンブル〉もありませんし。

 

 ま、手分けしているとはいえ、6人もいれば、そうそうダイスロールで失敗とかありえませんよ。

 

 おやまあ、クリティカル。

 

 あらら。このクリニックの女院長さん、SAN0の狂人だって皆さん悟られたようですねえ。

 

 ま、ぶっちゃけた話、院長さんはシュブ=ニグラスちゃんの信者なんですよねえ。定期的に生贄と引き換えに乳を入手なさって、それを向精神薬に加工して患者さんに処方なさってると。

 

 おまけに院長さん、【説得】【言いくるめ】【心理学】【精神分析】も持ってて、どれも数字が高いもんだから、患者さんを洗脳紛いに信者に引き入れてるんですよねえ。

 

 で、徒党を組ませて、生贄にする人間を誘拐させてるっていうのが、事の真相だったりするんですよねえ。

 

 ・・・どうも、うちから魔導書仕入れたのは、≪シュブ=ニグラスとの接触≫まででは飽き足らず、本格的に招来させたかったかららしいですねえ。

 

 いやあ、キ●ガイですわあ。

 

 で、まあ、一連の調査はいわゆる違法作業(こっそり侵入してこっそり調べる)なのですよ。

 

 当然、いつかはばれますよねえ?で、悪事がばれた連中のやることといえば、もちろん口封じですよねえ。

 

 ありゃあ、致命的失敗〈ファンブル〉した。

 

 となれば次は。ありゃ、蓮希君が捕まってしまいました。

 

 「私はいいからみんな逃げてぇ!」ですって。おお、なんと健気な。(スナック菓子を袋からつかみ出し、バリバリ食べながら)

 

 「蓮希ちゃん!クソッ!松田!放せぇ!」

 

 「今はダメだ!こっちまでヤバい!」

 

 「二人とも!早く!」

 

 おやおや。羽賀君がちょっと抵抗しましたが、そのまま残り5人で車に飛び乗って逃避行ですか。

 

 藍川君が【ナビゲート】持ってますし、カーチェイスもどうにか制して、追手も振り切れましたか。

 

 なかなかに手に汗握る展開でしたねえ。

 

 落ち着ける場所に逃げ延びたところで、再度相談に入りましたねえ。

 

 そうですねえ。蓮希君、絶対今度の≪シュブ=ニグラスの招来≫の生贄にされるでしょうねえ。

 

 

 

 シュブ=ニグラスですかあ。彼女、旦那〈ハスター〉がいるというのに、相手が人間非人間問わないビッチっぷりを誇るんですよねえ。(そもそも“彼女”というのも便宜上で、本来は性別の境すらありませんし)

 

 私ですか?ご冗談を!

 

 ・・・いえいえ。別に「あなたみたいなのは、ちょっと・・・」って彼女に拒否られたわけじゃないですから。

 

 ええ!その気になったら私だってモテモテなんですよ?!

 

 ニャル様素敵!とか、ニャル様最高!とか、おお偉大なるニャルラトホテプ様って、平伏されまくって・・・あれ?私・・・その手のアピール受けた覚えがないぞ?い、いや、化身〈アバター〉の記憶を同期してないだけだから!きっと、どこかで、あるはず・・・!

 

 

 

 いえいえいえ!くだらない悩み事は後回しにしましょう!

 

 今はこのセッションです。

 

 フムフム。決戦の場へ突入!ですね。ここからは引き返すこともできませんよ、松田君。覚悟はいいですか?アハッ♪愚問でしたねえ。

 

 シュブ=ニグラスの招来の条件って、結構厳しいんですよねえ。

 

 新月の夜に、暗い森の中に設置した、大量の血液で清めた石の祭壇で呼び出す必要がありますからねえ。

 

 東都の郊外、どころか県を越えての話になってしまいましたよ。

 

 探索者諸君が到着したのは、詠唱が始まった直後と。ばっちりグッドタイミングですねえ。

 

 

 

 で、到着と同時にSANチェック入りました~。

 

 だって、女院長君、黒い仔山羊を従えてましたからねえ。確かにあれがいると、招来の成功率が上がりますからねえ。

 

 ・・・ぶっちゃけた話、東都で見かけられた怪物って、あれでしょうねえ。

 

 あ、松田君ゲロ吐いた。藍川君は失語症に陥ってるし。

 

 他のメンバーは、蒼褪めつつも、どうにか戦うつもりのようですねえ。いいですね

え。それでこそ、私の愛しい人間たちだ。

 

 とはいえ、戦闘ラウンドが指定段階に到達したら、詠唱が完了、晴れてシュブ=ニグラスが降臨してしまうでしょうねえ。

 

 うーん。個人的には、彼女に来てもらって、ぜひ阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落してほしいところなのですが。

 

 松田君はライフル、羽賀君はバールで、藍川君は蹴り技を使う気のようですね。

 

 寺原君は、とにかく囮に専念する気のようですね。まあ、彼女は【投擲】と【回避】を持ってますしね。

 

 蓮希君は縛られて気絶して行動不能ですし。

 

 おや?槍田君は・・・ああ、なんてことを!

 

 相田君ときたら、大型水鉄砲に詰めてた次亜塩素酸ナトリウム――いわゆる漂白剤で、祭壇の血液を漂泊してくれたんですよ!

 

 せっかくの準備が台無しですよ!これじゃあ、必要なMPをささげて詠唱を成功させても、シュブ=ニグラスちゃんが来てくれるわけがないじゃないですか!

 

 

 

 ああー・・・まあ、いいでしょう。

 

 記憶が確かなら、シュブ=ニグラスちゃん、今は旦那〈ハスター〉と一緒に人間に擬態して、諸国漫遊の旅に出てるとか聞いたような気もしますし。変なタイミングで呼び出したら、旦那のところ帰るーって暴れ出して皆殺しにしてたかもしれませんし。

 

 ・・・それはそれで面白そうですけどねー?(ニチャァッ)

 

 

 

 で、そうしているうちに、ライフルが効かないと悟った松田君が折りたたみ式の特殊警棒に切り替えて、黒い仔山羊に向かっていきます。

 

 うわあ。悲惨。というか、神話生物を数の暴力でタコにしてますよ。一応、あれ、火器が効かないし、一種の即死技能(触手で拘束してからの、丸のみ)持ってるから、強いはずなんですがねえ。

 

 とはいえ、やはりダメボ持ちの男三人が規格外でしたね。

 

 枯れ枝みたいな細い足を殴り倒して、本体を突き倒してから、ボコボコにしてました。「死ね!化け物!」「つぶれろクソが!」「っ!!」とか、ちょっと聞くに堪えない罵声も聞こえましたけど。

 

 いやあ、元気ですねー。

 

 女院長が悲鳴を上げてやめさせようとしましたけど、女三人衆(どさくさまぎれに蓮希ちゃんの救出は成功してましたので)が組みついて抑え込んでしまいました。STR対抗ロールの出番なんでしょうけど、数に物を言わせて自動成功でしたよ。

 

 あ。黒い仔山羊が死んだ。

 

 まあ、黒い仔山羊ちゃんの方は、出目が振るわなかったみたいですからねー。

 

 で、戦闘終了。お疲れっしたー。

 

 

 

 けれど。けれどね?悪夢は巡り、そして終わらないものだろう!

 

 トラップ発動、悪あがき!

 

 いえいえ、私は手を下してませんよ?それっぽく言ってみただけですとも、ええ。

 

 嫌だなあ、呪文≪恐怖の注入≫なんて使ってませんってば。

 

 

 

 「くぁwせdfrtgyふじこっ?!」

 

 あーらら。女院長、発狂しちゃいましたよ。パニックに陥って、ものすごい力で抵抗。怪物を駆除して一安心してた女三人を振りほどいちゃいましたよ。

 

 自動成功のSTR対抗ロールを凌駕するとは、火事場の馬鹿力って奴でしょうねえ。

 

 女三人は悲鳴を上げて、体勢を崩す中、女院長が動く。その手に持った出刃包丁(蓮希君を脅すのに使っていた。一度は手放していたが、どさくさまぎれに拾い上げたらしい。)を、振り上げる。

 

 対象は・・・もっとも、非力な蓮希君ですね。

 

 あー・・・殺人癖ひいちゃったかな?

 

 「死ぃねえええ!」

 

 「おりゃああ!」

 

 しかしながら、ダイスの女神はお人よしらしい。間一髪のDEX対抗ロールが間に合ったらしい、松田君が割り込んで警棒を振り上げる。

 

 あ、クリった。

 

 ゴリッとも、グシャッとも、何ともつかない硬い音を立てて、女院長は地面に沈んだ。

 

 腐葉土と化しつつある枯葉の地面に、ジワッと血が広がる。

 

 ・・・ショックロール通り越してHP0=即死かな。

 

 全員が息を飲んで、硬直する。

 

 やらかした本人も、信じられないものを見る様子で、自分の持ってる警棒と、死体と化した女を見比べ、ややあって後ずさって、「あ」とも「う」ともつかない呻きを上げる。

 

 あーあ。やっちゃった。やっちゃった。

 

 正義の警察官が、人殺し、しちゃった。

 

 今までのあれこれだったら、かろうじていけたかもしれないけど、完全に一線越えちゃったねえ。(ニタニタ)

 

 で、我に返った一同は大慌て。

 

 急いで偽装しようぜっていうのを、何と松田君本人が止めました。

 

 曰く、「俺は警察官だ。たとえ人を殺したとしても、他の薄汚い連中のように、下手な偽装で自分の罪から逃げたりしない」と。

 

 格好いいですねえ。

 

 その足で、警察署へ向かおうとしますが、「ちょっと待て」と言って、彼は足を止めます。

 

 おや、目ざといですねえ、松田君。女院長が持ってた『屍食教典儀』を回収してしまいました。

 

 ああ。目が迷ってますね。あの手の魔導書は、本能をくすぐりますからねえ。“私を読んで”“私を知って”“知識を知って”“知識を広めて”と。なぜなら、それが、書物の存在意義ですからねえ。

 

 生半な精神力だと、SANが削れるうえ、欲求に負けて目を通してしまうんですが・・・そこは松田君ですね。

 

 「こんなのがあるから、あいつは・・・!」なんて苦々しげに言って、車の中から用意しておいたらしい灯油を持ってきて、魔導書に振りかけるや、そのままライターで着火してしまいました。

 

 ちょっとぉぉぉ?!その本、私が一生懸命作った改訂本(原典〈オリジナル〉にいろいろ呪文や知識を追加記載したので)ですけどぉぉぉ?!

 

 ああー・・・も、燃えちゃった・・・ボーボーの燃えカスに・・・ああ・・・ガックシ。

 

 ・・・松田君は、清々したとでもいうような顔をして、他の皆さんとその場を後にしました。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 いやあ、マスメディアがにぎにぎしいですねえ。

 

 『警察の闇!若き刑事の狂気!』『美しきカウンセラーを襲った悲劇!』『恐るべき殺人鬼となり果てた刑事の真実に迫る!』などなど・・・女性週刊誌(セ●ンとかフ●イデーあたりでしょうか)バリの見出しで、連日、大手メディアが騒がれています。

 

 写真に映る松田君は、あのサングラスはなく、どこかやつれたような無精ひげ姿です。眼窩は落ちくぼみ、眼光は濁りきってます。無理もないでしょう。

 

 ええ。やはりどこの組織も、腐るところは腐るんですねえ。

 

 ざっくりいうなら、松田君は1の実罪に、冤罪を50ほど追加されました。

 

 ええ。女院長殺しのみならず、連続失踪事件の犯人に仕立て上げられちゃったんですよ。

 

 

 

 多分、松田君自身も勘付いてはいたでしょうねえ。

 

 件の心療内科が連続失踪の起点になっているというのは、素人調べでもわかるというもの。にもかかわらず、警察の捜査の手が伸びていないということ。

 

 ・・・つまりは、警察がその捜査を握りつぶしているということに他ならないということです。

 

 あの女院長、思っていた以上にやり手だったようですねえ。

 

 おそらく、上層部の人間に取り入り、何らかのネタを握って強請ったり、あるいは例の向精神薬を処方して恩を売ったか。

 

 ま、いずれにせよ、警察の上層部は首輪をはめられてた状態だったわけです。

 

 それなら、飼い主がいなくなったなら、ここぞとばかりに彼女の悪事をばらすんじゃないかと?自分たちの醜聞も合わせてばれる可能性があるというのに?

 

 で、そこにバカ正直に女院長を殺したと出頭してきた人間がいたわけです。これ幸いと自分たちが見ないふりしてきた不手際も、併せて押し付けて、見ないふりをしましょう、ということになりました。

 

 ざっとそんなところでしょう。

 

 馬鹿ですねえ。

 

 ま、彼としては、それでも警察の正義を信じたかったというところですか。

 

 正義なんて、くだらない。そんな、吹けば飛ぶ塵以下のもの信じるなんて、やはり、人間はどうしようもなく、愚かな生き物ですね。

 

 

 

 松田君が留置場で自殺しました。

 

 報道されている限りでは、収容されて数日後に精神異常を起こし、終始独り言をブツブツ言って、かと思えば突然叫びだして騒ぎまくっていたようです。何でも、「黒い蹄がやってくる」とかなんとか怯えていたそうです。

 

 そうして、間もなくシーツで首を吊っているのが発見されたそうです。

 

 あわてて、下したそうですが、時すでに・・・という奴だそうで。

 

 かくして、裁判の前に被疑者が自殺で、この事件はおしまい、です。

 

 

 

* * *

 

 

 

 本日は、宅配注文を承ったので、ちょっと遠方までお出かけです。

 

 特に急ぎの注文というわけでもないので、業者さんは使わずに、自分で歩いて届けに行きました。

 

 おや、意外ですか?邪神といえど、散歩もすれば、宅配業者だって利用しますよ。何でもかんでも魔術なんて、味気ないでしょう?正邪と正狂、緩急はつけないと。

 

 注文先は、音楽一族と名高い、設楽家の邸宅です。立派なお屋敷ですねえ。

 

 ええ、先日のセッション〈事件の解決〉に参加なさってた、羽賀響輔君と、設楽蓮希君のお二人のご住まいです。

 

 おや。タイミングがいいのか悪いのか、ちょうど客人が帰られるところに居合わせたようです。

 

 門前まで見送りに来たのは、住人の羽賀君と蓮希君ですね。

 

 出てきたのは・・・寺原麻里君、藍川冬矢君、槍田郁美君までは、先日と同じメンバーです。

 

 そして、もう一人。

 

 ボサボサの白い髪に、ティアドロップのサングラスをかけた、一見すると近寄りがたい男性ですね。革のジャケットをワイルドに着こなしてますね。

 

 ・・・よく見れば、松田君に顔の造作や体格がそっくりですね。

 

 加えて、彼ら6名の間に感じるものがあるんですよ。悲壮感や絶望感はなく、安堵に満ちた、ホッとしたような空気を漂わせているんです。

 

 

 

 ・・・そういえば、聞いたような気がしますねえ。

 

 日本にも、ウィルマース・ファウンデーションの二番煎じ、とまではいかず、かの組織よりかは小規模ながらも、国家管理下にある神話性事象対抗組織が。

 

 確か・・・Mythology-phenomenon Security Organization〈神話性事象安全保障組織〉、通称MSOとかって、物々しい名前でしたねえ。

 

 彼らなら、神格の招来阻止を成し遂げた、立役者の一員をたかが殺人一件(しかも一応正当防衛ですし)で、牢獄の中におしこめるのはいかがなものかと、するでしょうねえ。冤罪が追加されてのことなら、なおさらに。

 

 おそらく、彼らは収容中の松田君に取引を持ちかけたのでしょう。

 

 このまま大人しく冤罪をもかぶせられるか、自殺したことにして我々と一緒に来るか、と。

 

 あの松田君にそっくりな白髪の男性が、松田君の選択の答えなのでしょう。

 

 

 

 そして、おそらく事件の関係者ということで、松田君は自分の生存を彼らにこっそり告げに行ったのでしょう。

 

 彼らだけは、松田君の冤罪の追加を分かっていたわけですから、十分知る権利はあるはずです。

 

 いやはや。実にめでたい。

 

 ・・・今度は、直接会う時を楽しみにしていますよ、松田君。

 

 さて、私もお仕事と行きましょうか。

 

 6人が別れて家路についたのを機に、門のインターホンを押します。

 

 「こんにちはー。古書店『九頭竜亭』の手取と申しますー。ご注文いただいた“黄衣の王”の楽譜をお届けに参りましたー」

 

 さあ!今日も悪意と狂気をふりまいていきましょう!

 

 

 

ビルゲンワースの蜘蛛が、あらゆる続きを隠している。

見えぬこの話の次回も。頭の震えが止まらない。

 

 




【物見遊山気分で、神話事件というセッションを見学して、御満悦のナイアさん】
 もちろん、大体コイツのせい。
 回収した魔導書を再流出させた結果、神格招来のトリガーを作り上げてみせる。ただしをれを引くのは彼女でなければ、成否の有無すらどうでもいい。成功すれば面白いのに、くらいの感じ。
 今回は、事件の中心に、お気に入りの友人(爆死して旅立ち予定)が参加しているので、面白半分で眺めていた。
 本作の彼女は、割とこんな感じで目に付いたセッションという名の神話事件を遠目で眺めてニヤニヤしていることが多い。気分というか立ち位置的には、セッション動画の視聴者に近い。
 集結したプレイヤーキャラ諸君をニヤニヤ眺める。・・・なお、彼女の持っている“攻略本”は、知識が偏っているのでこのセッションの参加プレイヤーたちの今後の運命までは書かれていない。
 途中はなかなか手に汗握る展開だったのに、最後の最後でダイスの出目が振るわなかったか、神話生物が一方的にボコられて、なーんだ、詰まんねーのってなって、ちょっぴり手を出した。
 具体的には呪文≪恐怖の注入≫を事件の黒幕の女院長に使用し、不定の狂気からの殺人癖を引き当てさせる。
 ハッピーエンドからの突き崩しが一番だよねえ!(邪笑)
 松田君のやらかしに、またしてもニヤニヤした。やっちゃったやっちゃった♪
 その後、彼の冤罪追加からの自殺報道もニチャァッって笑いながら眺めてた。やったね零君!またお友達が一人旅立ったよ!
 その後、松田君が生きていることを遠目から悟る。もう刑事に復帰はできないし、完全にこっち側に踏み込んだ立ち位置の人間になったから、これから係わっていくことになるだろうなあ。楽しみ。・・・もう二度と、零君と係わることもないだろうしねえ。
 もちろん、次なる狂気と混沌の仕込には余念がない。

【友人の発狂原因探ってたら、もう二度と引き返せなくなった松田さん】
 今回の被害者であり、自業自得でもある。
 周囲から止められまくった(機動隊から捜査一課に異動させられるなど)にもかかわらず、相変わらず親友の発狂原因に絡んでいるだろう怪しい本を探って、神話事件というセッションに参加することに。
 道中、他5名ほどのメンバーと行動を共にすることになる。
 彼自身ひねくれ者で猪突猛進、かつ今回は親友の発狂原因に固執するという不定の狂気じみた状態ではあるが、元来はハートの熱い男であり、他メンバーの事情を知って共闘体制を構築することになる。
 ・・・ぶっちゃけた話、作者に細かいところまでシナリオ考えるというが無理だったので、各自脳内補完オナシャス。
 前回も記したが、愚かな好奇とわずかな正義感を持ち合わせることが探索者の最低条件。後はダイスの女神が微笑めば、誰でもシナリオはクリアできる。(なお、グッドエンドになるとは言ってない)
 シナリオクライマックスにおいて、一時的狂気からのゲロ吐きに。作者はTRPG未経験者の上、ダイスも持ってないので、適当にそれっぽい狂気にした。・・・フェティッシュでおっぱい大好きマンにしてもよかったのですよ?
 最後の最後の、ナイアさんのイタズラによって被害をかぶりそうだった蓮希さんを守って、過剰防衛からの撲殺をしてしまう。
 一応、ここでもSANチェックは入った。彼は赤井さんとは違い、列記とした普通の人間なので、普通にSANチェックは入る。
 ・・・事件の悪化のトリガーとなった魔導書は、目を通したい欲求に駆られながらもどうにか誘惑を振り切って、焼却処分した。もともと彼の目的はそれだったので。
 その後、“警察官だからこそ”と自ら出頭する。が、まさかやってもない罪を押し付けられて、隠蔽に加担させられるとは思っても見なかった。警察やめることにはなるだろうし、臭い飯食う覚悟もできてたが、冤罪を大量追加させられることになるとは思っても見なかった。
 ・・・上層部が、今回の事件の隠ぺい、積極的に係わらない体制をとっているのは勘付いていたが、解決してなお隠蔽姿勢を解除しない(しかも冤罪を押し付けてきた)ことに、俺が信じた正義って何だ・・・?と多大なショックを受ける。多分SANチェックも入った。
 さらに、あまり付き合いがなかったとはいえ、捜査1課や機動隊のかつてのメンツからも、何でやらかした?!とか、自分の無実を信じる声が一切なかった。・・・一匹狼姿勢を貫いて、好き放題やってたツケが出た。
 親兄弟などの親戚関係?縁を切られましたが何か。ワイドショーでもいつか何かやらかすと思ってた!とか好き放題罵倒されましたけど。
 一応、同期の伊達さんからは、無実なんだろ?!助けてやるから!と励ましを受けるが、以降、彼は来なくなる。・・・実は、伊達さんは上から圧力を食らって身動きできなくされた。零君は潜入捜査中なので、言わずもがな。
 いよいよ精神的に参りそうだった矢先、ナイアさんも言っていた日本の神話性事象対抗組織MSOからのスカウトを受け、自殺したように死亡偽装をし、彼らの管理下に入る。
 ・・・あんな化け物や、やばいものが野放しになってるなんて、冗談じゃねえ。萩原や、蓮希ちゃんみたいな思いをする人間、増やしちゃだめだ。
 その後、MSOのもと、その手のエージェントになるべく正式な知識の勉強や訓練を受けている。
 事件の関係者たちからは、松田さんはそこまでやってない!という抗議があったよ!というのも後から聞いて、他のメンバーと、後日設楽邸で事後報告。
 無事でよかった!また会えて本当によかった!って泣いて喜ばれた。(特に助けてもらった蓮希ちゃんから)
 ちなみに、一応全国に顔写真公開されているので、自殺偽装後、彼は髪を染めて、カラーコンタクトを入れるなどの変装と、新しく獲得した戸籍と名前で生活することになる。
 ・・・次の騒動フラグに気が付いているかは、定かではない。
 どうでもいいですが、彼の能力値や技能については深く考えてません。それっぽそうなのをいくつか入れただけです。皆さんで勝手にダイス振るなり、妄想と想像で自由に決めてあげてください。

【その他セッション参加のプレイヤーキャラクターの皆さん】
 最初は松田さん単品でしたが、彼一人っていくら何でも荷が重過ぎぃ!と急きょ参加させました。
 ちなみに、原作登場の話は以下の通り。
 羽賀響輔&設楽蓮希・・・コミックス46巻『ストラディバリウスの不協和音』より。
 寺原麻里・・・コミックス5巻『カラオケボックス殺人事件』より。
 藍川冬矢・・・アニメオリジナルエピソード『呪いの仮面は冷たく笑う』より。
 槍田郁美・・・コミックス30巻『集められた名探偵!工藤新一VS怪盗キッド』より。
 それぞれの技能などは、原作のトリックや職業・経歴などを見て、私が適当に決めました。
 藍川君の武道キック?なんかガラ悪そうだったから、持たせました。
 文中では、松田さんに重点を置いて描いてますが、彼らは事件後、日常生活に戻りました。
 松田さんのことで、事情聴取されたりもしましたが、あそこの院長がカルティストで生贄云々言っても、何言ってんだこいつって可哀そうなものを見る目で見られ、信憑性なし扱いされてました。
 で、連日の報道に、あいつはそんなんじゃない!ってみんなが腹を立てましたが、どうしようもありませんでした。できるのは電話とかの抗議くらいですけど、それもあー、はいはいって流されて終わりましたし。
 で、とうとう松田さん自殺の報道がされて、特に蓮希ちゃんが大ショックを受けて泣いて過ごしてました。
 そんなある日、槍田さんから「いいニュースがあるよ!みんなで落ち着いて静かに話せる場所に集まって、話そう!」と連絡があり、何だ何だと設楽邸で話し合うことになりました。
 で、そこで実は生きてましたー!的な感じで変装松田さんが登場。
 生きてた!よかったー!とみんな大喜び。松田さんは詳細は規定で言えませんが、みんなも薄々、自殺されたにもかかわらず生きてるってことは、やばいことになってるな、と勘付いて深くはツッコみませんでした。
 実は、槍田さんはMSOの外部協力者で、この手の事件調査も割とやってる探偵で、松田さんの扱いについてもどうにかならない?とMSOに言ってました。(つまり松田さんが助かったのは彼女のおかげ)
 他のメンバーも、MSOからスカウト受けたりもしたのですが、職業音楽家という目立つ立場のため、断られたりしてます。
 一人立場の違う寺原さんは事件後、心的外傷に悩まされてるところを、彼氏(違う)の暴言にブッチーンとキレて、辞表を叩きつけ、そのまま槍田さんのところに事務員兼助手として再就職してます。ので、彼女のもとにいる限り、自分もその手の事件と係わることになるだろうから、とやはり断りました。
 ・・・舞台の関係者が軒並み発狂という、いわくつきの戯曲の楽譜を、音楽一族のお屋敷に持ち込まれましたが、さてどうなることやら。
 今後のセッションの参加予定?さあ?作者と彼らを弄ぶダイスの女神様次第としか。

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