邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 というわけで、劇場版『ベイカー街の亡霊』をテーマにした外伝です。
 ヒロキ君について考えたら真っ先にあの連中が出てきた辺り、どうしようもない。そして、内容的にも救いようがない。
 赤井さんのSANにガリンとひっかき傷を与えるような話になりました。
 何でこのシリーズの赤井さん、出番の割にひどい目に遭うん?劇場版だって近いのに。
 クトゥルフだからね。宇宙的恐怖塗れだからね。しょうがないね。
 まあ、赤井さんが勝手にダメージ受けているだけなので、ヒロキ君本人は満足してるんじゃないですかね?(ヒロキ君のSAN値から目をそらしながら)


【番外編δ】阿須那羽教授の奇怪なる事件簿【ベイカー街の亡霊編】

 その日、赤井――今は阿須那羽椎夜と名乗る立場でいる男は、阿須那羽に相応しい衣装――黒いダブルブレストスーツと中折れ帽、肩羽織りコート、右手に紙袋といった出で立ちで、路地裏にあるカフェに向かっていた。

 

 アメリカの片隅にあるそこは、少し奥まったところにあるこじゃれた隠れ喫茶店という感じだろう。

 

 しかしながら、営業中という札が掛けられているべきところには、本日貸切という手書きの紙切れが張り付けられている。

 

 阿須那羽はそれに頓着することなく、ガラスの扉を押して扉を開いた。

 

 チリンチリンと涼やかなベルの音が来客を知らせるが、店員は一人も来ない。ただ、奥のテーブルでチラチラとこちらを見ていた少年が、嬉しそうに顔をほころばせ、立ち上がった。

 

 「阿須那羽さん!」

 

 「久しぶりだな。元気だったか?」

 

 少年のつくテーブルに歩み寄りながら、阿須那羽が彼の名を口にする。

 

 「ヒロキ・サワダ」

 

 悔恨とわずかな憐憫が、それに込められていたのには、ヒロキと呼ばれた少年は、気が付かなかったに違いない。

 

 ニコニコと嬉しそうに笑いながら、阿須那羽の向かいに掛ける。コーヒーの入ったカップの隣には、分厚い書籍が一冊置かれ、ページの隙間からしおりの紐を覗かせている。

 

 「・・・何を読んでる?」

 

 「阿須那羽さんはご存じありませんか?ドーキンスの『神は妄想である』ですよ」

 

 それは12の少年の読むものではないだろう。

 

 と言いかけ、阿須那羽は口をつぐむ。

 

 そうやって、阻害され続けた彼が、最後にすがったものが、阿須那羽たちであり、彼の今の拠り所なのだ。

 

 それに、そういった言動を受けたことは、阿須那羽〈赤井秀一〉にも多少経験があるものなのだから。

 

 「・・・面白いのか?」

 

 「阿須那羽さんからしてみれば、噴飯ものかもしれませんね。

 

 ボクはこういった視点もあるんだなって思えて、面白いです」

 

 ニコニコと笑う少年に、阿須那羽はそうか、と短く相槌を打った。

 

 

 

 

 

 確かに、阿須那羽からしてみればタイトルからして噴飯ものでしかない。

 

 神は実在するし、人間などそれらからしてみれば弄り甲斐のある玩具、ケージの中の実験用マウス、下手をすればそれ以下のダニ扱いである。

 

 本当に妄想で片付けられればどれほどよかったか!

 

 

 

 

 

 「・・・あのころよりも顔色はよさそうだ。

 

 思っていたよりも、大切に扱われているようだな」

 

 「ええ。無茶な期限の仕事なんて言い渡されないし、ボクが知りたいと思ったこと、やりたいと思ったことを尊重してくれる。

 

 本当に、いい人たちです。あ、人じゃないんでしたっけ」

 

 「・・・広義的には人に含めてもいいだろう。一応、人と付く種族だ」

 

 少し困ったように眉を寄せたヒロキに、阿須那羽はしれっと答える。

 

 「ふふっ」

 

 「何だ?」

 

 「阿須那羽さんって、やっぱり他の人とは少し違いますね。

 

 あの人とか、あの男だったら、発狂するか取り乱すか、頭から信じないと思うのに、阿須那羽さんは受け入れて、人とカウントされてるんですし」

 

 「・・・よく言われる」

 

 これも蒙が啓かれているせいかもしれない、と阿須那羽は思う。

 

 ニコニコ笑うヒロキに、阿須那羽は肩をすくめた。

 

 

 

 

 

 そうして、ヒロキのほぼ一方的な近況報告に、短く相槌を打つ。

 

 ・・・ヒロキがたまに、あれやらあの人やあの男呼ばわりしている存在を、阿須那羽はあえて意識の外に締め出す。

 

 ・・・きっと、ヒロキには耐え切れなかったのだろう。

 

 ヒロキの孤独も苦しみも理解せずに、化け物呼ばわりしたり、あるいはその能力を利用するだけ利用して切り捨てようとした、大人たちの存在が。

 

 高すぎる知能と、相反する幼い精神、虚弱な肉体。アンバランスの詰め合わせのような少年の心は、心無い大人と、爪はじきにする子供たちにより、引き裂かれた。

 

 わずかに残った正気を守るために、あえて大人たちを嫌う。彼らは自分にとって不要なのだと。

 

 

 

 

 

 だって彼らは、ヒロキのSOSを無視し、彼を苦境へ追い落としたのだから。

 

 

 

 

 

 阿須那羽も、ヒロキの前歴を調べて驚嘆したものだ。

 

 人工知能開発、DNA探査プログラム、どれも10代の少年がなせたとは思えない偉業である。

 

 だが、高すぎる知能は、社会生活にうまく溶け込めるかと言えばそうでもないのだ。

 

 白鳥の雛は、アヒルの社会ではうまく暮らせないように。

 

 だが、白鳥の雛〈ヒロキ〉が見つけた白鳥の群れは、蛇に管理されていた。蛇の秘密を知った白鳥の雛が口封じされるのは、自明の理だ。

 

 右も左も塞がれ、いよいよ飛び降りるか首をくくるかの瀬戸際に立たされたヒロキに、手を差し伸べたのが、“彼ら”だった。

 

 ・・・阿須那羽は、間に合わなかったのだ。スコッチが、そうなってしまったように。

 

 それでも、ヒロキは笑って彼らとともに行くことを決めた。

 

 「君が命を失うことはない。要らないというなら、ぜひ我々に譲ってほしい。君が嫌なことはしない。望むならば、必要なものは何でも与えよう!」

 

 そう甘言を囁き、手を差し伸べた“彼ら”の手先に、ヒロキはその手を握り返したのだ。

 

 

 

 

 

 皮肉なことに、“彼ら”には、クライン生命というその活動サポートを担うカルト集団がおり、彼らのもとであればそうそう危うい目には合わないだろうという保証があった。

 

 しかしながら、一時は行動を共にし、故に心を開いてくれたヒロキは、阿須那羽たちのことを気にかけたらしく、時折こうして会うことになったのだ。

 

 

 

 

 

 「そういえば、この前、アインシュタインと会ったんです!

 

 ボク、思わず興奮しちゃって!いろいろ質問しちゃったんです。

 

 でも・・・その・・・彼は、それどころじゃなかったみたいで・・・」

 

 「・・・何かあったのか?」

 

 「その、原爆投下の直後だったらしくて・・・」

 

 「ああ・・・」

 

 ヒロキの気まずげな言葉に、阿須那羽もなるほどとうなずいた。

 

 アインシュタインが、原爆投下からの甚大な被害に、一転して核反対派の筆頭に立ったのは有名な話だろう。

 

 ・・・ヒロキの言っているのは、まごうことなく、相対性理論で有名な、あのアインシュタインである。

 

 「興奮してしまったけど、ひどいことをいろいろ言ってしまったなって・・・今度会ったら、謝ります」

 

 「・・・会う予定があるのか?」

 

 「はい。“彼ら”も、十分な調査ができなかったので、追ってまた彼を呼ぼうと言ってましたので」

 

 ・・・よくアインシュタインは発狂せずに・・・いや、確か彼らに呼ばれたものは記憶を消去されると聞いた。たぶん、それだ。

 

 ニコニコと明日の天気を語るように、しれっと言うヒロキは、大分彼らに毒されているのだろう。

 

 ・・・もしかしたら、ヒロキは人類などという脆弱な物の殻を脱ぎ捨て、“彼ら”と心身ともに行くことを決心したのかもしれない。

 

 阿須那羽はうっすらとそう感じたが、何も言わない。言わぬが花。余計な思惟は、狂気と悲劇の幕開けでしかないのだから。

 

 ついでに言うなら、これは阿須那羽だから平然と聞けていることである。他の人間が一連の会話を聞こうものなら、発狂して取り乱すか、冗談と決めつけて信じないだろう。

 

 「ヒロキ」

 

 会話がひと段落ついたところで、阿須那羽は改まった様子で口を開いた。

 

 「はい?何ですか?」

 

 「遅くなったが、誕生日プレゼントだ」

 

 阿須那羽はもってきた紙袋を差し出した。

 

 「え?うわあ!これって・・・!」

 

 「一つ目は・・・君も知っている、ミヤジマからだ。

 

 もう一つが、俺の個人的な、知り合いの女性からだ。君のことを聞いて、何かしたいと送ってきた。

 

 3つ目が俺からだ」

 

 ヒロキが受け取った紙袋から、阿須那羽の了承のもと、プレゼントの包みを出す。

 

 一つ目は、不格好なマフラーだ。少々網目が間違ったりしているが、紺と水色、白といくつかの毛糸で編まれた手編みのマフラー。メッセージカードには、「Happy Birthday!」とグリーティングカードがつけられている。

 

 そしてもう一つが、小箱に入ったクッキー。一つ一つアイシングで丁寧にデコレーションされ、ほのかなジンジャーを始めとしたいくつかのスパイスの香りがする。ジンジャークッキーだ。

 

 そして、最後の一つ。世界一有名な名探偵を主人公にした小説だ。

 

 「科学や電子系には、日常的に触れているだろうからな。難しい書籍もいいだろうが、たまにはこういうのもいいぞ。何度読んでも心躍るものだ」

 

 阿須那羽も、幼いころから何度も読み返したものを、あえて原文が載っているだろう英語版で渡した。ヒロキならば英語も堪能だろうからだ。

 

 「ありがとうございます。送ってくれた人たちにも、よろしくお伝えください」

 

 嬉しそうに、本の表紙を撫で、マフラーとクッキーの小箱を紙袋に入れ直したヒロキに、阿須那羽も満足げにうなずいた時だった。

 

 ピーピーとヒロキが左手に付けていた腕時計が高い電子音を立てる。

 

 「あ・・・」

 

 小さく少年は呻くや、悲しそうな顔をしてうつむいた。

 

 「すみません・・・もう、時間みたいです」

 

 「気にするな。むしろ・・・」

 

 謝るべきは、自分の方だと阿須那羽は言葉を飲み込む。

 

 否。納得できてないのは、きっと阿須那羽だけなのだ。ヒロキは自分で決めて、現状に満足している。

 

 阿須那羽だけが、ヒロキが“彼ら”のもとにいることに、頭では納得できても、心が納得しきれてないのだ。

 

 「・・・いや、何でもない。

 

 何かあれば以前渡した連絡先に連絡しろ。俺でよければ、力になる」

 

 「大丈夫ですよ。でも、ありがとうございます」

 

 にっこりほほ笑むヒロキは、そのままイスから立ち上がった。

 

 「また会ってくれますよね?阿須那羽さん」

 

 「ああ。君も、元気でな」

 

 「はい!」

 

 ニッコリ大きくうなずいたヒロキは、直後、電源が切れた人形のように脱力してうなだれた。

 

 そして、スッと顔を上げる。その顔からは一切の表情が抜け落ち、人形のように無機質になっていた。

 

 阿須那羽もまた、ヒロキ相手に浮かべていた柔らかな笑みを消し、淡々とした無表情へ変えていた。

 

 同時に、カフェの片隅から、黒スーツとサングラスをかけた男性が二人駆け寄り、そのうち一人が阿須那羽が渡した紙袋を持ち上げた。

 

 別れの挨拶もなしに、踵を返してヒロキは店から出ていく。

 

 黒スーツの男性のうち一人はヒロキに追随し、もう一人は阿須那羽に恭しげに一礼する。

 

 「後は我々にお任せを。それでは失礼します。阿須那羽教授。

 

 こちらの店での料金は、我々クライン生命がお持ちします。どうぞ、お茶でも飲まれていってください」

 

 「・・・ああ」

 

 短くうなずく阿須那羽だが、実際のところ、彼に選択肢はないも同然だ。

 

 要は、少しこの店で大人しくしていろ。ついてきたら殺す、と脅されたようなものだ。

 

 ・・・そして、それをしても、阿須那羽には何一つ、いいことなどないのだから、受け入れない理由はなかった。

 

 呼び鈴を鳴らし、ウェイターにコーヒーのお替りを頼む阿須那羽に、黒スーツの男は踵を返しかけ、思いついたように振り返って尋ねた。

 

 「ところで、教授。外におられる方々は、教授のお客様ですか?」

 

 「・・・知らんな。どこぞの馬の骨だ。覗き見はしようが、チョッカイは出す度胸のない連中だ。俺に対してはな。

 

 もちろん」

 

 ここで、阿須那羽は言葉を切り、一呼吸入れてから言った。

 

 まるで、煙草に火を点けるような、当たり前の口調で。

 

 「そちらが気に障ったのなら、いかようにしてくれても構わない。

 

 どうせ、使い捨てだ」

 

 「了解しました。教授。それでは、よい午後を」

 

 再度頭を下げ、今度こそ黒スーツの男は店を出て行った。

 

 阿須那羽は、呼吸器が弱いヒロキのために控えていた煙草を、今度こそ遠慮なく吹かしだした。

 

 この店は貸し切りであり、阿須那羽も確認を取ったのだから、問題はないはずだ。

 

 煙草の苦い煙を舌の上に転がしながら、阿須那羽は思索を深める。

 

 

 

 

 

 クライン生命の連中が言う“外におられる方々”は、“赤井秀一”を尾行してきた組織の連中だろう。

 

 目の上のたんこぶの赤井の始末を、連中はいまだに諦めてないのだ。

 

 そして、赤井が珍しく、誰ひとりつけることなく、無防備に歩き回っているように見えたから、これ幸いと尾行してきたのだ。

 

 当たり前だ。誰が、蛇の巣窟じみた場所に、自分以外の誰かを同行させるものか。ついていくなら死んでもいいくらいの覚悟をしなければならないのだ。

 

 おそらく、彼らは店から出たヒロキを赤井の関係者とみなし、調べ上げ、かなうならその身柄を得ようとするだろう。

 

 だが、ヒロキの身はすでにクライン生命の傘下にある。彼らとことを構えるなど、愚の骨頂だ。

 

 おそらく、追跡者たちは、髪の毛一本残すことなく、この世から消え失せるだろう。

 

 だが、そこまで阿須那羽の知った事ではない。

 

 阿須那羽が案じるべきは、組織の見知らぬ下っ端どもではなく、ヒロキの身だ。

 

 ・・・例え、ヒロキが今身を寄せているのが、偉大なると称されるイス人たちのお膝元であったとしても。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 イス人。ざっくりと言ってしまえば、この地球に人類が出現する前に栄華を極めていた、先住種族であり外来民族である。

 

 オーバーテクノロジーと言い換えてもいいほどの強大な科学技術を持つが、特筆すべきは時間旅行能力である。

 

 彼らは、時間を制しており、その精神を、過去未来自在に、別の存在の精神と交換させられるのだ。

 

 地球に来たのだって、地球先住の種族の肉体を乗っ取るような形であったらしい。

 

 もっとも、彼らは“飛行するポリプ”と呼ばれる別の種族に滅ぼされたが、気も遠くなるほど未来に精神だけを飛ばしたとされているらしい。

 

 赤井も知っているのはこの程度だ。大学所蔵の魔導書に書かれていた概要しか知らないのだ。

 

 

 

 

 

 阿須那羽がヒロキと出ったのは、おおよそ2年前――赤井が例の組織の潜入から引き上げ、冷却期間としてアーカムに舞い戻っていた頃である。

 

 詳細は控えさせてもらうが、概要だけ語るならばこういうところである。

 

 当時、幅を利かせていた大手IT企業、シンドラーカンパニーの周囲で、立て続けに怪異が発生。どうもCEOであるトマス・シンドラーが、原因のアーティファクトをもっているらしいと判明し、阿須那羽は他数名を連れてその回収に向かったのだ。

 

 そのアーティファクトを、現実逃避と好奇心から弄り回していたヒロキと、アーティファクトを元々所有していたとかで、ちょっかいを出してきたのが、ユゴスより来るもの――正式名称、ミ=ゴである。

 

 加えて、ヒロキがいわゆるギフテッドで、その知能の高さに目をつけたイス人がさらに手を出してきてという、グチャグチャ状態に陥ったのだ。

 

 結果、阿須那羽たちはアーティファクトの回収を断念し、事態の収拾に駆けずり回る羽目になった。ミ=ゴにはアーティファクトの引き渡しと引き換えに手を引いてもらい、ヒロキは擦り切れた正気により、イス人の手を取って、シンドラーカンパニーを去った。

 

 

 

 

 

 ・・・なお、シンドラーカンパニーは、CEOが発狂して「自分こそジャック・ザ・リッパーの正当な末裔である!」と称して、記者会見の真っただ中にナイフを抜いて記者たちに切り掛かるという大事件を起こしていた。

 

 CEOは逮捕の後、服役。現在は、別の会社に吸収合併されてしまい、シンドラーの名前は全く残っていない。

 

 

 

 

 

 ・・・さらなる余談となるが、表向き失踪したヒロキ・サワダの行方を、実父となる樫村忠彬は相当しつこく探し回ったそうだ。

 

 方々探し回り、探偵の手も借り。

 

 そして、クライン生命の名を掴んだ時点で、彼の名は、世界から消え去ることとなる。

 

 憐れなことに、その話を後日耳にしたヒロキ・サワダ本人は、「そうですか」の一言で流したそうだ。

 

 どちらが被害者か、全くわからぬ話である。

 

 

 

 

 

 グシャリッと、阿須那羽は吸殻を携帯灰皿に押し付け、コーヒーを飲み干す。

 

 頃合いだろう。

 

 「失礼する」

 

 一言言い残し、阿須那羽は席を立った。

 

 

 

 

 

 せめて、ヒロキがこれからを安寧に息ができますように。

 

 すがる先もないくせに、阿須那羽は帰り道を闊歩しながら、そんなことを思った。

 

 

 

 

 

私も、続きとして生きようと思います

 

我が忍びが、そうしてくれたように




【守ったものより、失ったものの方が重みを感じてしまう赤井さんこと阿須那羽教授】
 彼視点の話は結構こういう重みを感じる話が多い。探索者としての経験が豊富なうえ、えぐい目にも結構遭っている。
 SANがチートなだけで、やっぱりげっそりするしうんざりする。
 なお、常人であれば、彼のような目に遭えば、普通に発狂して入院沙汰になる。
 原作見ていると、何のかんの言いながら家族に恵まれている。家族=最初に触れ合う存在=最も身近な理解者ともいえるから。
 だから、ヒロキ君の家庭環境とかを鑑みて、少々同情している。
 家族には恵まれたけど、周囲(同級生などの友人たちなど)に受け入れてもらえるかはまた別なわけで、多かれ少なかれ、そういう経験があったし、弟妹の面倒を見た経験もあるので、割とヒロキには親身に接した。
 ・・・なお、本シリーズの彼は、大学入って神話生物やら魔術やらに触れた結果、家族(主に母親)と亀裂が走ったというのは余談。本人はしょうがない、くらいには思ってるし、組織のことを追うなら身軽な方がいいからと都合よく考えている。
 結構仲良くしていたために、ヒロキ君を常識的な世界にとどめて助けることができなかったときは、すごく悔やんだ。ヒロキ君本人が満足してようと、やっぱりまともな世界でいた方がいいに決まっているから。
 彼が口にしているミヤジマというのは、フルネームで宮島赤理〈ミヤジマアカリ〉――つまりアーカムに移り住んだ元宮野明美さんのこと。赤理さんは時々阿須那羽教授の助手という形で、神話事件調査のサポートを担当している。
 ジンジャークッキーの送り主は、またそのうち紹介します。
 事件後、年に2~3回くらい不定期に、クライン生命の息がかかっている飲食店で、こうやってヒロキ君と会うことになった。
 ヒロキ君本人が望んているというのもあるが、阿須那羽さん本人もそれに救われている節がある。本人が自覚しているかはさておいて。
 ・・・無意識下では、おそらくヒロキは発狂していると悟っている。
 ただ、それでも楽しくやっているなら、それはそれでいいのかもしれない、と思い始めて入る。頭で受け入れられるかはまた別ではあるが。

【イス人たちとマブダチムーブしちゃっているヒロキ君】
 シリーズによって割と救済しちゃっている彼ですが、本シリーズではこのようになりました。
 まあ、頭のいい人大好き!なイス人たちが、コナン世界の高IQの持ち主に目をつけないはずがありませんし。
 2年前(シンドラー社長によって過剰労働で追い詰められたころ)に、現実逃避気味にミ=ゴ特製のアーティファクトをいじくり倒した結果、事件を発生させ、赤井さんたち、ミ=ゴ、イス人という3陣営から身柄を狙われることになる。
 最初は赤井さんたちに保護されるが、どさくさで逸れ、最終的にイス人のところに行った。
 阿須那羽教授も察している通り、SAN0=発狂済み。元々、家族や周囲の同年代との折り合い悪くてSANが低めだったのに、シンドラー社長の過剰労働のせいでヤスリ掛けされ、アーティファクトによってさらに削られ、神話生物とのインパクトでぶっ飛んだ。
 イス人たちのところに行ってからは、精神交換でしょっちゅうイス人たちの時代に行って、社会や文化を見学させてもらったり勉強させてもらったりしている。
 ・・・親しい友人も作ったらしい。人間にしとくの惜しいね!と言われたこともあって、きっと生まれる種族間違えちゃったんだな!と最近真剣に信じ始めている。
 阿須那羽さんのことは、話を真剣に聞いてくれるし、会話のテンポも合うから、気に入っている。阿須那羽さんが、自分のこと助けられなくて悔やんでいるというのも薄々察しているが、別に気にしなくていいのに、と思っている。
 誕生日プレゼントは素直に喜んだ。今までももらったことはあったけど、個人的な友人からのプレゼントというのは、初めてだったから。
 くどいようだが、彼は発狂済みなので、イス人たちのところに行ってからは、かつての家族はどうでもいいと切り捨てている。
 だから、父親がイス人のサポートカルトであるクライン生命にチョッカイかけて消されたと聞いても、ふーん、で済ませた。
 ・・・ひょっとしたら、シンドラー社長にむりくり働かされてた時、助けてくれなかったくせに、と理不尽な恨みを抱いているのかもしれない。


 Q.ヒロキ君の腕時計の電子音って?
 A.アラーム設定されてて、イス人と精神交換する時間の少し前に鳴るようにしてます。
 精神交換をどのタイミングでするかは、イス人たちが主導していますが、ヒロキ君はイス人たちと仲がいいので、●月×日X時~●月■日Y時までならいいよ!こういうイベントがあるから、そっちにもお得なんじゃないかな?というように都合をつけてもらっています。
 ヒロキ君は無表情になって口利かなくなった辺りで、精神交換されました。中身はイス人になってます。


 クソどうでもいいですが、組織でもクライン生命はブラックリスト入りするやべーとこ扱いされてます。
 20年か30年くらい前に、うっかりクライン生命相手にやらかして、某国に存在してた組織の人員が瞬時に消されたことがありました。
 そん時、組織は平謝りで謝り、貴重な実験データの提供などの詫び入れもやって、どうにか許してもらったということがあります。
 ・・・カルトを敵に回すということは、神様の力を敵に回してもいいというのと同義でもあります。知ってる人間からしてみれば、ゾッとする話です。
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