邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 前半と併せて、この外伝は書き直しました。最初は単純に2年前のセッションについて語ってたんですが、クソ詰まらなくて。
 加えて、敦子さんのことを語るなら、彼のことも外せないな、と今更ながら思い至り、改めて補完しようか、となって書きあげました。
 知佳子さんの扱いがよろしくないですか?作者も二次創作好きの、端くれとはいえ、物書きですのでね。
 無許可の盗作、だめ絶対。守ろう著作権。コンプライアンスは国民の義務です。
 だからこそ、池田知佳子さんがあんな扱いになったのかもしれません。


【番外編η‐2】空色の国は塩の孤島に塗りつぶされる 後編

 徳本敦子は、小説家をしている。

 

 それに付随する枕詞としては、“そこそこ売れている”くらいだろうと、本人は思っている。

 

 デビュー作となった『塩の孤島』は大賞を取ったし、現在連載も抱え、小説家業はそれなりに順調である。

 

 ただ、2年前に自殺未遂したのを皮切りに、時折妙な事件(化け物だ魔術だ、神だといったオカルト系のそれ)に巻き込まれるようになったのは、いかがなものかと彼女も悩んではいるのだが。

 

 とはいえ、悪いことばかりでもない。

 

 2年前に知り合った竜條寺アイルとの交際も順調であり、彼の前職の関係で知り合い、身元引受人となった湯川理央が居候となった。

 

 ・・・余談ながら、敦子は、理央はマフィアか暴力団の幹部がこさえた隠し子で虐待されており、竜條寺はそれを匿ったのだろう、と思っている。竜條寺は姪だと紹介してきたが、敦子はそれを嘘だと思っている。

 

 当たらずと遠からず、である。(竜條寺が匿っているというあたりが)

 

 

 

 

 

 そんな彼女が最近悩んでいるのは、冒涜的事件に巻き込まれることではなく、どうもストーカー被害に遭い始めたということである。

 

 一応、馴染みの槍田探偵事務所に解決を依頼し、竜條寺にも相談した。

 

 その一方で、届いた一通の招待状。

 

 それは、大学時代に所属していた映研の友人、鈴木綾子から、映研の同窓会の招待状だった。

 

 かつて、処女作をサークル仲間に盗作され、それで賞を取られたショックで自殺未遂を起こした敦子にとっては、ストーカーのこともあり、参加に抵抗を感じずにはいられなかった。

 

 しかし、招待状を送ってきた綾子は、鈴木財閥の令嬢であり、下手に断れば、どんなことになるかわからない。

 

 竜條寺とも相談し、参加を決めた敦子は、彼と養い子である理央をつれ、同窓会が行われる山荘へ向かった。

 

 その道中、不気味な男の姿を目撃しながら。

 

 ようやくたどり着いた別荘にて、懐かしい面々を前に歓談しながら夕餉を取っていたが、話が2年前のことになりそうになるや池田知佳子が態度を一転し、部屋に引き上げてしまう。

 

 彼女こそ、敦子の処女作を盗作した犯人だったのだ。

 

 そして、竜條寺は、そんな様子に不穏さを感じていた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 夜中。

 

 隣の理央が寝静まったのを確認し、敦子は服を着替え、そっと部屋を抜け出した。

 

 真っ暗な廊下を、こっそり移動する。残念ながらスリッパ履きなので、本人が思っているほど足音は殺せていない。

 

 こっそり裏口に靴を持ち出し、抜け出した彼女は、手に持っていた簡素な手紙を見やった。宿泊先のドアの隙間に挟まっていたものだ。理央に見とがめられる前に、こっそり回収し、トイレで目を通した。

 

 差出人は、敦子が気にかけていた人物だった。大事な話があると、時間と場所の指定がされている。

 

 だが、これは非常に胡散臭い、と彼女は感じていた。

 

 手紙の字が、敦子の記憶にあるものと、印象が異なるのだ。彼はもっと、筆圧が強い、汚い字を書いていたはず。こんな、薄い丸文字は書かなかった。

 

 敦子の予想が正しいなら、これを書いたのは、おそらく――。

 

 いつまでも、逃げるわけにはいかない。負け犬に甘んじてやる理由もない。

 

 一つ深呼吸して、敦子は待ち合わせ場所に向かった。

 

 

 

 

 

 待ち合わせ場所は、別荘の裏手にある、林の中だった。

 

 雨が降りそうな曇りで、念のため傘と懐中電灯を持って出た敦子に、その声は傲岸不遜といった響きを隠さずに、向けられた。

 

 「はぁい。ちゃんと来たのね、敦子」

 

 「知佳子・・・」

 

 毒々しい真っ赤なルージュをしならせる池田知佳子に、敦子は顔をゆがませた。

 

 案の定、手紙は真っ赤な嘘だったのだ。

 

 「あんな手紙にホイホイ誘われるなんてね。新しい男見つけたとか言ってたけど、やっぱり未練たらたらなんじゃない」

 

 「・・・竜條寺君や高橋君のことはあなたには関係ないわ。それより、嘘の手紙まで使って、何の用?」

 

 「あら、ずいぶん偉そうに言えるわね。何様のつもりかしら」

 

 突き放すように言った敦子に、知佳子はふんと鼻で笑う。

 

 「聞いたわよ?勝手に大学辞めて、どこで何やってるかと思えば・・・どうせ売れもしない、へたくそな落書き、出版社に片っ端から持ってって、突っぱねられてるんでしょ?」

 

 「・・・だとしても、あなたには関係ないでしょ?何度も同じことを言わせないで」

 

 つっけんどんに言い放つ敦子に、しかし知佳子はひるみもしない。

 

 「関係なら大有りよ。喜びなさい」

 

 勝ち誇ったような、それでいてせせら笑うような響きで、知佳子は言う。

 

 「さっきも聞いたと思うけど、『青の王国』ね、今絶賛放映中でしょ?で、それに伴って続編を出そうってことになったのよ」

 

 「・・・だから?」

 

 「あんた、あれの続編書きなさい。私の代わりに」

 

 「……………は?」

 

 一瞬思考が停止したものの、何とか気を取り直して敦子は聞き返していた。

 

 この女は、こんな恥知らずの、大馬鹿野郎だっただろうか?敦子には彼女の思考回路がさっぱり理解できない。

 

 あるいは、敦子が人を見る目がなさ過ぎたのか。

 

 「聞こえなかった?続編を書きなさいって言ったのよ。ほんっと、愚図なんだから。映研にいたころからずっとそう」

 

 仕方ないわね、というように溜息をついた知佳子に、敦子はたまらず反論した。

 

 「『青の王国』は、あなたが書いたんでしょう?あなたの作品なんでしょう?盗作したのは私の方なんでしょう?

 

 なんでそんな作品の続きを私が書かなきゃいけないの?」

 

 「はあ?!あんたが書いたのを、私が読みやすく直してやったのよ!プロデビューはちょっとしたお駄賃よ!それのどこが悪いの?!むしろ感謝してほしいくらいね!わかったら、さっさと書きなさいよ!

 

 ・・・ああ、それとも、金が欲しいの?いくら?いいわよ、私、今余裕あるし」

 

 へらへらと笑う盗作女に、いよいよ敦子は苛立った。

 

 この女は敦子から作品を盗んだくせに、その先なんて知らないと、責任を放棄したのだ。その癖、評価だけをかすめ取ろうとしている。そんなことを許せるわけがなかった。

 

 「・・・書けないんだ。さすがは盗作女ね。ずいぶんな貧困な発想力だこと。ああ、だから盗作したんだ。ふーん。そうなんだぁ」

 

 敦子はこみあげてきた嘲笑をそのまま知佳子に向けてやると、彼女は明らかにむっとしたような顔をした。

 

 「いくら積まれても、そんなもの書かないわ。あの作品は、あなたにあげる。勝手にしたらいいわ。だから私にはもうかかわってこないで。正直、顔を見るのも嫌なの」

 

 きっぱりと、敦子は言い放った。

 

 2年前の彼女を知る人間が今の彼女を見ればぎょっとするかもしれない。

 

 そのころの彼女は、一番下っ端の雑用係で、自分から何か意見を口にすることもない、自他ともに認める地味女だったからだ。

 

 しかし、そんな彼女でも、こればかりは我慢できなかったのだ。

 

 「いいから書けって言ってんだよ!地味女が!お前に他にどんな取り柄があるんだよ!ああ?!」

 

 途端に、知佳子は激高した。お綺麗なメイクの下に隠していた、どす黒い本性がさらけ出されたとでもいうべきか。

 

 カッと眉を吊り上げ、隠し持っていたらしいナイフを振りかざす。

 

 「嫌っていうなら、あんたを殺すわよ?ああ、それとも、足でも切って、歩けなくして、監禁してやろうか?そうしたら、あんた、あたしに頼るしかなくて言いなりになってくれるわよね?」

 

 知佳子が威嚇する。

 

 監禁の下りで、そのルージュを塗りたくった唇がニタッと吊り上がる。いいアイデアだといわんばかりに。

 

 「聞き分けのない愚図には、お仕置きぐらい必要よね?」

 

 急ぎ敦子は荷物にしかならない傘と懐中電灯を彼女に投げつけ、踵を返して駆け出した。

 

 鈍臭いと自他ともに認める彼女だが、2年前の自殺未遂直後の騒動のせいで多少の危機管理能力と逃げ足のよさは否応なく高くなった。

 

 「死ねえ!敦子ぉ!」

 

 振り向かずと知佳子が追ってくるのは分かった。二つとも当たりもしなかったらしい。

 

 林の中に逃げ込んだ敦子は、降り始めた雨にどうしようと逡巡する間もなく、強く腕をつかまれ、近くの茂みの中に引きずり込まれた。

 

 悲鳴も上げないように口元を抑えられる徹底ぶりだ。

 

 立てた人差し指を口元に当てる静かにのジェスチャーを取りながら、敦子を抱きかかえるように匿うのは、竜條寺だ。

 

 「どこに行ったぁ?!」

 

 まるで鬼のような声で叫ぶ知佳子に、竜條寺は適当に拾い上げた石を、あらぬ方向に投げる。

 

 ガサリッと離れたところにある茂みを揺らしたその一投に、知佳子はさながら幽鬼のようにグリンとそちらに首を巡らせ、薄ら笑いをしながら「そこぉ!」と駆け出した。

 

 知佳子の気配が完全に遠のいたのを確認し、竜條寺は敦子の口元から手をどけた。

 

 「あほか。一人で突っ走るやつがあるか。俺が気が付いたからよかったものの。下手すりゃお前、あの世行きだったぞ」

 

 呆れと怒りを多分に含んだ声に、敦子は申し訳なく縮こまる。

 

 けれど、それでも。

 

 「ごめん。でも、知佳子とは、決着をつけなくちゃいけない、と思って。

 

 ・・・あそこまで恥知らずとは思わなかったけど」

 

 「まあ、そんだけ切羽詰まってんだろ」

 

 「どういうこと?」

 

 「あの女、売れっ子の脚本家って言ってるが、『青の王国』以外、パッとしねえんだよ。オリジナルとなると、特に。

 

 そこに、続編の話だ。何が何でもこのチャンスをものにしたかったんだろ?

 

 加えて、今のところ口をつぐんじゃいるが、オリジナルの原作者はここにいることだしな」

 

 「・・・私、もう」

 

 「ああ。書きたいものだけ書きゃいい。物書きなんざ、そんなもんだ」

 

 グシャリッと敦子の髪をなで、竜條寺は苦笑する。

 

 直後、彼は表情を険しくすると、再び敦子に静かにと身振りで伝え、茂みに身をひそめる。

 

 ガララ、と何か重いものを引きずる音がした。徐々に、こちらに近寄ってくる。

 

 降りしきる雨に、轟き始めた雷鳴。稲妻のほんの一瞬閃光に、そのシルエットは照らされる。

 

 それは、昼間に吊り橋のたもとで見かけた、チューリップハットに黒マントの男だった。何か、重い金属製のものを引きずっているらしい。二人の隠れる茂みからは、木の陰になっているのもあって、よく見えない。

 

 暗い森の中にひっそりたたずむその様は、完全にホラー映画のワンシーンだ。

 

 「敦子ぉぉぉぉ!どこ行ったぁぁぁぁ?!」

 

 面倒なことに、知佳子が引き返してきたらしい。

 

 叫び声と足音が、どんどんこちらに向かってきている。

 

 面倒なことになったと竜條寺が舌打ちするより早く、チューリップハットの男が動いた。両の手をかけて、持ち歩いていたそれを高々と振り上げる。

 

 それは、分厚く鋭い刃を備えた、禍々しい凶器――斧だった。

 

 「敦子ぉっ!・・・え?」

 

 鬼のような形相だった知佳子が、ここかとばかりに茂みから飛び出すが、次の瞬間呆ける。

 

 探し求めた女ではなく、予想外の不審人物がいれば、当然だろう。

 

 そのまま、男は斧を振り抜いた。知佳子の首をちょん切らんばかりに。

 

 「危ない!」

 

 とっさに敦子は茂みから飛び出した。

 

 そのまま知佳子に体当たりするように、彼女を押し倒した。おかげで、斧の刃は、彼女の首のあった空間を素通りするだけで済んだ。

 

 空振りに終わった斧が、ガツッと近くの木の幹に突き立った直後、悲鳴が上がる。

 

 「ひっ、きゃあああああああぁぁぁぁ!!」

 

 知佳子は敦子を押しのけ、もんどりうって逃げていく。髪も服も泥と雨でぐしゃぐしゃだ。

 

 「つうっ・・・あ・・・?」

 

 体を打った敦子が、さすりながら立ち上がろうとしたところで、彼女は現状を把握する。してしまう。

 

 立ちはだかるチューリップハットと黒マントに、顔を包帯でぐるぐる巻きにした不審者。ズコッと斧を木の幹から引き抜き、再びその刃を振りかざそうとする。

 

 「あ・・・!」

 

 しりもちをついたまま後ずさろうとする敦子は、それでも魂まで屈するかと言わんばかりに、男を睨みつける。

 

 こんな奴、時々見かける、常識外の化け物なんかより、はるかにマシだ。

 

 それに、敦子はまだ、終わってない。

 

 グイっと猫のように襟首をつかまれ、敦子はそのまま後方に放り投げられる。

 

 「別荘の連中をたたき起こして来い!ここは俺に任せろ!」

 

 盾のように立ちはだかり、ファイティングポーズを男に向ける竜條寺に、敦子は大きく頷いて「竜條寺君!気を付けて!」と言い残すと、地面を掻くように立ち上がり、そのまましゃにむに駆け出した。

 

 逃げ足はともかく、鈍臭い敦子ではいても邪魔になるだけだ。

 

 ならば、彼女は彼女でできることをするだけだ。今、彼女がするべきは、助けを呼ぶ、その一択だ。

 

 

 

 

 

 おいおい、ご丁寧に包帯男モードで来やがったぞ、コイツ。

 

 それが竜條寺が一番に抱いた感想だった。確か、この犯人、殺しの時は変装なしで実行していたのでは?と思うが、すぐに竜條寺はノーを突き付ける。

 

 斧で首チョンパなんて、いくら雨が降っていようと、返り血を被ることになる。それでは犯人は自分だと自白するようなものだ。返り血を誤魔化すためにも、この衣装できたのは正解だろう。

 

 「おら、かかって来いよ、ダークヒーロー気取り」

 

 クイクイと、指先をまげて不敵な笑みで挑発する竜條寺に、ギリッと歯を鳴らして男が動く。

 

 ブオンッと斧がうなりを上げるが、竜條寺は軽々とそれをよける。

 

 当たれば、一撃で行動不能、下手をすれば部位欠損もありうる恐ろしい凶器だが、竜條寺からしてみればモーションも大きく、使い手の動きも素人同然ゆえに、よけてくださいと全力で言われているようなものだ。

 

 いかに竜條寺が、現在は左手が義手であろうと、原作では最終兵器ラン=ネーチャンを肉弾戦で追い詰めたチートスペックの持ち主なのだ。組織に所属していたころ以上に業務内容はハードでもある。体はなまっていない。

 

 「そらよ!」

 

 伸びあがるような蹴りで、斧の柄を蹴り砕く。

 

 くるくると空中高く放りあがり、放物線を描いて落ちてきた斧の刃を、そのまま右手で挟み持つようにストッとつかみ取る。

 

 「まだ続けるか?」

 

 ボトッとそのまま刃を地面に落とし、にぃっと不敵に笑う竜條寺に、包帯男は後ずさった。

 

 「こっちか?!」

 

 「竜條寺君!大丈夫?!」

 

 「おおい!返事しろ!」

 

 複数の足音と、ちらつくライトに、さらに包帯男がたじろぐ。

 

 「逃げた方がいいんじゃねえか?お帰りはあっちだ」

 

 あらぬ方向を指さす竜條寺に、包帯男は負け惜しみ代わりに斧の柄を投げつけてから踵を返す。

 

 一歩体をずらすだけでその一撃を軽くよける竜條寺は、大きく息をついた。

 

 どうにか、最悪の事態は阻止できたらしい。

 

 駆けつけてきた連中に、竜條寺はいつも通りに肩をすくめながらぶっきらぼうに言い放った。

 

 「よう。遅かったな」と。

 

 

 

 

 

 包帯男の武器を壊し、逃げられたと語った竜條寺に、他のメンバー(ほとんど寝間着でとるもの取らない格好である)が折れた斧を発見し、何だこのゴリラ?!と驚愕する中、敦子は「さすが竜條寺君!」と素直に称賛していた。

 

 ・・・大分、彼女もこの辺りの感覚がマヒしているらしい。

 

 そして、武器もなくなったとはいえ、不審者がまだいるならと急ぎ別荘へ引き返そうとなった。

 

 その途中、泥だらけで目を回している知佳子も発見された。転んで頭を打ったか、たんこぶはあるが、命に別状はないらしい。(ナイフは逃げ回る途中で落としたようだ)

 

 別荘に帰ったところで、不眠症のために薬を飲んでて、今やっと気が付いたらしい高橋が顔を出してきたが、ともあれ、全員無事に済んだ。

 

 念のため、吊り橋を明日確認しようということになった。

 

 

 

 

 

 さて、翌朝である。

 

 包帯男のことを聞かされ、「斧がなくなっても何してくるかわからないだろう!」とパニックを起こした高橋が、そのまま吊り橋のところにかけていくが、何と吊り橋が切れていることが発覚。

 

 さらに、朝になってやんでいた雨が、再び強く降り出したので、一同は別荘に再び避難を余儀なくされたのである。

 

 なお、包帯男に襲われた知佳子は、ショックのため部屋に閉じこもって寝込んでいるらしい。

 

 

 

 

 

 そんな中、朝食をもそもそとかじっていた竜條寺は、朝から隣の愛する女が落とした爆弾で、誤嚥しかけた。

 

 「ねえ、何で高橋君、太ったふりしてるの?」

 

 コイツ、いつも唐突で心臓に悪いこと言いやがる!知っていたが!敦子がそういうところがあるの、知っていたが!

 

 「ふ、ふり?」

 

 「おいおい、敦子。こいつは学生だった頃から太ってただろ?今だって100キロ超えたって・・・なあ?」

 

 「敦子、いきなりどうしたの?」

 

 「・・・根拠は?」

 

 顔を見合わせるほかのメンバーに対し、隣の理央が冷静に尋ねる。

 

 

 

 

 

 ・・・彼女は、昨夜の敦子の無断外出に、相当お冠で、ずぶ濡れ泥だらけで帰ってきた敦子を、年に見合わぬ論調で冷徹に説教した。

 

 さすがに、敦子も理央には平謝りに謝るしかなかった。保護者としての自覚がない行動だったと心底反省している。

 

 

 

 

 

 「指先と足音かな?

 

 多分、高橋君、おなか以外もお尻や太ももとかに詰め物してるだろうし、口の中にも綿入れてるみたいだけど、100キロ越えしてたら、もっと指先もプクプクしてると思うの。高橋君の指先は、体形の割に細くてアンバランスだなって。

 

 あと、足音も100キロ超えてるにしては、軽そうに聞こえたから」

 

 「あー!思い出したー!」

 

 理路整然と並べたてる敦子に、毛利蘭が大声を上げた。

 

 「昨日!間違って部屋を覗いた時、着替え中のところ見たんですけど、この人、ほっそりしてたんです!」

 

 「そうなの?蘭」

 

 「うん!間違いないわ!」

 

 ノックしねえから余計なもの見て原作で口封じ狙われるんだよ、お前は。そういうところだぞ、本当に。

 

 ようやくむせが治まった竜條寺が、内心でそうツッコミを入れる。

 

 「思い出した思い出した♪すっきりしたー♪」

 

 毛利蘭はにこにこと、悪気なさそうな無邪気な笑みを浮かべているが、すべてを暴かれた高橋は蒼白だ。

 

 体形が異なるという印象を用いて容疑者から外れようという殺人トリックの計画は、これで完全に粉砕されたわけだ。

 

 なるほど、わざとか。

 

 竜條寺はひそかに、不思議そうにしているだけの敦子を見やった。

 

 彼女も、何も考えてないように見えて、なかなか計算高い一面を持つのだから。

 

 「おいおい・・・何で高橋がそんなことする必要があるんだよ?」

 

 「・・・まさかとは思うが、昨日のあれ、お前の仕業じゃねえだろうな?」

 

 角谷と太田が口々に高橋に食って掛かるが、肝心の高橋本人は沈黙するしかない。

 

 こんな形で計画が破綻するとは、思っても見なかったのだ。

 

 「そんなわけないじゃない。高橋君、きっとサプライズしようってしてたんじゃない?おなかの中に道具とか入れて、ぶわーってマジックみたいに脅かそうって」

 

 「・・・ねえ、だったら何でこの場で体形のこと、ばらしたの?その方がサプライズ、楽しめたと思うわよ?」

 

 「あ。ごめんね!高橋君!」

 

 理央の冷静なツッコミを受けて、敦子はアワアワと謝るが、対する高橋はぎこちなく「いや、いいよ。どうせ、受けなかったと思うし」と笑う。

 

 どうやら、敦子の“嘘”に乗じるようだ。

 

 賢明な判断だ。あとは、釘でも刺せば大丈夫だろうか。

 

 この雨のせいで救助も動けないらしいが、犠牲者も出てない今なら「運悪く吊り橋が切れただけ」で済むのだから。

 

 そんなことを考えてるとはつゆとも見せずに、周囲に呆れられ、誤魔化し笑いを浮かべる敦子を見ながら、竜條寺は食後のコーヒーをすすった。

 

 まったく、相変わらず貧乏くじを引く女だと、内心苦笑しながら。

 

 

 

 

 

 幸い、電話線も切られておらず、嵐がやんで救助が来るまでの間待とうということで各々過ごす中、敦子と高橋は別荘の裏口付近にいた。

 

 「・・・話って何だい?」

 

 「ごめんなさい、高橋君」

 

 少し硬い調子で尋ねる高橋に、敦子は頭を下げた。

 

 「もっと早く、連絡するべきだった。あんなひどいことも言って。優しい高橋君だったら、心配するって想像できたはずなのに」

 

 「君が謝るようなことじゃない!」

 

 高橋が叫んだ。

 

 「謝るのは僕の方だ!肝心な時に力になれなくて・・・ごめんよぉ、敦子ぉ・・・!」

 

 涙ぐむ高橋に、敦子は首を振った。

 

 「高橋君のせいじゃないよ。

 

 ・・・じゃあ、お互い様ってことにしておこう。

 

 2年前のあれは、これでおしまい。ね?」

 

 「・・・敦子、君は」

 

 「怒ってないって言ったら嘘になるけど・・・もういいかなって」

 

 もの言いたげにする高橋に、敦子はどこか寂しげに苦笑する。

 

 「そうだ!いいもの見せてあげる!みんなには内緒にしてね?」

 

 ポンと手を打った敦子だが、直後固まった。

 

 「ご、ごめん!部屋に置きっぱなしだった!取ってくるね!ちょっと待ってて!」

 

 ぱたぱたと滞在している部屋に向かってかけていく敦子と入れ違いになるように、竜條寺が現れた。

 

 高橋は敦子相手に向けていた優しい瞳を消すや、険しい表情で睨みつける。

 

 「・・・何の用だ」

 

 「大したことじゃない。ただ、あいつの気持ちを無駄にすんなよ、って釘を刺しに来た。

 

 あいつ、お前がやろうとしたこと、勘づいてるぞ。そのうえで、朝食の時にああいう話をしたんだ」

 

 唸るように尋ねた高橋に、竜條寺は飄々と言った。

 

 「・・・何のことだ?」

 

 「そうだ、それでいい。人殺しの理屈付けに名前を挙げられたら、優しいあいつは絶対責任感じるぞ。俺としても勘弁できねえからな」

 

 「あんたに何がわかる!」

 

 「少なくとも、すぐに暴力持ち出そうとする奴よか、わかってるつもりだ。

 

 好いた女を、そいつのためなんて名目で泣かせるな。

 

 ま、あのクズ女をのさばらせる理由もないが・・・それも、近いうちにどうとでもなるだろ。

 

 と、そんじゃな」

 

 ヒラッと手を振って、竜條寺はその場を去る。ふたたび彼と入れ違いになるように、敦子が現れた。

 

 「さっき竜條寺君が出てきたんだけど、何か話してた?」

 

 「大したことじゃないさ・・・それは?」

 

 首をかしげる敦子に、高橋はことさら何でもないように言った。

 

 あの戦闘能力といい、思わせぶりな発言といい、不気味な男だが、敦子はそのあたりもわかったうえで付き合っているのだろうか。

 

 ・・・2年前に、彼女を助けられなかった高橋には、もはやそれを案ずる資格もないのだろうが。

 

 「私のデビュー作なの」

 

 高橋の問いに、にっこり笑って敦子が差し出したのは、文庫本となった『塩の孤島』だった。

 

 「デビュー・・・?」

 

 「私、小説家やってるの。潮路敦紀ってペンネームでね。作風とか、だいぶ変わっちゃったけど、連載もあるし、何とかやっていけてるわ」

 

 敦子の言葉に、高橋は大きく息をのんだ。

 

 「よかったら読んで、また感想をくれるとうれしいな。高橋君の応援は、本当に嬉しかったから」

 

 屈託なく笑う敦子に、高橋はふと、訊きたくなった。

 

 「・・・処女作の方はいいのかい?」

 

 「あー・・・うん、もういいかなって。私から訴えるのは簡単だけど、あの作品でご飯を食べている人、今じゃ他にもたくさんいるみたいだからね。

 

 彼女のためじゃなくて、その人たちのために、何も言わないことにするの。

 

 許したってわけじゃないけど、もういいかなって。

 

 だから、高橋君も・・・ね?」

 

 本当に勘づかれてたらしい。溜息をつくように、高橋はうなずいた。

 

 「・・・わかったよ。君がそう望むなら」

 

 「ありがとう!」

 

 今度こそ、敦子は花がほころぶように笑うと、そっと高橋の耳元に背伸びするようにささやきかけた。

 

 その言葉を、高橋はけして忘れない、と思った。

 

 『やり方は間違ってたけど、気持ちは嬉しかったから。だからありがとう、高橋君』

 

 「読むよ。他のシリーズも全部。読んだら絶対ファンレターを書く!絶対だ!」

 

 たまらず、高橋は言った。

 

 殺人を犯そうとした自分が彼女の隣に行くのは、まぶしすぎる。けれど、一ファン、あるいは友人としてなら。

 

 止めようとしてくれた彼女に、報いていこう。高橋はそんな気持ちとともに、渡された『塩の孤島』の文庫本を抱えなおした。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 ようやく嵐は収まり、救助隊によって、一同は無事、別荘を後にした。

 

 去り際、げっそり憔悴した知佳子に、敦子が追い打ちをかけているのに、竜條寺と高橋は、ざまぁみろという気分にならずにはいられなかった。

 

 「そうだ、知佳子。『青の王国』、続編を出すんですって?おめでとう。

 

 私の知り合いにもファンが多いから、きっと楽しみにされてるわね」

 

 「・・・え?」

 

 「きっと、知佳子なら、以前以上に素敵な話の続きを書けるわよね?

 

 だって、知佳子が書いた話ですもの。まさか盗作したわけじゃあるまいし。

 

 そうでしょ?」

 

 ガタガタ震えだした知佳子は、ようやく思い知ったのだろう。彼女を見やる敦子の、眼鏡の奥の瞳には、冷徹な光が灯っていることに。

 

 あっけにとられたような顔で敦子を見上げる理央に、竜條寺は小さく笑って、その耳元にささやくように言った。

 

 「あいつ、もういいかなとは言ったが、許すとは一言も言ってなかっただろ」

 

 「・・・そういうこと」

 

 ため息をつくようにうなずいた理央をよそに、話は続く。

 

 「これで前作に泥を塗るような駄作を書いたり、出版の話自体がなかったことになったら、ひょっとしたら盗作だったって話が持ち上がるかもね」

 

 「大丈夫さ、敦子。知佳子は映研にいたころから監督兼脚本家をして、あの作品で受賞したんだ!きっと期待に応えられるさ!」

 

 要は、変なことしたら盗作だって訴えてやるからな!と脅す敦子と、さわやかに追い打ちに便乗する高橋に、竜條寺は吹きそうになった。

 

 まあ、池田知佳子の前途は多難だ。何しろ、まだ効果が出てないが、竜條寺の仕返しだって残っているのだから。

 

 「ま、頑張ってくれや」

 

 「ええ。心配いらないでしょ」

 

 さり気に便乗した理央と、怪訝そうな顔をするほかのメンバーをよそに、知佳子一人が青ざめていた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 “かつて、私の心の奥には『空色の国』がありました。ですが、それはもう、塩の島に塗りつぶされてしまったのです。あの波音と、怪物の咆哮と、のぞき込む“彼ら”の前に、ちっぽけな青い春なんて、何の意味もないと悟らざるを得ませんでした。”

 

 

 

 

 

 そんな出だしで始まっていた『塩の孤島』を、高橋は先日ようやく読み終えた。

 

 狂気と絶望、不気味さを感じずにはいられない、『空色の国』とはまるで異なる作風のそれは、一読しても同一作者のものとは思えないだろう。

 

 けれど、それは文章の節々に、確かに敦子の描く物語の人々の心を、不思議な魅力を感じられずにはいられなかった。

 

 仕事の合間の休憩時間を用いて、高橋は潮路敦紀のシリーズを読んでいた。

 

 

 

 

 

 仕事に復帰すれば、同僚から同窓会での事故を心配された。

 

 ・・・ついでに、復帰した時に自分の計画のずさんさにも気が付いて、頭を抱えたくなった。

 

 高橋は食品加工業という仕事の関係上、衛生的関係で白いつなぎのような作業着を身につけている。その関係で仕事においては本来の体形で出社しているのだ。つまり、あとから警察が調べたら、同窓会出席時の体形の不自然さがあっという間に発覚してしまうということだ。

 

 復讐を計画していた時は、完璧だ!と自画自賛したものだが、計画が瓦解して、あとから冷静に考えたら発覚する大穴。何をやってるのだ、と自分で頭を抱えてしまった。

 

 止めてくれた敦子と、・・・気に入らないが、竜條寺にも、感謝をしなければ。

 

 

 

 

 

 そして、つい先日、発刊されたばかりの『ダークサーチャー』シリーズの最新刊に、ようやく目を通しだした。

 

 そこで、高橋は大きく息をのんだ。

 

 主人公、リーシュの強敵として立ちはだかる、新キャラクターに、既視感にも似た懐かしさを覚えたのだ。

 

 顔を包帯で覆い、山高帽を深々とかぶり、黒マントを羽織って斧を持った、ホーリッジという怪人。

 

 高橋は、英語で直訳すると、ハイブリッジ。高を鷹に直し、さらに鷹は英語でホークなので、それをさらにもじったというところだろうか。

 

 多少格好は変えられているが、間違いない。

 

 こぼれそうになった涙を、ぐっとこらえた高橋は、時計を見て我に返る。

 

 そろそろ業務再開だ!

 

 仕事が終わったら本屋によろう。この刊を、布教用と、保存用に、あと二冊は買わないと!

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 「そういえば、ストーカー、ぱったりでなくなったね。どうしたんだろ」

 

 「そりゃお前、お前に何かするどころじゃなくなったからだろ?」

 

 敦子と竜條寺の二人は、とある喫茶店で久々のデートを楽しんでいた。

 

 敦子の問いにしれっと答えたのは、竜條寺で、彼は下世話なことを特集するので有名なとある女性週刊誌を無造作にめくっていた。

 

 それには、とある若手脚本家が、有名な大御所作家と不倫したと大見出しですっぱ抜かれていた。

 

 それがもとで、作家の奥方の悋気で大炎上しているとのことだ。場合によっては刃物沙汰もあり得ていたほどの有様である。

 

 これが、竜條寺の仕返しだった。竜條寺、というより、彼が敦子と知り合うきっかけとなった2年前の事件の際に居合わせたほかのメンバーにジャーナリストがいて、彼女に池田知佳子のことをたれ込んだのだ。

 

 女性ながらにジャーナリストをする彼女は、かなりの辣腕ぶりを発揮し、見事醜聞をすっぱ抜いて見せたというわけだ。(彼女も敦子のファンでもある)

 

 「・・・やっぱり、犯人、知佳子だったんだ」

 

 「いつ勘づいた?」

 

 「例の呼び出しの手紙をもらった時かな?あの手紙の字と、中傷の手紙の字が、同じだったな、て」

 

 「何で何も言わなかった」

 

 「それどころじゃなかったし。あとで槍田さんに言えばいいかなって。あ、もう報告はしてあるから。

 

 それに、竜條寺君も環さんと一緒にコソコソやってたみたいだし」

 

 バレテーラ。と竜條寺は内心で舌を出した。

 

 なお、環というのは、池田知佳子の醜聞を探り当てたジャーナリストのことである。フルネームで仁野環という。

 

 なお、呼び出しの手紙もとってあるので、後日それらの筆跡鑑定などと併せて、池田知佳子をストーカーで訴える予定でもある。

 

 彼女にとっては泣きっ面に蜂かもしれないが、すがすがしい自業自得であろう。実際、竜條寺も敦子も、同情は全くしてない。

 

 「ほんっと、あの人っておバカさんなんだから。こんな人だったかな?」

 

 まあいっか。

 

 小首をかしげ、敦子は紅茶を飲んだ。

 

 実のところ、竜條寺はもちろん、おそらく敦子にも見当はついている。

 

 おそらく、原因は『青の王国』の続編だ。敦子に執筆を断られ、そのくせ出来が悪かったら盗作で訴えると脅しをかけられれば、その後の社会的信用にもかかわると、池田知佳子はどうにかしようと必死に足搔いたのだろう。その結果が売春紛いの枕営業であったとしても。

 

 そんなに作家になりたいものかね?素直に身の丈に合った幸せを求めて、それに満足していればよかっただろうに。

 

 竜條寺はそう思ったが、幸せなど本人にしか定義はできないだろうと、それについての思考を放棄することにした。

 

 「それより、何だ。この間の新刊。同僚どもに肩をたたかれて、ドンマイなんて言われたぞ」

 

 「ああ・・・この間の事件で見かけた人をモデルにしたからね。かなり思い入れが出ちゃったから、それでかなあ?

 

 今回、リーシュと引き分けた感じにしちゃったからね」

 

 「次回勝たせろよ?」

 

 「・・・竜條寺君、何のかんの言ってリーシュのこと気に入ってるんだね?」

 

 「相手が気に入らねえ。あのホーリッジって野郎、あいつどう読んだってあの野郎だろうが」

 

 「うーん・・・ごめんね?」

 

 「ったく、しょうがねえな」

 

 ペロッと舌を出した敦子に、竜條寺は苦笑して、コーヒーをすすった。

 

 

 

 

続けぇ!伯父貴ぃ!

ぐわぁぁぁぁ!兄貴やな!兄貴の差し金、げぶっ?!




【寝起き最悪の発言爆弾魔、新米小説家の徳本敦子さん】
 一応今回の話の主人公。
 原作登場はコミックス5巻『山荘包帯男殺人事件』から。
 原作では敦子としか呼ばれてなかったと思ったのですが、アニヲタwikiの方では苗字が徳本とされているので、そちらからとりました。
 原作においては、2年前に映研の部室で首吊り自殺を行っている。
 本シリーズにおいては、バタフライエフェクトで自殺場所を自宅、さらに首吊りではなく睡眠薬+リスカによる失血死と条件が変更されている。
 そのため、彼女の意識は某邪神(ナイアさんにあらず)によってサバイバルセッションである中、現実では異変を察知した両親によって病院に担ぎ込まれていた。このため、一命をとりとめる。
 なお、自他ともに認めるほど、地味で鈍臭い。探索者としてはいわゆるカスステとクソ技能持ち。
 しかしながら、諸事情からSANチェック用ダイスが仕事を放棄し始め、一人だけSANチェックが一切ない、バグ状態になったというのは余談。赤井さんとは異なり、肉体的には貧弱なので、物理的にすぐに死ぬ。
 意識を回復後、病院を退院、大学を中退して、書き上げた小説(多少の改変やフェイクを交えたサバイバルセッションのノベライズ)を出版社に持ち込み、プロデビューすることになる。
 一応、現時点では湯川理央ちゃんを引き取っているので♯28以降の出来事であるとは確定している。
 基本的に生活スタイルがグズグズのダメ人間の部類に入る。夜更かし朝寝坊の常習犯であり、寝起きが最悪に悪い。
 また、2年前の出来事のせいで、特に書きかけの自分の作品を覗き見ようとする人間に、過剰なまでの反応を見せる。おかげで理央は彼女の寝室兼仕事場に立ち入り禁止を言い渡されている。
 今回、ストーカー被害に遭い、悩んでいたところを槍田探偵事務所、そして竜條寺に相談。
 さらに、絶交したはずの映研のメンバーから同窓会に誘われ、うかつに断るわけにも・・・となったため、竜條寺を護衛に、理央もつれて同席することになる。
 しかしながら、その後夜中に盗作犯である知佳子に呼び出され、『青の王国』の続きを書くように強要されるが、これを拒否。
 逆上した彼女に襲われかけるが、間一髪のところを逃亡し、竜條寺にかばわれる。
 さらに、謎の包帯男に襲われた知佳子をかばうが、礼も言われずに逃げられた。
 基本的に鈍臭いが、自分ができることはわきまえているので、さっさと助けを呼びに行った。
 翌日の朝食の席にて、高橋の体形をしれっと暴露し、彼の殺人計画を完膚なきまでに叩き壊した。
 証拠はなくとも、うっすらと何をしようとしていたか確信しており、自分の現状を告白して、大丈夫だから、復讐なんかやめよう?と説得。
 大切な友人だからこそ、手を汚してほしくない。
 なお、彼女は完全に竜條寺に乗り換えており、高橋とは終わったと思っている。
 でも、やろうとしてくれたこと自体は嬉しかったので、小説のキャラクターに採用した。余談ながら、このホーリッジは後日スピンオフを出すほど人気が出ることになります。
 でも知佳子は絶対許さない。だから続編執筆依頼なんか絶対受けてやらないし、私の作品だった『青の王国』を汚したら、絶対に盗作で訴えてやると脅迫する。
 後日、実はストーカー犯でもあった知佳子が無事、身を滅ぼしたのを知る。

【好きな女のために身を張ったり、塩を送ったりした竜條寺さん】
 成り代わり転生者な、元アイリッシュにして現竜條寺アイルさん。
 今回においては、唯一といっていい原作知識持ちのため、敦子さんの同窓会の話を聞くなり、アッ(察し)となった。
 2年前の時点で、彼は組織脱退の際に大けがを負って意識不明の重体に陥っており、このため強制的に敦子さんのセッションに同席した。(現在欠損中の左手左目も、この時の負傷による)
 この時に、敦子さんが盗作されたことを拗ねていたため、叱咤激励して立ち直らせる。(敦子さんは理央ちゃんに対して病院で知り合ったように語っているが、実際はセッションで知り合った)
 ぶっちゃけた話、以前も記した上、自覚もある通り彼は身勝手な人間なので、高橋が殺人しようが知佳子がそれで死のうが、知ったこっちゃなかった。世の中なんて、突き詰めれば自業自得なので。
 が、敦子さんがそれでも知佳子をかばったため、しょうがないな、と一肌脱ぐことにした。
 決して知佳子本人のためではなく、彼女が死ねば責任を感じるだろう敦子さんのために。
 原作映画では、最終兵器とも揶揄される蘭ちゃんの攻撃をいなした挙句、戦闘不能にまで追い込むというチート身体能力を発揮していたので、片腕欠損していても斧持った素人を軽々といなす。
 コナン世界のスパイやら特殊工作員やらは、あそこまで武術に優れなければならないのだろうか?(キュラソーさんや、『絶海~』のスパイを見ながら)
 翌日、敦子が落とした高橋さんの体形の真相という爆弾に、盛大にむせた。
 すぐに、高橋さんのこと勘づいてて辞めさせるために言ったのだろうなとは察するが、それにしても心臓に悪い。
 その後、高橋さんと敦子さんの話し合いも、こっそり盗聴。途中、高橋さんが逆切れしたりしたら助けに入るつもりだった。
 が、余計な世話だったかな、と思いつつ、「やめさせたの、敦子のためだぞ?好きな女泣かせんな、アホ」と威嚇。
 さらに、敦子さんと高橋さんが二人して、知佳子に追い打ちかけているのを見ても、ざまぁ、としか思ってない。
 後日、知佳子が無事身を滅ぼした記事を見て、留飲を下げた。
 なお、この記事は彼が懇意にしているジャーナリスト、仁野環さん(原作登場は劇場版『瞳の中の暗殺者』から)によるもので、彼自身も情報提供した。
 敦子さんはもういい(=ちょっかいもかけずに放置)を望もうと、彼自身はそれを許すとは欠片も思ってない。
 それまでは敦子が望むならと思っていたが、ストーカーの犯人発覚によって、堪忍袋の緒が切れた。
 敦子さんの出した新刊の内容はちょっと複雑。新しく出された新キャラのモデルが、どう見たって先日のあれが原因のため。
 でも、ここで嫉妬全開にするのは大人げないと思っているので、大人の余裕を必死で演出。がんばれ、竜條寺さん。
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