邪神様が見ているin米花町   作:亜希羅

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 そこは、米花町。

 蒙が啓かれ、狂気と憎悪の果てに罪を犯した罪人が集う街。

 探偵たちはみな東都に向かい、そして予言の意味を知る。

 “正気は失われ、星辰は満ちて旧き支配者たちが玉座に戻る”

 星辰が正しき位置に並ぶとき、古きルルイエは浮上し、眠りにつく旧き支配者たちが、米花の地に満ちるものを駆逐して、戻ってくるだろう。



【#5】月影島で私と握手!あれ?私が主人公のはずじゃあ?

【#5】月影島で私と握手!あれ?私が主人公のはずじゃあ?

 

 

 

 いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。

 

 前回までのあらすじ。

 

 月影島まで行ってきましたぁん!

 

 攻略本にここぞとばかりに女装男子、浅井成実君の記述がガッツリ書いてあったから、面白そうって見に来たんですが、あらヤダ更に面白そうなことになってるじゃないですかー。

 

 具体的には、新しいシナリオがスタート!ですよ!

 

 プレイヤーメンバーは、前回から引き続き、松田改め松井君に、槍田君と寺原君、それから新しく青羽君と、噂の女装男子浅井成実君です。

 

 彼らも大変ですよねえ。わざわざ危険に自ら首を突っ込むだなんて。

 

 

 

 え?元凶が何言ってんだコラ?失礼ですねー。

 

 私は単に、お土産によさそうな珍しい鉱石を、麻生圭二君にお勧めしただけですよー?それを買って島に持ち帰ったのは彼。それにつられてやってきたクトーニアンに、島が荒らされちゃったけど、不可抗力ですよ!

 

 え?あの鉱石がある種の神話生物のエサになるって、知ってただろって?もちろんです!

 

 え?この下種で下劣で外道などうしようもないクソ邪神め?

 

 そんな罵倒するなんて、あぁぁんまぁりだぁぁぁぁ!

 

 え?嘘泣き乙?よくわかりましたねえ!

 

 

 

 では、冒頭の邪神トークはこの程度にしておいて、本編に行ってみましょう!

 

 ダイスの準備はよろしいかな?諸君。

 

 

 

* * *

 

 

 

 さてさて、原因が分かったなら、次は対処法です。

 

 クトーニアンが水に弱い、という情報は松井君と青羽君から得ています。

 

 あとは、地中を自在に移動する奴をどうやっておびき寄せるか、ですが、それもなんとかなりそうです。

 

 というのも、実は成実君が、父親と親交のあった男性たち――メタな言い方をするなら、将来的な殺人事件の犠牲者たちに探りを入れたところ、彼らも持ち帰ってたそうなんですよ。クトーニアンのエサにする、鉱石を。

 

 ただ、麻生邸の事件があってから、あの鉱石がないということが判明してから、あれを持ち帰ったのはまずかったのでは、と思い立ち、みんな銘々処分(海に捨てたりとか)していました。

 

 ただ一人、金庫の奥にしまい込んだ亀山現村長を除いて。

 

 

 

 怯えきった亀山村長君は――正確には、この事件のタレこみをしたのが、彼だったのですが――事件の早急な解決を!と再度催促してきたわけですが、ここで成実君がキレました。

 

 「ふざけるな!化け物が父さんたちを殺さなかったら、あんたらが殺しにかかってたんだろうが!火までつけて焼き払っておきながら!

 

 それがわが身が危うくなったら、助けてくれ?!どの面下げて言ってんだ!!」

 

 胸ぐらをつかんで自らの素性を暴露しつつ凄む成実君ですが、そうも言ってられませんでしたよ。

 

 何しろ、亀山村長君が心臓発作を起こして倒れ込んでしまいましたからね。

 

 そのまま死んじまえと言わんばかりに突き放して冷たい顔で見下す成実君をよそに、周囲は大慌て。

 

 まあ、元検視官の探偵たる槍田郁美君と、元刑事の松井君がいますからねえ。【医学】補正による【応急処置】がクリティカルして、どうにか一命は取り留めました。

 

 で、ドクターヘリで本土の大手病院に搬送される亀山村長君をよそに、松井君が成実君を殴って怒声を張り上げます。

 

 「そのツラ家族に見せられんのか!あんた医者としてのプライドがないのか!!」って。

 

 いやあ、熱く麗しい友情ってやつですねえ。(白けた顔)

 

 「あんたに何がわかるんだ!」

 

 ってな感じで、掴みかかった成実君と松井君が、殴り合いの大ゲンカですよ。

 

 ・・・内実はいい年こいた男の殴り合いなんですが、傍目には白髪革ジャンサングラスのガラ悪そうな兄ちゃんと、黒髪ポニテに黒ワンピの清楚系美女の殴り合いですからねえ。

 

 いやあ、松井君が圧倒的に悪く見えますよねえ。

 

 寺原君はアワアワと止めようとしてますけど、他のお二人が若いっていいねーっ的な眼差しで見てますから、止めるべきか迷っているようですねえ。

 

 で、ようやくお互いボコボコになった状態で、青羽君が止めに入りました。

 

 続きは、神話生物やっつけてからにしようぜって。

 

 なーんだ、つまらないですねえ。いっそ刃物とか持ち出した方がもっと笑えたのに。

 

 

 

 米花町でしたら、よくあることですよ。口論の末に刃物沙汰って。もっとも笑えた殺人事件の動機(神話生物は絡んでませんけど)が、「ハンガー投げられたから」ってのがあったくらいです。

 

 ・・・ぶっちゃけ、私はそれがあったから、あの町に拠点を置こうと決めたんです!(生き生きした笑顔)

 

 私が混沌をかき集めているんじゃないんです!混沌が私を呼んでいるんです!米花町という混沌のるつぼが!

 

 うふふふふふふふふふ。(眼鏡を光らせつつ)

 

 

 

 ま、ちょいと運動して落ち着いた二人も、むっつりしながらも、クトーニアン討伐のための作戦を考えることにしました。

 

 さて、いよいよ最終決戦というところでしょうか。シナリオのクライマックスってやつです。

 

 とはいえ、やることは至極単純。

 

 亀山村長宅にあった鉱石を用いて、クトーニアンをおびき寄せ、奴の弱点物質である水を浴びせようということです。

 

 ま、流石に、衆目に神話生物をさらすわけにもいかないので、決行は日が沈んだ後、村のはずれでということになりました。

 

 島に一台しかない消防車をこっそり拝借し、消火栓につないで水を確保。

 

 そして、鉱石につられて現れた巨大なクトーニアン(幼体とはいえ、かなりの巨体ですよ?)を、【回避】の高い青羽君と寺原君が引きつけ、残り3人で消防車のホースを構え、放水します。

 

 さすがに、おとなしく食らい続けるほどお人よしではなく、クトーニアンも怒り狂って、消防車に体当たりを仕掛け、衝撃で3人もホースを手放してしまいました。

 

 あーらら。水圧でホースが鞭のごとく暴れ回って、制御不能になってしまってます。

 

 クトーニアンが触手で成実君を掴みあげてしまいました。ウーン、放っておくと、また体液を吸収されてミイラにされてしまうでしょうねえ。

 

 しかしながら、凄まじいのは松井君の火事場の馬鹿力でしょう。単騎でSTRとDEXの複合対抗ロールに成功し、ホースの制御を取り戻すや、水をクトーニアンの触手に命中させました。

 

 ひるんで成実君を放り出したクトーニアンに、容赦なく水を浴びせかけ、途中でホースの構えに他のメンバーも参加。

 

 かくして、クトーニアンはまるで水圧に削り取られた石のように風化して、ボロボロと崩れ去ってしまいましたとさ。

 

 おやまあ、残念。

 

 

 

 ぐったりしながら旅館に引き上げようとする一同ですが、成実君が呼び止めて問答無用とばかりに診療所に引きずって行きました。

 

 ああ。先ほどの戦闘でみんな大なり小なりダメージがありますからね。特に、消防車が体当たりではじかれたときなんて、松井君は体を車体に叩きつけられてましたしねえ。

 

 で、一人残らず診察&治療です。

 

 成実君自身も、槍田君から手当てを受けてました。

 

 ・・・その時にようやく、彼が男だということがわかって、騒然となってます。

 

 ちなみに、最初から見抜いていたのは【変装】技能が高い青羽君だけで、松井君は途中から気が付いたそうです。

 

 しかしまあ、成実君、運がいいですねえ。下手をすれば他の犠牲者たち同様カリカリな遺体になってましたよ?

 

 さすがに触手に締め上げられたところが痣になってましたが。

 

 成実君は、一通り手当てを受けた後、改めて旅館に引き上げる4人を見送ってから、何かしら考え込んでいるようでした。

 

 

 

 おやおや。まさかとは思いますが、今回のことで復讐を諦めようなんて、くだらない感傷につかれたとか?

 

 いけませんねえ。実にいけない!

 

 ここはひとつ、私が背中を押してあげましょう!

 

 夜分遅くに訪ねてはさすがに迷惑ですね。今日の騒動で疲れもたまっているでしょうし。明日の朝一にでも。

 

 

 

 おや皆さん。またかよこのクソ邪神という顔をなさっていかがしたのです?

 

 私が大阪のおばちゃんのごとくお節介焼きというのは、皆さん重々ご承知のはずでしょう?

 

 え?お前のお節介は、ことごとくお前が愉悦して他人が苦しむためのマイナス効果の付与しかねえじゃねえか?

 

 おや失礼ですねえ!思い返して御覧なさい!

 

 諸伏景光ことスコッチ君は、自分のあるべき場所と真の信仰に目覚め、

 

 萩原研二君は、現世の穢れから一時的にでも心を癒せる場所へ至り、

 

 松田陣平君は、この世の真の姿を目の当たりにし、義憤のもとに新たな世界にいたり、

 

 みんなそれぞれ、素晴らしい人生を歩んでいるじゃないですか!

 

 私は切っ掛けを与えただけです!皆さん、自分で決めて選択なさった結果ではないですか!

 

 え?嘘いうな?大体お前のせいだろ、ノーデンス呼ぶぞ?

 

 ハッ(嘲笑)。呼べるもんなら呼んでみろよ。お前らも道連れにしてやる。

 

 

 

* * *

 

 

 

 んぬう?

 

 もうとっくに深夜に差し掛かった時間というのに、旅館を抜け出した人間がいるようです。闇夜に浮くような白い蓬髪は、彼が松井君であるという証拠ですね。・・・あの髪、目立ちますよね、ほんと。

 

 対神話生物用の、魔力装甲貫通弾を装填した拳銃こそ置いていくようですが、懐には折り畳み式の特殊警棒を忍ばせてますし、簡易装甲を縫いこまれている革のジャケットを羽織っています。

 

 こんな夜更け、しかもあんな大立ち回りをした後、どちらに行くのでしょうね?

 

 ・・・シナリオは終わったはずですが、どうもエピローグでも一悶着あるようですね。ここはしっかり出歯亀してみましょう。

 

 松井君本人は、こっそり出てきたと思っているようですが、同室であり先輩でもある青羽君にはバレバレの様子ですね。

 

 仁王立ちで立ちふさがる青羽君に、松井君は最初こそ気まずげにしますが、すぐに開き直りました。

 

 ・・・おやおや、あんな目に遭わされたというのに、それでも自分は警察官としての正義を失わないと言いますか。

 

 

 

 なるほど。読めました。

 

 昼間の探索で、公民館を訪れた際、彼らはピアノを調べていました。

 

 で、特に松井君は調べ終わった後もピアノを少し気にしているようでしたからねえ。察するに【目星】がクリティカルして、隠し戸からの白い粉をうっかり発見してしまったんでしょう。

 

 そして、高アイデアの〈鋭い〉彼は、悟った。

 

 亀山村長が黙秘し続け、麻生邸を焼き払った、真の理由を。

 

 麻生圭二の友人4名が、彼のピアノ公演に付き添って、海外から仕入れた麻薬を密輸し、大儲けしていたこと。

 

 麻生圭二を最終的に口封じしようとしていたことを。

 

 そして・・・4名が築き上げた密輸ルートは、今なお生きているということを。

 

 

 

 「確かに、俺の仕事は終わった。化け物はぶっとばしてめでたしめでたし、だ。

 けど、目の前の悪事を放っておけるほど、腐りきった覚えはねえよ!」

 

 夜中というのに啖呵を切ってみせる松井君。

 

 ・・・本当に、人間は愚かですねえ。

 

 自分たちのメンツのために、何を犠牲にしたか、彼らは全くわかってないようですから。

 

 少々ひねくれてはいるようですが、正義感の立派な松井君と、彼を陥れた警察上層部。どちらが一般倫理として真っ当であるか、少し考えればわかるというのに、勝ち残った方を思えば・・・ふふっ、超絶笑えますねえ。

 

 まあ、いい人間ほど死んで、腐りきったロクデナシが生き残った方が、私としては笑えますし、いろいろやりやすくはあるんですがねえ。

 

 「・・・だからと言って、たった一人で密売を行う連中――グループに喧嘩を売るというのは無謀では?」

 

 ごもっともな正論を言う青羽君に、松井君はぐっと言葉に詰まります。

 

 「べ、別にドンパチやるってつもりはねえよ。

 

 奴らの悪事の証拠をつかんで、それを警察に届けるだけだ」

 

 「・・・自分の立場を考えて言ってるのかね?」

 

 青羽君の言うとおりですねえ。

 

 松井君。君は警察関係者には特に面が割れている、本来なら死んでないといけない人間なんですよ?

 

 「そ、れは・・・」

 

 結構行き当たりばったりですねえ。

 

 「・・・大方、昼間のことで、成実君に悟られる前に君だけで決着をつけようと思ったというところかな?」

 

 青羽君の言葉に対する松井君の反応は、図星そのものでしたねえ。

 

 「・・・悪いか」

 

 「ああ、悪いとも。そういうことなら、私にも一声かけてもらえないかな?」

 

 ギョッとする松井君(確実に反対されると思っていたのでしょう)をよそに、青羽君はしれっと肩をすくめて見せる。

 

 「こう見えても、若い頃はそれなりに“ヤンチャ”したクチでね。力にはなれるはずだ。

 

 君にそのつもりはなくとも、向こうがこちらを発見すれば、荒事になる可能性が高い。

 

 何より、我々は調査の一環とはいえ、彼らには面が割れてしまって、怪しまれているだろう。

 

 ゆえに、手は多い方がいいということだ。

 

 それに・・・」

 

 「それに?」

 

 「・・・子供が親の復讐のために手を染めるというのは、正直複雑なものがあってね」

 

 ポツリッと付け加えられた青羽君の言葉に、松井君は少し訝しげにしています。

 

 おやおや、青羽君は、子持ちでしたか。

 

 「・・・恩に着る」

 

 「なぁに、後輩の面倒を見るのは、先輩のつとめさ。

 

 さて、行こうか」

 

 と言って、男二人は歩き出すんですが、既に二人がごちゃごちゃやっているのは他の女性二人にもバレバレでしたね。

 

 というか、松井君があからさま過ぎたようで、槍田君がピアノの周囲で見つけた白い粉を【薬学】で解析し、麻薬だと判明させていました。一緒にいる寺原君とも情報共有させてしまったようで。

 

 で、明日には帰るから、今晩辺りに動くんじゃね?と二人の間でも結論が出ていたようで、公民館の近くで合流してしまいました。

 

 おやおや。お節介焼きが多いんですねえ。

 

 

 

 さて、結論から言えば、この“成実君に気付かれる前に麻薬密輸グループを何とかしよう”作戦は半分成功、半分失敗に終わりました。

 

 というのも、実はドンピシャで夜中の公民館で何か怪しいことをしている連中を発見できたのですが、連中が、麻生圭二がつるんでいた4名のうち1名の娘さんの婚約者さん(確か、村沢周一君でしたか)を、明らかに意識ない風体で、引きずり出しているのも見てしまったんですよねえ。

 

 あれ口封じされるんじゃね?って結論が出たら、松井君と寺原君が他二人が止める間もなく、動いてしまいました。

 

 で、まあそこからはドンパチ開始ですよ。

 

 拳銃こそ持ってませんでしたが、バットだゴルフクラブだナイフだと武装している連中相手に、武器こそ持っていますが4人(加えて気絶している人間をかばって)ですからねえ。

 

 ・・・しかしまあ、4人とも特殊部隊で訓練でも受けたのでしょうか。寺原君にいたっては、素人のはずなのに。

 

 少しずつ、着実に敵を気絶させたり、獲物の持ち手を攻撃して無力化させていきます。

 

 とはいえ、クトーニアンとの戦闘の後で疲労も溜まってましたから、ノーダメージとはいかず、少しずつですがダメージを受けていってました。

 

 最後の一人を倒して、ボロボロの全員がようやく安堵した時でした。

 

 真打登場!とばかりに3人の男が登場です。

 

 まあ、いわずもがな、麻薬密輸をしていた、麻生圭二のご友人3名ですね。・・・そういえば、1人本土の病院で療養中でしたか。どうにか一命を取り留めたようでしたね。

 

 おやおや、よくも取引の邪魔云々、見られたからにはかんぬん言ってますが、テンプレート過ぎて、あくびが出てしまいますよ。

 

 一応、シナリオのボスなわけでしょう?彼ら。その割にショボすぎません?今回のキーパー誰です?普通この手のやつって、シナリオ途中で組み込むもんでしょう?

 

 誰かがダイスクリティカルして、シナリオブレイクでもしたんでしょうか?

 

 ああ、すみません、話を戻しますね。

 

 ぼろぼろの一同目がけて、銃口を突き付けるのは、リーダー格らしい黒岩君ですね。

 

 ちなみに、拳銃を持っているのは彼だけのようです。

 

 他の2人は手ぶらのようですが、まあボロボロの4人相手には十分すぎますよね。

 

 4人とも、今の状態では、各種技能や能力値にマイナス補正がかかってしまうでしょうし。

 

 その時でした。音もなく、【忍び歩き】で近寄ってきたその人物は、黒岩君に組みついて、拳銃を手放させます。

 

 「これ以上、お前たちの好きにさせるか!」

 

 それは、成実君でした。

 

 「拳銃を!」

 

 彼が叫ぶまでもなく、転がったそれを拾い上げたのは、たまたま近くにいた槍田君でした。

 

 「言っておくけど、私は元警察よ?銃の扱い方も心得てるわ。外しはしないわよ」

 

 そう言って、狙いを清水君に付けます。

 

 どうにか、成実君を引きはがそうと、彼を殴り蹴りしていた他二人ですが、槍田君の拳銃にひるみ、さらに次の瞬間、松井君の警棒に殴り飛ばされて、床に転がる羽目になりました。

 

 あらま、ショックロールからの気絶判定が入ってしまいました。

 

 せっかく、一人か二人は死んでくれるかと思ったのに、残念です。

 

 とはいえ、これで晴れて戦闘終了、ですね。

 

 「・・・ざまぁみやがれ」

 

 ペッと血液の混じる唾を吐いて、松井君は腫れた顔でふてぶてしい笑みを作る。

 

 「ハハッ。満身創痍だな」

 

 「けど、どうにかなったわ。・・・とんだ綱渡りだったけど」

 

 座り込んで、同じくボロボロながらも苦笑してみせる青羽君――変装マスクはとうに引きちぎれ、口ひげを持ったダンディな男の顔をあらわにさせ、同じくボロボロの寺原君がその顔をしげしげと眺めながら言う。

 

 ほほー、青羽君、素顔はなかなかのイケメンで・・・おやぁ?あの顔・・・。

 

 「・・・アンタ、ひょっとして黒羽盗一か?あの、有名マジシャンの」

 

 「・・・それは死んだ男の名前だよ。松井君。松田陣平がそうであるようにね」

 

 「あー、そうかよ」

 

 それで悟ったのでしょう、松井君は特に何か言うでもなく、よろよろとその場に座り込む。

 

 ちなみに、表記が面倒なので、書いてませんでしたが、黒岩君は締め上げられて、とっくに気絶しています。

 

 拳銃に安全装置を掛け直して、槍田君も座り込みました。

 

 「とんだ出張ね。調査どころか、こんな大立ち回りなんて、想定外もいいところだわ」

 

 両手を地面について、疲れ切った様子で天井をぼうっと見上げる。

 

 よろよろと寺原君が立ち上がり、駐在さんを呼んで拘束に使えそうなものを探しに行くとはなれていくのをよそに、黒岩君から離れた成実君が3人を非常に冷たい目で見下した後、スッと顔を上げてボロボロの探索者たちの方へ駆けよっていきます。

 

 「何でこんな無茶を!」

 

 「しょうがねえだろ」

 

 放っておけなかったんだから、とゆるく片膝を立てて座り込んで苦笑する松井君に、成実君は立ち上がって踵を返す。

 

 「治療器具を持ってきます!おとなしくしててくださいよ!」

 

 そう言い残すのを、忘れずに。

 

 

 

 ・・・これは、私がどうこう言ったところで、再起するとは思えませんね。せっかくの絶好の機会を不意にしてしまったんですから。

 

 とはいえ、彼がこのまま片田舎の一介の医師として終わるとは思えませんね。

 

 きっと、これから盛り上げてくれるでしょうねえ。

 

 

 

 

 

 さて、後日、司法のメスが、この片田舎の島に入ることになりました。

 

 麻薬密輸グループが、島の有力者たちを筆頭に、捜査官たちの手によって一斉検挙。

 

 ・・・なお、立役者となった4名は、その時にはすでにこの島から去っており、島で唯一の医師は、事情聴取の後、後任の老医師に引き継ぎをしてから、島を去っていきました。

 

 

 

 ・・・この半年ほど後、米花町のとある通りを、白い蓬髪に革ジャンサングラスの男と、黒髪をポニーテールにして黒いワンピースを着た清楚な感じの一見すると女性にも見える人物が、並んで歩いている姿を見かけたりしたのですが・・・まあ、余談ですね。

 

 

 

 

…どういうことですか?

 

なぜ、この話に、続きがあるのです?

 

次回!次回なんですかあっ?





【今回は口先だけっぽくて、特に何もできなかったナイアさん】
 相変わらず邪神で、大体コイツのせい。
 ジタバタしまくる探索者たちを、邪悪に見守る這い寄る混沌。
 葛藤しまくる成実君を見て、いいなあいいなあと愉悦する。このまま殺人してくれたらよかったのに、遺体放火だけじゃ弱かったかな、とも思う。
 ・・・そうなったきっかけが自分にあることも、もちろんわかってはいるが、神話生物が絡んできて、もっと面白いことになったので、まあいいか!となっている。
 探索者たちがクトーニアンを仕留めて、成実君が何だか面白くなさそうな感じになってるので、発破掛けようかなと思っていたが、まだシナリオが続いていた。
 前代未聞、クトゥルフなのにラスボスが人間。キーパー誰だ。
 一応、最後までしっかり出歯亀する。
 成実君が、復讐はやめたけど、片足こっち側に突っ込んできたな、と察した。

【もはや主人公と化している松井君】
 完全にクトゥルフサイドの主人公。こんなはずじゃなかった、と作者が戯言を言っております。
 月影島の調査に同行してきた成実君が、予想以上にいろいろ抱えてそうだなと察していた。
 ちなみに、女装していると察したのは、一時発狂した成実君が壁に頭打ち付けてた辺り。打ち付ける勢いが、一般女性のそれじゃねーなと思ったし、止めるときに羽交い絞めにした感触から、あっ(察し)となった。
 ・・・一応彼も過去が過去なので、復讐を目論む人間の気持ちはわかるつもり。けど、それで他人を殺していいとまでは思ってない。だって、彼は警察官でもあったのだから。
 ひねくれているけど、ハートは熱い。
 だから神話生物とすったもんだした後、麻薬密輸のあれこれにも首突っ込んですったもんだする。
 文中では省いたが、実は最後の大立ち回りの際に、片手を骨折して、この後の報告書仕上げるのに四苦八苦したりする。
 ・・・のちに、MSOに入ってきた成実君とバディを組んだりする羽目に。主役度がますます上がっていくが、どうしてこうなったのやら。

【ヒロイン臭はするけど、組みつき持ちで立派な探索者の成実君】
 大体の境遇は原作準拠だが、家族を殺したのはお父さんが持って帰った鉱石を追ってやってきた神話生物で、おうちを焼き払ったのは麻薬密輸グループだった。
 原作同様、家族の死の真相を探ろうと女装して島でただ一人の医師を務めていたが、島で続発する異常死に、検死の度にSANチェックが入っていた。
 今回、事件の調査にやってきた探索者4人に新参探索者として同行。
 事件の真相を調べるうちに、神話生物やら、何やらを知って、一時的発狂もして壁に頭を打ち付ける。
 仇でもあるクトーニアンを追ううちに、実家を焼き払った犯人が明らかになり、逆上しかける。・・・家を焼き払われるということは、遺体も思い出の全ても焼き払われるということでもある。彼の心境やいかに。
 ちなみに、暗号楽譜の遺言についても読んでいた。でも、ひたすら保身を願う亀山さん見て、すごくムカついたため、我を忘れかけた。そのまま死ぬなら死ねば?くらいの感じ。松井さんに殴られたけど、彼も一応男ではあるのでキッチリ殴り返した。
 クトーニアン討伐にも参加。危うく体液吸収されてミイラにされるところだった。
 その後、一同を診療所に連行して、治療。助かってよかったなあと思いながらも、人を助けられる手で復讐とか、いいのかな?とちょっと思い悩む。
 が、間もなく、公民館での騒動を悟り、大急ぎで加勢に向かう。
 一応、高STRのダメボ持ち且つ【組みつき】技能を持っている。原作が原作なので。
 騒動終結後、改めて全員を再治療。麻薬密輸グループは縛り倒して、適当な部屋に軟禁した。
 翌日、島を去る4人を捕まえて、あの化け物のことを知ってるなら、どこで知ったとか、そういう組織があるなら自分も入らせてほしいと嘆願する。
 自分たちにそういう権限はない、と断られるが、青羽さんから「一応人事部に志望者がいるって打診はしとくけど、期待はしないでね」と言われる。
 その後、テキパキとやってきた警察相手の後始末と、診療所の引き継ぎを行い、本土へ。晴れてMSOに入って訓練受けることになりました。
 その後は、多分青羽さんや松井君とチームを組んで行動することになるかと。
 ・・・まっとうに生きてほしいって遺言にはあったけど、他の人間をまっとうに生きられるようにするのが、知ってしまった自分の務めだから。


 神話生物クトーニアンの生態が違う!というツッコミがあるかもしれませんが、クトゥルフ知識の浅い作者がマレウス・モンストロルムを流し読みしながら書いたものですので、どうかご容

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