冷蔵庫の中から飲料水を出そうと扉を開いたら、玉虫色の粘液がそこに詰まっていた。
テケリ・リ。テケリ・リ。テケリ・リ。テケリ・リ。
ギョロギョロと不規則に並んだ目玉が、ギザギザの歯を備えた口が、一斉にそんなことを喚き出す。
うん。書くんだね?書くべきなんだね。知ってる。宇宙は空にあるし、脳に瞳が足りないから、私は虫けらのごとくのた打ち回らなければならないのだね?
無言のうちに冷蔵庫の扉を閉めて、私は踵を返す。さあ続きだ。
脳に瞳があれば、思考の次元は引き上がる。冷蔵庫に瞳があったら?きっと明日のお夕飯のレシピにちょうど良い具材を自動検索してくれるに違いない。
ウィレーム先生はやはり正しかったのだ。
いつもニコニコ!ラブ&カオス!米花町の這い寄る混沌こと、私です。人間としては、手取ナイアと名乗らせていただいております。
おや、皆さん、一様に機嫌がよさそうですね。大抵は開口一番に私を罵倒してくるというのに、何があったのです?
え?前回はお前が大人しくして置いたおかげで、とても心地よく読めた?
・・・クソが。つい出歯亀に夢中になってましたが、考えてみれば、あそこで大人しくし過ぎるなんて、まったくもって邪神失格です。
え?ぜひこれからもあの調子で大人しくしておいてくれ?
嫌ですよ。私は暗躍する這い寄る混沌、ニャルラトホテプなんですから!
しかしまあ、前回は微妙でしたねえ。
せっかく神話生物が騒動を起こしてくれてて、死人も何人が出てたというのに、肝心の探索者たちは、神話生物というより人間にボコボコにされてましたしねえ。
松井君はすっかり刑事より探索者が板についたようでしたねえ。
その調子で、これからも深淵を眺めてはSANチェックに失敗していってくださるとありがたいですねえ(邪笑)。
月影島から女装医師が、正式に探索者にメンバー加入しましたが、些細なことでしょう。
まあ、復讐は終わった!(ドヤァッ)と焼死されるよりかは、のた打ち回って反吐を吐きながらこの世の真理に肉薄される方が、眺める側としては楽しいですしねえ。
彼も、きっと、ロクでもない死に方をなさってくれるでしょう。
大勢の探索者たちが、そうであったように。
さてさて。皆さんはバタフライエフェクトという言葉をご存知ですか?
ちゃんと説明するなら、力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化がなかった場合とは、その後の系の状態が大きく異なってしまうという状態ですね。より難しい言葉でいうなら、カオス理論で扱うカオス運動の予測困難性、初期値鋭敏性を意味する標語的、寓意的な表現、といったところでしょうか。
ちなみに、語源は気象学者のローレンツさんの研究から出てきた提言からだそうですよ?Wik●pediaは便利ですよねー。
まあ、つまり何が言いたいかというと、私はそんな気なかったのに、これも私のやらかしに入るんでしょうかねー☆
やっちゃったんだぜ(テヘッ☆)
その日、たまには外食でもしましょうか、と道を歩いていたんですよ。
向こうから歩いてくるのは、御存じ、すでにおなじみの探索者、白髪とグラサン、革ジャンの3点セットがトレードマークの松井君と、すっかりMSOにもなじんだ、相変わらず清楚系女装が板についた成実君ですね。
先輩先輩と、完全に松井君に懐いている様子の成実君と、はいはいと軽い様子で受け流す松井君。ウーン、いいコンビですねー。・・・どこからか、腐った臭いをまとった女性の方々が涎を垂らしそうな勢いで凝視しているような気がしましたが、気のせいでしょうか?
で、その向こうから信号を渡って道を歩いてくるのは、スーツを纏った男二人。片方が色が濃い気弱そうな青年で、もう片方がガタイがよく、爪楊枝を咥えた男性ですね。
ほほう、攻略本にも載ってましたよ。これが噂の踏んだり蹴ったりで損しまくりなお人よしの代表刑事の高木刑事と、間もなくお亡くなり予定の伊達刑事ですね。確か、下のお名前が同じということで、ワタルコンビとか呼ばれてるんでしたかね。
そんな男二人を見た松井君が、思わずといった様子で足を止め、半ば呆然とつぶやきました。
「伊達・・・」
「先輩?」
しかし、怪訝そうな成実君の言葉に、すぐにハッとした様子で頭を振った松井君は、そのまま軽くうつむくように、男二人のそばの角を曲がろうとしました。
ところが、何かに気が付いたように、彼は振り向くや、横断歩道を引き返そうとしていた伊達刑事の襟首を掴んで無理やりこちらに引きずり戻して怒鳴りつける。
「バカ野郎!お前死にたいのか?!」
「は?!いきなり何を」
たたらを踏んで振り返って、自分を引きずり戻した男を見た男は、次の瞬間息を飲む。
でしょうねえ。まさしく、“幽霊を見た”かのような、青ざめた顔になって、彼は白髪の男を見つめました。
その背後を、猛スピードで突っ切るトラックなど、一顧だにせずに。
「ま、つだ・・・?」
激突したトラックの、グワシャンッという轟音に、その小さな声はかき消されましたが、すぐそばにいた松井君にははっきりと聞こえたでしょうね。
しかしながら、松井君は腹をくくっていたんでしょうね。
小さく舌打ちして、踵を返す。
「よそ見してんなよ、バァカ」
「おい、待て!」
「だ、伊達さん!事故ですよ!」
吐き捨てるようにそう言い残した松井君を呼びとめようと伊達刑事は駆け出そうとするが、それより早く高木刑事の叫びが彼の足を止めさせます。
一瞬迷ったようですが、やむなく伊達刑事はトラックの方へと、後輩刑事とともに駆け出していきました。
おや、落とし物。大事な警察手帳を落とすとは、ドジな人ですねえ。後で、警察署に届けておきましょうか。
にしても・・・この事故で死ぬはずが、ちゃっかり生き残ってしまいましたねえ。
おかしいですねえ。あれぇ?
あ。私のせいかな?
私が爆弾犯をゾンビにするきっかけを作った→松田君が探索者になった挙句、警察を辞めた→生き残った松田君が、伊達君を助けた、という流れですからねえ。
・・・これが本当のバタフライエフェクト?いいえ、ピタゴラスイッチでしょうか?
しかし、これでは零君の成長が止まってしまう可能性があります。ここはやはり、伊達君には適当なところで退場していただきましょう、そうしましょう!
え?その後の彼らの様子?さあ、存じ上げませんねえ。
仮に伊達刑事が、松井君を探し出そうとしても、既に松井君はMSOの傘下の人間です。一介の刑事風情が、軽々しく調べ上げて接触するなんて、無理でしょうねえ。
とはいえ、彼を生かす理由はないんですよねえ。
幸いこちらには、拾った警察手帳という、彼にお近づきになる理由があります。
フフッ・・・次の催しものには、彼もぜひNPC枠でいいので、参加していただきましょうか。楽しみにしてますよ、伊達君。
* * *
さて、そんな日本の様子は置いといて、私のもう一人のお気に入り、赤井君についてお話ししておきましょうかね。
あはは。お気に入りと言っても、家畜や愛玩動物的意味合いの零君とは違い、赤井君は人間にしては見応えがあるという意味ですがね。
攻略本にも載ってましたが、そろそろ赤井君が例の真っ黒な組織から離脱する頃だったんですよねえ。
で、ちょっと覗いてみたんですがね。
アハッ!また私ってばやらかしてましたよ!(テヘペロリンチョ♪)
具体的には、今から15年ほど前になるでしょうか。私が零君と知り合う直前くらいなんですがね?
とある町に隠れ住んでいた蛇人間のご家族が、正体を見破ったがために発狂した人間どもに虐殺されてしまいました。可哀そうに。(ちなみに、そのゴタゴタはMSOがもみ消しました)
で、そのご家族で唯一生き残った女の子がいまして。その子は、人間と蛇人間のハーフで、ほとんど蛇人間の特徴を持たないんですよ。見た目はほとんど人間のままでして。
行き場がなく、途方に暮れてたんです。
だから、私はその子を紹介してあげたんです。
交通事故で、上の娘さん(つまり明美君)を亡くしたばかりのご夫妻に。今思えば、あれは宮野厚司&エレーナのご夫妻だったんでしょうねえ。
奥様のエレーナさん、ただでさえもご懐妊で精神的に少し不安定になりやすいところを、お子さんを亡くしたことで完全に不定の狂気状態になってまして。
その蛇人間の血を引く女の子(幸い容姿が死んだ女の子によく似ていたんですよねえ)を見るや、自分の娘だと思い込んでしまいました。
旦那さんの方も、妻が落ち着くし、行き場がないならと、その子を“宮野明美”として引き取ることにしたんですよねえ。
・・・ちなみにその子、父親が蛇人間だったんですが、父親から引き継いでたそうですよ?蛇神イグの信仰と、支配血清の作り方を、です。
彼女はハーフとはいえ、蛇人間の血は引き継いでいますからねえ。見た目は人間でも、中身は別物ということですよ。
いやあ、愉快愉快。
ええ。数日も経たないうちに、宮野ご夫妻は、新しい明美君を心から受け入れて、彼女のためなら何でもするようになったそうですよ。
・・・ご自宅には研究機材として、血清を作るための遠心分離器程度ならあったでしょうね。加えて、お茶などを出されたら、ご夫妻のことです。きっと喜んで口にしてくれたでしょうねえ。
え?このクソ邪神、何してやがんだ?
どうせ本物の明美君の交通事故もお前が仕込んだんじゃねえかって?失礼ですね!そっちは私は何もしてませんよ!
「馴れ馴れしく降谷さんに近寄らないでよ!どうせFBIのところに行くビッチが!」って罵声と一緒に、見知らぬ子に車道に突き飛ばされていたのは見かけましたけどね。
ああ、その突き飛ばした子ですか?攻略本の材料にしてしまいましたよ。(にっこり)
まあ、つまり、今現在、赤井君がお付き合いしている宮野明美という女性は、蛇人間のハーフということです。
ああ、妹さんの方はセーフですよ?まあ、例にもれず支配血清の影響下に置かれているようなんですが。
いいんじゃないですか?ご本人が満足なさっているなら。それに、多分お姉さんが蛇人間とのハーフにすり替わってるなんて、彼女は存じ上げないと思いますし。
さて、話の時間軸を現在に戻しましょうか。
明美君、薄々赤井君を怪しいと思っていたようですねえ。
で、赤井君がスパイで、次の作戦でジンを捕まえるから!と告白したんですが、何を思ったか、明美君、赤井君の話をしおらしく聞いてるふりをして、彼に支配血清を投与してしまいました。
うーん・・・警察からのスパイ――正確にはNOCだということがばれたら、少なくとも組織にいられなくなる可能性が高いですからね。かといって、末端中の末端である明美君が警察組織の保護を受けられるかというと、それも微妙なところですよね。貴重な情報を知っているというわけでもありませんし。
まあ、保身のためでしょうね。赤井君を取り込んでしまえば、少なくとも彼は自分の保護のために動いてくれるだろうと踏んだのでしょう。
ところがどっこい。さすがは赤井君です。彼の方が数倍上手でした。
彼は、明美君が蛇人間の血筋にあるとある時点から見抜いていたようで、念のためにと、支配血清の無効化抗体(ウィルマース・ファウンデーション謹製の品だそうで)を打ってきてたんだそうです。
つまり、赤井君に蛇人間御自慢の支配血清は効かないということです。
蒼白になって震える明美君に、赤井君はある取引を持ちかけようとしました。
ですが、それより早く、明美君がつかみかかりました。
「素直に支配されておけばよかったのに!どうして私に近寄ってきたの?!組織の末端の女なら他にもいるでしょう?!どうして私だったの?!
知ってたのよ?!愛してなんてないって!!」
ギャン泣きしながら、襟首掴んで喚く喚く。
おやおや、赤井君が困ったような雰囲気を漂わせてますねえ。あれはどちらかといえば、だだをこねてる子供をなだめようとしてるような感じですかね。
「幸せになりたかった!“パパ”と“ママ”は化け物と、それにたぶらかされた人間として殺された!二人は幸せになってって言った!だから私は、人間として幸せになろうって決めてた!
“お父さん”と“お母さん”が裏切らないようにしてたのに、二人ともこんな組織に入って、勝手に私を巻き込んだ!
志保もそう!馬鹿な役立たずの振りをしておけば放逐されたろうに、頭がいいことをひけらかして、自分で首輪をつけられに行って、私もそれに巻き込んだ!
あの女がいるから!あいつが変な薬を作るから!私は!!」
おやまあ、みっともない。
明美君は、最後には掴み掛る力すらなくして、座り込んで鼻をすすってむせび泣いています。まるで、いえ、まるっきり駄々をこねる子供ですね。
「化け物の血を引く、役立たずなんて、要らないでしょう・・・?殺しなさいよ・・・」
明美君からしてみれば、たまったもんではなかったでしょうね。
自分の新しい居場所になってくれた宮野ご夫妻(支配血清で言うこと聞かせてましたけど)ならまだしも、あとから生まれてきた妹は、その居場所を奪い取る可能性があったわけです。邪魔以外の何物でもなかったでしょうねえ。
加えて、組織に入ってからは周囲の目を誤魔化すためにも、仲の良い姉妹を演じる必要があり、しょうがなく仲良くしてたのでしょう。
ですが、組織に入って行動を制限されるようになってた上、妹さんが天才的な頭脳を見せつけてくれたわけです。妹への人質として、これでもう、二度と逃げられないと彼女はいやおうなく悟ってしまったわけです。
やっとできた恋人さえ、自分を踏み台に組織に近寄ろうとするスパイだったわけです。踏み台扱いしてくるなら、お前が踏み台になれという虎の子の支配血清投与も、効かなかったわけですし。
明美君は、ただ、ごく普通の幸せな生活というものを望んでいただけに、不満が爆発するのは当然と言えば当然でしょう。
そんな明美君の憐れな慟哭を静かに聞き終えた赤井君。
・・・スコッチ君の時とは、少し違う目をなさっていますねえ。しいて言うなら、神話生物に立ち向かう時に見せた目に似ています。何かを強く心に決めた目。それでいて、柔らかな優しさを内包しているような光を、その深緑の双眸に映し、彼は口を開く。
騙していたことへの詫びと、それでも彼女を助けたいという言葉。
明美君はといえば、完全に自棄になってますね。
人間に化けていた、化物の分際で幸せを望むなんておこがましいとは思わないのか。妹を邪魔に思ってるのだから、さぞ幻滅しただろう、と。
・・・おや、赤井君は優しいですねえ。
人間は誰でも大なり小なり自分勝手なものだ。君を踏み台扱いしてしまった俺に非難する資格はない、それでも君が優しかったことに変わりはない。むしろ、正直になれ。君にはその自由がある。言うんだ、どうしたいんだ?ですって。
そして、彼はある取引を、彼女に持ちかけました。
それは――。
さて、過程は皆さんご存知でしょう?結論から言ってしまえば、赤井君はNOCであることがばれて、組織から抜けざるを得ませんでした。
あのキャメルとかいうお馬鹿さんなFBI捜査官君のおかげで、より面白くなったようでなによりです。
赤井君。君は緋色や黒もお似合いですが、それよりも混沌をも内包する深淵の方がよりお似合いだと思いますよ?
数日後、宮野明美という女性のお宅で、火災が派生しました。
マンション暮らしだったのですが、火元が彼女のお宅ということで、部屋は全焼、燃え移って、他にも何人もの犠牲者を出したということです。
幸い、死人は火元となった部屋の住人たる女性一人(遺体もきっちり発見されました。状況から彼女だろうと)で、他は煙を吸ったり軽いやけどをした程度で済んだそうなのですが。
そうそう。この後、赤みがかった茶髪をボブにして、白衣を羽織った女性が、黒ずくめの連中に喚いて掴み掛っているのを見かけましたねえ。
「お姉ちゃんをどうして助けてくれなかったの!お姉ちゃんのためなら、私、何でもやったのに!」
・・・まだ血清が効いてるんですかねえ?
ま、もうすぐ効果が薄れて、そのうち完全に抜けることでしょう。
* * *
さて、場所を移して、ここはアメリカ合衆国はマサチューセッツ州北東部、アーカム市。
商業地区の、メインストリートを、二人の男女が闊歩しています。
長い黒髪を首の後ろでくくって中折れ帽をかぶり、黒いコートをマントのように肩に引っかけたその男性は、右手を女性に引っ付かれて、歩きにくそうにしていますねえ。
「おい、べたべたするな、歩きにくい」
「いーや♪」
男性――赤井君のどこかしらうんざりしたような声に、女性が悪戯っぽく甘い返事を返していますね。
チッ、爆発すればいいんじゃないですか?
「ねー、秀君、子種ちょーだい♪」
「・・・君はもっと慎み深い女性だと思っていたが?」
ジロリッと帽子のつばに隠れている深緑の双眸が呆れの色を帯びて、隣の女性に向けられました。
彼女は、恰好こそ、パンツスーツにスカーフを首に巻いた、ボーイッシュな格好の女性でしたし、髪もバッサリショートになっています。
・・・しかしながら、サングラスの下に隠れる双眸は、不気味な爬虫類のそれです。
ええ、彼女は宮野明美を名乗っていた、蛇人間とのハーフの女性です。元々成人した辺りで、目が爬虫類寄りになってて、カラーコンタクトで誤魔化していたそうです。
「やーねえ。演技よ、演技。秀君の“諸星大”がそうだったみたいにね。
人間の女性は慎み深い方が、無害でかわいいって思ってもらえるでしょう?その方が普通に幸せになれるでしょう?」
サングラスの下で、彼女はその縦に裂けた瞳孔の金の瞳を弓型にたゆませて笑う。
「けど、秀君は言ってくれたじゃない。
正直になってもいいって。どんな私も私であることに変わりはないって。
それにね」
ペロリっと、彼女はリップクリームを塗っただけの唇を艶めかしく舐めて見せてから、妙に目立つ八重歯を見せるように笑みを浮かべてつづける。
「雌は、強い雄に惹かれるの。この人との、子供を、残したいって」
「・・・・・・・・・・・・・・・そうか」
たっぷり5秒は沈黙して、赤井君が呆れたようにそう返しました。
いやあ、正直になりましたねえ、元宮野明美君。SANが吹っ飛んでません?
と、ふいに帽子のつばを押し上げた赤井君の視線がこちらに向けられました。そうして盛大に舌打ちされました。ああ、勘付かれましたね、これは。
にしても、舌打ちされます?むしろリア充っぷりを見せつけられたこちらが舌打ちしたい気分ですよ?
「秀君?どうしたの?」
「いや。鬱陶しいダニ以下の何かが覗き見してきているようだったからな。気にするな」
「ふーん」
ダニ以下扱いですか・・・相変わらず口が悪いですねえ。
ええ。宮野明美を名乗っていたあの蛇人間は、ウィルマース・ファウンデーションの伝手を通じて、保護されました。
現在は、新しい素性と経歴のもと、ミスカトニック大学で学生をやっているそうですよ。・・・卒業したら、赤井君の保護下につくことになるでしょうねえ。本人も乗り気のようですし。
組織の監視ですか?むしろウィルマースにその手のものが通用するわけがありませんよ。
今この場に明美君がいるのがその証拠でしょう。
一昔前までのウィルマースは、神格絶対殺す団でしたが、最近は神話生物やそれを悪用しようとする人々から、人類を守ることに主眼を置いてますからねえ。昔ほど積極的に彼らにチョッカイは出さないんですよ。むしろ、隠蔽工作などが格段に発達なさっているようなんです。
・・・必要なら、隠蔽のために魔術の行使や殺人の1件2件厭わないくらいには。
それはさておき。
今、赤井君はFBI復帰ついでに、懐かしの古巣に顔を出しているようですねえ。
で、スコッチ君の一件や元明美君の件で借りを作ってしまったので、返済するべく、事件の調査に駆り出されているというところですか。
あの恰好は何度か見たことがあります。彼が探索者として動くときは、なるべくあの恰好をなさるようにしているようですねえ。
一見すると、黒いダブルブレストスーツにコートといった出で立ちですが、あれらは全て特注品。特にコートの方には、ナイフを仕込めるホルダーが大量にありますし、黄金の蜂蜜酒のボトルや、魔力タンクのエルダークリスタル、自作の魔導書とそのストックホルダーも仕込んでいたはずです。
スーツの方もいわずもがな。どんなに激しく運動しようと破れないようになっているうえ、対神話生物用の特製拳銃やらアトラック=ナチャの糸を編んで作った特殊ワイヤーやら。物騒なものを満載なさってますからねえ。
場合によっては、対戦車ライフル並みの威力を持つ魔力装甲貫通弾を装填できる、狙撃ライフルを持ち歩いてることもありますしねえ。
ええ。あの一見すると革の手袋にしか見えない手袋も、魔力を帯びやすい素材――いわずもがな、神話生物の革で作ってありますからねえ。
あれで殴られると痛いんですよ。赤井君、容赦なく急所攻撃してきますし、以前目玉を抉りだされたこともありまして。・・・痛かったなあ(恍惚)。
「買い出しを済ませたら、他のメンバーと合流だ。
・・・危険を承知で一緒に行くと言ったからには、当てにさせてもらうぞ」
「フフッ。まーかせて♪」
赤井君の言葉に、明美君は大きくうなずいた。
そして、彼らは人ごみに姿を埋もれさせていきました。
次回は神の墓を暴き、その文字は読者の糧になる。
…次回を拝領するのだ…
【やらかしでピタゴラスイッチしちゃったナイアさん】
大体コイツのせい(いつもの)。
前回は邪神ぶりが少なかったな、と反省する。
自分が引き起こした数々のやらかし(死者及び発狂者続出)の果てに、死ぬはずだった人間がうっかり助かったのは、意外だった。
・・・もっとも、ただで死なせてやる気は毛頭なかったので、まな板の鯉の上に振り上げた包丁を振り下ろすのが、ちょっと遅くなったとしか思ってない。
なお、警察手帳はちゃんと警察署に届けてあげる。後日、お礼を言いに来た伊達刑事と仲良くなって、おすすめの戯曲を紹介してあげる。――もうすぐ、某ホールで公開されるそうな。
赤井さんの離脱案件もきっちり出歯亀する。ここでも自分の過去のやらかしが響いていた。
本作では、攻略本のもとになったクズ系オタク女子以外にも、さまざまな人間が転生してきていて、そのうち一人が本来の明美さんを車道に突き飛ばして殺害している。
ちなみに、子供の時分なので、悪ふざけの延長と思われた上、年代が年代なので騒ぎにはされなかった。が、邪神様は見逃さなかった。
家族を亡くして傷心気味の蛇人間のハーフの女の子を、上の娘さんを亡くしたばかりの宮野家に斡旋してあげる。やったね、ご夫妻!家族が増えるよ!
・・・なお、ご夫妻がその後、支配血清の影響下にあるというのも、しっかり悟った。愉快愉快。
赤井さんが、その後、成長した新・明美さんからの支配血清を無効化したうえで彼女を保護し、組織を抜けるところもしっかり出歯亀する。
正直、赤井さんが何でFBIや黒の組織にいるのかよくわからない。あんな所より、もっと相応しい場所があると思うのにね。
・・・なお、以前赤井さんと対決した際、ボコボコにされた挙句目玉を抉られたこともあるらしい。やはりMなのか。
【ピタゴラスイッチの結果助かったけど、嫌なフラグはいまだ健在の伊達さん】
大体は原作通り。下の名前が同じの後輩連れて道を歩いていたら、警察手帳を落としたことに気が付いて、トラックに轢かれかけた。
通りかかった松田改め、松井さんがいなければ、多分昇天なさってた。
文中からも察せられるとおり、彼は松井さんを一目見て、あの松田さんと悟った。
ちなみに、以前記したが、松田さんは表向き獄中で首吊り自殺したとされており、松田さんのご家族は縁を切ってしまったため、彼が遺体の確認をした。
その時に、なんか妙な感じがする、と違和感に気が付くが、確信が持てなかった。
・・・度々記載するが、魔術による偽装は、対象をよく知る人物に対しては強烈な違和感を与え、偽装を見破るきっかけにしてしまう。
何のかんの言いながら、彼も刑事なので、本当に優先しなければならないことはわかっている。だから、たまたま出会った、生きていた松田さんより、事故に遭ったトラックを優先した。
その後、松田さんが生きてる可能性があると彼の存在を調べようとするが、そもそも自殺と診断されているのに生きてるってことは、彼の存在を隠ぺいできるようなヤバいところにいるんじゃね?とさっくり悟った。
ゆえに、何事か思い悩む様子で周囲に心配されるが、口を閉ざす。
・・・なお、邪神様によって建てられた不吉なフラグはいまだに健在。まともな死に方ができる気がしない。
【神話生物にフラグを立てるのがお上手な赤井さん】
相変わらず組織のお仕事に従事なさっていたが、今回ジンを捕まえようとしていたら身内がミスってNOCバレしてやむなく離脱する羽目に。
でも、その前に、明美さんとお話しする。俺NOCなんだ!ジン捕まえたら、君を助けるよ!
が、そんな彼女が差し出してきたコーヒーは、支配血清入りだった。
しかしながら、彼女がそんな対応してくる可能性も視野に入れてたので、あらかじめ大学から取り寄せていた支配血清の、無効化抗体を打っていたため、事なきを得る。
ちなみに、彼が明美さんが蛇人間の血筋かもしれないと勘付く切っ掛けになったのは、デートで動物園に行った際、爬虫類コーナーで妙に蛇に寄られていたため。
加えて、組織の末端の中に、妙に彼女に便宜を図る奴がいて、あっ(察し)となった。
その後、本心をぶちまけて泣きわめく明美さんをよしよししながら、大学での保護を申し出て、受け入れてもらえてホッとした。
マンションの明美さんの部屋が火事になったのも、赤井さんの差し金による。この時のドサクサで、明美さんはアメリカへ亡命し、新しく戸籍を取得して、別人として生活することに。
なお、彼は組織を離脱後、スコッチさんの件と、新しく明美さんの件で大学に借りを作ってしまったため、その返済のためと、ほとぼり冷めるまではと1年ほどFBIを休職してウィルマース・ファウンデーションの傘下で神話事件を追いかける羽目になる。
開き直って、蛇人間らしくなった明美さんに、子種ちょーだい♪と迫られる始末。
恋愛感情の有無については・・・あの明美さん相手に、そういったものを持てると思います?(クトゥルフであることも念頭に置いて考えてみましょう)
余談になるが、この世界の彼は大学時代に神話事件で女性関係にトラウマを生成しているので、心底から女性に惚れ込むということは、おそらく一生ない。