「う・・・・・ん?ここは?」
目が覚めたすずかは見覚えのない場所に横たわっていた。起きたてのため思考が定まっていないが意識がはっきりとしていくうちに何があったのかを思い出してく
「悠斗さん、悠斗さんは?」
一緒に連れてこられたであろう悠斗を探そうと身体を起こそうとするも両手、両足をロープで縛られ、動くことができない
「おや?もう起きたのかい?」
暗闇の中から1人の青年が現れた
「こんな汚い場所で申し訳ない。本当なら僕達が出会うにふさわしい場所を確保しておきたかったんだが、これ以上、僕以外の男が君の側にいるのに耐えられなくてね。やはり実際に会う君は映像越しや双眼鏡越しで見るよりも美しく見えるよ」
「もしかしてこのところ私を見ていたのは」
「そうこの僕さ。だけど、限りなく本物の鳥に近く作り上げた鳥越しとはいえ僕のことに気づいていてくれていただなんて、やはり僕たちは赤い糸で結ばれているようだ」
「悠斗さんは?悠斗さんは何処に」
「あの男かい?一応生きてはいるよ、見てみるかい」
男が指を鳴らすと宙に映像が映し出され、手足を鎖で拘束され、宙に浮かばされている悠斗が映し出された
「タフな男だよ。本当だったら最初のあの電撃でショック死させるつもりだったのに、生きているんだから。呆れた生命力だよ」
「よかった」
拘束されているとはいえ悠斗が無事なことにすずかが安堵する。そんなすずかをみて男は気に入らないのか舌打ちをすると
「安心するのはまだ早いよ。彼のいる場所には爆弾を仕掛けている」
「っ!?」
「解ったようだね?彼の生死は僕が握っている。彼を生かすも、殺すも僕の気分次第だ」
「・・・何が望み何ですか?」
「望みか。僕の望みは君だよ月村すずか」
すずかの問いに男は笑って自分の望みを言う
「あの男や君の友達が知らない本当の君を僕は知っている」
「っ!?」
本当の自分を知っていると言われすずかは眼を見開く
「どうして知っているのかって顔だね?何、僕はちょっと特殊でねありとあらゆることを知ることができるのさ。あれもそれを利用して作ったのさ」
男が後ろを指さすと、そこには悠斗とすずかを襲った女性の姿をした自動人形が無数に立っていた
「君たちの間ではロストテクノロジーと呼ばれているんだったね?あれはその技術に僕の知る技術を足して作ったものさ。試作機だけど全てにおいて君達が知っている物よりも上さ」
「・・・・・」
「10秒、10秒間だけ時間を上げよう、決められない場合このリモコンであの男を閉じ込めている部屋の爆弾を爆発させる。カウントスタート。10・・・・」
男がカウントをするなかすずかは悩む。男の話が真実なら悠斗は自分のせいで巻き込まれただけ、自分がこの男の望み通りにすればあるいは
「1、0。時間切れだ」
すずかが考えているうちに10秒という時間は過ぎてしまった。男は服から起爆スイッチを取り出す
「ま、ま・・・」
すずかが待つよう男に言うが男はすずかの言葉を聞かず、躊躇いなくボタンを押した。すると、映し出されていた映像から爆発音が聞こえてき、映し出されていた映像が途絶えた
「あ~~あ、君がすぐに答えないからあの男は死んでしまったよ」
「あ、あ」
「さて、それじゃ次に行こうか」
男が指を鳴らすと別の映像が複数映し出される。映し出された映像はすずかにとって見覚えがありすぎるものだった
「今度は5秒だ。5秒間に返答が返されなかった場合、君の友人の家を爆破させる。カウントスター・・・」
男がカウントを始めようとしたとき、地震が起きたわけではないのに建物が揺れた
「・・・何だ?」
突然の揺れに男はカウントを止めると、遠くから何かが壊れるような音が聞こえてくる
「(何だこの音は?・・・少しづつ音が大きくなってきている?)」
大きくなってきている音に男が不思議がっていると、突如、男とすずかのいる部屋の壁が破砕音と共に壁が崩れ、崩れた壁の向こうから
「祭りの場所はここか?」
男が設置した爆弾で死んだと思っていた悠斗が無傷(服は所々焦げているが)で現われた
「な!?」
「ゆ、悠斗、さん?」
「ん?おう月村、無事・・・じゃなさそうだな」
悠斗はすずかの顔にある涙痕をみて肉体面では無事でも精神面では無事ではないと理解した
「な、何で生きている!?あの爆弾は高ランク魔導師をも殺すことができるものだ。仮に爆発を防いだとしても無傷ではいられない」
「何でって、あれ以上の爆発を食らったことがあるからな。アレに比べればあんな爆発何ともない。そうだな~~知り合いの無敵でチートでバグなおっさん的にいうなら“気合”だな」
「あの爆発が大したことがないって」
悠斗はなんとなく目の前の男が自分とすずかを襲撃した女性に指示を出した存在だということに気づき、摑まえるために動こうとするが
「う、動くな!1歩でも動けば、この映像に映っている家を爆破させる」
「バニングスの家に、翠屋、もう一つのは知らないマンションだな」
「っふ、それらの家はすべて月村嬢の親友の家だ。このスイッチのボタンを押せば爆発する・・・っ!?」
「どうした?もう1歩動いてるんだが?」
ほんの少し目をそらしただけだというのに自分の目の前にいる悠斗に男は驚く。そんな男のことなど露知らず悠斗は起爆スイッチを持っている手を掴み、握りしめる
「っく!?」
男はあまりの痛みに持っていた起爆スイッチを手放す。それを見た悠斗は男の手を放し
「ふん!」
男を顔面を思いっきり殴り飛ばした(もちろん身体強化無しで)。悠斗に殴られた男は何度か地面をバウンドしながら数メートル先へと飛ばされた
「大丈夫か月村?」
悠斗は男が手放したリモコンを拾うと縛られているすずかに尋ねる
「今、解いてやるからな」
「き、きさま、よくも、よくも僕を殴ったな!」
「俺の拳を受けて意識を失っていないなんて・・見た目の割にタフな奴だな」
悠斗の拳は魔力や氣による身体強化無しの状態でプロの格闘家を一撃で倒せるほどにまで鍛えられている。その拳を受けて、ふらふらながらも起き上がる男に悠斗は驚くが、真実は違う
「(咄嗟に簡易のバリアを張ってなければ倒されていた)お前は僕の命令を破った!だからその罰としてあの3つの家を爆破させる」
「リモコン無しでどうやるっていうんだ?」
「起爆装置がそれだけだと思ったのか?ちゃんと予備は用意してい・・・ない?なんで!?ちゃんとよういして・・・」
「その予備っていうのはこれのことか?」
服をまさぐりながら予備の起爆スイッチを探す男に悠斗は男が探している予備の起爆スイッチ及び、男が所持していたすべての機具を指で挟みながら尋ねる
「い、いつの間に」
「お前を殴る前に奪っておいたのさ。起爆スイッチが1つだけとは思わなかったんでね」
悠斗のあまりの早業に男は開いた口が塞がらず、悠斗は炎を灯し、奪った機具を融解させながら答えた。絶体絶命の中、男は自称最高の頭脳でこの状況を打破する方法を思案する。幸いにも作った機械人形達は音声入力で動くよう設定しているので機具がなくても動かせる。だが、動くよう命令し、人形達が動き出すまでに数秒かかってします。その隙を悠斗は絶対に見逃さないという確信を男は持っている
「(何か、何かないか?)」
人形が起動するほんの数秒、悠斗の意識を外させることができるものはないかと男が周りを見回していると、悠斗に縄を解いてもらっているすずかに視線が行く
「(そうだ、あるじゃないかとっておきのが)君はおろかだね。騙しているかもしれない子を助けにわざわざ来るだなんて」
「・・・騙している月村が俺を?」
「彼女にとって君は餌でしかないのさ。何せ彼女は・・・」
「っ!やめて!」
「夜の一族と言われる吸血鬼なのさ」
男が何を言おうとしているのか分かったすずかは止めるよう悲願するが、意味はなく、男は悠斗にすずかの正体を告げた
「魔導人形起動」
そしてその隙に男は最小の音量で自動人形を起動させる言葉を告げた
「はぁ~~~~何か隠しているって気はしていたがまさか吸血鬼とはな~~・・2度あることは3度あるっていうけど、まさにその通りだな」
「え?」
「へ?」
悠斗の予想外のリアクションにすずかと男は口を開ける
「な、何で驚かない!?吸血鬼だぞ?あの血を吸う吸血鬼だぞ!?」
「ん?あ~少しは驚いたぞ?でも知り合いに吸血鬼、しかも真祖って呼ばれているのにあったことがあるからそこまで驚きはしないな。むしろ驚きより・・・・お前への怒りのほうが勝ってるな」
「ひぃ!?」
悠斗から発せられる圧に男は怯える
「お前が何かを言う前、月村はお前にやめてと悲願し、自分の正体をばらされた後、涙を流していた。誰にも知られたくない秘密だったはずだ。それをお前はこの場をきり抜けるため使い、月村の心を傷つけた、怒る理由は十分だ」
「吸血鬼である彼女を助けて君に何のメリットがある?」
「メリット?取り合えず、お前の野望をつぶせることが1つだな。恐らくだが、お前は月村を絶望のどん底にまで落とし、そのあと何らかの手段を講じて自分に依存するようするじゃないか?」
「・・・・」
「その反応を見るに図星だったみたいだな。何で分かったのかって顔だな?俺はちょっとばっかし特殊でな相手の魂魄を見て何を考えたり、思ったりしているのかを見破ることができるのさ。しかし、本当に下種というか最低な男だなお前は」
「う、うるさい!魔導人形達!あの男を殺せ!!」
男は起動した人形達に悠斗を殺すよう命令を下すと、人形達の目が光、悠斗に襲い掛かる
「はぁ、ちゃんとした戦いの場でこいつを使いたかったぜ。“来たれ(アディアット)”」
悠斗は自身の姿が描かれたカードを取り出し、呪文を唱えるとカードが光、その光を基点に無数の白い帯が放たれ、襲い掛かってきた人形達を次々と貫いていく
「おいおい、この程度かよ?これならあの未来から来た自称火星人が作ったロボのほうが手ごわかったぞ?」
「ならこの人形ならどうだ」
男が指を鳴らすと奥から動いている人形の倍近い大きさの人形が現れる。悠斗は無数の白の帯をその人形に放つが、他の人形と比べて装甲が厚く、貫くことができなかった
「装甲は他のやつに比べて硬いみたいだな」
「装甲だけじゃない。やれ、クイーン」
男の指示に従いクイーンと呼ばれた人形は拳を悠斗へと突きつける。悠斗は後ろにいるすずかを抱きかかえると横に跳んで拳を躱す
「攻撃力も他のとは比べ物にならないぐらいすごいのさ。クイーン、奴を追い詰めろ」
男の指示を受けた人形は両拳を何度も振るって悠斗の逃げ場をつぶしていく。そして
「に、逃げ道が」
ついに逃げる場所が無くなってしまった
「ふふふ、これで終わりだ」
止めを刺すべく人形が拳を悠斗に向け放つ。迫りくる拳に怯えすずかは眼を閉じるが、いつまでたっても痛みが来ないことに不思議がり、目を開けると、人形の巨大な拳を片手で受け止める悠斗の姿を目にした
「ふ~~~んこの程度の威力か。月村がいたから避けてたんだが、これなら避ける必要なかったな」
人形の拳を受け止めている手の周りに3つの球体が現れ、3つ同時に弾けると球体から電撃が放出され、一時的に人形の動きを麻痺させる
「打ち貫け」
悠斗の腕の周りが一瞬光ると巨大なパイルバンカーが装着される。悠斗は質量の差など関係ないかのようにすずかを抱えたまま人形へと跳躍し、パイルバンカーを突き刺して人形の装甲に亀裂を入れ、それに続くよう射出された釘が人形の強固な装甲を貫いた
「ぼ、僕のクイーンが・・・」
自身の切り札である人形があっさりと壊されたのを見て男は呆然とする
「“来たれ”」
悠斗が再び紡いだ言葉により、悠斗の腕の装着されていたパイルバンカーが消え、周囲に剣、斧、槍といった無数の武具が浮かんだ状態で現れる
「何なんだ、何なんだお前のその力は!?」
「これか?とあるチートでバグなおっさんが使い、俺が引き継いだ宝具、如何なる武具にも変幻自在、無敵無類の力、“千の顔を持つ英雄”だ。まぁ、英雄って書かれてはいるが俺はそんな大層な男じゃないけどな」
「千の顔を持つ英雄?そんな宝具、知らないし、ゲームにも出てこなかったぞ!?」
「・・・・・」
男の言葉に何かを感じた悠斗だったが男の言葉を1回飲み込み、周囲に展開した武具を男に向け射出する。射出された武具は少しでも動けば当たるというギリギリの場所に突き刺さる
「ひ、ひぃいいい!?」
「っま、こんなもんか」
「す、すごい」
「さて、バーナウ・ファー・ドラグ 大気よ、水よ白霧となれ、この者に一時の安息を “眠りの霧”」
悠斗は相手を眠らせることのできる霧をすずかに浴びせる
「ゆ、悠斗、さ、ん?」
「悪いな月村。ここから先はお前には見せることはできないんだ。安心しろ、目が覚めるころにはすべてが終わって家にいるだろうからよ」
眠りの霧を浴びたすずかは数秒後にすやすやと寝息を立てながら眠り始めた。悠斗はすずかを床におろすと、1歩も動けない男に近づく
「な、何だよ?」
「お前・・・転生者だろう?」
「っ!?」
悠斗の言葉に男は眼を見開く
「正解か。俺のアーティファクト“千の顔を持つ英雄”が宝具だと知って聞いたことがない、ゲームになかったって叫んでいたかな」
「じゃあ、お前も」
「あぁ、俺も転生者だ。まぁ、立ち位置は違うけどな」
「立ち位置が違う?」
「俺はお前のような自分勝手に事を成し、話を大幅に変えようとする者を狩る者だ」
「ぼ、僕をやるっていうのか?」
「それが女神の部下となった俺の仕事だからな。お前が善意をもって月村に接していればやる必要はなかったんだけど」
聞きたいことを聞き終えた悠斗は男に背を向け眠っているすずかを抱える
「あばよ」
男に別れの挨拶を告げると悠斗は転移符を使ってビル内から脱出した
「・・・僕をやるとか言ってたくせにやっていかないなんて甘い男だ。姿を現せ」
男が命令口調な言い方で喋ると、空間がゆがみ5体の人形が姿を現した
「ステルス機能付きの奴等を隠して配置しておいてよかった。人形ども、僕の周りにある剣、槍、斧を抜け!」
男の命に従い5体の人形が撤去作業を始めようとしたとき、何かが崩れていく音が天井から聞こえてくる
「何だ?」
気になった男が天井を見上げると、巨大な刃が天井を突き破りながら自身めがけて落ちてくる。それが男が最後に見た光景だった
「ジャックのおっさん直伝、斬艦剣」
転移符で外に出た悠斗はアーティファクトを使って特大の剣を作り上げ、建物に向け投げた。投げられた大剣は建物を崩し、男を両断し、瓦礫の山へと変わった
「随分と遅くなったが、帰りますか」
その光景を最後まで見届けた悠斗はもう1枚の転移符を取り出し、発動させて月村邸へと転移した