ドキドキな私の気持ち   作:一才

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第2話

 

 

「私の…シャドウミストレス優子の配下になれ」

 

私と姉の好きな場所で言われたその言葉は、シャミ子の全てを表していた。

まぞくの女の子、あくまでミストレスとしての関係性を求めた。

それは人によって聞こえの悪い表現だが、私にはそのやさしさに心が救われた。

 

あくまでも協力者として、仲間としての信頼を。

シャミ子はそれを私に求めてきてくれたのだ。

 

「眷属…か」

自室で着替えをしながらふと言葉が漏れる。

シャミ子のお父さんの一件、あまりにも衝撃的な内容に、私はその場から逃げるように立ち去ってしまった。

私の姉が原因でシャミ子のお父さんは箱に閉じ込められてしまった。

その事実に動揺してしまったからだ。

あいさつも無く立ち去ってしまったことをシャミ子のお母さんに謝らないといけない。

そしてお父さんの件についても今一度謝りたいと思っていた。

 

「菓子折り…は箱だからだめか」

シャミ子のお母さんにどんなお詫びの品を持っていけばいいか相談したかったが、シャミ子は携帯電話を持っていない。

自宅に電話をするのも、お母さんに出られると応対に困るので難しい。

お詫びの品の定番でもある菓子折りも、箱に閉じ込められているということを連想させてしまいそうで、ちょうどよさそうな物が思いつかない。

「仕方ない、シャミ子の家に行こう」

直接会って相談しよう、ちょうど夏季休暇中だからおそらく家にいるだろう、そう思い家を出た。

 

シャミ子の住まい、ぱんだ荘に近づくと、なぜかミカンの魔力の波動を感じた。

朝の修行から戻ってくると、いつの間にか荷物をまとめていたミカンは部屋を借りると言い出して出て行った。

そんな彼女がどうしてこんなところにきているのだろうかと思い、ミカンのいるであろう部屋を開けると、シャミ子とミカンが笑いあっている。

「私ここに本棚を置いてここにテレビを置きたいの」

「私はゲーム機を持ってくるので対戦しましょう!!」

「それは楽しそうだね」

「「桃!?」」

 

その姿をみて私はちょっとだけイラッとしてしまった。

何が不愉快か、わからない。

けどちょっと、ほんの少しだけ、シャミ子が私を残して仲良くしているのが…

そのあとリリスさんに煽られポイしたので多少は気は晴れたが。

 

 

 

しかし最近の私はどうもおかしい

一時期はシャミ子に対してドキドキするだけで、ここまで不安や苛立ちはなかったのに、シャミ子の行動にいちいち反応してしまう。

時々声が聞きたくなる時もあるし、しばらく会えないとモヤッとした気持ちになる。

シャミ子の隣の部屋に住み着いたのも、連絡が取りづらいからというのが本命だが、家で会うよりも顔を見る機会が増えるという理由がある。

自分のつぶやいたーのアカウントを教えたのも連絡が取りやすくなるという面があるからだ。

ただ…一つだけ冗談で流したが、本心に近い気持ちがある。

 

「シャミ子のことをもっと知りたいから」

 

この言葉は照れくさくてごまかしたが、限りなく本心だ。

姉を探すために行動を共にする、それも間違っていない。

けどそれと同じくらい、シャミ子とともに過ごしたいという気持ちがあった。

だからこそ、姉との思い出のあるあの家から出て、シャミ子の近くに引っ越したのだ。

 

 

 

 

 

 

それからつぶやいたーでアカウントを教えた翌日。

部屋の中での修行は壁の薄いこのアパートだと近所迷惑だと思い、河原で朝の修行を行っていた。

水で満たされた石の水瓶をダンベルの要領で持ち上げているとき、置いた水瓶の水面に自分の顔が映った。

ピンクの髪につけられた黒い髪留めが朝日と水瓶にキラっと反射する。

そういえば…髪留めのお礼をしていないことを思い出した。

 

 

約束のしるしとして貰った髪飾り、今度は違うものを私から送りたい。

 

 

さて、どこで買おうかな?

あまりそういったプレゼントの知識のない私には何を買ったらいいのかよくわからない。

ミカンに良さそうなのを聞くのも…今はまだ寝てるかもしれないから…ん?ミカン…そうだ。

いいことを思いつき、朝の修行を終え、ぱんだ荘へと帰宅する。

 

 

外からおいしそうな朝ごはんの香りが漂う玄関をノックし、シャミ子に部屋へ招き入れてもらう。

図らずも、朝ごはんをごちそうになり、温かな和食をいただきながらシャミ子に話を持ち掛ける。

「シャミ子、ミカンの引っ越し祝いになにかお祝いの品を買おう、もちろんミカンには内緒で」

「いいですね!わかりました。それではこの後、商店街に向かいましょう」

これでミカンのお祝いの品を買いながら、シャミ子に髪留めのお礼を買うことができる。

 

 

「あら、じゃあ優子、これを授けましょう」

「お、お母さん、これは!?」

「そう、優子!これは野口さん…お小遣い2か月分です!」

シャミ子の手のひらに野口さんが渡される。

「私たちの家計もだいぶ楽になりました。これも桃さんとミカンさんのおかげです。これからも共に過ごすならお礼は大切です」

「わかりました!これだけあればきっとドデカいスゴイやつが買えますね!」

「そんなに凄いのは買えないんじゃないかな…?」

一か月四万円生活の頃では嗜好品はなかなか買えないのだろう、野口さん程度の金額でシャミ子はキラキラとした笑顔を輝かせている。

「ごちそうさまでした。それじゃあ着替えてくるね、また後で」

朝ごはんをいただき、私服に着替えるため、自室に戻る。

 

 

着替え終わり、シャミ子が出てくるのを待つと、しばらくしてシャミ子が階段から降りてくる。

フリルのついた白のワンピース、ふわっとした服装で妖精のような風貌で可愛いらしい。

「じゃあ今日は町に繰り出しましょう!」

「うん、いこうか」

私はジーンズに猫のイラストが入ったTシャツとチェックのシャツだ。

…みかんの服は毎回着ていくには恥ずかしいので、多少はマシな服を着てきたつもりだ。

「そういえば、リリスさんはどうしたの?」

シャミ子のトレードマークでもあるご先像、リリスさんが封印されている像を持ち歩いてる彼女だが、今日は珍しく持っていない。

「ごせんぞですか?実は昨日、ワインってのをいただいたのですが…」

「あぁ…ワイン…そういうことか…」

皆まで聞かなくてもわかる。

おそらくワインをお供えされたリリスさんはその懐かしさから飲みすぎてしまい、意思疎通もできないくらい二日酔いになってしまったんだろう。

「はい…「これはワイン!!?懐かしい…懐かしい」と泣きながら凄い勢いで飲んでいたようで」

案の定だった。

 

しかしこれでリリスさんに茶化されることなく、今日の内にプレゼントできそうだ。

それに図らずも二人っきり…リリスさん抜きは髪飾りをもらった時以来だった。

「じゃ、じゃあいこうか」

「?しゅっぱーつ!」

あの時を思い出して、少し動揺してしまったが、顔には出さず、シャミ子とともに商店街を目指す。

しばらく歩くと商店街、シャミ子の家から商店街はそれほど距離がないためすぐに着く。

 

「お!ちよもも、シャミ子!お二人さんデートかい?」

そんな商店街にあるお肉屋さん、その家業のお手伝いをしているシャミ子のクラスメイトの佐田杏里が、私たちの姿を見つけたのか、声をかけてくる。

「なな!?杏里ちゃん!?デートではありません!これはみかんさんのプレゼントのためで」

「そうだね、デートではないね」

「え、桃なんでちょっと不機嫌なんです?」

デートではないと一刀両断され、ちょっと嫌な気持ちになってしまう、いや確かにデートではないけれど…

「別に不機嫌じゃないよ、それより杏里この辺に手頃なプレゼント用品を扱っているお店ってある?」

「ん?ここに手頃なお肉が」

「さすがにお肉はいらないかな」

「プレゼント用品?最近できたアクセサリーショップがあるくらいだけど…」

「それです、それです!そのお店はどこにあります?」

「ここから少し行った所にあるよー道なりだから迷うことはないと思うけど」

「ありがとうございます!また今度お肉を買いに来ますね」

「お、ありがとうーちよもも、シャミ子じゃあねー」

 

道なりに進むと、確かに窓越しからアクセサリーの飾られたお店が目についた。

店内に入ってみると、いろいろな小物が所狭しと並んでいて、ここならなにかいいものがあるかもしれない。

ネックレスやピアス等の貴金属は値段が高いので、ネクタイやハンカチ、リボン等のコーナーを探してみる。

 

店内を物色していると、シャミ子が突然裾を引っ張ってきた。

「桃!桃!これどうですか!?」

シャミ子が見つけたのはデフォルメされたいろいろな柑橘類が描かれたハンカチだ。

「すごい…ぴったりな商品だよ!」

「そうですよね!ミカンさんといえばかんきつ!」

値段も手ごろで、シャミ子と私でちょうど折半できる金額だ。

「じゃあ買ってくるよ、シャミ子お金もらえる?」

シャミ子はいつものビニールから野口さんを取り出すと、私に預けてくれた。

外で待ってるよう伝え私はお会計を済ませる。

 

帰り道、残ったおつりで商店街の薄皮いちご大福を買い、多魔川の河川敷まで散歩し、土手に座って半分こする。

シャミ子は満面の笑みで、大福に齧り付いている。

姉との思い出のあった大福は、今では普通に買えるようになった。

昔の私と向き合うこと、それと同じくらいシャミ子とのこれからを繋ぎたい。

 

「シャミ子、今日はありがとう」

「いえいえ、いいものが買えてよかったです。きっと喜んでくれますね!」

シャミ子の渡した紙袋、それとは違う紙袋を私は取り出す。

「これ、シャミ子に渡そうと思って」

私が差し出したのは大きめの赤いリボン、ミカンのハンカチを買うときに一緒に買っておいたものだ。

「髪飾りのお礼、まだしてなかったから私からも約束のしるしに」

「え!?だってあれは」

「いいからじっとして」

彼女の首元に蝶結びで赤いリボンをつけてあげる。

白いワンピースと相まって、妖精感はぐっと増した。

「えへへ、なんだか首輪みたいですね」

笑みをこぼすシャミ子に、心のドキドキが最高潮に達し、思わずその場にうずくまる。

「!?桃大丈夫ですか?」

あぁやっぱりそうだ。

このドキドキはそういうことなんだ…

 

私は彼女が好きなんだ

 

「うん…大丈夫、気に入ってくれた?」

「はい!ありがとうざいます桃!大切にしますね!」

 

もし、彼女が大変なことになってしまったら、私の全てを賭して救ってあげよう。

そう誓い、私は彼女と一緒にぱんだ荘へと帰って行った。

 

 

 

 

 

それからどしたの

 

「ごぜんぞ、体調大丈夫ですか?」

「うむ、もう万全だ!ところでシャミ子よ?そのリボンはなんなのだ?」

「これですか?宿敵桃からもらった物です!大事に押入れに入れておきます!」

「ふむ…あなたに首ったけってところかのう…うぶよのう…」

「ごせんぞどうかしました?」

「いいやなんでもない、そのリボンは時々つけたほうが効果的だぞシャミ子よ」

「けど汚したりなくしたりしたくないので…」

「あぁうぶとうぶが重なって初々しいのう」

「え?どういう意味です?」

「気にするな…お主はそのままでいいんじゃ…そのままで…」

「????」

 

 

頑張れシャミ子!いつか彼女の気持ちに気づいてやるんだ!




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