最近、流行(若干遅れ)のクリプターSSに手を出してみる。
……エタ作者を信用してはならない(戒め)
空を覆う曇天の天蓋。
心なしか空気に重量を感じる陰鬱な気配。
灰の塔が乱立する現代の魔境。
世界最大の
一月も半ばに至り、新年のお祝いムードから一転、いつも通りの日常。
大人は嫌気が差す労働の無限螺旋へと。
子供は面倒くさい学問の教育牢屋へと。
それぞれがそれぞれの居場所へと戻っていく。
いつも通りの景色、いつも通りの空気、いつも通りの日常。
今日も極東の大都市は平常運転。
来年には
だが──そんな中、一つの噂話が数年前から蔓延していた。
『2000年の世紀末に世界は終わりを迎える』
──それはよくある都市伝説、根拠の無い噂話。
大抵のものは何を馬鹿なと鼻で笑い、信じている者を小馬鹿にするだろう。
だって理由が無い。
震災、台風、津波、噴火、
人類史はその歴史の中で様々な天災に襲われてきた。
幾度かにおいてはそれこそ絶滅の危機にすら瀕した。
しかし人類はそのたびに確と生き残り歴史を紡いできた。
故、破滅要因をよく知っている。
知っているからこそ、恐れない、怖がらない、危機感を覚えない。
確かに天の災いは恐ろしい。
だが、予兆も無く、予感もなく、予知もない現状。
ただ世界は滅びるのだと言われたところで信じる者など少数だろう。
予め大地震が来る、隕石が落ちてくる等々、災いの気配があるならともかく。
西暦最後、二千年、転換期、新たな時代、新世紀……。
文明科学発達したこの時代にそれらオカルト染みた要因による破滅など誰も信じない。
そう──誰も信じなかった。
神秘を隠匿する魔術協会も。
人類の破滅を避けようとするアトラスの巨人たちも。
この世ならざる場所にて揺蕩う世界を見捨てた賢者たちも。
今日この日──東京の闇で行われる戦争の参加者たちも。
誰も知らない、誰も信じられなかった。
ある日、世界が突然始まったのと同じように。
──ある日、突然世界が終わるなんて、信じられ──なかったのだ。
『──、──せ────す』
「?」
ふと、誰かが空を仰ぐ。
何処か遠くから声が街へと降り注ぐ。
『せ──く──る───』
それは一人では無い。
子供が、大人が、老人が、若者が。
誰からとも無く、空を仰ぐ。
『──宣告する』
呆然とした顔。
広域に声を伝える機具を使ったわけではないだろうに。
突如として街全体に、街に言い聞かせるようにして言葉が紡がれる。
『本日を以てして君たちの破滅は約束された』
それは何て呆気ない終末宣言。
夢うつつの狭間にて聞き届けられる夢幻の戯言。
『人類史はこの世界の破棄を決定した。これ以上の繁栄は存在しない』
意識はハッキリしている。思考はハッキリしている。
されど──認識が出来ない。
現実を把握できない。誰一人、何一つ。
何が起こっているのは分からない──。
『行き止まりの人類史に──未来など、ない』
──世界の何処かで、破滅に挑む錬金術師が発狂した。
──世界の何処かで、魔法使いが世界を去った。
──世界の何処かで、神代の住民が嘆いた。
彼らは理解する。
場外の住人たちは場外であるが故に破滅を確信した。
もはや誰にもどうにも出来ない、と。
『我々は──汎人類史に見捨てられたのだ』
次第に、東京が騒がしくなる。
日常は異常へ。
平和は騒乱へ。
当惑は狂乱へ。
認識が変わる、どうしようもない悪い予感が胸を刺す。
世界が小さく、矮小へと移り変わる。
『改めて、宣する──我らは敗北した。故に我らに未来は無い』
ふざけるな──。誰かがそういった。
ふざけるな──。
ふざけるな──。
戦いを挑んだ結末なら良かった。
予兆ありし終幕ならば諦められた。
要因ある自滅ならば仕方がないと頭を垂れた。
だが、ある日、突然、前触れも無く。
勝負に挑むことすら無くただ負けたなどと……誰が受け入れられようか。
勝敗があるならばせめて挑ませよ。
災いであるならばせめて顕せよ。
自滅であるならばせめて指摘せよ。
今日この日まで当たり前に続いていた日常。
そこの何処に不徳があるというのか──。
『愚問──獣の種があった。それだけだ』
声は言う。
曰く、この世界には世界のあらゆる獣より醜悪な悪が居たと。
世界を飲み干す『
人類が彼女に太刀打ちできない世界──それが此処だったと。
『ヒトの抑止力は予見できず、惑星の抑止力は黙認した。亡国の王子は約束されず、ゆえに少女は思いつきで世界を滅ぼす。望みを託す聖杯に、破滅を託し、壮絶な皮肉に嗤い、幕を閉じる』
故に存続する意味が無いと見捨てられた。
どうせ死ぬのだから万象無意味と並行世界論は可能性を破棄した。
『それが結論、それが我らの滅ぶ理由だ』
それが呆気ない結末だ、と声は嘆く。
『だが──諸君らは認められるかね?』
汎人類史とこの世界に一体どんな差違があるという?
獣が一匹、偶々誰にも知られていなかった少女が一人──。
そんな広い歴史の中で砂粒のような要因が世界を滅ぼすだと?
たった一つの破滅的存在が70億の人類史を葬りさるだと?
『世界など極少数の舞台役者だけで回されているモノだと……』
英雄、英傑、偉人、魔王、星の触覚、外宇宙からの侵略者。
そんな規格外の存在、生まれついての運命の保有者たち。
そういった者のみが、命運を左右できる定めにあるのだと。
多くの、大衆に意味など無いと。
『認め、諦めることが出来るかね?』
その声に──みんなが否と唱えた。
そうだ、否 否! 否ッ!!
諦められるものか、認められるものか。
何故ならば、人類史は
ならば挑む権利を寄こせ。
ならば選ぶ権利を寄こせ。
それだけは誰もが持つ当たり前の平等だから。
その自由さえ無いというならば、誰が終わりを認められるという!
『──素晴らしい回答だ。そう、その通り、諸君らには権利がある』
声が頷く、歓喜に打ち震えたような、激情に満ちた、声。
素晴らしい、素晴らしい、素晴らしいと賛歌を歌う。
『故に我ら与えよう……此処に再び宣言をする』
『我が名は加藤
『選ばれし
『例えどれほど凡庸であろうとも、運命に選ばれなかった凡人であろうとも』
『世界は誰にだって救えるのだと──どうか証明して欲しい』
『だから託そう──至高の剣と盾を。存分に心振るって挑むために』
声──魔術世界において『魔人』と謳われた、極限の怪物。
時計塔が最優先封印指定魔術師と銘打った魔人が人類賛歌を歌う。
──素に石と鉄。礎に石と契約の大公。約定するは選択の理。
── 降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ──。
浪々と響く、呪文、
言葉に魔都に潜む選ばれた七人が驚愕する。
何故ならそれは、ある至高の存在を呼び寄せる言霊であり、
──
──汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
■■の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
それは戦いに挑む権利、武器であり防具、戦友であり従者。
東京に眠る大魔術炉心があって初めて成立する奇跡。
──誓いは此処に。
我ら、常世全ての善なる者。
我ら、常世全ての悪なる者。
故に言霊はただ一つ、我ら、即ち挑戦者なり。
祈りの縁を辿れ──歴史の当事者たちよ!
異形にねじ曲げられた詠唱。
規格外の魔術師が再編した祈りの言葉。
果たしてそれは──破滅の運命を切り払わんと降り立った。
大人に、子供に、老人に、若者に。
誰一人、何一つ、分け隔てなく、権利が与えられた。
『『『問おう──貴方が私のマスターか』』』
運命は平等に与えられた。
さあ、挑め、選べ、立ち向かうが良い。
私は何一つ、誰一人として見捨てない。
「私は
所詮、傍観する、関係ないなどとどうか嘆きの言葉を使わないで欲しい」
世界の支配者は言う。
悲しげに。
「世界は皆ものなのだから。君たちは等しく運命の担い手なのだから」
世界の支配者は言う。
祈るように。
「さあ──聖杯戦争を始めよう。これは世界を救う戦いである」
世界の支配者は言う。
希望を胸に。
おお、喝采せよ、喝采せよ、喝采せよ!
此処に史上の最高の戦いが幕を開ける。
その名は──。
Lostbelt No.■ 人理聖杯戦線 東京
『帝都物語』
異聞深度:EX
AD:1999年?
ドキドキ、聖杯戦争。
百万人のサーヴァントたちの頂点に立て。
……どっかで聞いたフレーズだね。エクスカリバー何処?
尚、開始一日で九割死亡(ネタバレ)