Fate/Catastrophe   作:アグナ

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エレちゃん、エレちゃん出ない……。
なんでや……。


ACTー6 侵攻

 東京都港区──。

 

 日本経済の中心地である東京だが、その中でもこの港区だけは別格である。

 新聞社や放送局という情報を取り扱う組織。

 オフィス街として多く乱立する企業の本社群。

 お台場を初めに近年、注目を集める商業エリア。

 麻布を始めとした高級住宅街。

 そして──諸外国から設置された大使館。

 

 国を回す上で重要なものがたった一つの区に集約しているのだ。

 都の中心とは、まさにこれこの通り。

 港区は都心と数えるに相応しい設備と場所であった。

 

 だから、だろうか。

 空前絶後の英霊が召喚され、戦地もかくやという東京の有様があって尚、未だその区画だけは嘗ての威容、都の中心地と数えるに相応の繁栄を有していた。

 足りないものと言えば精々……本来あるべき住民の有無程度か。

 

「卿────君は既知感というものを知っているか?」

 

 そんな港区の南麻布にあるとある建物。

 在日ドイツ大使館と名付けられた建築物内で一人の男が声を上げる。

 

 大使館の一角に作られた在日大使用の私室。

 本来は書斎とでも言うべき風貌を持つそこは異様な雰囲気に包まれていた。

 部屋(せかい)を塗り替えるように巡らされた真紅の布地。

 否応なしに豪奢な部屋を形作っていく金の装飾たち。

 何より、声を上げた男が座すのは背もたれの高い玉座である。

 

 王宮にある玉座。

 ──在日ドイツ大使館は現在、たった一人の王が君臨する王宮と化していた。

 

「既視ではなく、既知。既に知っているという感覚。卿はそれを感じたことがあるだろうか?」

 

 本来在るべき姿と異なる世界。

 異界ともいうべき空間で男は……王は問う。

 その問いに対して──応えたのは、王の傍らに立つこれまた一人の男だ。

 

「さて、私には何とも。私は所詮、王のご威光に比べれば卑賤とも言うべき一介の魔術師でありますれば、そのような感覚は一度も。或いは、我が手が悲願に届きうれば感じうる感覚なのやもしれませぬが……」

 

 応えたのは男である。

 魔術師というには鍛え抜かれ、引き締まった五体。

 私心を殺し、事実のみを語る在り方は魔の術理を司る師というよりは役割に徹する軍人かの様だった。

 そして事実、彼は軍服を身に纏っている。

 第二次世界大戦時、欧州全ての憎しみを買ったある帝国の軍服を。

 それも帝国内でも悪名高い鉤十字(ハーケンクロイツ)の紋様を刻んだ。

 

「根源か。相変わらず魔術師はあんなものを。全知全能など、知ったところで意味が無かろうに」

 

「しかし、我らが妄執なれば」

 

「成る程。重ねた血というのものは恐ろしいな。時として、本人の人格すら飲み干して、その在り方をねじ曲げてしまう」

 

 ほうっと吐息を漏らしながら王は微笑みを浮かべる。

 その、感嘆とも嘆息とも取れる吐息だけで、一体幾人の女人が魅了されることか。

 

 それ程に王はひたすら絶世の存在であった。

 適度な長さで切りそろえられた黄金の髪は獅子の鬣が如く。

 白皙の肌と蒼く輝く両眼はさながら芸術品の様に穢れがない。

 手足五体は黄金律が如き理想型で、人としての欠点など存在しない。

 

 全て、総て、凡てにおいて王は圧倒的に絶世だった。

 人にあるべき欠陥、闇など一切ない。

 ただただ神々しく、そして美しい。

 

 男であれば羨望を、女であれば魅了を。

 人間である限り、この王を前に無感でいられるモノなど居ないと確信できる。

 王の在り方は全てが全て豪華絢爛であった。

 

 だからこそ──やはり此処は異界である。

 絶世の王と世界の敵。

 決して交わらぬはずの両者がこうして言葉を交わしているのだから。

 

「しかし──そうか、卿は感じたことがないか」

 

「ご期待に添えず申し訳ありません」

 

「ああ、別に謝ることはない。特に意味の無い問いだ。仮に君が感じたことがあろうとも意味は無いだろう。何故ならこれはそういう病だ」

 

「病ですか……?」

 

「然り、病だ。私が生まれ、私が確立したその時より、私が感じてきた感覚。これは食べたことがある。これは聞いたことがある。これはやったことがある。これは感じたことがある……五体五感の全てにそう働きかけてくる感覚、一種、衝動染みた脅迫──それが既知感。私が常に感じている感覚だよ」

 

 既視ではない、既知感。

 それは既に識っているという感覚。

 王は四六時中その感覚を感じ続けているという。

 

「人生の意義とは己を完成させていくことにある。であれば、初めから全てが完成している私に不完全性など存在しないと言うことだろう。つまるところ、私にとっての人生とは時間の消費。本来不要な期間の破棄であった」

 

 王に時間は不要だった。

 彼は生まれつき完成している故に──。

 

 王に学習は不要だった。

 彼は生まれつき全てを識るが故に──。

 

 王に感情は不要だった。

 彼は生まれつき人生はないが故に──。

 

 完成された人間、完璧な機構。完全なる存在。

 生まれ出でたその時点で王は全てが完結している。

 

「故に真実、私は一度も生を実感したことが無いのだよ。尤も、実感したところでその感覚もやはり既知なのかもしれないがね」

 

「では──王が聖杯に求めるのは、その感覚を廃することなのですか?」

 

 男は、王の真意を探る。

 意味の無い人生。

 意義のない人生。

 

 そこに不満を覚えるというのならば、己が感覚、己が衝動などと言う他人にはどうにも出来ないモノをどうにかするために万能の杯に縋るのは理解できる話である。

 

 しかし王は首を振った。否であると。

 

「いいや。元より縋り求めるものではなかろうよ、これは。己が人生などは自らの足と自らの意思で以て何れ相対するべきが道理だ。君とてそうだろう、与えられた人生など、そんなものに意味はあるまい」

 

「……失言でしたな」

 

「ああ、君にしては珍しい。そして、好ましくあるよ。間違えることは意味ある生を生きる人間の特権だからな。その点、私は……まあこの話は良いか」

 

 フッと自重するように王は笑う。

 語るべきではないことだというように。

 

「そう、願い……私が聖杯に求める願いを君は気になっていたな。しかし真実、私に願いは無いのだよ。願いとは自らに足りないモノを他に求める行為であろう? だが、私は全てを識り、全てを持っている。故に願いなど、この身に存在しないのだよ。私の病はその証だ。この既知感こそ、我が長年の病にして、証明だ」

 

「では……王は聖杯を要らぬと?」

 

「しかし卿は欲しているのだろう? ならば無論、手に入れるとも。今の私はそういう存在だ。サーヴァント、というのだったかな。まあ何でもよい」

 

 求められたが故に成し、求められたが故に成す。

 王とは最適解を世に還す機構ならば。

 死した後で尚、王はその機能を実行する。

 

 それこそが覇者──生まれ出でたその時から世界を握ることを約束されたモノの運命なのだから。

 

「卿は私に何を求める?」

 

「──万能の杯を」

 

「卿は私に何を望む?」

 

「──完璧なる勝利を」

 

「卿は私に何処を見る?」

 

「──我らが夢の最果てを」

 

「ならば、そうするのみ。……ああ、この問答にも意味は無いな。この感覚、やはり既知だよ。何千、何万回と識っている」

 

 そういって、王は微笑む。

 この倦怠感すら愛おしいと。

 

「魔人も星見も総じて、意味は無い。勝者は常に一人、即ちは私一人なのだから」

 

 不敵とも傲慢とも取れる言い分。

 しかし何故だろうか、王の言葉に偽りを感じ取れない。

 幾百、幾万の英霊が競争相手としているだろうに。

 王の敗走が決して、決して目にも浮かばない。

 

 だが、それも当然だ。

 真実、王は勝利者である。

 

 必ず世界を握ると約束された王である。

 故に勝利とは……常に彼の手の中にあった。

 頭上に被る古びた王冠と光が束ねられたとしか形容できない槍こそ、その証。

 

 或いは聖堂教会の人間がこの場に居れば滂沱の涙を流していただろう。

 この一瞬を焼き付けるため、永遠にするため自害すら選んでいたかも知れぬ。

 

 何故ならば、この男こそ──王という権威が至る到達点。

 奇跡とも言える完成された存在。

 世界の覇者。黄金の存在。『』に等しき生命。

 

「では先んじて一手。戦争を始めよう。それとも君の祖国に免じてこう口にするべきだったかな?

 ────我らに勝利を(ジークハイル・ヴィクトーリア)、と」

 

 王の言葉に、男は感謝するよう頭を垂れた。

 

 

 

 

 つまるところ──この東京では二度に渡り聖杯戦争が行われていた。

 

 聖杯戦争、それは万能の杯を巡る魔術儀式。

 七人の魔術師と、七つの英霊。

 壮絶な最後の一人になるまでの戦い(ゼロサムゲーム)

 

 それこそが聖杯戦争。

 たった一人の勝利者を選定する蠱毒壺。

 

 何故そんなモノが極東の田舎(日本)で行われてきたか、遡れば発端はとある枢機卿の持ち込んだ聖遺物にまで遡る。聖杯と言えばかの救世主が残せしめた偉大なる教典に記された聖遺物であるが、東京における聖杯とは、この教典に記された聖杯を模したモノ──模造聖杯と呼ばれるモノのことを聖杯と呼んだ。

 

 模倣……つまりは聖杯という聖遺物のニセモノであるわけだが、しかし真贋の差違など些末な問題である。何故なら器が持つ性能自体は万能と呼ぶに相応しい力を持っていたのだから。

 『根源』に至ること目的に生きる亡霊(まじゅつし)にとって、目的に至れるならば手段なぞさして拘る必要が無く、また別の願望を抱える者たちにとっても結果さえ得られるならば一考だにする必要も無い。

 よって彼らは万能と呼ばれる誘蛾灯に誘われる羽虫の如く、彼らはこの『聖杯』を入手するために、生存率七分の一という過酷な戦場に参戦した。

 

 ある者は魔術師らしく、根源に至るため。

 ある者は土地の支配者として、義務を果たすため。

 ある者は失った命を取り戻すため。

 ある者は聖杯戦争という戦いを止めるため。

 ある者は衰退する一族を立て直し、名門たるが由縁を示すため。

 ある者は自らに課せられた足枷を引きちぎるため。

 

 そして────ある者は、ただ退屈を紛らわせるために。

 

 願いや覚悟に貴賤も無ければ上下もない。

 斯くして行われるは空前絶後の死合い舞台。

 七つの英霊、人理を守るトップクラスの神秘兵器が凌ぎを削り──。

 

 ──たった一人の魔人が参戦したことで、全てが崩壊した。

 

 其は星のアラヤから枝分かれした人外の触覚。

 人の可能性に奇跡を見て、それに魅入られし『魔王』。

 『白き姫君』によって堕天者として誅戮され、しかして蘇った者。

 

 彼の存在が全ての前提を破綻させた。

 

 

 剣の英霊とそのマスターはいの一番に鏖殺された。

 魔王は『獣』に何ら興味を持たないが故に。

 

 槍の英霊とそのマスターは次なる犠牲者として屠られた。

 魔王は人の『恋情』もまた愛するが故に。

 

 弓の英霊とそのマスターはただただ放逐された。

 魔王は『挑む者』を望むが故に。

 

 騎の英霊とそのマスターは壮絶な決戦の果て殺された。

 魔王と相対するは人の世を憂う名君であるが故に。

 

 術の英霊とそのマスターは言葉を交わした果てに殺された。

 魔王は議論もまた、人の戦の形の一つと捉えるが故に。

 

 殺の英霊とそのマスターは一方的に粉砕された。

 魔王は人の弱さも俗世の欲望も好まぬが故に。

 

 狂の英霊とそのマスターは感動と共に打ち砕いた。

 魔王は力を持たぬ者の奮戦の義憤にこそ、嘗て希望を見たが故に。

 

 

 魔王は全てを鏖殺し、打ち砕き、破壊の限りを尽くした。

 それこそが一度目の戦いの顛末、人知れず行われた聖杯戦争の末路だ。

 そして彼は壊した全てを、組み替えて、再び再生させた。

 

 即ち──これこそが二度目の東京聖杯戦争。

 僅か十年の周回を経て行われる、第二の聖杯戦争である。

 参加者は前回を嘲笑う、東京都民全て。

 望む望まぬ、願望のあるなしを置いて行われる『試練』である。

 

 とはいえ、だ。

 『魔王』は希望と可能性を愛している。

 聖杯戦争は人が貴き願いの集う聖戦であるがため、踏みにじることに嫌悪した。

 だからこそ彼は枠だけは残した。

 

 元々聖杯戦争に参戦するはずだった者たち。

 剪定事象故に集った正史とは異なる挑戦者たち。

 その者たちには別の資格を彼は与えていた。

 

 『試練』に挑むのでは無く、『試練』を糾す者の資格。

 即ちは──聖杯戦争の破壊資格、魔王討伐の証明書を。

 本来の令呪の型、七つの天使の字を与え、霊基の器を強化した。

 

 だからこそ彼らだけは全てが平等な戦場における特権階級。

 通常よりも強化されたトップサーヴァントを引きつける真の魔術師たち。

 

 

 

 『七大天使(セブン・クラン)』──彼らこそ、魔王が主役たると太鼓判を推された主演である。

 

 

 

 

「相変わらず躾のなっていない犬たち。狂信のまま、周囲に害をまき散らすというのは亡霊の子飼いらしい無様さだけれど、こうも噛みついてこられると侮蔑も一周回って嫌悪に値するわね」

 

 紗蘭──と美しい音色を奏でながら壮絶な剣閃が放たれる。

 主の言葉を背にしながら騎士の剣はやはり曇り無く、主の敵を切り払う。

 英霊と魔術師、サーヴァントとマスター。

 主従関係において聖杯戦争最良最強と呼ばれる両者の防衛戦は侵略者一人として、その侵入を許さなかった。

 

 十七騎の英霊による襲撃。

 しかしそれは今まさに首を撥ねられた弓の英雄(ビリー・ザ・キッド)の脱落で失敗に終わる。

 残されたのは呆然とする一般人(マスター)たち。

 最強の剣にして盾を削がれた彼らにもはや大局に抗う術は無く。

 

「ひ、ひいぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁ!?」

 

「そんな、そんな……馬鹿な……!!」

 

「殺さ、殺されるッ!」

 

「この、この来るなあアアア、化け物共があああああ!」

 

「私は関係ない、私は関係ない、私は関係ない、私は関係ない……!」

 

 普段から平和な日常を謳歌してきた者たちの弊害だろう。

 偽りの狂信も、安心感(もと)が消えればこの通り。

 塗り固めた鍍金が剥がれるが如く、無様を晒していた。

 

「……はぁ、色んな意味で気が滅入るわ貴方たち。これならあの無作法者(アルヒャイ)が飼う者たちの方が役割らしいというものよ」

 

 剣の血油(サビ)を払いながら納剣するセイバーを傍目に美沙夜が嘆息する。

 戦時においては冷酷にして無慈悲な彼女だが、こうも醜悪な遠吠えを吼えられるようでは断末魔を聞く気力すら出ないというもの。

 これで狂信者らしく、幾度となく踏み潰そうとしつこく噛みついてくる駄犬ならば容赦なく無惨に踏み潰すが、一度の敗走で尻尾を巻いて蹲るような雑魚を一々本気で相手にするほど彼女は興味の無い輩に感心が続く質ではない、よって早々に敗残兵を意識からも視界からも外し、本命(・・)に目を向けた。

 

「──それでいつまで後ろ(そこ)にいるつもりかしら? それともそこの犬共と同じく尻尾を巻いて逃げてみる? 亡国を盲信する亡霊さん」

 

 視線の先、真の狂信者を挑発するように言葉投げる美沙夜。

 果たして──彼女は姿を現した。

 

 まず目に付くのは腰丈よりも下まで伸びる紫の髪。

 一般的な長髪よりも遙かに伸びきった髪の毛だ。

 

 そして、貌──吸い込まれるような瞳といい、性差関係なく魅入る顔立ちといい、魔的である。

 人を魅入らせるために生まれた偶像(アイドル)の如く。

 

 しかし身に纏うのはドレスではなく、無骨にして漆黒の軍服。

 加え、腕には鉤十字(ハーケンクロイツ)の腕章が装飾されている。

 

「いいえ、威力偵察を態々現地で記録する必要はありませんので。私がいるこの現状こそが私たちの答えであると察して欲しいものですね、玲瓏館」

 

「──……成る程、カルデアを抑えたいのはそちらも同じということねレイター少佐」

 

 悪名高き第三帝国(ナチスドイツ)には、様々な逸話が存在している。

 その中の一つに彼らは魔術(オカルト)に関する研究や収集を行っていたというものがある。

 目の前の彼女こそ、正しくその証明。

 真実、彼ら一派の一部が魔術に関する研究を行っていたと指し示す存在。

 

 親衛隊遺産管理局アーネンエルベ、第十三分室『世界樹(ワーグナー)』。

 ある世界線においては千年樹(ユグドミレニア)と手を結んだ国家魔術師集団。

 

「はい。我らが王はいたく彼らに興味を持っておられますから。世界の垣根を越え、我らが世界を滅ぼさんと欲する彼らを」

 

「そう、サーヴァントに奉仕するなんて勤勉な軍人さんでありますこと」

 

「私どもは世界の覇権たる者の末裔なれば、世界の王に仕えるのは当然のことです。元より、私たちに帰属意識など皆無。あの槍に仕えることこそ、私たち至高」

 

「忠義こそが名誉なり、と。変わらないわね、貴女たちは。いっそ呆れて感心してしまうほどに」

 

「そちらこそ。もはや明日無き世界で明日を望みますか、定命の遺児」

 

 それぞれ異なる方向においての女傑は互いに悪態を言い合う。

 序列第一位に仕える女と序列第二位である女。

 既に幾度となく彼女たちは矛を交え、言葉を交えている。

 本人たちの意思はどうあれ、理解し合っていると十分に言える。

 

 だからこそ二人の道は決して交わらない。

 明日を望む者と過去の栄華に縋る者ではどうあっても相容れないから。

 

「一応は未だに軍人を名乗っておりますので、形式美として警告をば。カルデアを引き渡しなさい、嘗ての支配者(セカンド・オーナー)。それが叶うのであれば、貴女という競争相手が生きながらえる猶予期間をもう少しだけ延ばしてあげましょう」

 

「愚問ね。その警告は貴女たちの王様にのみ許された暴言よ。飼い犬である貴女たちが私に意見できると思って? 貴女に出来るのは今すぐ私の前に屈服し、首を差し出して安らかに息は果てるか……愚かに剣を抜き、苦悶の果てに反逆を後悔しながら逝くか、それだけよ」

 

 無表情のまま告げられる警告を美沙夜は冷笑で以て嘲笑う。

 傲岸不遜に己が勝利を疑わず、目前の敵が倒れるのだと真実であるかのように告げている。

 その傲慢とも取れる態度にレイター少佐は嘆息した。

 

「つくづく、生意気な娘……」

 

 何処までも孤高、何処までも王者。

 その気風は信者である彼女にはあまりにも目障りだ。

 晴天に坐す星は一つで良い。

 月も無数の星々もお呼びじゃないのだそんなものは。

 精々が日の光に怯え、夜の帳に隠れていれば良いものを。

 

 煌びやかな太陽に並ぼうなどと──愚行極まれり。

 人々を魅了する王器は、地上に一つだけ。

 それ以外など所詮は贋作に他ならない。

 

「ですが、お陰で気分が良いです。これで存分に邪魔者(にせもの)を壊せる」

 

 他の天使も害敵だが、取り分け王器は目の前の少女一人。

 彼女を砕けば覇者足る器はこの地に一人となるだろう。

 故に感謝しよう──正当な理由の下、彼女を壊すことが出来ることに。

 

「バーサーカー」

 

 レイターが己が傀儡へ呼びかける。

 刹那──彼女の目の前、そこから黒い瘴気が吹き出して──。

 

『A──urrrrrrッ!!』

 

 全身甲冑(フルフェイス)の暗黒騎士が、地上へと迷い出る。

 

「感謝しましょう。王命に逆らわず、貴女を殺せることに──だから、優しく殺してあげます。玲瓏館の遺児」

 

「結構よ。道化らしくせいぜい、苦悶に喘いで私を楽しませて死になさい。亡霊の走狗」

 

 その悪態を最後に──至高の騎士と暗黒騎士が激突する。

 絶対の理性がため騎士は言葉を交わさず、狂った理性がため騎士は言葉を解さない。

 故に両者で交わされる意思と意思は剣閃のみ。

 

 忠義を優先する対極の騎士が、主への忠信を武を持って此処に示す──!




騎士と騎士は激突する。
背後に巡るは二つの王器。

覇者と女王──戦の花たる両者の思惟。
救世者たちを置き去りに、彼らは刃を交じ合わせる。

果たして、星の輝きは何処へ往く?



【ステータスが更新されました】

class:槍兵/ランサー
真名 :■ ■ ■ ■ ■
スキル:対魔力、カリスマ、神約の覇者など
宝具 :???
    ???
    ???

《ステータス》

筋力:B
耐久:A+++
敏捷:C
魔力:EX
幸運:EX

マスター:???
階梯  :第一位


序列第一位のマスターが呼んだランサー。
初代ファラオや原初の王に匹敵する王器の持ち主。

古びた王冠と光の槍を携えた約束されし覇者。
曰く、『全てを識り、全てを持つ者』。

『冠位』の資格を保持する至高の皇帝。
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