次の日、スネークは床で目覚める。
ああ、確か昨日は牧場に帰らなかったよな。ベッドを見ると女武闘家が寝返りをうつ。
不思議なものだ。あの日、俺が洞窟に行かなければ、彼女のパーティは全滅してたかもしれない。
俺はバックパックを確認する。ふむ、やはりマガジンが戻ってる。
閃光手榴弾もだ。それに‥武器が増えているだと‥!
俺は武器を2つ引っ張り出した。
それを眺め、動作確認をしたあと、バックパックにしまい込んだ。
そして部屋を出て、階段を降りていく。
すると、マントを着た裸足の女性がフラフラと歩いて入ってきた。
何者だ?あれは?と皆が注目したあと、パタッと倒れてしまった。
「おい、大丈夫か?」
とりあえず仰向けしたところ、衣服はボロボロになっており、ほとんど肌が見えている状態だ。
「おい!しっかりしろ!」
スネークはその女性を担ぎ上げ、二階に上がっていく。
女武闘家の泊まる部屋のドアを開ける。
女武闘家はベッドに腰掛け、目をこすっていた。
「あれ?師匠‥って、ええええええ!!!!」
「すまない、突然で悪いがベッドから降りてくれ。」
「は、はい!」
俺の言葉に素直に応じた女武闘家はベッドをその女性に譲る。
フードを脱がして俺は驚く。
「驚いたな。」
まさか生きてたとは。
彼女は森人魔術師だ。焼死したとばかり思っていたが、あれは別人だったか。
「俺は受付嬢を呼んでくる。」
「はい、いってらっしゃい。」
俺が下に降りていくと受付嬢は暇そうにあくびをしていた。
「あら?スネークさん。どうなさったのですか?」
「ああ、昨日の行方不明になったパーティの写真を見せてくれ。」
「ああ、あの貴族令嬢さんしか生還できなかった‥何かあったのですか?」
「ああ、さっきギルド内で倒れた奴がいただろ?そのパーティの森人魔術師に似てるんだ。」
「え!?分かりました!すぐ行きます!」
受付嬢はファイルから紙を取り出すと俺と一緒に階段を上がり部屋に入る。
受付嬢は紙と顔を何度も見比べて驚く。
「まさか‥本当に生きてたんですね‥よかったです‥」
受付嬢はそう言って涙ぐむ。
「ああ、この部屋なんだが」
「お任せください。この方が回復するまで、この部屋は使ってください。」
そう言うと俺たちに頭を下げ、部屋を出て行った。
「じゃあ、任せていいか?俺は少し出てくる。」
「はい、お気をつけて。」
俺が階段を降りていくと受付嬢が誰かと揉めていた。
「ですから、そのような方は‥」
「そんな訳ないわ!確かに、ここにいるって聞いたもの!」
「ですから‥」
「もう一度言うわよ!オルクボルグよ!オ・ル・ク・ボ・ル・グ!」
「これこれ、耳長。ここは只人の国じゃ。だとすれば言葉が通じないのも分かるじゃろ。わしに任せろ。」
「すまんのう、うちの金床が。では、この名ならどうじゃ?」
受付嬢は、エルフを押しのけてドワーフが前に出たことで、やっとまともな人が来たと思って期待する。
「かみきり丸じゃ!」
「‥‥余計分かりません。」
「‥‥ぷっ!あっはっはっは!何よ、その名前w」
「ふん!流石、エルフは金床に似た器量の狭さじゃな。」
「何よ!あんたらドワーフの女だって樽じゃない!樽よ!樽!」
「何を言う!あれは豊満と言うんじゃよ!まあ、お前には一生分からんことじゃ!」
「言ったわね!」
「やる気か?」
エルフとドワーフが顔を近づけて睨み合う。
目の前で始まった喧嘩に受付嬢は、どうすればいいのかと困惑する。
「これ、よさぬか。醜い喧嘩なら拙僧の目と耳が届かんところでやってくれ。」
今度はトカゲが現れた。確か‥リザードマンという種族だったな。
「すまんな、拙僧の連れがうるさくして。」
「いえ、受付の前で喧嘩されるの慣れてますので‥」
スネークは3人の共通点を見つけた。
な!?3人とも銀等級だと!?
「オルクボルグに、かみきり丸では通じんのか。では拙僧の呼び方ならどうだ?小鬼殺しだ。」
「小鬼‥ああ、ゴブリンですね。」
「ならゴブリンスレイヤーさんのことですかね。」
「ほう、只人達の間ではゴブリンスレイヤーと呼んでいるのか。それでは通じないのは当たり前だな。」
「彼ならまだ来てませんけど、彼と行動を共にしてる方ならいらっしゃいますよ?さっきからこっち見てますし。」
そう言って受付嬢は俺を指差した。
「ああ、俺がゴブリンスレイヤーの同行者だ。」
エルフは俺を見て驚く。
「やっぱり!ほら、あの吟遊詩人が言ってた特徴にそっくり!額にバンダナを巻いてて、右目に眼帯って!」
「ほう、確かにそのままじゃ。」
「似ておりますな。」
だがスネークは違うところに注目していた。
「カズ!?」
「カズ‥?拙僧のことを言うておるのか?」
「いや、すまない。俺の知り合いに声が似ているだけだ。」
「ほほう。拙僧の声に。興味がありますな。」
「でもアンタ白磁級よね?本当に強いの?」
「物事は見た目だけで判断しないことだ。じゃないと足元をすくわれることになる。」
「な!?」
「はっはっは!この男の言う通りじゃ!ぬかったのう、耳長。」
「うるさいわね!アンタは黙ってなさいよ!」
「これ!喧嘩をするでないと!すまないな、拙僧は蜥蜴僧侶と呼ばれておる。そなたは?」
蜥蜴僧侶が名を尋ねる。
「俺の名はスネークだ。スネークでも、そちらの呼び方でも構わない。」
「ふむ、ならば、そなたを尊重してスネークと呼ぶとしよう。」
「スネークか。懐かしい響きだ。」
その時、ゴブリンスレイヤーと牛飼い娘がギルド内に入ってきた。
「ゴブリンスレイヤー!」
「ああ、昨日は帰ってこなかったようだが。」
「すまない、修行が盛り上がってな。」
「あなたがオルクボルグね!でも‥強そうに見えないわね。」
「物事は見た目だけで判断しないことだ。じゃないと足元をすくわれることになる。」
「また言われた!!!」
「それで、何の用なんだ?こいつらは。」
「ああ、それに関してはすまない。まだ用件を聞いていない。」
「失礼した。小鬼殺し殿にスネーク殿。拙僧達は二人に用があって参った。時間を貰えると助かるのだが?」
「ああ。」
「分かった。」
「それでしたら上に応接室がありますので、そこを使ってください。」
受付嬢が部屋を提供して、それにゴブリンスレイヤーはうなづいて妖精弓手達の方を向き、それに妖精弓手達もそれにうなづいて向かう。
「じゃあ、私は帰ってるね。」
「ああ。」
牛飼い娘と別れて上に上がる。
応接室に入って椅子に座ると、改めて妖精弓手はスネーク達の格好を見て呟く。
「ねえ、やっぱりアンタ達本当に吟遊詩人の言ってたみたいに強いの?そっちは白磁級だから、まだしも‥アンタ銀等級よね?」
「これ、耳長。先ほども言われとったじゃろう?人を見かけで判断せんことじゃと。わしから見たらその者はあらゆる戦闘に対応出来るようにしておるみたいじゃわ、それに修羅場も潜っとる。ちっとは年長者を見習わんか。」
「へえ、私2000歳だけどアンタは?」
「107‥」
「あらあら!私より年下のくせに顔だけ年長者っぽいじゃない!」
なんだかんだ言って二人だけ盛り上がってる様子にスネークはだんだんと呆れてしまい、思わずため息をつき、文句を言う。
「喧嘩をしにきたのか?お前らは。」
蜥蜴僧侶は少しばかり呆れながら仲裁に入る。
「年齢の話はやめろ。すまない。二人とも。実はあることで話にきた。」
「ええ、近頃、都の方でデーモンが増えてきているのは知ってる?」
「ああ。噂だけなら。」
「いや、知らない。」
妖精弓手は一瞬スネークを正気を疑うような目で見るが、また話を続ける。
「その原因は魔神王の復活なのよ。奴は軍勢を率いて世界を滅ぼそうとしている。それで私たちに協力してもらいたいのよ。」
「…少し聞いていいか?」
「何よ?」
妖精弓手は聞いてくるスネークの方を向き、スネークは問いかける。
「その魔神王の復活、名前を聞く限りでは国家レベルの問題だろう。それなら俺達じゃなく他の所に頼むべきじゃないのか。それこそ一個大隊級もしくは諸国の軍隊が出動するレベルだろう。」
「な!?アンタね!私達は貴方達を信じて来たのよ!何よ!その言い方!」
「俺は別段間違った事を言っていない。俺とゴブリンスレイヤーが君の中で、どれほどの強さかは知らないが、確実に都の軍隊の方が強いに決まっている。だが君の口ぶりでは軍隊は知らない、もしくは協力が得られなかったと推測する。」
「アンタね‥!!」
妖精弓手はテーブルをひっくり返しそうな勢いでスネークを睨みつける。
「話はそれだけか?」
「待つんじゃ。ええと‥」
「スネークでいい。」
「では、かみつき丸。わしらは別に魔神王を倒せとは言うとらん。のう?蜥蜴僧侶。」
「左様。ゴブリン退治の話だ。」
「ゴブリン?」
魔神王とか言う未知数の相手からいきなりゴブリンだ。どう言う事だ?
「先の連れが申し上げた通り、今悪魔の軍勢が進行しようとしている。それで拙僧達の族長、人族の諸王、エルフとドワーフの長が集まり会議を開くのだがな。」
「つまり、わしらはその者達の使いっパシリとして雇われた冒険者なんじゃよ。」
「ええ、いずれ大きな戦が起きるわ、それも大規模な戦よ。」
その様子にスネークは少しばかり考え、それを鉱人道士が続きを語るかのように喋る。
「問題は近頃、エルフの土地であの性悪な小鬼共の動きが活発化しておるという事だ。」
「ゴブリンがか?何故だ?」
「…おそらくそいつらにチャンピオンもしくはロードでも生まれたか。」
ゴブリンスレイヤーはスネークの疑問に答えるように喋りだす。
「チャンピオン?ロード?なにそれ?」
妖精弓手はゴブリンスレイヤーの言っていることに頭を傾げ、それをゴブリンスレイヤーが説明する。
「ああ、あいつ等にとっての王と英雄、まあ他の魔物も同様、トロルやオークもロードが存在するけどな。つまりそいつらが近々動き出す可能性があると言う事か。」
「左様。拙僧達が調べた所、付近に大きな巣穴が一つ見つかったのだが…」
「軍はゴブリン相手に動かない。毎度のことじゃ。」
鉱人道士は都の軍の考え方についてぼやき、妖精弓手は呆れながら言う。
「只人の王は私達を同胞とは認めないもの。勝手に兵士を動かせば確実に難癖をつけられてしまうだけよ。」
「故に冒険者を送り込む、なれど拙僧達だけでは只人の顔も立たんわ。」
「そこでオルクボルグと貴方に白羽の矢が立ったわけ。」
「なるほどな…王都が考えそうなことだ。つまり俺たちも使いっパシリって事か。」
「その通りだな。それで地図を見て欲しい。」
蜥蜴僧侶が地図を広げる。
「これは‥遺跡か?随分とデカイんだな。」
「そうじゃ、巣にしては大胆すぎる大きさじゃ。」
「それでオルクボルグとアンタ‥ええと‥」
「スネークでいい。」
「二人とも私達の依頼…受けてくれるわよね?」
「…断る理由は無しだ。」
「俺もない。」
「出発は明日だ。その前に俺たちは装備を整える。行くぞ、スネーク。」
「ああ。」
ゴブリンスレイヤーとスネークは応接室を出て行った。
そこに残された3人は喋りだす。
「よかったわ、依頼を引き受けてくれて。‥でも。」
「大丈夫じゃ。彼らはわしらを捨てて勝手には行かん。」
「左様。明日またここに来れば良い。」
二人が降りていくと女神官と女武闘家が待っていた。
「大丈夫ですか?何か上で話してたって‥」
「師匠。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。ゴブリン退治の依頼を受けていただけだ。」
「そして明日出発する。今回は今までよりも巣が大きい。無理にとは言わないが一緒に来るか?」
「「行きます!」」
「そうか、明日は俺たち以外に3人合流する。計7人だ。俺は武器屋に行く。」
そう言うとゴブリンスレイヤーはギルドを出て行った。
「私は明日の成功を祈りに行って来ますね。」
「俺たちはどうする?」
「CQCを教えてください!」
「いいだろう。だが明日もある。無理はするな。」
「はい!」
こうしてスネークは女武闘家にCQCを叩き込んだ。
女武闘家は元々が武術を志す者故に飲み込みが早く、センスもいい。もしかしたらエイハブのようになれるかもな。
そして寝る前に、スネークは持っている武器や装備の手入れを始めた。
床に布を敷き、その上で銃を分解し、手榴弾の確認をする。
因みに森人魔術師は貴族令嬢と同じ部屋に運ばれて寝かされている。
「なんですか?それ。」
女武闘家は分解した銃のトリガースライド辺りを持ち上げる。
「これか?銃だ。」
「銃‥?」
「ああ。いや、ちょっと待て?知らないのか?」
「まず銃っていうものがありません。」
「そうか‥これは所謂遠距離武器だ。聞きたいか?」
「はい。」
「説明する前に、少し待ってくれ。」
俺はカチャカチャと組み立てて、簡単に説明する。
「おお‥」
スネークが手際よく、組み立てていくのを見て女武闘家は声が漏れる。
そしてスネークによる簡単な銃講座が始まる。
「なるほど‥」
「複雑だろ?」
「ええ。」
「ほら、もう寝ろ。明日も早い。」
「はい、おやすみなさい。」