それから俺たちはまた歩き出した。
「のう、かみきり丸、噛みつき丸。耳長は大丈夫じゃろうか?」
「そうだな。あとは奴次第だ。」
「そうだな、こればっかりは慣れろとしか言えん。」
そう言うとゴブリンスレイヤーは先に歩いていく。
「噛みつき丸よ。いざという時はお主が支えてくれんか?」
「俺がか?」
その鉱人道士の発言に蜥蜴僧侶もうなづく。
「左様。そなたの事を見てきたが、そなたにはカリスマ性があり、気遣いができる。野伏殿を支えてやってほしい。」
「俺に何ができるかは分からないが、いいだろう。」
そしてスネーク達は奥に進むと、広い場所に出てきて、上の階層にたどり着いた事に気付いた。
「ここは…上の階層で合ってるようだな。」
「ねえ!」
妖精弓手の声にスネークはそばにやって来る。
彼女が下を指差す。指差した方にはゴブリン達が50体近くいて、偶然にもゴブリン達はまだ寝ていた。
「すごい数…!」
「大丈夫だ。問題ない。」
「どうしてよ。あれ全部私の弓矢じゃ無理よ?」
「策がある。それに遠距離攻撃ができるのは弓だけじゃない。」
そう言ってスネークはドラグノフを出し、妖精弓手に渡す。
「え?ああ、これがあったわね。」
「お前は遠距離専門だろう。なら、これの使い方を教える。よく聞くように。」
「‥分かったわ。」
妖精弓手はスネークから渡されたドラグノフを背負い、弓を構える。
【いと慈悲深き地母神よ、我らに遍くを受け入れられる、静謐をお与えください】
「沈黙(サイレンス)」
スゥと音が消えだす。
そこからスネーク達はナイフを手に1匹ずつ眠りこけるゴブリン達を刺し殺していく。
妖精弓手も上から狙い撃ちをしていく。
「全部か?降りてきていいぞ!」
そうスネークが言い、妖精弓手が合流した瞬間、壁が破壊され何かが歩いてくる。
「貴様ら、俺の寝床で何をやってんだ?」
そして姿を現すとそこにはホブゴブリンよりも大きなゴブリン…ではなくゴブリンとは全く別の魔物がいた。
「オーガ‥!」
「オーガじゃと!?」
「やはりゴブリンは数だけか。ちっとも役に立たねえ。」
オーガが口元を拭いながら現れる。
「そうか、通路の鳴子に凌辱されていないエルフ‥全てはお前の指示か!」
「如何にも。せっかくの俺の知恵を与えてやったのに、このザマよ!」
「まあ、俺の姿を見たんだ。生かしては返さんぞ!」
オーガは雄叫びをあげる。
ビリビリと空気が揺れるのがわかる。
オーガは棍棒を振り下ろし、皆はそれを避けていく。
まるで避けられることが分かっていたのか、オーガが次の手を打つ。
「逃すと思ったか!」
【カリブン!クルス!クレスクント!】
オーガが術を使い、巨大な火の玉を作り出す。
それには鉱人道士が驚きを隠せない。
「ファイアボールじゃと!!だがこいつはちょいとデカすぎる!」
「散って!」
「ダメだ!奴のファイアボールが大きすぎる!逃げられん!!」
女武闘家がそう言った所をゴブリンスレイヤーがすぐに否定し、考える暇がないと思った所で女神官が前に出た。
「聖壁!」
女神官が壁を作り出し、火の玉を受け止める。
だが火の玉の威力が高すぎるのか、ヒビが入りだす。
「無駄だ!たかだか人間が手にした奇跡程度で俺の火の玉が防げるか!!」
「聖壁!!!」
女神官の追加詠唱により、更に壁が生まれ、火の玉を完全に抑え込むことに成功していた。
「くらえ!」
バン!
パスッ!
スネークと妖精弓手が牽制で銃を撃ち、矢で射る。
銃弾が棍棒を持つ手に、矢が頬に突き刺さる。
「おのれ!人間ども!!!」
オーガが頬に刺さった矢を引き抜き、棍棒を持つ手をさする。
穴が空いた頬がブクブクと泡に包まれ、傷が塞がり始めてしまう。
「嘘でしょ!?再生するなんて!」
「はっはっは!!!俺に掛かればそんなもの朝飯前さ!オラ!!」
棍棒を振り回しながら走ってくる。
「なんとかならんのか!かみきり丸!」
鉱人道士が逃げながら叫ぶ。
「ええい!くらえい!」
【仕事だ仕事だ土精ども、砂粒一粒転がり廻せば石となる】
「石弾(ストーンブラスト)!!!」
石のつぶてがオーガの顔や腕に炸裂するが、焼け石に水、雀の涙なのか、ものともせずに突っ込んでくる。
どうする!?このままじゃただの消耗戦だ。確実に負ける。撤退するか?いや、逃げられて、また新たな場所で同じ被害が起きる。
一か八かアレをやるしかない。聞きかじっただけの事を戦場で試すのは好ましくないが、やるしかない!
「妖精弓手!こっちにきてくれ!」
「何よ!今私も逃げることに!」
そう言いながらもローリングしながらスネークのもとにたどり着く。
「いいか?今からある作戦を伝える。これが成功すれば奴を倒せる。失敗すれば死が待っている。乗るか?」
「‥ええ!やるわ!」
「なら一度しか言わないからよく聞いてくれ。」
俺は避けながら作戦を妖精弓手に伝える。
「‥‥ということだ。」
「‥できるの?本当に?」
「安心しろ。前例を知っている。それでヘリ‥いや空を飛ぶ大きな鳥を撃ち落とした例がある。」
「信じるわよ。スネーク!」
妖精弓手は踵を返してオーガから距離を取るべく走り出した。
「ぬ?逃すか!」
オーガが近くにあった手頃の岩を持ち上げて振りかぶる。
「させるか!」
スネークは腰に差していたM37を構え、腕を撃ち抜く。
腕を撃ち抜かれたオーガは腕に力が入らなくなり、持っていた岩を頭の上に落としてしまい、頭を抑えて呻く。
「グオオ‥貴様!!!!!」
オーガは散弾により使い物にならなくなった腕を引きちぎり、また腕を再生させるとターゲットをスネークに設定し、襲いかかる。
(よし、引っかかったな!)
俺は妖精弓手が無事に高台にまで辿り着いたのを振り返って確認する。
スネークが見ていることに気づき、妖精弓手はいつでもいけるとドラグノフを構えながらサムズアップをする。
スネークは手榴弾のピンを抜き、爆発しないように強く握りしめた。
「この!ちょこまかと!!握りつぶしてくれるわ!!!!」
(今だ!)
スネークは手榴弾をはるか高くに投げる。
そして投げ終わった瞬間、オーガにガシッと掴まれてしまう。
「師匠!」
「スネークさん!」
「「「!?」」」
スネークが捕まってしまった事で、妖精弓手以外が動揺する。
早く助けなくては!とゴブリンスレイヤー達が走ろうとする。
「来るな!!!」
「はっはっは!!捕まえたぞ!そのまま弾けろ!!!」
カンッ!!
「‥いや、弾けるのはお前だ!!!」
スネークは胸からナイフを抜き、思いっきりオーガの手首に突き刺した。
「グオオオオオオオオオ!!!!!」
オーガは痛む手を抑える。
その瞬間、オーガの顔面に先ほど高く投げた手榴弾が落ちてきて炸裂すると、爆発と共に300個もの破片がオーガの顔に襲いかかる。
グサグサグサッ!!
「ウガァァァァ!!!」
「人間!!!!」
作戦はこうだった。
少し時間を遡る。
「俺が奴から逃げながらこれとこれを投げる。」
そう言いながら手榴弾ともう一つの手榴弾を見せる。
「コイツらを時間差で投げる。そうしたらこれを撃って弾け。」
「え!?無理よ!」
「お前ならできる!俺はお前を信じている。それにこれはお前にしかできない仕事だ。」
つまり、スネークが宙に手榴弾を投げた後、わざと捕まる事でオーガの足を止める。その隙に狙撃で手榴弾を弾き、オーガの顔にぶつける。という何気に難易度が高い事をやってのけたのだ。
これは昔スネークがエイハブから聞いた話を再現したものだ。
彼は以前自身のバディである凄腕のスナイパーと共にヘリを落とすためによくこの手法をとっていたと聞いていた。
最初は眉唾だと思っていたが、あとで理論的に考えると可能だと気づいたが、それをできるやつが当時組織にいなかったのだ。
今考えたらスナイパーウルフなら可能かもしれないが。
※その時の様子を妖精弓手視点でもご覧ください。
「やるって言ったけど本当にできるのかしら?」
妖精弓手は高台に移動し、膝をつくとスネークから預かったドラグノフライフルを構える。
でも私がやるしかないわ。スネークは私を信じてくれた。
なら!
私はそれに応えるわ!
私はスネークの目線にライフルを構えたまま、親指を立てる事で応える。
きたわ!
爆弾が私の目の前辺りにまで跳ぶ。
これを外したらスネークは‥
当たって!
パシュッ!
ーーーー妖精弓手視点終了
「おかわりだ。」
スネークはまたピンを抜き、空に放り投げる。
「離れろ!それと全員俺が良いというまで鼻と口を塞げ!」」
叫んだスネークが充分に距離を取るため、走る。
カンッ!
また妖精弓手がグレネードを弾き、オーガの顔に炸裂した。
今度は破片ではなく、オーガの全身が燃え出しオーガは火に包まれた。
「グォァァァァ!!!!」
オーガは必死に顔から燃え広がった火から逃れようとするが、火は消えない。当たり前だ。俺が投げたのは白燐手榴弾だ。白燐は空気と結合して発火するし、体温でも発火するからな。
「おのれ、人間どもめ!いくら我が倒されても!更なる魔神王の幹部やその部下達が貴様等を倒しに行く事を覚えておけ!」
「その時はまた倒しにきてやる。」
スネークの言葉が届いたのかは分からないが、オーガは燃え盛り、腐食しながら生き絶えていった。
「終わったようだな。」
「ああ、なんとかな。」
「師匠!!!」
「スネーク!!!」
安堵からか女武闘家と妖精弓手がスネークに抱きついてくる。
「ああ、お前らよくやった。女武闘家は今回はあまり戦う事はなかったかもしれんが、俺の教えを聞いてよく動いた。妖精弓手はよく俺の突拍子のないような作戦を遂行してくれた。」
「えへへ。」
「当然よ!」
「それにしても、噛みつき丸よ。よく銃で爆弾を弾いて当てるなんて奇策を思いついたのう。」
「そうです。拙僧もあれは浮かびませんな。」
「そんな俺を買い被らないでくれ。みんながいないと、成功はなかった。」
こうして俺たちは外に出ようとする。
しかし、スネークは何かの気配を感じ、オーガが出てきた穴に入っていく。
ゴブリンスレイヤー達が首を傾げながらそれに着いていく。
「!?」
「やはりな。」
眼前には狼の無惨な死体が転がっていた。
皆、頭や腹を食いちぎられており、目を見開いて絶命している。
そうか、先ほどのオーガは‥
だがスネークは一人死体の方に歩いていく。
「キャン!」
何かが鳴く。
「よしよし、良い子だ。」
スネークが何かを拾い上げ、こちらを振り向く。
「師匠。その子は?」
「ああ、生き残りだろう。」
「ああ‥なんて可哀想に‥え!?この子‥そんな‥」
小狼に近づいた女神官が何かに気づいたのか、口を抑える。
「うん?どうしたんじゃ?なんと‥」
「片目が無くなっておりますな。」
「‥‥どうする気だ?スネーク。」
「‥‥俺はコイツを飼う。」
そして、その狼を抱きしめ洞窟を出る。
だがスネークは気配を感じて子狼を抱いたまま、ハンドガンを構える。
「どうした。」
「囲まれてる。それも大勢だ。」
俺の声を聞いて、全員が構えを取る。だが妖精弓手はすぐに構えを解き、歩き始めた。
「おい!危険だ!」
「出てきて大丈夫よ。」
妖精弓手がそう言うと、木の上から大勢のエルフが降りてきた。
そして初老の男性が一人前に歩み出る。
「私はエルフの族長代理です。族長は現在、会議に出席する為に安全を考慮して外に出てきません。その為、息子である私が参りました。」
「此度は我が同胞をお救いくださいまして、誠にありがとうございます。」
「俺たちは当然のことをしたまでだ。それより中には恐らくだが、まだゴブリンが潜んでいるはずだ。」
それを聞き、ゴブリンスレイヤーが返事をする。
「ええ、皆さんはおつかれでしょう。あとは我々にお任せください。そして誠に勝手ながら馬車を用意させていただきました。」
「すまない。」
そう言い、スネーク達は馬車に揺られながら街を目指した。
「スネーク。これ返すわ。」
妖精弓手が背負っていたドラグノフを返してきた。
「ああ、これからも使うか?専門ではないが、基礎なら教えられるぞ?」
「ううん、私は、やっぱり弓矢がいいや。また使いたくなったらお願いね。」
「ああ。」
スネークは葉巻を取り出して、口に咥える。だが周りを見渡して空気を読んだのか、またバッグに戻した。
「Zzz」
女武闘家にとってはスネークの弟子になってから初めての実戦だったのだ。スネークの肩を借りて眠ってしまっていた。
こうしてスネーク達を乗せた馬車はのんびりと街へ向かっていったのだった。
はい、スネークはペットを獲得しました。
この狼は後にパーティ入りします。
と、いうわけで名前の募集でもしようかな。
活動報告の方でしますので、そちらでお願いします。