敵名“紅羅鈍”   作:ユフたんマン

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地獄

アルセウスにより転生した青年は、新たな世界で太溶大地(たいようだいち)という名を授かり誕生した。

幼いながらに落ち着きがあり、我儘を言わず、親に迷惑をかけないいい子として育った。そんな太溶の親は心配していたが、当人はそんなことを知らずに幼少期を過ごした。

 

彼はこの世界が僕のヒーローアカデミアの世界だとわかったのは生まれてから何ヶ月か経った頃だ。親が見るニュースには毎度ヒーローだのヴィランだの個性だのが報道されていれば、この作品を知っている人は大抵わかるだろう。

貰った特典は4歳ぐらいから使えるようになるだろうと思い、生前は親不孝者だった彼は少しでも今の親に負担を掛けないようにしている。子供というものは手間がかかる方が可愛いということに気づかず…

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

大地は4歳になった。まだ個性は発現していない。周りは既に発現している子もチラホラと現れている。少し不安になるが、まだ大丈夫だと自分に言い聞かせ、同級生と一緒に駆けっこに勤しむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

あれから三ヶ月程経ち、大地は家で親と一緒にニュースを見ていた。

 

「本当にニュースでいいのか?好きな番組観てもいいんだぞ?」

 

「うん!僕は将来ヒーローになるからどんな事件が起きてもすぐに対応出来るように勉強しときたいんだ!」

 

「そ、そうか…」

 

父にこう答えた大地。次の瞬間、緊急速報の音が流れ、テレビの画面の上側に緊急速報が流される。

 

『緊急速報です!昨日の午後1時36分に突如日本近海に現れた火山が噴火の前兆を見せています!噴火レベル5と気象庁は発表しました!近隣にお住まいの方々は即座に…プチッ』

 

「早く避難するぞ!!」

 

父はテレビの電源を切り、大声で叫ぶ。その声に母はすぐに反応し、玄関にある防災鞄を手に取り、大地の手を掴み玄関のドアを開け放つ。

 

その瞬間……

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

激しい音が鳴り、空を灰が覆う。そう、火山が噴火したのだ。

 

「くそッ!!何だってんだ!?昨日は噴火の前兆も何もなかった筈だろ!!」

 

悪態を吐きながら父は走る。周りには同じく混乱し逃げ惑う人々。ヒーローや警察がパニック状態を治めようとするも、治る筈もなくますます場は混乱していく。

 

「ど、どうしたの!!?大地!!早く逃げないと!!」

 

突如足を止めて火山の方向を向く大地に母は違和感を覚えるが、時間が無いのもあり力を込め引っ張るがびくともしない。

大地は突如涙を流し、呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん…なさい…逃げ…て……僕……か………ら……」

 

 

“グラードンが目覚めると噴火が起こる”

 

 

大地の体が紅く発光し、体の中で膨大なエネルギーが荒れ狂い、空に柱のように伸びる。

灰に覆われた空はそのエネルギーの余波により掻き消え、通常よりも強い日光が襲う。火山から溢れ出していたマグマも溶岩も全て余波により消し飛ばされる。

大地の体は発光しながらドンドンと巨大になっていき、元の大地の姿は変貌し、二足歩行の恐竜のような姿になる。全長は約30m程で、体色は赤色、腹部は灰色をしている。そして首と尻尾に4本、足には3本トゲが生えている。

まさにその姿は…

 

 

『ぐらぐらぅるぅううぁああああああ!!!!!』

 

 

まさに大地の化身、伝説のポケモン、グラードンだった。

 

グラードンが叫ぶと同時に海をも蒸発させる光と熱が周りにいた親共々襲いかかり全てを焼き尽くした。この場には誰一人、グラードン…太溶大地以外に生存者はいない。

 

父も、母も、近所のおじさん、おばさんも、友達も、ヒーローも、警察も、お菓子をサービスしてくれた駄菓子屋の婆ちゃんも、保育園のみんなも…

 

そして街も…全て…全て…焦土と化した。

 

力を使ったことで暴走状態が解除されたグラードンは焦土と化した街を見回した。

 

(僕が…俺がこれをやったのか……?嘘だ…嘘だそんなことォォォォオオッ!!!!)

 

大地は後悔した。何故俺はグラードンの力を望んだのか…何故あの時しっかりと考えなかったのか…と。あそこでしっかりと考えていればわかったことだ。ゲームでもグラードンが復活することによって世界が滅びかけていた。

それに気づかなかったのは転生できると浮かれていたからだろう。

 

 

 

「CAROLINA…SMASH!!!」

 

その次の瞬間、目の前に突如、金の触覚のような髪型をした巨漢が現れ、グラードンの腹にクロスチョップを打ち込む。

 

『ぐるぅああああああ!!?』

 

突然の衝撃にグラードンは対応出来ず、ダメージは無いが転倒してしまう。

 

「ヴィランよ…貴様はもう終わりだ…!!何故って…?私が来た…ッ!!」

 

彼はNo. 1ヒーロー”オールマイト”。オールマイトのことは当然グラードンである大地もよく知っているし、憧れでもある。ヒーローを目指す者ならまず彼を目標にするといってもいい。

いつも大声で笑い人々に安心を与えている平和の象徴が、憤怒の表情でこちらを睨みつけている。その後ろには遅れてNo.2ヒーローのエンデヴァー、自衛隊や警察までもが大地を憤怒の表情で見ている。

 

『ぐるぅぅぅううう…』

 

グラードンは低く唸り、投降しようと個性の解除を試みるが上手くいかず、その行動が戦闘態勢に入ったと思われ、オールマイトやエンデヴァー、その他多数のヒーロー達から一斉攻撃を受ける。それをグラードンは丸くなり、攻撃をやり過ごす。

 

(痛い…痛い…何故こんなことに…いや、俺が悪いんだ…俺が考え無しに…グラードンの力を要求したせいで…)

 

その時、オールマイトなどのトップヒーローは違和感に気付く。これ程の被害を出したヴィランが何故我々の攻撃を受け続けなすがままなのだろうか…と。

 

それと同時だった。大地はグラードンになり、強化された聴力で、後衛にいるヒーローの発言を聞いてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへへ、これであのヴィランも終わりだな!」

 

「あぁ、流石にあのオールマイトやエンデヴァー達にやられればもう俺達の役目はないだろう」

 

「こりゃあ給料弾むんじゃねぇか?それにしてもあのヴィランがこの街を焦土にしてくれて助かったなぁ!お陰で周りに気にせず大技ぶちまけれるしな!!街中じゃ野次馬とか大量にいるから思いっきり戦えないんだよなぁ。」

 

「そうだな、もしヴィランがこの街を残していたならあのヴィランをこの短時間で倒せていたかわからない。この街は必要な犠牲だった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何を言っているんだ…!?あのヒーローは…!?街を破壊し尽くして助かるだと!!?必要な犠牲だと!!?アイツらは人の死をなんだと思ってるんだ…!!)

 

大地が聞いたのは金儲け目的でヒーローになった者達だ。彼らのようなヒーローは一部だけだが、今の大地には全てのヒーローが同じ考えを持っているように思ってしまう。前世の記憶も朧げになる…

 

(みんなそう思っているのか…?俺が街を破壊してくれて助かったって…オールマイトやエンデヴァーも上部だけの怒りなのか…?

わからない…わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない…)

 

 

 

そのヒーローの後ろにいる警察官の言っていることも大地の耳に届く。

 

「化け物め…!!」

 

 

(化け物…俺は化け物だったんだ…なんで俺はグラードンの力を使ってヒーローになろうと思ったんだ…?力をコントロール出来たとしても歩く災害、化け物であることに変わり無いのに…)

 

大地は死にたい…と思っていたがだんだんとその気が失せる。自分は死ねば楽になれる…けどそれでは罪の償いが出来ない…

罪を背負って生きる…それが罰なのだ。

 

けれど思ってしまう。これは絶対に言ってはいけないだろう。罪を投げ捨て、罪という重圧から逃れられる一つだけの言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐるあぁ…』(たすけて…)

 

だが彼は言ってしまった。しかし彼の言葉は誰にもわからない。大地には絶望しかなかった…と思われたが…

 

 

 

「よってたかって幼い少年を袋叩きにするのはヒーローとしてどうかと思うのがね。」

 

突然の乱入者に、その場にいた全員が攻撃を止め、声のした方へ向く。

そこにいたのは黒いスーツを着た一人の男性だった。その男を見た瞬間、オールマイトは驚愕する。

 

「き、貴様は…!!?AFO!!?」

 

「やぁ、久しぶりだね。オールマイト。しかし今日の目当ては君じゃ無い。彼だよ」

 

AFOが指差したのは蹲って見上げているグラードンだった。

 

「はじめまして。僕の名前はAFO。気軽に先生と呼んでくれたまえ。そして…君を救けに来た」

 

AFOはグラードンに向けて手を翳し個性を発動する。グラードンの口から大量の泥のような生臭い液体が溢れ出る。

 

「僕も今日は帰るとするよ。オールマイト、次は最終決戦といこうじゃないか」

 

「待てッ!?AFO!!」  

 

オールマイトはグラードンと同じように液体が溢れ出し、包もうとしているAFOに殴りかかるが…

  

 

ドカッ!!

 

 

「グゥッ!!?」

 

鋭く尖った巨大な岩が地面から突如生え、オールマイトの体を穿つ。

 

(AFO…アイツは…俺を救けてくれた…なら俺も…道を踏み外す覚悟を決めないと…!!)

 

 

“だんがいのつるぎ”

 

 

オールマイトはそれをなんとか砕いて防ぐが、その間にグラードンとAFOは液体に包まれその場から姿を消した。

 

「グッ…クソォォォォオオ!!!!!」

 

オールマイトの声がその場に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

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