敵名“紅羅鈍”   作:ユフたんマン

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紅羅鈍

AFOは目の前で眠る大地の額に手を置き個性を発動させる。

 

「グッ!!?」

 

しかしバリッとスパークのようなものが阻み、個性を上手く発動できない。

 

「これは…何かの力に弾かれている…!?」

 

AFOの個性は他人の個性を奪い自分のモノにし、それを他人に分け与えることが出来る。しかし目の前の少年、大地にはこの個性が効かない。

何故か、それは実に簡単なことである。それは、この世界を創造したアルセウスが直々に与えた特典だからだ。アルセウスに創られた世界の虫ケラのように小さな存在の能力では奪うことは出来ない。

 

「フフフ…実に興味深い…」

 

AFOは嗤いながら大地に布団を掛けて退室する。

 

「この子の存在は弔にどんな影響を与えるのだろうか…期待してるよ。太溶大地くん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

 

体中に液体が纏わり付いた大地が、目を開けて初めに見たのは知らない天井だった。

大地は上半身を起こし、部屋を一望する。部屋は簡素で、大地が寝ているベッドの他にはちゃぶ台のような小さな丸机と等身大の鏡しかない。

取り敢えず大地は体に異常がないか調べ、何も問題がないことが分かると、ベッドから降り等身大の鏡の前に立つ。 

元々岩のような灰色だった髪はマグマのような明るい橙色に変色し、腕にはΩのような痣が出来ている。目の色も変色しており、灰色から黄色へと変化した。

 

「俺は…化け物…」

 

自分が覚醒した日のことを思い出す。何もかもが自分の力で焼き消えた街。憧れだったヒーローに圧倒的敵意を向けられたこと。そして自分を愛してくれていた第二の両親を失ったことを思い出し…泣いた…

 

 

 

一通り泣き終えた後、木製の扉にコンコンコンッとノック音が響き渡る。

 

「失礼するよ」

 

入って来たのは前日、大地を救けてくれたスーツを着た男性だった。なんと言えばいいか大地にはわからなかったが、気迫、迫力、威圧がこの男性から滲み出ている。簡単に言えばカリスマ…といったところだろうか。

 

「あんたは…AFO…」

 

「僕の名前を覚えていてくれてよかったよ。しかしそう警戒することはない。別にとって食おうとしているわけじゃないんだ。それに僕のことは先生と呼んで欲しいな」

 

AFOは子供に言い聞かせるように穏やかな口調で語りかける。しかし前世の記憶を持つ大地は十分に彼の危険性を把握している…が救けてくれた恩人ともあり、取り敢えず警戒を緩める。…しかしそこでまた一つ疑問が生まれる。

 

(何故俺のことをコイツが知ってるんだ?)

 

その心情を見透かしたようにAFOは大地に説明する。

 

「何故僕が君のことを知っているのか…と疑問に思っているような顔をしているね。簡単な話だよ。ただの偶然さ。

僕の部下が突如現れた火山を調査しに行っていてね…その周波を調べた時にあの街から全く同じ周波が出ていたそうだ。そうして部下が見つけたのが君、というわけだ。

まぁ今の君では小難しい話はわからないと思うけどね」

 

「いや、わかる…」

 

AFOはその言葉に少し驚いたような顔をするが、すぐに表情を元に戻す。

 

「ハハハッ、君はかなり優秀だ!脳無の開発実験に使うにはとても惜しい!

ふぅ…本題に入ろう。先程君と火山が同じ周波を放っているということは話したね?つまりはだ。あのオールマイトを攻撃した時にも見せたあの岩を創り出す個性。あの火山は無意識に発動した個性の一部なんだよ。

いやはや、発現したてであの規模の火山を創造するとは…なんとも凄まじい個性だ…」

 

大地は薄々気づいていた。あの火山が自分の個性の一部であることを。噴火した直前に気付いたのだ。噴火と同時に溢れ出し暴走するほどの強大な自然エネルギーが大地を襲ったのだ。誰がこの立場でも少なからず察するだろう。

大地はAFOという第三者から言われ、それは「かもしれない」から「確信」へと変わったのだ。

 

「やはり…俺は化け物…死ななくちゃ…罪を償わなきゃいけない罪人…」

 

「化け物?一体どこにそんな化け物がいるんだい?僕の前にはちょっと…かなり強力な個性を持っている少年しかみえないが?」

 

「!?」

 

驚く大地を無視し、AFOは続ける。

 

「君はその個性が暴走しただけだ。君が何も悪くない。それに思い出すんだ。あのオールマイトの、あの場にいた全ての人間の顔を…全て君を勝手にヴィランと決めつけ攻撃した。殺意を込めていたヒーローもいる。みんなを守る職業だというのにね。

君はこんな社会でいいのかい?僕たちはこんな社会を新しく、より良くするために活動しているんだ!創造の前に破壊ありってね…

今の社会を破壊し、新たな社会を創造する。実に魅力的だと思わないかい?」

 

大地は気づかず、ほぼ無意識に頷いていた。既に悪の権化、AFOの覇気に呑まれてしまっていた。

 

「ようこそ、ここが君の居場所だ。」

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

あれから12年が経った。

 

大地はグラードンの姿になりマグマの中を悠然と泳ぐ。そのまま頭上に太陽光からのエネルギーを溜めたものを放出し、それが火山の内壁にぶつかる直前に岩を創り出し、衝突を回避する。

 

大地はAFOの組織に組みしてから、個性の制御の訓練だけを行なっている。個性は強力、しかしそれを扱えきれなければただの宝の持ち腐れだ。

 

「失礼します、紅羅鈍。召集です」

 

火口口からバーテンダーのような服を着た男が大地に声をかける。その男の名は黒霧。本体が霧という異形系の個性だ。霧で包んだモノをワープさせるという強力な能力を兼ね備えている。

 

そして黒霧が呼んだ名は、大地のヴィラン名だ。

彼はグラードンでありグラードンでない紛いもの。大地の化身と同じ名では烏滸がましいとなったため、ヴィラン名は『紅羅鈍(グラアドン)』となった。

 

「ぐらぐらぐるぅうう!!」

 

大地は一度吠え、力を抜くとだんだんと体が縮んでいき、人型へと変化する。16歳となった大地の身長は伸び、少し体つきは逞しくなっている。

 

「わかりました、黒霧さん」

 

大地は火山の内壁に足を食い込ませ、火口口の方へと登っていく。

黒霧の側まで近づくと、黒い霧に包まれ、歴史を感じるバーのような場所へ飛ばされた。

 

『おお、来たか。久しぶりだね。紅羅鈍』

 

「お久しぶりです。先生」

 

バーにあるディスプレイからAFOの声が聞こえる。AFOは5年前にオールマイトとの勝負に負け、かなりのダメージを受けている。しかし変わりにオールマイトにも深傷を負わせたとか…

 

「…お前が先生の言ってた秘密兵器ってやつか…精々駒として役に立ってもらうからな」

 

声のした方を向くと、そこには顔に手のアクセサリー、いや…本物の手をつけた男が大地を見ていた。

 

『おっと…弔とは初対面だったね…弔、自己紹介を…』

 

死柄木は大きく舌打ちをし、簡素に話す。

 

「死柄木 弔…この敵連合のリーダーだ」

 

それだけ言うと死柄木はこれでいいだろと椅子にもたれかかる。

 

「どーも、俺は紅羅鈍だ。…先生、今日俺をコイツに会わせた理由は?」

 

『君には弔の計画をサポートしてあげて欲しいんだ。君ならきっと弔の計画に役に立つ』

 

「計画?」

 

「雄英高校襲撃って計画だ」

 

死柄木の言葉に大地は驚愕する。雄英高校とはヒーローの育成機関であり、そこのヒーロー科の教師は全員実力のある現役ヒーローであり、雄英高校はヒーローの巣窟と言っても過言ではない。

 

「…先生からの依頼だ。計画の詳細と決行日を教えてくれ。内容がいい加減であれば例え先生からの依頼でも断らせてもらう」

 

「生意気なやつだ…一度上下関係をわからせておかないとな…まぁいい、これでも読んどけ」

 

死柄木から計画の詳細が書かれてあるプリントの束を受け取り、それを黙読していく。

 

計画の内容はこうだ。まずは雄英にマスコミを使い侵入、そしてプログラムの書かれた表を奪い、本校舎から離れた隔離空間、USJでオールマイトを殺害する。その他にも、電波を乱す個性で通信機器をストップさせたり、対オールマイトの化け物を用意しているのだとか。

 

「ふむ…この話…乗らせてもらうとしようか」

 

『よかったよ。君が協力してくれれば百人力だ』

 

「で、これがプログラム、決行日は明日だ。しっかりと準備しておけ。ヘマしたら消すからな…?」

 

「ああ…って明日!!?」

 

「なぁ、どうなると思う?平和の象徴が……殺されたら」

 

 

 

真に賢しい悪が遂に…動き出す…

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