偏屈問題児と青色のメモ   作:白羽凪

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やってしまったpart2


第17話 友人として

 

手がかりを得て3日ほど。その片鱗は見え出した。

前提として、俺と古市は同じ、普通科の2-Bクラス。それを逆手にとって、大体の行動中に古市を見れるように立ち回った。

 

まあ、傍から見れば俺がストーカーかと思われても仕方がないが、幸い同クラスの人間他他人は俺に全くといっていいほど興味はないのでこんな作戦を続行できるのだ。

そして、学校生活中がほとんどだろうとの助言を参考にしているので、学校にいる間、休憩時間等はそそくさと古市を見るようにしていた。

するとどうだろう、解は少しずつ見えてくるのだ。

 

古市の周りにはあまり人はいない。が、古市自身が集団にまぎれて行動するようにしているのか古市が単体で動くということはほとんどない。

 

そうして人にまぎれているのは幸か不幸か。

 

群れのメンバーは不定期だが、その中によく見かける男がいるのだ。

大体いつもいるといっていいほど、古市の周りにいる。このタイプが二人くらいだ。

 

ただし、その二人が一緒にいるみたいな光景は見えない。おそらく全くといっていいほど他人だろう。

共犯という線が考えにくい以上、このどちらかが犯人と見たほうがいいだろう。

 

しかし、そこから先がそう簡単にいかないのが現実。

 

片っ端から問いただすというのはリスクが大きい。一発で当たればいいのだが、確たる証拠がないため当てれる可能性は低いだろう。

 

かといって、日に日に暗くなっていってる古市を見る当たり、そろそろ時間的にも限界は来ている。「助けてほしい」といわれた日からもう一週間は余裕でたっている。それは流石にこちらの落ち度だ。

 

あと一歩、といった所で動けない。

 

それに、もうヒントは使い切った。ちはやちゃんに言って大事にするのもよくはないだろう。古市にも声はかけにくい。

 

 

学校内での動きは全部チェックした。あとはどこをどうしろというのだ。

二人まで絞った。いずれも同学年で、男子。

確たる証拠をどこで見つけれるか...。

 

 

前に進まない展開にもどかしさを覚える。それは家に帰っても一緒で、なかなか深い眠りにつけない日が増えてきた。

...いかんいかん、俺が暗くなっていってどうするんだ。当事者は俺じゃない。

 

 

...あと一手が、欲しい。

 

 

 

---

 

 

いつも通りの学校生活、いつも通りの放課後。

今日も三人は部屋で各々のやりたいことをやっていた。

そこには会話などない。一見すれば寂しい空間かもしれないが、俺たちは別に何もまずいとは思ってはいない。

というか、若干二名、会話をするどころの精神状態ではないのだ。

 

古市は本をただひたすらに読んでいるが、ページをめくる手は全然進んでいない。同じ読書家の人間から分かることといえば、あれは内容が全く頭の中に入っていない証拠だ。

 

そして、その状態にさせているのは、少なからず俺のせいでもある。そうと分かっているから、余計に腹が立って仕方がない。

 

口を開けばそう言った感情を言葉にしてしまいそうで、だから俺も話さない。

 

そんな2人を見る陽太の目はどうだろうか。

そんなことがふと気になって、俺は手元の課題の手を止めて陽太の方を向いた。

 

しかし、そこに特別な何かがある訳では無い。陽太は平生の様にただ目の前の機械をいじることに必死で、こちらを見ようともしなかった。

 

実際こいつは、これ以上関与しないと宣言してるからな。おかしな話ではない。

しかし、本当に何も変わらないことに俺は少し笑うしかなかった。けれど、そうしてくれた方が全然助かる。

 

 

 

 

さて、今日はどうしようかなと思いながら時間は過ぎていった。そして今は下校時間ギリギリだ。

 

「...さて、そろそろ帰るかなぁ。ちはやちゃんも来るだろうし。そだ、悠、たまには飯食って帰んね?」

陽太はとりあえず持って帰るべき荷物だけまとめて部屋のドアノブを回した。

古市は先に出ており、一足先に部屋から帰ってしまっているみたいだ。なので、会話をすることも無い。

 

「んー...、いや、やめとく。今月金がピンチだからな。それに、道中大した店無いだろ?」

道沿いにファミレスが1つ、家系ラーメンの店が一店舗ぐらいだと認識している。

どちらも味が大して良い訳でもないので、それなら家で済ませた方がいい。それに金欠だし。

 

「それもそうか。んじゃ、お前の小遣い入ってからでいいよ。」

「悪いな。それじゃ、また明日な。」

 

そうして俺は陽太を後に旧部室棟を去った。

 

 

 

それから数分歩き、校門へとたどり着く。

あたりは大分暗くなっているが、少し先を古市が歩いているのを確認した。

近寄ろうと思い、少し歩くスピードを速めようとした。

 

が、やめた。

 

古市は相も変わらず後ろをきょろきょろしている。

流石にそんな状況で声をかけれるはずもなかった。そして俺は足を止める。

しかし、それは別に悪い意味ではない。

 

少しばかり考えることが多すぎたため、足を止めたのだ。

 

古市は誰かにつけられている。そして本人はそれが誰か分からない。

仮に本人が分かれば、その場でやめてくださいと言える筈なので、おそらく分かっていないと断定してもよさそうだ。

 

そしてヒントについて。

陽太はおそらく対象は学校でのみの行動だろうと言った。

それには小さくはあるが証拠があるので信じるに値することだ。

 

ただ。

本当にそれだけだろうかという疑問が俺の中で渦巻いている。

現に今古市は誰かにつけられているかもしれないと思っている。

そしてそれは、下校中も安全じゃないということの暗示なのだ。

 

ならば、だ。

ひょっとすれば今この時間に見つかるのではないだろうか。

 

そんな淡い期待が俺を支配する。

...ないことはない。やってみるか。

 

俺はそう決めると、おそらく駅までであろう古市の帰り道を尾行することにした。

 

 

---

 

 

学校から最寄の駅まではさほど遠くない。

そして古市は街の外れのほうと陽太から聞いているので、古市はほとんどの確率で電車を利用するだろう。

 

俺は常に15歩くらい後ろを歩いた。しかし、こそこそするのもまずいので、最低限他に駅を目指している生徒の後ろを隠れるようにして歩いた。

 

そうして、駅舎が見えてきたくらいだろうか。

人ごみに隠れていた分のデメリットもあってか、俺はすっかり古市を見失ってしまっていた。

 

全く、とんだ失態だよ...。

 

「あれ?確かまだ駅舎に入ってないはずなんだけどなぁ...。」

「...ストーカー。」

「うわぁ!?...だからさぁ...。」

いつの間にか古市に背後を取られていた俺は声をあげて驚いた。

 

「...また引っかかってくれた。」

古市は少しだけ、ふふっとかすかに笑った。笑ったのだ。

今、確かに穏やかな心境じゃないはずなのに、それでもこいつは頑張って笑った。

 

その光景を見てしまった俺は怒るにも怒れない状況にどうしようもなく一度息をついて、本題について話す事にした。

「ふぅ...。その、大丈夫か?ごめんな、俺が言いだしてから何も変わらないままで。」

「ううん...お願いしている身で何も言うことはない、...けど、今進展はあったかだけ、教えて欲しい。」

古市の目は早く結果を教えてくれといわんばかりに輝いていた。最も、その目の輝きは希望とも絶望ともつかない輝きだったが。

 

俺の伝える答えはどうだろうか。希望に変わるだろうか、落胆につながるだろうか。

あえて見つけたと嘘をついてみるのもいいかもしれない、そう思ったが結局それは誰も得しない答えだとすぐに脳内で処理された。

 

どこへも行き場がないので、仕方がなく俺は現状をありのままで答えた。

「...見つけることまでは、できてない。」

「...そう。」

「ただ、進展はあった。候補者が二人まで割れているから、後はそのどちらかを叩くだけだと思う。」

「それは...信じていい情報?」

「まあな。...流石にこれ以上は迷惑かけれないだろ。」

 

俺は強く右のこぶしを握った。

おそらく平生のとおりの正義感が生まれているのだろう。

 

ただそれは、いつも通りの中途半端なものなのだろうか。

その答えまでは、俺は持ち合わせてはいなかった。

 

「...ありがとう。ごめんね。」

古市は何を思ったかごめんねとつぶやいてしゅんと俯いた。

しかし、それは俺の責任だ。自分で責任感じて後悔して欲しくない。

 

「謝ることはないだろ。なんせお前は何一つ悪くないん...」

俺の言葉はそこで止まった。

なぜなら、俺の視線の外れた先に、見慣れた男の影を見つけたから。

 

その影はよく学校内の古市の周りで見かける影だった。

そして、もう一人の男はいない。ということは...。

 

「どうしたの?」

中途半端に動きを止めた俺を不信がって古市が俺をしたから覗き込む。その声に目の前の状況に引き戻された俺はその影を見失ってしまった。

 

「...いや、なんでもない。それよりあと少しで終わる。それまで待ってくれ。」

「...う、うん。」

えらく自身ありげの俺の声に圧倒されたのか古市は少し引きながら頷き、じゃあ、電車、そろそろだからと無表情のままで振り返り、俺にじゃあねを告げた。

 

俺はそれを止めることなく、自分の帰路へとつくのだった。

 

その日は、夜空の中に確かに光る一番星が見えた。

 

 

---

 

 

俺は家での事務作業を終えると、一人ベッドにごろんと寝転んだ。

そして、つい先ほど見た影のことを思い出す。

あれは、間違いなく学校で古市の周りで見かける影だった。

つまりは、あれが犯人で確定できるだろう。

 

ただ、残りの問題はいくつかある。

まず、本当にその男が犯人と断定していいのか。

色々と素性が割れてきたのはいい。けれど、それは確たる証拠ではない。

二人のうちの一人が大分有効目線になってきただけであって確定は出来ないのだ。

リスクを考えると足を止めてしまっても仕方がない部分がある。

 

そしてなにより一番の問題は俺自身だ。

何のためにここまでやってきたのか、分かってるようで分かっていない。

では、いったい何のためか。

俺は目を閉じてじっくりと考えた。

 

古市のためか。

根本的な問題だ。本人のことを思ってないのにこんな行動をするのか。

流石にそれはない。俺は確かに、古市に良かれと思ってこの行為をしている。

 

自分のためか。

否定は出来ない。俺はこの事件を終えたらきっと多大な自己満足を得るだろう。

理由は他でもない、あの日のこと。

あの日河佐を助けれなかったことを悔いて、今度こそは手が届くうちにと思っているのだろう。

ただ、もしそれが念頭にあるのならば、古市を巻き込んでその自己満足を成し遂げようとしている俺は屑どころではない。

 

結局のところ俺は、自分のことが分からないまま、誰かを助けようとしていた。

 

 

...けれど、分かってる。

俺は単に古市を助けたい。それはあの日のことなんて関係ない。別にこれからも捻くれたままの、悲観論者でもかまわない。

 

 

 

 

 

 

 

ただ今は、目の前の古市を助けたい。

だって、古市はもう紛れもない友人だと、俺は感じているから。

 

 

 

 

 

 

 

 




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