「ゲット!」
「おめでと」
キャンプをした次の日。私たちはバウタウンに到着し、一日休んでから流れるようにジムチャレンジ。見事二人ともジムリーダーを倒してバッジを手に入れた。ほとんどポケモンの強さによるごり押しだったので、次のジムチャレンジから厳しくする、らしい。私はでんき技連打でハクはアブリボンのムーンフォース連打だったから仕方ない。
とはいえ、これでバッジは二つ目。次のジムチャレンジから厳しくなるらしいし、そろそろモルペコだけでは厳しくなってきた頃だろう。次のジムはほのおタイプだからハクもタイプ相性的に厳しいし、今から向かう第二鉱山で対策できるポケモンをゲットできればいいのだが……。
「わ、綺麗!」
第二鉱山に入ると、そこは薄暗くどこか冷たさも感じる空気だったが、輝く鉱石が様々な色の光を放ち辺りを照らしていた。幻想的、と言えばいいのだろうか。ただ、ハッサムの体に光が反射して少し眩しい。
「今度こそむしポケモンゲットしよ!」
「むしポケモンばっかだとカブさんに焼かれるけど」
「そやねんなぁ。せやからみずタイプとの複合がええんやけど……」
そのみずタイプとの複合であるシズクモが5番道路にいたのだが、『ついてきたいポケモンだけゲットする』というスタンスに変えてしまったためゲットできていない。ハッサムの隙を見てゲットすればいいのに。そうしてしまうとハッサムが拗ねて余計言うことを聞いてくれなくなってしまう気もするけど。
第二鉱山を歩きながらポケモンを探す。私もできれば二体ほどゲットしておきたい。……できればあくタイプ。それかあくタイプに強いフェアリータイプ対策にどくタイプかはがねタイプ。
「お、マッギョ」
「え?どこ?」
「ほら」
ハクが急に立ち止まって、すぐ目の前の地面を指す。ぱっと見ではよくわからないが、よく見ると何か口のようなものが地面からひょっこり出ていた。
「あーやってエモノおびき寄せてガブーっていくらしいで。マリィもモルペコも気ぃつけや」
「物知りやね」
「おかーさんが足ちぎれたらあかんからって教えてくれた」
そんな足をちぎってくるようなポケモンを放置しておくわけがないと思うけど、痛そうなことには変わりないからここはハクのお母さんに感謝しておこう。マッギョを踏んではいけないのでモルペコを抱き上げて、ハクの後ろを歩く。これなら少なくとも私がマッギョにやられることはない。
「私を盾にしてへん?」
「まさか」
「まぁ、マリィを守れるんやったらええか!」
そう言って私の前を歩くハクの前にはハッサムがいる。つまり、マッギョにやられるのはハッサムということだ。実質私を守ってくれているのはハッサムということになる。まぁハクがいなければハッサムはここにいないのだが。
「オンバット、カラナクシ、カメテテ……うーん、むしタイプおらへんなぁ」
「出ないとか」
「この世にむしポケモンが出えへんとこなんかある?」
「ないとは言い切れんけど……」
何もそんな狂気に満ち溢れた目で言わなくても。むしポケモンが好きなのはわかったから、もう少しそれを抑えてほしい。私までむしポケモンが好きになってしまいそうだ。
輝く鉱石よりも目をぎらつかせているハクと第二鉱山を進んでいく。いつもならトレーナーが勝負をしかけてきているのだが、第二鉱山には他にトレーナーがいないのかと思う程勝負をしかけてこない。変だな、と思いつつ歩いていると、
「お、マリィ、見て」
「……喧嘩?」
ちょうどまっすぐ行ったところでポケモンが喧嘩していた。ズルッグと、グレッグルと……。
「コソクムシ?」
「な!珍しいよな!」
ズルッグとグレッグルが喧嘩するのはまぁわかる。でもコソクムシが喧嘩するのは意外というか、逃げ回るイメージしかないから不思議でならない。
「コソクムシが逃げずに戦ってる!あ、やば、興奮してきた。なぁハッサム。何が何でもあの子ゲットしたいんやけど、あかん?」
「……」
「なんで妙に色っぽくなっとーと?」
「うらら……」
頬を紅潮させて熱い吐息を漏らしながらハッサムにおねだりするハクに、モルペコも「ダメだこいつ」と呆れかえっている。というか引いている。むしポケモンが好きで、しかも珍しい行動をするむしポケモンだからゲットしたいというのはわからなくもないが、興奮しすぎだ。ハッサムも主人の興奮を収めようとしたのか、ハサミで軽く小突いている。
「あいたっ!何も殴らんでええやんかぁ」
「ゼァ」
「しゃあないやんか。それにあの子強そう思わへん?」
「……」
「お、それオッケーってことやんな?よし!」
意思疎通がまったくできていない場面があるかと思えば、今は完璧に意思疎通ができている。ちぐはぐすぎると思ったが、意見が一致しているときは意思疎通ができるのだろうか。ハッサムもあのコソクムシを認めているみたいだし。
「そろーっと、そろーっと」
まだ喧嘩している三体のところにハクが忍び足で近づいていく。私もあくタイプのズルッグとどくタイプのグレッグルが欲しいのでまねして近づいていく。漁夫の利的な感じで捕まえてしまおう。
「コソッ」
しかし、忍び足も空しくコソクムシに気づかれてしまった。コソクムシが私たちに気づくとズルッグとグレッグルもこちらを向き、私たちを睨みつけてくる。
「これ、矛先こっちに向いた感じ?」
「ぽいね」
私はモルペコをおろして、ハクは頭の上で寝ていたアブリボンを起こし、バトルの準備。トレーナーがいなかったのはこの子たちにやられてしまったからかもしれないので、最大限警戒しておく必要がある。
「ズルッ!」
「お、こわいかおやな!」
こわいかお。確かポケモンの行動が遅くなってしまう技だったはず。ハッサムには効果がないようだが、モルペコとアブリボンは少し怯んでしまった。
そして、その隙にものすごい勢いで水を纏ったコソクムシが突進し、モルペコを弾き飛ばす。
「モルペコ!」
「アクアジェットやん!ほえー!あの子絶対強い!」
「言っとー場合か!大丈夫!?モルペコ!」
「うらら……」
思ったよりもダメージがないみたいで、すぐに立ち上がる。それにしてもこわいかおからのアクアジェットとは、何か連携し慣れているような……。
「ぐ」
「う、らぁ!」
「ブリィ!」
「今度はいばるか!へぇ!」
かと思えば、グレッグルがむかつく顔で見下してきた。ハクの言う通りいばるだろう。相手のこうげきを上げる代わりにこんらんさせる技。やはり連携し慣れている……?
「さて、観察は終わり!アブリボン、アロマセラピー!」
「ぶ、リィ!」
いばるを受けてこんらんしていたはずだが、アブリボンはハクの指示を受けてアロマセラピーを使う。アロマセラピーは受けたポケモンの状態異常を治す技。これでモルペコもこんらんが治ったわけで、
「モルペコ!グレッグルにスパーク!」
「アブリボン!コソクムシとズルッグにかふんだんご!」
「うららぁ!」
「ブリッ、ブリッ!」
またいばるをされたらアロマセラピーが成功するかわからないのでグレッグルから狙う。それをサポートするようにアブリボンのかふんだんごがズルッグとコソクムシに向かって放たれた。アブリボンに進化してすぐ覚えた技であるかふんだんごは威力が高く、そのままズルッグとコソクムシを吹き飛ばす。
「ぐ」
「左に避けて!」
援護が期待できないと判断したグレッグルは右手を突き出してきた。恐らくどくづき。それを寸でのところでかわし、グレッグルにスパーク!
「ナーイス!ええやんモルペコ!」
「なんで私より先に褒めると!?」
「ええやん。ほら、ゲットチャン、ス?」
なぜか言葉の途中で首を傾げたハクに、私も首を傾げる。見ると、ズルッグとグレッグルが膝をついて頭を下げており、コソクムシはハクの足に擦りついていた。えっと、これは、
「どういうことやろ……」
「んー、もしかして強いトレーナーを探してた、とか?」
私の言葉にズルッグとグレッグルは強く頷いた。そんなことがあるのか、と驚きつつふとハクの足に擦りついているコソクムシに違和感を覚える。ズルッグとグレッグルは強いやつについていく、みたいな意思を感じるけど、コソクムシはそうでもないような……。
「コソクムシは、あんたたちと同じ?」
「ズル」
「ぐ」
聞くと、ズルッグとグレッグルは首を横に振る。ということは、
「コソクムシは関係なしに喧嘩売っとったんか!カッコいいなぁ!」
「コソッ!」
ずいぶん珍しいコソクムシがいたものだ。あのにげあしが速いことで有名なコソクムシがまさか自分から戦いに行くなんて。アブリーがハクの帽子の中にいたのは習性もあるからそこまでおかしなことではないが、流石にこれはおかしい。どうせこのコソクムシもハッサムやアブリボンと同じく強いのだろう。
「ま、いいか。一緒にくる?」
「ズルッ!」
「ぐ!」
どうでもいいけど、ズルッグとグレッグルの鳴き声を合わせると『ズルッグ』になって、まるでズルッグだけ鳴いているみたいになる。あまりのくだらなさに自分で笑いながら、二体をゲットした。
「でておいで!コソクムシ!」
ハクは既にコソクムシをゲットしたらしく、ゲットしたそばからコソクムシを出して撫でまわし、可愛がっていた。……普通に見るとコソクムシは可愛らしいとは言い難い見た目をしているが、こうしてみると可愛いと思えてしまう。
「ん?どしたんマリィ。コソクムシ触ってみる?」
「……!モルペコ、おいで」
「うらら!」
むしポケモンに危うく魅了されそうになったところをモルペコによって回避する。危なかった。私がむしポケモンにハマってしまったらハクが意気揚々と「むしコーデせえへん?」とあのクソダサコーデをさせられてしまうことだろう。それだけは避けなければならない。
「よーし、新しい仲間ゲットしたし、行こか!」
……やっぱりあとで触らせてもらおうかな?
コソクムシ ♂ ゆうかんな子
強いトレーナーを探してズルッグとグレッグルが喧嘩のふりをしていたところに乱入していたことからわかるようにバトルが好き。アクアジェットを覚えている。