星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜   作:chee

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10話

また一人死んだらしい。

 

これで37人目か。

 

いや、計画開始から数えれば115人目だな。

 

残りは12人。

 

俺も死ぬんだろうか。

 

俺は弱いもんな。死ぬよな。

 

そういえばこれ強くなるための実験なんだっけ?

 

まぁ関係ねぇよな。

 

俺は弱い。

 

科学者共は強い。

 

だから俺は殺されるんだ。

 

死ぬんだ。弱いから。

 

クソ。誰にも負けないような強い奴になりたかったなぁ。

 

......あと11人。

 

どうせ死ぬなら早く殺してくれ。

 

......あと10人。

 

もういいだろ。俺頑張っただろ。

 

......あと9人。

 

もうすぐ死ぬ。もうすぐ死ねる。

 

......あと8人。

 

なぜまだ死ねない。俺は弱いのに。

 

......あと7人。

 

苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。

 

......あと6人。

 

もう楽にしてくれよ。

 

......あと5人。

 

もしも俺がもっと強かったなら、

 

......あと4人。

 

こんなにも虐げられずに済んだのだろうか。

 

......あと3人。

 

もし来世があるなら、もっと強くなろう。

 

......あと2人。

 

もうそろそろ死ねるかな。

 

......あと1人。

 

ついにあとは俺だけか。やっと死ねるのか。

 

......あと1人。

 

なぜ死ねない?俺は弱いだろう?

 

......あと1人。

 

死ねない。俺は弱くないのかもしれない。

 

......あと1人。

 

体が軽い。生まれ変わったようだ。

 

......あと1人。

 

俺は、死なない。死なないんだ。

 

......あと1人。

 

俺は、強い。

 

だから、死なない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「本当にあんな娘一人行かせてあの子を止められると思ってるの?」

 

さあ?そんなこと僕に分かる訳がないだろう。

 

「厳しいかもしれないね。彼女一人じゃ」

 

「なら、なぜ行かせたのかしら」

 

「ロックピッカーちゃんはここ数日で間違いなく()()()()()()。つまり、僕が行くよりもリフィルが相手の実力を見誤って油断し、全力を出さない可能性が高い。アイツは相手が格下なら手を抜いて余裕を持つタイプだ。それで長引くなら、その間に僕が君を倒して合流すればいい」

 

実際、僕が行くと最初から全力の可能性が高い。僕は一度リフィルに負けているものの、かなり追い詰めはしただろうからね。

 

「フン。意外とあの子のことしっかり見ているのね。それにしても、私を倒せる前提で話すのは気に食わないわね。不愉快だわ」

 

「怪我も完治したからね。今なら誰でも倒せそうな気分だよ」

 

「気に入らないわ。潰す!!」

 

植物が踊り狂う。避けることは容易い。しかし、そうも行かない。厄介なのはむしろ『罠種子(トラップシード)』。踏むと爆発するタイプの設置罠だ。『スターロード』が使えればすぐにでも勝負に出れるが、さっき使ったばっかりだからしばらくは使えない。

 

「潰れなさい!」

 

迫り来る蔦や葉をいなしながら、すばやく、しかし慎重に距離を詰める。

 

「うるぁ!!」

 

「効かない!!」

 

全力のパンチも周囲のロボットを盾にして防がれる。一度距離をとるとすぐに大きな蔦が鞭のように唸る。

 

「厄介だな...」

 

相手に手数で劣っている。ならどうするかって?もっと速くなるしかないだろう。今までだってそうやって強敵(カースドプリズン)と戦ってきたんだから!!

 

流星(ヒーロー)を...なめるなぁ!!!」

 

迫りくる蔦をいなし、大きく踏み込む。足元に違和感がある...『罠種子(トラップシード)』か!

 

「吹き飛びなさい!!」

 

「まだまだァ!!」

 

大きく横に飛んで衝撃を逃がすと、そのまま大きく回り込んで至近距離に潜り込む。ユグドライアが素早く(ロボット)を構えるが、そんなことは予想済みだ。一瞬タイミングを遅らせて回し蹴りの放つ。

 

「......!!!」

 

来ると思ってた攻撃が来ずに訝しみ、ロボットの影から顔を出したユグドライアと一瞬目が合い、その顔が驚愕に染まる。そのこめかみに、僕の回し蹴りがクリーンヒットする。さすがのユグドライアも硬直を免れられない。蹴り上げて体を浮かせる。

 

「...クソガァ!」

 

悪態づいたところで空中に浮いて死に体になった体では抵抗のしようがない。蹴りによるコンボをつなぐ。このまま倒し切ってしまいたいが...

 

突如地面が爆発する。

 

大きく後ろに飛んで爆発のダメージをそらすが、ダメージは入る。くそ、攻めきれない。肝心なところで『罠種子(トラップシード)』が邪魔をする。

 

「調子に乗るんじゃないわよ!『茨の楽園(ソーンランページ)』!!」

 

突如地面が揺れる。そして至るところから現れた茨が僕を包み込もうとしている。

 

「...マズいッ!」

 

対応が間に合わない。どうにか逃れるための道筋を探すが、前後左右どこを見ても抜け出せそうにない。

 

「クソっ!!」

 

何かないのか!何か!

 

 

気がつくと、目の前に()()があった。

 

 

加速した思考で考える。なんだこれは。確かに今の今までそこには何もなかった。突如として現れたソレは青白く光り輝きながら膨大なエネルギーが秘められていることを感じさせる。

 

......ウルトクリスタル!!!!

 

迷わずに手に取る。すると、キューブの中のエネルギーが体に流れ込んで来るようで......

 

「『スターロード』!!!」

 

「は??なんで!?!?」

 

迷わず唯一の逃げ道であった()()から脱出する。

 

「3秒で決める!!」

 

そのまま虚空を天地逆さまに踏みしめ、ユグドライアへと殴りかかる。ユグドライアは無防備に殴られこそしたもののまだ笑みを浮かべている。わかっているさ。このまま僕が着地をすれば『罠種子(トラップシード)』の餌食になると言うんだろう?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ユグドライアの顔が焦りと驚きに支配される。『罠種子(トラップシード)』は地面に足をつかなければ一切驚異ではない。

 

「これで終わりだぁ!!」

 

「クソガァァァああああアアア!!!」

 

ユグドライアの鳩尾に僕の飛び蹴りが炸裂する。この感触なら、しばらく起き上がることすらできないだろう。地に伏すユグドライアはピクリとも動かない。

 

「......教えなさい。なぜ使ったばかりの『スターロード』がつかえたの?」

 

「ウルトクリスタルが、突如僕の前に現れたんだ。あれがなかったら危なかったな」

 

「フン。運がいいわね。それであなたはあの子の邪魔をしに行くの?」

 

「あぁ」

 

「あなた達みたいになんの努力もせずに能力を得たあなた達には私達改造人間の苦しみは分からない!!!これ以上あの子を苦しめるのはやめなさい!!!!!」

 

改造人間だから苦しめるな?納得できないな。

 

「僕にとっては君らが改造人間かどうかなんてどうでもいい。君らのすることが間違っているから邪魔をするんだ」

 

「そんなのは上辺だけよ。みんな私達改造人間のことを疎んで遠ざける。私達は強くならないとすぐに虐げられる。私達は強くならないと行けないんだ!!」

 

知らねぇよ。そんな事情。

 

「強くなりたいなら修行を積めばいい。実践経験を増やせばいい。他人に迷惑をかけてする事じゃないんだよ。君らがその方法を貫く限り、僕らはまた邪魔をするだろう」

 

急いでロックピッカーちゃんを追おう。思ったより時間がかかってしまった。スタジアム内部へと入る。

 

彼女は無事だろうか。

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