星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜   作:chee

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2話

ふと、思い返すことがある。

 

喧騒に包まれているケイオースシティ。

 

私がまだ小さかったあの日、

 

危険だとも知らずに戦場に迷い込んだ私を、

 

ミーティアスから、

 

ゼノセルグスから、

 

身を呈して私を守ってくれた、

 

“おじ様”

 

彼はヴィランではあったのだけれど、

 

私にとっては間違いなくヒーローで、

 

実際にヒーローになった今の私にとっても、

 

永遠に憧れのヒーローなんだ。

 

ただ、彼の力になりたくて、

 

彼を縛る呪われたの牢獄の鍵を開けたくて、

 

私は、

 

ロックピッカー(ヒーロー)になったのだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

リフィル(代替品の実験体)と呼ばれた男がいた。

ユグドライアを始めとする改造人間。その実験段階における大量の失敗作のうち、奇跡的に命をつないだのが彼だった。嘗ての青年の面影は既になく、PSYボーグ・ロードを彷彿とさせるその機械に蝕まれた体は悲哀すら感じるものがある。彼は誓った。強くなると。二度と“替えの効く実験サンプル”なんて呼ばせないと。そうして彼は、一人のヴィランとなった。

 

 

 

ここは、とある研究施設の最奥の部屋。私は、ヒーロー(ロックピッカー)としてこのヴィラン(リフィル)と戦っていた。

 

「諦めなさい。もうすぐ私との通信を追ってたくさんのヒーローが援軍に来る。あなたに勝ち目なんて残ってないのよ」

 

「援軍が来る?関係ないね。どの道俺はもう()()()()()()()()()んだ。何人ヒーローが集まろうが知ったこっちゃねぇな」

 

「何の話をしているのかしら」

 

「新米ヒーローなんかにわかる訳ねぇだろ。文字通りお前らとは次元が違う話だ」

 

ソイツの言っている事は理解できない。しかし、コイツのこの余裕っぷり。本能が“警戒を怠るな”と伝えてくる。

 

「じゃあ、さらばだ」

 

「だから何を言って.........!!!」

 

突如、ソイツの背後で空間が()()()。呆然とする。何が起こっているのかわからない。何も言えぬままソイツが空間の裂け目に飲み込まれて行くのを見送ってしまった。

 

『...おい!ロックピッカー!何があった!!』

 

通信機から仲間の声が聞こえてくる。しかし、目の前の光景が衝撃的すぎて全く耳に入ってこない。

 

「......わからない......」

 

『どういうことだ!奴はどうなった!?』

 

「......消えた。......飲み込まれた。()()()に...」

 

『何を言ってるんだ!もう少しわかりやすく......』

 

「私!追います!!!」

 

『待て!!落ち着くんだ!!』

 

もう静止は聞けない。

本能が叫ぶ。“アイツを追うのは危険すぎる”と。

本能が叫ぶ。“アイツを絶対に放っておいてはならない”と。

 

私は、アイツを追って、一歩を踏み出した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

既に通信機からは何も聞こえない。通信は途絶したようだ。周囲には何も見えない。まるで周りには何もないというように。

 

()()()()()()()()()()()()

 

扉の奥に見えたのは...誰かに言われなくてもわかる。私の故郷。嘗てのケイオースシティだ。扉の向こうに見える景色が私の思い出の景色と重なって胸が高鳴る。

 

しかし、扉の向こうでミーティアスと戦っているソイツ、この時代にいないはずの奴(リフィル)が嫌に目につく。

 

「アイツはその街に居ていい奴じゃない。速く連れて帰らなきゃ」

 

早くこの街に入りたいが、そうも行かない。この閉ざされた扉を開かなくてはならない。だが任せてほしい。鍵開け職人(ロックピッカー)にはお手の物なのだ。

 

 

 

扉が開いた。素早く斧を取り出し、目の前で横たわるヒーロー(ミーティアス)にトドメを刺さんとするリフィルに向かって全力で振りかぶり、勢いよく振り下ろす。

 

「お前ぇ......」

 

完全な不意打ちだった。だが、これで倒せるとは最初から思っていない。なんとか回避したリフィルだったが、肩に斧があたり、結果的に腕を奪うことができた。

 

「どうやってここまで来た!!」

 

「あなたを追ってきただけよ」

 

「それで時空の狭間に入れても『鍵』無しで出てこれる訳がないだろ!!」

 

「あら、鍵開けは得意技なのよ」

 

「ふざけるな......今は退くがお前はもう絶対に許さん。生きて未来に帰れると思うなよ!」

 

「逃さないっ!!」

 

逃げるアイツを即座に追おうとする。しかし、『加速する蹂躙(アクセル)』を使ったリフィルに追いつけるはずもなく、呆気なく逃げられてしまう。

 

「ミーティアスさん!!!」

 

急いで倒れてるミーティアスさんに駆け寄る。

 

「大丈夫ですか??すぐに病院へ運びます!案内してください!」

 

「待って!!その前に、君は何者だい?」

 

「私は“ロックピッカー”。事情は移動してから説明します!」

 

そう言って私は、彼を背負って歩き始めた。

 

 

 

場所は変わって郊外の病院。ここは“嘗てユグドライアに襲撃され、それ以降使用されなくなった廃病院を医者でありヒーローでもあるDr.サンダルフォンがヒーローの拠点かつ治療所として活用している場所”らしい。

 

「………というわけで、アイツを倒すのに協力していただけないでしょうか?」

 

私は知っている全てを話した。私とリフィルが未来から来たこと。リフィルがとても危険な存在であると言うこと。そして、未来のためにも、この時代のためにも、アイツを倒す必要があること。

 

「彼女の言うことはにわかに信じがたい話ではあるが...ミーティアスはどう思う?」

 

「僕は実際に襲われたわけだからね。彼の本当の目的はわからないけど、彼が危険だというのも事実だろう。『連続襲撃事件』のこともあるしね」

 

「出会ったばかりの私を信用できないのは仕方ないことだと思います。しかし、アイツが危険だということだけは信じてほしいんです」

 

「あぁ。そこはわかった。他のヒーローたちにも警戒しておくように伝えておこう」

 

サンダルフォンさんは私のことも信用ならないだろうが、ひとまず納得してくれたようで一安心だ。そしてミーティアスさんが思いついたように聞いてくる。

 

「ところでロックピッカーちゃん...だっけ?君はこれからどうするんだい?」

 

「逃げたアイツの拠点を探しに、街の散策に行こうと思います」

 

「それなら、気をつけたほうがいい。もうすぐ()が現れる」

 

「奴...ですか?」

 

「あぁ。僕の宿敵。......カースドプリズンだ」

 

()()()()()()()()

 

その名前を聞いて、嘗て私の命を救ってくれたそのヴィラン(ヒーロー)の名前を聞いて、思わず胸が高鳴る。

 

「大丈夫ですよ。これでも私も、未来ではヒーローやってましたから」

 

そう笑って見せて私は病院を後にした。

 

リフィルの行方を捜索するため。

 

もしかしたら“おじ様”と再開できるかもしれないと、ほのかに期待を寄せながら。

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