星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜   作:chee

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4話

俺様は、ナメられるのが嫌いだ。だから、足を怪我して最速が出せない状態で挑んで来た馬鹿(ミーティアス)が腹立たしい。

 

俺様は、実力を誤魔化す奴が嫌いだ。だから、正面から戦おうとせずにあえてミーティアスと戦っている最中を狙って乱入してきた(機械野郎)が腹立たしい。

 

俺様は、気分の高揚しないことが嫌いだ。だから、この馬鹿と屑の二人を前にして殺気すら湧いてくる。

 

 

 

「テメェ......つまんねぇ事すんじゃねぇかよ。覚悟はあるんだろうなァ...」

 

「覚悟なんていらねぇなぁ。お前に勝てばいいだけだろう?カースドプリズン」

 

......随分とナメてくれるじゃねぇか。

 

「俺様は今虫の居所が悪い。やりすぎても文句を言ううんじゃねぇぞ!」

 

掴んでいたミーティアスを放り捨てる。足を抑えてうずくまっているが...どうも怒りで拳を握る力を入れすぎたようだ。どのみちコイツは邪魔だからちょうどいい。ミーティアスが復帰不能なことを確認し、機械野郎と向き合う。

 

「オラァ!!!」

 

ワイヤーロケットパンチからの飛び膝蹴り。さっきと同じ攻撃だ。一度見てるはずの攻撃。横に跳んで当然のように躱されるが、そのまま両膝で着地。両膝のタイヤでドリフトをするように方向転換、両手で全身を支えてキャタピラの大質量で蹴りを入れる。

 

「どうした口だけかぁ??」

 

吹っ飛んで行く機械野郎にワイヤーフック射出。足に巻きつけ、大きく振り回してから壁にぶつける。録に抵抗もできていない。

 

「煩ぇ!黙れ!『加速する蹂躙(アクセル)!!』」

 

突如、コイツの動きが早くなる。撹乱しながら接近してくる。だがしかし。

 

「確かに速ぇ。だがなぁ、俺様だって速さ自慢の馬鹿(ミーティアス)と散々戦ってんだよ。それだけじゃあ通用しねぇなぁ!!」

 

四方八方から放たれるブラスターを的確に盾で捌いていく。

 

「良い気になるなよカースドプリズン!!!」

 

唐突に懐に潜られる。しかしコイツの近距離火力は大したことがない。ブラスターにさえ気を配れば問題はない。そう判断してコイツのブラスターに目をやってようやく気づく。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

気づいたときにはもう遅い。その大きな口径を持った特殊な銃のようなもの、小さい大砲と言ったほうがしっくりくるソレはもう発射準備を終えていた。

 

「喰らいやがれ!!『冥土の宴(ヘル・フィエスタ)』!!!」

 

腹に直接その巨大ビームを受けた俺様は派手に吹っ飛ぶ。思えば、今日初めてまともに攻撃を喰らった。

 

いいねぇ!いいじゃねぇか!!

 

戦いの興奮が帰ってくる。

 

「ハハッ!!なんだよ!いいもん持ってんじゃねぇか!!もっと見せやがれ!!!」

 

そうして笑みを浮かべて立ち上がる。

 

「ハッハッハ!!俺様も付き合ってやるからよぉ!ギアを上げていこうぜぇ!!」

 

せっかくだ。見せてやる。

 

「『脱獄(プリズンブレイク)』!!!」

 

呪われた牢獄の鎧が弾け飛ぶ。中から現れたのは緋色の凶星と謳われた俺様の真の姿。奴の顔が引きつる。そう、ここからは一方的だ。

 

例えどんなに加速していようと()()()()()()()()

 

「行くぞオラァ!!」

 

「なッ!速......!」

 

一瞬で距離を詰め、反応する前に殴り飛ばす。奴が愕然とした顔で宙を舞う間に俺様も跳躍。奴の反対側にある鉄骨の山を踏みしめ跳び、空中で蹴り落とす。

 

「クソ......ガァァ!!」

 

よろめきながらも立ち上がるが、次の瞬間には超速の飛び蹴りが脇腹を穿つ。ふっとばされながらも奴がブラスターを連射するが、全てが外れる。確かに俺様はさっきまでその弾道上にいたが、一瞬もあれば移動など容易い。

 

「まだまだ行くぞぉ!!」

 

すぐにまた近づき、パンチの連打、連打、連打。確かにやつも速い。多少の反応もできているようだが、全然足りない。半分も捌けていない。

 

「クソォ!!」

 

殴られながらの必死のパンチを片手で軽く捌きつつ、奴の首に回し蹴りを当てる。

 

「ガァ......」

 

「終わりだ」

 

体の硬直したコイツを絡め取るようにサブミッションを決めつつ後ろに回り込み、後頭部に肘を打ち下ろす。

 

「負けて...たまるかぁ......」

 

口は動くが体は動かない。

 

「まぁ、悪くはなかったぜ。」

 

「クソォ...クソォ...」

 

30秒経過したのか、俺様の体を鎧が再び包み込む。

 

「でも、でも、絶対にただではやられない!!『咎人の末路(インプリズメント)』!!!」

 

コイツの手に持った謎の端末の発する光が俺様を包む。ダメージはない。

 

「......何をした.........」

 

「この技は本来、武器を“固めて”どんな高性能武器もただの鈍器にしちまうっつー技なんだが、今回はお前の鎧の()()()()()()。つまり、お前はもう、『脱獄(プリズンブレイク)』を使えないんだよ!!!ざまぁみろ!!!」

 

そう言い残してコイツは突如現れた謎の穴の中に消えていった。

 

「厄介なことをしてくれやがったなぁ。この借りは必ず返すぜ」

 

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目の前で緋色の閃光が走る。思わず目を奪われるが、その視界の隅に見知った顔を見つけた。

 

「ミーティアスさん!!!」

 

足を抑えて蹲っている。見てみると、治療の跡が見られるものの、さらに悪化したように見れる。

 

「なんでこんな無茶をするんですか!!」

 

「アイツが現れたんだ。無理もするさ」

 

「おじ様は強いんです!万全の状態じゃないのに挑むなんて無茶ですよ!」

 

ミーティアスさんを担ぎ、戦場からの被害を受けない、しかしその様子を眺められる場所へと運ぶ。

 

「......ねぇ、なんで君はアイツのことを“おじ様”って呼ぶのか、聞いてもいいかい?」

 

その質問を聞いてハッとする。そうだ。おじ様は私にとってはヒーローでも他の人にとってはただの迷惑なヴィランなのだ。

 

「昔...と言っても未来から見て昔のことですけど、私はこの街に住んでいました。まだ小さかった私は、危険だとも知らずに戦いの場に迷い込んだことが何度かあります」

 

「それじゃあまさか...」

 

「はい。おじ様は、私のことを戦いの中で、二度も、身を呈して守ってくださいました」

 

その時、ミーティアスさんの顔が一気に青ざめる。

 

「まさか、あの時の、金髪の女の子は...」

 

ミーティアスさんは私のことを覚えてくれたらしい。しかし、相当気にしていたのか、絶望でもしたかのような態度に申し訳なさが溢れてくる。

 

「はい。確かにそれは私です。......でも、そんなに気にしないでください!あれは私の責任ですし!ミーティアスさんを恨んだことは一度もありません!!」

 

「だからといって、僕はヒーローとして許されざることを君にしたんだ。いくら謝っても謝るだけじゃ足りない!!」

 

「いいんです!いいんですってば!!そういうことならリフィルを捕まえるのを手伝っていただければ十分ですから!!」

 

思わず叫んでしまう。実際、私は一切気にしていない。むしろ、私が迷惑をかけてしまったのだと思っている。

 

「そうか。じゃあ僕は君のために、絶対にリフィルの奴を捕まえるよ約束しよう。まぁ現在進行形でカースドプリズンの奴にボコられてるけどね」

 

「アハハ...」

 

確かにその通りだ。これだとミーティアスさんは別で何かさせろとせがんでくるんじゃ...

 

「だけど、あの手のやつは必ず“保険”を用意しているもんだ。緊急脱出手段くらいは用意しているんじゃないか?少なくともどんなにダメージを負ってもこの場からは逃げおおせる。だからこそ、絶対に僕が捕まえてみせるよ」

 

すごい。そこまで見抜いているのか。やはりこの人のヒーローとしてのヴィランを見る目はすごい。

 

「この件以外でも僕にできることがあれば何でも言ってくれ。何よりも優先して君の頼みに答えよう」

 

「......ありがとうございます」

 

そう言っていると、戦いも終わったらしい。リフィルがワームホールを作り出して逃げていった。そして、

 

おじ様と、目が合う。

 

おじ様は私とミーティアスさんを一瞥して呆れたような目をしている。

 

「おい。ミーティアス。今日は今までで一番つまらなかったぞ」

 

「ハハ、それは悪かったね」

 

ミーティアスさんが震えている。確かに、この状態でおじ様に襲われてはひとたまりもない。しかし確信があった。おじ様はそんなことはしない。

 

「フン。俺様は興が冷めた。もう帰らせてもらう。お前も情けなくガキンチョ背負われて帰るんだな」

 

「そうさせてもらうよ」

 

目を見開く。おじ様は私のことをを“ガキンチョ”と呼んだ。嘗ての小さかった私を呼ぶのと同じように。まさか、おじ様は私の正体を一目で見破ったというのか。

 

「いやまさかね」

 

「どうしたんだい?」

 

「いえ、なんでもありませんよ。とりあえず病院に戻りましょうか」

 

いろいろ悩むことはある。でも、おじ様と再会できたというだけで少し足取りが軽くなった。

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