星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜 作:chee
「この馬鹿者!!!絶対安静と言っただろうが!!!」
「あ痛ァ!!」
「ア、アハハ...」
場所は例の病院。案の定と言うべきか、当然と言うべきか、ミーティアスさんは相当な無茶をしていたようだ。
「今度こそ絶対安静だ!今日明日ベッドから出られると思うな!!」
「ハハ...サンダルフォンさん、お手柔らかに...」
「いいや、ここは徹底的にやらんといかん。ほらミーティアス!こんな女の子にここまで心配させて恥ずかしくないのか!お前は!」
「いや仕方ないだろこれは...って痛い痛い!!」
さっきまで戦場にいたからか、こんな光景すらも微笑ましく感じる。
「ロックピッカーだったな。ミーティアスからいろいろ聞いたよ。今回は
「いえ、とんでもないですよ!」
「そもそも、君はコイツに殺されかけているわけだろう?本当に、よく助けてくれたよ」
「あー。勝手にその事まで話したことがまずいなら謝る。でも、これで先生も完全に君の事を信用してくれると思ったからさ」
「全然問題ないですよ!その話で信用が得られるなら願ったりです!」
本心だ。この話をしてミーティアスさんが責任を感じてしまうのは嫌だが、別に私としては嫌な記憶というわけではない。むしろ戦場の危険性をよく教えてくれるいい教訓だ。
「君も折角この時代に来たんだ。カースドプリズンの奴でも訪ねてみたらどうだ?話したいことでもあるだろう?」
「でも、おじ様がどこにいるのかわかりませんよ?」
「安心していいよ。奴の拠点の場所ならわかってる」
え?おじ様ヒーローに拠点バレてるの?!
「ハハ。驚いているようだね」
「いくら僕たちでも直接拠点に乗り込んだりはしないよ。超常の力を使って襲撃したんじゃヴィランと同じだからね。現行犯逮捕が基本なんだよ。まあ、拠点に違法な何かを隠し持ってたりすると話は別だけどね。アイツは基本武器は現地調達だからガサ入れする必要があるほど武器を溜め込んでいるわけでもないしね」
「ナ...ナルホド」
というかそれで安心して拠点使い続けるおじ様もおじ様だと思う...
そんなことを考えているとサンダルフォンさんがメモを渡してくれる。
「このメモ通りに行けば奴の拠点だよ」
「......ありがとうございます」
この時代に来たときはそう都合よくおじ様に会えると思っていなかったし、あっさりとおじ様の居場所がわかってしまって拍子抜けだ。
右手の中のメモを見つめる。
今まで憧れていただけの相手に自分から会いに行けるのだ。なんだか不思議な感覚がする。
「私、行ってきます!」
「あぁ。行ってらっしゃい。何かあればまたこの病院に来なさい」
「はい!!」
そうして私は病院を飛び出した。
『おい
『いい子だ、後ろを振り向かず真っ直ぐに走れ』
『オジチャン……まぁいいや』
これは初めておじ様と会ったときの記憶。
『っしゃあ!!!』
『俺の手は……
『集えゴミ共!!』
これが二度目の記憶......我ながら相手にされなさすぎて少し悲しい。
『
『フン。俺様は興が冷めた。もう帰らせてもらう。お前も情けなくガキンチョ背負われて帰るんだな。』
これが、さっきの記憶。普通はガキンチョなんて呼ばない歳であろう私をガキンチョと呼んだおじ様は、やっぱり私が昔助けた少女の未来の姿だと気づいたのだろうか。
だとしたら、少し嬉しい。
そんなことを考えていたら、もうついてしまったらしい。街の郊外にある廃ビル。その一室におじ様はいる。
扉はない。壊したのだろう。隣室の扉をみると、おじ様が鎧を纏っていたら通れないサイズだ。
「お邪魔します」
一声かけて中へ入る。そして、
「誰だ......お前か」
少しの沈黙が流れる。目はお互いをじっと捉えている。
「俺様になんの用だ」
「ただ、おじ様に会いたかっただけ。ところでおじ様、私が誰か、気づいていたんだよね?」
「あぁ。それがどうした」
やはりそうだ。おじ様は気づいていたんだ。
「どうして気づいたのか、聞いてもいい?」
「...まず、あの機械野郎だ」
「リフィルのこと?」
「名前は知らねぇ。奴の能力はあまりに一貫性がない。それはおそらく奴の能力が奴自身じゃなく奴の装備によるものだからだ」
確かにその通りだ。だが、それが何だというのだろう。
「だが、今の技術じゃそんなのは作れない。それこそ未来の技術だ。奴は何かしら時間や空間を移動する能力を持っている。奴の逃げ出し方が証拠だ。これで、奴が未来人だという予測がついた。これだけだと到底信じられねぇけどな」
ここまでおじ様の言うことはすべて事実だ。
「だが、お前の斧もその類の武器なんだろう?俺様はこの世のあらゆるものを武器として扱う。だから金属にはある程度の知識があるつもりだが、お前の斧に使われている金属は見当がつかねぇ」
「確かに、この武器は未来でも最先端の技術で鋳造された金属を使っているけど...」
「だろうな。機械野郎のこともあってこれでお前も未来人だという予測がついた」
「最後の決め手が、さっき会った時だ。お前は俺様と初めてあったにもかかわらず
......どんな顔してたんだろう。恥ずかしい。あ、今もちょっと顔赤いかも。
「未来から来たお前の過去、つまり、お前よりもちっこい金髪で女のガキで、俺様が何かしてやったのなんて
唖然とする。それだけのヒントで私の正体を見破ったのか。
「うん。私が、前におじ様に助けてもらった女の子だよ。改めてお礼を言わせて。二度も、私の命を救ってくれて、ありがとうございました」
深々と頭を下げる。
ずっと言いたかったっこと。この人にお礼が言える日が来るのをずっと待っていたんだ。心の底からの感謝を伝える。
「礼なんていらねぇよ。俺様は俺様のやりたいようにやっただけだ。お前の命なんて興味ねぇ」
「それでも、私は救われたんだもん。感謝くらいさせてよ」
おじ様に微笑みかける。おじ様はなんだか気恥ずかしそうにしていて、お礼を言われなれていないのがわかる。ちょっとかわいい。
「私ね、今、ロックピッカーって名乗ってヒーローをやっているの。おじ様に憧れて、人を助けようと思って」
「......俺様に憧れるならヒーローになるなよ」
「いいんだよ。私にとってはおじ様もヒーローなんだから。それで、私は鍵開けが得意なの。今はまだ未熟だからできないけど、いつかおじ様のその鎧の鍵も開けてみせるから!」
これは自分自身対する宣誓でもある。絶対におじ様を助けるんだ。私の力で。
「余計なことはすんじゃねぇ」
「え」
「俺様はお前の力なんかいらねぇ。俺様自身で全て解決してやる。だから余計なことはすんじゃねぇ」
さっきまでとは違う強い言葉。それを聞いて気付かされる。
......あのおじ様だもん、私が鎧の鍵を開けたところで喜ばないよね。
長年の決意を否定されたのに、あまり嫌な気持ちはしなかった。
「用が済んだなら早く帰れ」
「そうだね......ところでおじ様、私未来から来たばかりで宿も決まってないんだよ」
「...帰れ」
「...わかった」
非常に残念であるが、これ以上おじ様に迷惑はかけられない。扉まで歩き、振り返る。
「また来るね!!」
「もう来んな」
絶対にまた来よう。
この時代に来て良かったと心の底から思えた。