星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜   作:chee

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7話

「じゃあ、作戦を確認しよう」

 

場所は病院。私とミーティアスさんは向かい合う。ハイドロハンズさんとアムドラヴァさんはすでに西の研究施設へと向かっているらしい。

 

「作戦と言っても大したものじゃないけどね。まずは二人で突撃。途中で邪魔が入った場合、極力無視が好ましいがどちらか一方が先に進めそうなら君が進んでくれ」

 

「わかりました」

 

「目指す場所は最奥のコントロールルーム。ここからは建物内の全てのコンピューターのデータにアクセス出来る。きっと何か情報をえられるだろう」

 

「そうですね。どんなデータが出てくると思います?」

 

「そうだな...奴の武器に関する情報が出てくれば素晴らしい。あとは未だに謎に包まれている奴の目的に関する計画書のような何かがあればいいな」

 

「そのあたりに関しては同じ未来人の私が知っていれば良かったんですが...」

 

「別に構わないさ。僕たちだってこの時代のヴィランについてそこまで知っているわけじゃない」

 

「そう言ってくれると助かります」

 

「気にしないでいいよ。さあ、行こうか」

 

そう言って私達は病院を出る。周囲に細心の注意を払いながら街を南下する。そしてそこにその建物があった。

 

「ぱっと見何も無いように見えますね」

 

「とは言っても警戒を怠っちゃ駄目だよ」

 

「わかってます」

 

そっと二人で入り口に近づく。

 

「鍵がかかっているね」

 

「なら、私に任せてください。鍵開けは得意技です!」

 

こっち(この時代)に来てから初の見せ場だ。ついつい張り切ってしまう.........張り切ってピッキングするとかまるでヴィランみたいじゃん。

 

「ハハ。ピッキングが得意技ってなんだかヴィランのようだね」

 

「ぐぅ...」

 

自分でもそう思っただけに否定できない。

 

「それで、開きそうなのかい?」

 

「はい。複雑な構造をしてはいますがこれならすぐですね」

 

「複雑?」

 

「この鍵穴、鍵穴一つにつき三つの鍵が連動してるんです」

 

ミーティアスさんが頭にはてなマークを浮かべている。

 

「長い鍵を用意して、手前三分の一を入れてひねると鍵がさらに奥に進めるようになるっていう仕組みを二段階組み合わせたものですね。見たことないという鍵でもありません」

 

ミーティアスさんが呆れ顔。珍しいな。

 

「未来では、ヴィランの拠点とかでたまに見る形ですね。技術者の支援で最先端技術を使うヒーローに電子ロックは無意味ですから」

 

「へ...へぇ」

 

いけないいけない。ちょっと語りすぎてしまったか。お、開いた。

 

「開きました!」

 

「ありがとう。それじゃあ合図を出したら一気に扉を開け放つ。用心してくれ」

 

「わかりました」

 

ミーティアスさんは腰を低くして集中し、私は防火斧を正面に構える。

 

「3...2...1...」

 

「ゼロ!!!」

 

バァァァン!!!!

 

扉が吹き飛ぶ。えぇ、扉を開けるって言いながらぶっ壊しちゃってるじゃん。苦笑いがこみ上げてくる。

 

たっぷり数十秒。その場で周囲を警戒するが、何かが起こる気配はない。

 

「何も出てきませんね」

 

「あぁ。慎重に中を進もう」

 

私達は中に入る。最近まで使われていた形跡が見られるものの、誰かが潜んでいる気配は感じられない。何にも遭遇せずに目的のコントロールルームへとたどり着いた。

 

「また鍵がかかっているな......ロックピッカーちゃん、もう一度お願いできるかい?周囲は僕が警戒しておこう」

 

「あ、はい」

 

どれどれ。次はどんな鍵穴なのかな.........電子ロックじゃん。

 

「電子ロック......斧の出番ね!!!」

 

「えぇ!?!?」

 

いや、そんな驚かなくてもいいじゃん。

 

「電子ロックは専門の道具があれば簡単に開くんですけど、この時代には持ってきてないんですよ。申し訳ないです」

 

「いや、いいんだよ。僕が扉を壊した時点で穏便になんて終わりようがないんだからね」

 

「それもそうですね。じゃあちょっと下がっててください」

 

「わかったよ」

 

斧を構える。そして持ち手の部分を捻ったり捻ったりボタンを押したり。

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャコン!!!ウィーーーン...

 

突如大きさの増した斧が赤く光り輝く。

 

「セェェイッ!!!」

 

ドォォォン!!

 

爆発を伴って扉が崩壊する。下手に扉を吹き飛ばすと中のコンピューターが心配なので、扉を粉々に破壊した。これで中のコンピューターも無事なはずだ。

 

「開きましたよ......ってあれ?どうしました?」

 

呆然としているミーティアスさん。

 

「い...今のは何なんだい?」

 

「あぁ。【防火斧・超破壊(フルクラッシュ)モード】ですよ。すごい威力ですよね」

 

「あぁ。確かにすごい威力だ」

 

「.........なんですか」

 

若干引いているようにも見える顔に抗議の視線を飛ばす。

 

「まぁいいです。それより、開きましたよ」

 

「あぁ。この巨大なコンピューターから全てのデータが調べられるはずだ」

 

目の前にあるのは今もなお稼働している超巨大コンピューターだ。手前のコンソールから操作できるらしい。ミーティアスさんがさっきからいじっている。

 

「とりあえずデータバンクにアクセスしよう何か保存されているかもしれない」

 

モニターに突如大きなウィンドウが開く。これがデータバンクなのだろう。データの更新時期はここ数日に固まっていると思ったら急に数年前まで間隔が空いていた。

 

「おそらくこの最近のデータがリフィルの持ち込んだものだろうね」

 

とりあえず一番上のデータを開く。

 

「これは...あいつの武器?」

 

見覚えのないデバイスの数々の中に見たことのあるものが混じっている。

 

加速する蹂躙(アクセル)...これか。奴が急に早くなったカラクリは」

 

『【加速する蹂躙(アクセル)】・リフィル計画における人体改造によってリフィル素体が体内に獲得した新神経系にエネルギーを流し込むことによって常人を遥かに凌ぐ運動能力、反射神経、思考速度を手に入れる。発動中のリフィル素体は認識速度が跳ね上がり、常人と比べて約三倍に引き伸ばされた世界に生きることとなる。』

 

「何......コレ......」

 

「リフィル計画、リフィル素体。アイツ(リフィル)と間違いなく関係があるだろうね。見進めよう」

 

『【冥土の宴(ヘル・フィエスタ)】・リフィル素体が人体改造によって手に入れた新神経系を直接接続することによってこの小型レーザー砲から超出力の粒子砲を放つことができる。エネルギーは内蔵されているものを用いるが、直接リフィル素体の持つ特殊生命エネルギーを流し込むことも可能。』

 

「これ、カースドプリズンの奴が喰らってたビームのことだな」

 

「え、おじ様これ喰らってたんですか?」

 

「あぁ。ちょうど君のくる直前だったよ。奴は鎧を着込んでいたから耐えたけど、中々の出力のように見えたよ。僕たちだったら耐えられなかっただろうね」

 

ミーティアスさんはスピードを活かすために一切の防具は着ずに回避前提で戦う。私も小型に変形させた斧を持って立ち回る戦闘スタイルなので防具は最低限だ。そんな私達がその攻撃を受けたらと思うとゾッとする。

 

『【咎人の末路(インプリズメント)】・リフィル素体の特殊生命エネルギーをこの端末を通して変質させるとあらゆるデバイスの機能を封じるエネルギーとなる。封じられた武具はその効果の一切を使えなくなる。』

 

「おじ様が最後に受けていたのはこれですね」

 

「あぁ。これのせいで奴は今『脱獄(プリズンブレイク)』ができなくなっているんだろう」

 

その後も武器一覧を眺めるが、見知った武器は出てこなかった。武器意外のデータを漁っていると、ミーティアスさんがとある記録を見つけた。

 

『特殊生命エネルギーに関する考察

 リフィル_No.45

 俺の体はリフィル計画に耐えられなかったようだ。もうすぐ命が尽きるだろう。その前に俺の生きた証としてこの記録を残す。もしこの計画に耐えきり、超常の力を得たリフィルがいるのなら参考にしてほしい。

 俺達の体に施された人体改造。その基本は新神経系と特殊生命エネルギーの二つに尽きる。その特殊生命エネルギーとは一体何なのか。超常の力をもたらすエネルギーを蓄えておくもの。この表現を聞いて俺の中に思い浮かんだのが、今は手に入らない希少鉱石“ウルトクリスタル”だ。嘗てのケイオースシティにおいて戦いの場に稀に唐突に出現するものらしい。この鉱石手に入れたヒーローやヴィランはどんなに消耗した状態であっても、多くのエネルギーを必要とする超常の力をたちまち行使したという。俺達にもたらされた特殊生命エネルギーの正体はウルトクリスタル由来のエネルギーなのではないだろうか。ケイオースシティにはこのエネルギーを収納する物質があったと聞く。“ケイオースキューブ”だ。このキューブの改良版が俺達の体に埋め込まれたと考えられる。これが俺達の力の正体だったのだ。

 もし、人体改造を受けて生き延びたリフィルがいて、この記録を読んでいるならば、過去の世界へ行け。そしてケイオースシティで多くのウルトクリスタルを手に入れろ。そうすればお前は最強だ。二度と理想論者の科学者共に虐げられることはない。』

 

「なるほどね。これがリフィルの目的だったわけか」

 

「そうみたいですね。それにしたって......」

 

「あぁ。『リフィル計画』。なんとなく全貌がみえてきたな......胸糞悪い。おそらくこのデータが正式な記録だろう見てみるかい?」

 

ミーティアスさんはそれらしきフォルダにカーソルを合わせる。

 

「えぇ。見ましょう。きっと、見なければならないんです」

 

私の言葉を聞いて、ミーティアスさんはフォルダを開いた。

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