星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜 作:chee
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【リフィル計画】
本記録は過去のヒーロー・ヴィランを参考にして行われた超常の力に関する研究を元に、人体改造によって超常の力を一般人に後天的に与えることを目的とする計画の記録である。
注)以下ではリフィル計画における人体実験サンプルを“リフィルNo_〇〇”と記すものとする
本実験の流れを大まかに記す。
1新神経系の埋め込み
2特殊生命エネルギーの埋め込み
3調整
実験結果を以下に記す。
リフィルNo_1
新神経系を組み込むも拒否反応あり。鎮静家に失敗。組み込んだ部位から順に体が腐り、死亡。
リフィルNo_2
部位を変えて新神経系を組み込むも拒否反応あり。鎮静化に失敗。組み込んだ部位から体が腐り、死亡。
リフィルNo_3~19
同様に部位を変えつつ新神経系を組み込むが拒否反応あり。鎮静化に失敗。それぞれ組み込んだ部位から体が腐り、死亡。
リフィルNo_20
脊髄に直接新神経系を埋め込む。拒否反応はあるものの非常に小さく、鎮静化成功。しかし、体全体に繁殖する過程で衰弱。死亡。
リフィルNo_21~59
リフィルNo_20と同様に新神経系を埋め込み、拒否反応の鎮静化に成功。しかし、やはり繁殖の過程で衰弱。いずれも死亡。
リフィルNo_60
リフィルNo_20~59と同様に新神経系を埋め込み、拒否反応の鎮静化に成功。やはり繁殖の過程で衰弱するものの全身への定着に成功。特殊生命エネルギーの組み込み実験においてエネルギーが体内で暴発し、死亡。衰弱死を回避した要因は新たに導入した鎮静薬物によるものと思われる。
リフィルNo_61~78
リフィルNo_60と同様に新神経系が定着。しかし特殊生命エネルギーの暴発により死亡。原因は新神経系との過剰反応によると推測される。
リフィルNo_79~127
リフィルNo_60と同様に新神経系が定着。定特殊生命エネルギーの組み込みを行わず、ごく少量を経口摂取し、様子を見た。約半数が一週間で死亡。残りの内の約半数はニ~三週間で死亡。生き残ったのはリフィルNo_103のみだった。
リフィルNo_103はその後も安定。調整段階に移行。最終的に完全なエネルギーの安定化に成功。
直後、リフィルNo_103は暴走。改めてリフィル計画の危険性が再確認された。リフィルNo_103は関連研究素材と研究者のほとんどを破壊、殺害して逃走。これを持ってリフィル計画は凍結されたものとする。
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「なるほど。この計画におけるリフィルNo_103が僕たちの知っているリフィルでNo_43の遺言に従ってこの時代に来たというわけか。胸糞悪い話だよ全く。吐き気がする」
「本当ですね。本当に、ひどい話です」
「替えの効く実験体...それでリフィルか。嫌な名だな」
リフィルの事を思ってみる。彼が何をされて、何をしてきたのかを。
「確かに、リフィルは可哀想だと思います」
実際に、リフィルのことは可哀想だと思ってはいる。だけど...
「それでも、リフィルはこの時代に来て、ミーティアスさんに、おじ様に、ひどいことをしたのも事実です。だから、私はリフィルを倒します」
ミーティアスさんは少し驚いたように目を見開き、すぐに笑顔を向けてくれる。
「ありがとう。僕も同じ考えだよ」
「なんでミーティアスさんがお礼を言うんですか?」
「君がそう考えてくれるなら、また一緒に戦える。僕も心強いからね」
「......こちらこそ、ありがとうございます。ミーティアスさん」
これからリフィルとどんな戦いをするにしても、きっとこの人はずっと側で力になってくれる。それがすごく心強かった。
「さぁ!調査を続けようか!」
そう言いながら開いた画像は、ケイオースシティの地図だった。ところどころに×印がついていて、とある郊外のスタジアムの一箇所だけ○印がついている。
「この印、何なんでしょうか...」
一切心当たりがない。ウルトクリスタルの発生は場所には関係なかったはずだ。
「わからないな...いや、待てよ、何かが思い当たる気がする......過去に大きな戦闘があった場所...ウルトクリスタルじゃない......ケイオースキューブか!!!」
ケイオースキューブ!確か考察に書いてあったウルトクリスタルのエネルギーを貯め込むためのデバイス!
「ケイオースキューブは発生場所と密接にリンクしていて一定距離以上持ち出すと消滅する特殊な物質なんだ」
じゃあもしかして...
「つまり、リフィルの奴はこの建物を拠点にしている可能性が高い!」
「そういうことだ!」
よし!これですぐにでも突撃できる!
「ここから見られる情報はこれで全部みたいだね。とりあえず一旦帰って情報を共有しよう」
「わかりました」
十分すぎる情報が得られた。ハイドロハンズさんやアムドラヴァさんの方はどうなったのだろうか。
「...あぁ。...うん、分かった。こっちも中々の情報が手に入ったよ。...うん。病院で合流しよう。それじゃ」
電話を終えたミーティアスさんが振り返る。
「西に向かった二人も何かしらの情報を得たようだ。病院で合流することになっている。戻ろう」
「はい!」
そうして私達は大きな情報と小さな決意を胸に、研究施設を後にした。
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「......これが僕たちの得た情報だ」
ミーティアスさんが私達が南の研究施設で得た情報をまとめる。私達も相当にショックを受けた内容だ。向かい合うサンダルフォンさん、ハイドロハンズさん、アムドラヴァさんも悩まし気な表情浮かべる。
「それはひどい話だな」
「あぁ。それにしてもウルトクリスタルか。あれは俺達自身でも発生条件がよくわかっていないからな...」
「だけど、居場所が分かったのは大きいな」
「あぁ。だが...問題はまだある」
アムドラヴァさんが私とミーティアスさんをかわるがわる見る。なんだろう。
「俺とハイドロハンズの得た情報によるとリフィルはここ数日でヴィランを焚き付けて回ってやがった。しばらくはヴィランが街のあちこちで暴れまわることになるだろう」
街でたくさんの戦闘が起こる。おそらく狙いとしては“ウルトクリスタルの発生条件がわからないからとりあえずたくさんの戦闘を引き起こそうとしている”というところか。
「俺達はおそらく鎮圧に全戦力を投入することになる。だからこそ、リフィルの討伐はミーティアスとロックピッカーの二人に任せることになるだろう。問題あるか?」
サンダルフォンさんは私達をに問いかける。問題?あるわけがない。ミーティアスさんと目が合い、頷きあう。
「「全く問題ありません!!」」
「よろしい。突撃は明日だ。十分に準備をしてくれ。今日は解散だ」
いよいよ明日、決戦。決意を胸に部屋を出る。
「ロックピッカーちゃん、これからどうするつもり?」
「おじ様を訪ねようと思います。もし明日リフィルを未来に連れ帰ることになったら、もう会えなくなってしまいますから」
寂しい。分かっていたことだ。私とリフィルは本来この時代にいない人間。おじ様やミーティアスさんとこうして関わっていることが異常なのだ。
「...そうか。行っておいで。ただ、僕たちは君の事を十分に信頼しているし、既に仲間だと思っている。君がこの時代に残ると言ってもみんな受け入れるつもりだよ。それでも君は未来へ帰るかい?」
「はい。私にも未来に残してきた仲間がいるので」
「そうか。残念だけど、わかったよ。引き止めてごめんね。行っておいで」
「はい!」
思えば、ミーティアスさんは私この時代に来てからずっと私のことを気遣ってくれてたな。ミーティアスさんだけじゃない。サンダルフォンさん、ハイドロハンズさん、アムドラヴァさん、そして、おじ様。この時代で色々と迷惑をかけてしまったけど、それも明日までなんだ。
「おじ様!!」
勢いよくおじ様の部屋に入る。返事は聞こえてこない。
...なんだ。いないのか。
「......私、頑張るから」
誰もいない部屋に呟いて部屋を去る。昨日のシチューの香りはもう漂って来なかった。