星と幼子の物語〜未来少女、混沌の街に挑まんとす〜   作:chee

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9話

あちこちから煙が上がっている。戦闘音もたくさん聞こえてくる。各地でヒーローとヴィランが戦い始めたのだろう。そんな中を私とミーティアスさんは全力で走り抜ける。

 

「作戦は前回と同じだ!障害には極力二人で対処するがどちらかが進める場合には君が優先して進んでくれ!」

 

「わかりました!」

 

少しずつ郊外へと出て来て周囲に自然が増えてくる。これなら私もあまり街への被害を考えずに暴れられそうだ。私達はスピードを緩めずにリフィル未来から持って来たのであろう未来の警備ロボ達を破壊しながら突き進む。

 

「鬱陶しいなこのロボット。未来ではこんなのがわんさかいるのかい?」

 

「そうですね。一応未来ではかなり一般的な防犯ロボです。まぁ相当な富豪でもなければこれだけ大量には持っていませんが」

 

「全く。未来の技術とは厄介なものだ!」

 

とは言いつつこの人さっきからロボットを倒すのどんどん効率化されていってるの凄すぎる。それにしても、ロボット増えてきたな..段々進行ペースが落ち始めてる。

 

「面倒だ!ショートカットするよ!」

 

「えっ、どうやって......うぇあぁ!!何を!!」

 

目の前のロボを倒したところで急に後ろからミーティアスさんに抱きかかえられる。ミーティアスさんは私の倒したロボットを踏み台にして飛び上がって、

 

「『スターロード』!!!」

 

そのまま空を駆ける。五秒間限りのショートカット。渋滞をおこすロボの上空を猛スピードで走り抜けていく。...っていうか空中で抱きかかえられているってちょっと恥ずかしい。

 

「すまない。ショートカットはここまでだ」

 

「十分です。かなり近づきました!」

 

後ろを振り返って短縮した距離を見る。実際かなり短縮したようで、後ろにはかなり大量のロボがこちらを向いている。つまり...

 

「後ろを気にしたって仕方がないよ。どうせもともと後退するつもりはないんだ。逃げ道なんていらないさ!」

 

「はい!」

 

退路は断たれたが、元より要らないものだ。改めて前を向き、斧でロボを薙ぎ倒す。もうすぐ。もうすぐでたどり着く。

 

「危ない!!」

 

ミーティアスさんの声に反応してとっさに斧でガードする。衝撃が走る。一体何なんだ。何に襲われた。少なくともその方向にはロボットはいない。()()()()()()()()()()()()()()()()()。一度立ち止まって周囲を警戒する。

 

「右だ!!」

 

すぐに右を見ると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が私を襲おうとしている。

 

「せぇい!!」

 

迷わず斧で迎撃する。

 

「何これ!?植物を操る技術なんて未来でも聞いたことない!」

 

「...いるんだよ。この時代には一人だけ。植物を操る能力を持つ(ヴィラン)が」

 

ミーティアスさんが視線を大量のロボットの壁の向こうへと飛ばすので、つられて目をやると()()()と目が合う。

 

「紹介するよ、ロックピッカーちゃん。コイツはこの時代の厄介なヴィランの一人。ユグドライアだ」

 

人の形はしているがどこか不整合さを感じさせる半人・半植物とも言えるその見た目。この違和感に満ち溢れた雰囲気の正体を私は知っている。リフィルと同じ、改造人間特有のものだ。

 

「フフ...あの流星(ミーティアス)に厄介と言ってもらえるのは光栄ね」

 

「褒めてないんだよ全く。どうしてお前がここにいる?」

 

「ただ、始めて同類(改造人間)の子を見つけてね。親近感湧いちゃって。あの子を邪魔する奴が気に食わないのよ。だから、潰すわね!」

 

再び私とミーティアスさんを狙って植物が舞う。コイツはかなり手間取りそうな相手だ。ここで二人共足止めをされるのは下策かもしれないな。

 

「コイツの相手は僕がする!君は先に進むんだ!くれぐれもコイツの『罠種子(トラップシード)』には気をつけてくれよ!」

 

「わかりました!!」

 

どうやらミーティアスさんも同じ事を考えていたようだ。迷わず私はユグドライアの横をすり抜けようと走り出す。

 

「行かせるわけ無いでしょ!!」

 

目の前で植物が即興の壁を形成する。かなり頑丈そうだ。だけど、それじゃあ止められない。

 

「【防火斧・超破壊(フルクラッシュ)モード】!!!!」

 

物騒な音を立てながら変形し、赤く光り始める私の斧。これだけのエネルギーがあれば植物の壁なんて簡単に破れるでしょ。

 

「セェェイ!!」

 

大きな爆音を立てて壁が消し飛ぶ。

 

...ありがとう。ミーティアスさん。

 

後ろに残したミーティアスさんはユグドライアと今もなお戦っている。だから、私がリフィルを止めるんだ。壁に開いた穴を走り抜け、そのまま建物内に入る。ユグドライアを超えてからロボットはほとんど出てこなくなった。これなら楽に進める。

 

スタジアム型をしているこの建物は入り口にさえ入ってしまえばすぐに内部へとたどり着ける。中を見ると、中央にリフィルがひとり立っていて、そのはるか上空に光り輝くナニカがある。おそらくあれがケイオースキューブだろう。かなりのエネルギーが溜まっているように感じる。

 

「よぉ。来ると思ってたぜ。ユグドライアはどうした」

 

「彼女なら外でミーティアスさんと戦っているわ」

 

「そうかよ」

 

リフィルと向かい合い、言葉を交わす。これまでコイツとはいろいろあったようにも感じるが、この時代に来てから一対一で向かい合って話すのは初めてだ。最後にまともにコイツと会話をしたのは未来でのこと。コイツの時間移動の直前。コイツの姿は、その余裕を伺わせる表情や態度は、その時と重なって見える。

 

だけど、私はあの時とは違う。

 

この時代に来て 、ミーティアスさんやサンダルフォンさんの考え方に触れて、おじ様に硬い決意を貰って、私は変わったんだ。

 

「ねぇリフィル。ちょっと話しましょう?」

 

「は?何をだよ気持ち悪ぃ」

 

「南の研究施設に乗り込んだとき、色んなデータを見たわ。リフィル計画の事も、死んでいったお仲間の事も、No_43の遺言の事も」

 

リフィルの表情があからさまに歪む。

 

「で?どうした?同情でもしたか?上から目線の安っぽくて押し付けがましい同情なんかいらねぇぞ」

 

「同情なんてするわけないじゃない。あなたの過去に何があっとしてもこの時代に来てからしたことが間違っている事に変わりはないんだもの」

 

「んで?どうすんだよ」

 

「もちろん。止めるわよ」

 

「やってみろよ、ヒーロー風情が」

 

「えぇ。そうさせてもらうわ」

 

私は斧を、リフィルはブラスターを構える。

 

そして、最後の戦いが、始まる。

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