サキサキを大好きな後輩の話。   作:ま~べる

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サキサキを大好きな後輩

総武高校の屋上の主。一年の間で最近流れている噂だ。曰く、屋上には主がいる。曰く、この高校を締め上げているだとか。曰く、毎日抗争が行われているだとか。その全てを確かめたものはいないが、少なくとも一年の中で屋上に近づこうとするものはいなかった。そもそも屋上は鍵が掛かっており出ることはできない。だから噂はデマという結論になりそうだが、少なくとももうしばらくは続きそうだった。

そして、この噂の主というのが川崎沙希、俺の愛してやまない先輩のことである。

 

「川崎先輩、お昼一緒していいっすか!」

「だめ」

「へへ、あざっす!」

「話聞いてる?」

「それにしても今日もおいしそうなお弁当っすね!もらってもいいっすか」

「いいわけ」

「卵焼き一個だけ!」

「あっ、ちょっと!」

 

すこしきつそうな目、整った顔立ちに涙黒子がひとつ。青みがかった黒髪をうしろで一つにくくりあげ、改造した制服を着こなすその体はきれいな曲線を描き出るとこは出て引くところは引くといった完璧なスタイルの一つ上の先輩。あらゆるすべてが可愛く、同時にきれいさもあふれ出ている。押しに弱い。可愛い。

 

「はむ…うまっ!先輩の卵焼きめっちゃうまいっす!」

「…そう?ならよかった、今日実はだしを変えてみてね、それで」

 

おいしいと聞いた瞬間に破顔するのが可愛すぎた。やめて、俺のライフはもうゼロよ!いやでも可愛いの死体撃ちならむしろ来い、何なら俺から行くまである。

お弁当の味付けという全然女子高生らしくない話題で一人盛り上がる先輩。可愛い。そし自然な流れで途中から弟さんの話がはじまる。楽しそうに弟の昨日の様子を語る先輩が愛おしすぎてたまらん。うーんこの。

 

「って聞いてる?」

「もちろんっすよ!俺が先輩の話を聞いてないわけないっすよ!」

「…そ」

「あれ、先輩照れました?いやー可愛いっすね!」

「うっさい、ぶつよ?」

 

ぶつよ、といいながら俺のふとももを殴る先輩。もうぶってるんだよなぁ。

 

「先輩、もうぶってますって」

「あ?」

「さーせんした」

 

半笑いで先輩を小突いてみると猛獣でさえ逃げ出しそうな鋭い眼差しで場が一気に凍える。気のせいか温度が5度くらい下がった気がする。気のせいじゃない気がする。

 

「そ、それにしても、こんなおいしいものを毎日晩と朝に食べれるなんて弟さんは幸せ者ですねー!」

「…うん、そだね。私が作れたら、ね」

 

意味深にそうつぶやく先輩。顔には影がさしかかり心なしか苦しそうにも見える。

触れていいことなのかどうなのかわからず、触れてしまいそうになった手をおもわずひっこめる。あんなにも弟が、いや家族が好きな先輩が家族の話を振った時に喜々として語ってこないのはあまりにも不自然だった。ただの喧嘩中ならともかく、家族の深い部分の話となるとますます踏み込めない。第一に踏み込んだが最後地雷原に足を突っ込んだも同然、ギャルゲーで鍛えた俺のトークスキルは無に帰すどころか無の境地に至ってしまう。ここは慎重に、

 

「…せんぱ」

 

と、そこへキーンコーンという無機質な音が俺の切り出しをあざ笑うかのように学校を中心に辺りへと響く。なんだこのくそチャイムやんのかおら、と、やり場のない怒りに明後日の方向へ黒い眼差しお前はもう逃げれられまい。そうやってぐぬぬと唸っていると先輩が立ち上がり、

 

「昼休み終わったね、あんたも早く戻んなよ」

「あ、ちょ!先輩!」

 

それだけ言うと先輩はスッと立ち上がって屋上から校内へ入る古ぼけた窓を越え、中へ入っていった。

 

「…黒はきわどいなぁ…」

 

俺はというと先輩の魔のトライアングル、スカートの中の暗闇のその正体にバミューダトライアングルかのごとく心の中に嵐が来たせいで一歩も動けずその場に仰向けに倒れた。

えっっっっど。あまりの江戸さに徳川慶喜も江戸を終わらせてしまうま。死んでしまうま。俺のリリパッドの民がガリバーになってしまうま。

黒パンティを流出させないためにいっそのこと鎖国しちゃうまである。それあるー。

はたして高校生で黒のレースという凶器をスカートの中に潜ませる奴が何人いるというんだ。え、最近の高校生はみんな黒とかはいちゃうのん?

先輩の無防備さに一抹の不安を覚えるが、俺の中ではパンティ談義が始まっていた。

白か黒かTかパンティか、いやここでは敬意をこめておパンティ様と呼ばせていただくほうがいいのではってそうではない。

パンティの暴力に叩きのめされている場合ではなく、先輩の顔に影がかかったあの話について今は考えるべきだ。どうせ今から戻ってももう授業には間に合うまい、あきらめて座りなおした。

 

俺に出来ることはない。

 

結論は出ていたが、それでも川崎先輩のあの顔を見るとなんとかして力になりたいと思うところではある。堂々巡りの思考を繰り返し、瞳を閉じて君を思ったが、最後に思ったのは黒パンティのエロさだった。それだけでいい。そこで俺の記憶は途切れ、気づけば夕焼けに照らされ、キンッという金属バットの鈍い音とブラバンのプァーという気の抜けた音から逃げるように小窓から校内に入り、おとなしく帰宅した。帰りに少し先輩のクラスを覗いたが、金髪のイケイケ縦ロールと赤メガネ女子がケータイをいじりながら談笑しているだけで、そこに先輩の姿はなかった。

前に見た先輩の席は、先輩の心の内を示すように夕焼けに照らされその寂しさを強調させていた。




続きます。多分。
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