サキサキを大好きな後輩の話。   作:ま~べる

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未だ彼らは戻らない

最低だ、俺って…。

 

独り言ちながらスマホのキーボードのバックスペースを連打する。

先輩への謝罪文を考えて早六日。

この間は避けちゃってごめんなs、、から一向に進まないライン。

自分のチキンっぷりに驚く今日この頃。

そろそろ仲間意識でからあげクンが食べられなくなりそう。そうなったらLチキ買お。

 

「はぁ、まいったなぁ~」

 

今日は日曜日。来週までこの気不味い空気やら雰囲気やらを持ち込むと、そろそろ先輩レスで倒れるやもわからん。

ともすれば何とか今日中に決着をつけて来週からは今まで通り、はちょっと厳しそうだからせめて話せるくらいにはなりたいと思う所存。

時間はまだ昼、先輩を誘って直接謝ってそのまま遊んでいい感じに、いや、そもそもあってくれるかも怪しい。

男できてるし。

どぅえきてるぅし。

ちくしょうハッピーみたいにハッピーになれないぜ。

 

だけどまあ、今変に悩んでいるくらいなら直接会ってギクシャクしながら話したほうがいいのか…?

六日間にわたる俺の脳内円卓会議にようやく終わり見える。

腹をくくりラインを送ろうと開きっぱなしの先輩とのトーク画面をみて、ふと何か増えていることに気づく。

 

『暇?』既読

    10分前

 

…。

……。

………ヒエッ。

 

アイエエエエ!先輩!?先輩ナンデ!?

しかも既読して10分もたっとるやないかぁああああい!!!

 

やべえやべえやべえ完全に既読スルーじゃんなんて送ろう!?

いやもう正直に言うしかないのか?なんて?

 

…先輩のこと考えてたら既読スルーしてました☆ミ

 

いや死ぬなこれ。

ええいままよ。

 

すみません、今気づきました。超暇っすよっと。

よし、後は用件だけ聞いてっと。

 

え、いまからららぽ?

いや丁度いいけど向こうから呼び出しって何!?

死ぬ?俺死ぬの!?彼氏出来ました的な報告?

いやどっちにしろ死ぬよ俺。

 

まあ、いくけどさ。

 

 

―――そんなこんなでやってきましたららぽーと。

もう目の前にはスタバで買ったエモい映えそうなやつを飲みながらスマホをいじいじしている先輩。ここだけ偏差値5みたいな文章なのは、今時という魔法の言葉の前には無力。皆無に等しい。

同時に相変わらずかっこ可愛い綺麗という美の暴力の化身みたいな先輩にすっげぇガン飛ばされてる俺も無力。

これにはナチスの化学も永遠の二番手にならざるを得ない。

 

「で、10分間既読スルーした言い訳は?」

 

そんな現実逃避もつかの間、先輩の鋭い眼差しに相も変わらず俺の防御力はぐんぐん下がる。もはやノーガードなまである。なんだかちょっとえっちだね。

 

「実は先輩にラインを送ろうと考えてたらラインが来ていたのに気づかなくて…」

 

目をそらし、両手の人差し指をつんつんしながら先輩に物申す。余計に怒気のオーラ的なにかが増した気がするが気のせいだと信じたい。先輩はひょっとしてスタンド使いなのだろうか。なわけないか。そういうの疎そうだし。

 

「ふーん、じゃあ前に学校であたしと目があった瞬間逃げたのは?」

「いきなりアッパー打つんですねぇ!」

 

まだジャブ一個しか来てねえよ。せっかちか。

大体もうちょっと聞き方というかそういうのがあってもいいんじゃないかな。

まあいいけども。

そして生憎だがそれへの回答は持ち合わせていないしせいぜい謝るくらいで精一杯なのが本音だ。

自分でもなんで逃げたのかあまりよく分かっていない。

多分根底にあるのは嫉妬ってやつなんだろうけど、一言で片づけてしまうのは少々寂しいものがある。

 

「…すいません」

 

だから、かろうじて絞り出せるのはこれだけだった。

先輩から聞きたいことも山ほどあるし、先輩にいたことも山ほどあったけれど、先輩が抱えていた問題を自分から言いださない限りはそこに触れないほうが、きっとお互いいいことなのだろう。

第一、俺は知らない(てい)なのだから。

 

「…別に、あたしは怒ってるわけじゃないんだけど。」

 

じゃあなんでそんな不機嫌な声してるんですかねぇー。説教してる小学校の先生みたいな決まり文句を使うんですねぇー。あはー。

ちょいちょい現実逃避を挟みつつ先輩からの私怒ってませんよ攻撃をかわす。

もうすでにイライラマックスな気がするのはきっと気のせい。

ええ、きっと、もちろん。

そこへ先輩が、ただ、と繋げる。

 

「ここ一週間、屋上で一人でお昼食べたのが少し味気なかったから、どうしたのかなと、思ってね」

 

―――は。

 

かっっっわ!!

 

そんなん可愛いの暴力やん。

エターナルクッソカワイイ

一瞬で俺のつまらない意地は爆散する。

相手は死ぬ。

 

「それにほら、前にあたしあんたにキツイ態度とっちゃったから。それで怒っちゃったのかなって。だから、謝るのはあたしの方」

 

しおらしい先輩もまた乙ですなぁ!

こんなかわいい先輩百面相を見られるならつまらない意地でもはってみるもんだはっはっは。

それはさておき。

実際先輩が悪びれることなんて一片たりともありはしないのだから、それは正しておかねば。

 

「それはぜんぜんいいんすけど。いやー、てっきり俺が前先輩のクラスに寄った時、先輩同クラの人としゃべってたからあれ彼氏さんだと思って遠慮しちゃってたんっすけど。余計なお世話だったんすかね?」

「あー、比企谷のこと?あいつはただの、んーなんだろ恩人みたいなもんだよ。そっか、変に気を遣わしてたんだね」

 

そういうと先輩はクスッと笑い、俺にじゃあまた、一緒にお昼を食べよと提案してきた。

当然断るわけもないので二つ返事でその誘いに応じる。

これにはストレイト・クーガーもびっくり。

 

「さて、じゃあわだかまりもなくなったことだし、あんた買い物に付き合ってよ」

「え、それってデートってやつっすか!!行かせていただきまぁす!!!」

 

ちなみに言っておくと先輩の悩みの種を先輩の口からきけたわけではないし、俺としてはまだまだ聞きたいことはあるのだけれど、先輩とデートという至宝の前ではそんな些細な悩みは偏に風の前の塵に同じ。

んー、俺ってばちょろい。

 

けどまあ、それでいいのかもしれない。

掘り返して先輩との空気がまた重くなるくらいなら、俺は先輩にとって、少し気安い後輩としてのポジションを守り続けるほうが、先輩にとっても俺にとってもいいような気がする。

 

知らなくても、今がこのまま、続くだけなのだから。




感想とか来ててめっちゃ励みになります。
続くかもわかりません。たぶん。
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