仮面ライダーW/Kの花嫁   作:wing//

100 / 100
1年以上ぶりの更新…(笑)
ということで、こちらも更新再開です!今後は少なくとも月1更新予定です。

そして、お話はダブル最終章に向けての間章です。ガッツリ戦闘回ですが…

それでは、どうぞ!


間章 街がQ
第98話 「街がQ/全ては眠る」


その日、街は眠った。

 

街を駆け抜ける風も、空間を伝う電波も、空を飛ぶ鳥も…そして、人も。

 

『…翔太!?しょう…』

 

ダブルに変身していた翔太の意識が消える中、最後に聞こえたのは相棒の声だった。

 

 

…話は30分前に遡る。

 

「…ドーパントが出た?」

 

「「「「「「……!?」」」」」」

 

修学旅行から数日…いつもの家庭教師の勉強会に参加していた翔太だったが、掛かっってきた電話をスタッグフォンにて取った翔太の言葉に、風太郎たちにも緊張が走る。

 

思わず言葉にしてしまったことにしまったと思いつつ、翔太は声を抑えて相手に言葉を返す。

 

「それで…一体今はどういう状況なんだ」

 

『街のど真ん中にいきなり現れたそうだ。ネットに拡散されまていって…ウォッチャマンから俺に連絡があった。だが、かなり奇妙なドーパントらしい』

 

「奇妙…?」

 

風太郎たちに聞こえないよう、玄関近くにまで移動した翔太は電話相手…喫茶店『ウィンドウ・シティ』の店主であり、風都イレギュラーズの元締めであるマスターに応えるが、彼の口から出た言葉に首を傾げていた。

 

『現れた場所から微動だにしないらしい。ただそこにいるだけ…警察の呼びかけにも一切応じないらしい。まぁ、現れたのがビジネス街ということもあり、人が多いところだから、急ぎ対応するべきだろう』

 

「分かった。とりあえず俺も現場に行ってみるさ」

 

『気を付けろ、翔太。それと…近くに偵察に行ったウォッチャマンと連絡が取れない。何かあった可能性がある』

 

「…!分かった、慎重に行くさ」

 

これまでとは系統が異なるドーパントだということに、そして、現場近くに行ったというウォッチャマンと連絡が取れないという自体に、翔太は嫌な予感を覚えていた。

 

「…行くのか?」

 

「…!上杉…って、お前らも」

 

スタッグフォンを懐にしまうとしたところで、風太郎から声を掛けられた翔太は視線をそちらへと向ける。そこには、風太郎とドアから顔を覗かせている五つ子たちの姿があった。

 

「まぁな。心配すんな…すぐに片づけてくるからよ」

 

心配は無用だというばかりに翔太は風太郎たちに告げ、アパートの近くに駐車していたハードボイルダ―にて現場に向かうのだった。

 

 

 

「…なんだ、これ…?」

 

現場の近くにまでハードボイルダ―にて来た翔太だったが…思わず愛車を止め、自身が見る光景を疑っていた。それは、既に装備していたダブルドライバ―を通してその光景を共有されているフィリップも同じだった。

 

そこには、ありとあらゆるものが停止しているという奇妙な光景が発生していた。

 

人々はそこら辺で倒れており、街の該当モニターも消え、オフィス内の明かりも真っ暗になっていた。

 

「…あっ、ウォッチャマン!?おい、しっかり……えっ…?」

 

「ぐがぁぁ…すぅ……ぐがぁぁぁぁ…」

 

『寝てるようだね…?』

 

ハードボイルダーから降り、周囲の状況を確認していると、その中に倒れているウォッチャマンがいることを見つけ、翔太は慌てて駆け寄る。幸いにもウォッチャマンは寝ているだけのようなので、安堵した翔太は再び周囲を見渡す。

 

「他の人たちも同じみたいだな…とりあえず、救急車を……スタッグフォンが使えない…!」

 

『電波が飛んでいない…?ドーパントの能力か…それとも、電波障害を発する何かがあるのか?』

 

「…ともかく、ドーパントの仕業ってことなら、すぐにメモリブレイクした方が良さそうだな。よし……って、ハードボイルダーも動かなくなっちまった?!」

 

『ここからは徒歩で行くしかないね、翔太』

 

「ああ、なら早速変身して行くぞ」

 

スタッグフォンもハードボイルダーも使用できなくなり、ここからは直接徒歩で向かうしかないとなり、フィリップの言葉通り、翔太も自身のメモリを取り出そうと…

 

「…っ…?!」

 

視界が一瞬歪み、翔太は思わず近くにあった車にもたれ掛かった。

 

『…翔太?』

 

「わ、悪い……もう大丈夫だ。いくぜ、フィリップ!」

 

『Cyclone!』

『Joker!』

 

「『変身!」』

 

『Cyclone! Joker!』

 

2人のガイアメモリがダブルドライバーに装填され、翔太の身体を風と共にダブル サイクロンジョーカーへと変えた。そして、その身体能力によってビル群を駆け抜けていくのだった。

 

「っ…あいつか?!って、仁さんたち!」

 

『警察も同じように無力化…いや、眠っているようだね』

 

ダブルの身体能力にてビル群を駆け抜けて1分足らず…ドーパントを目視した翔太だが、その周辺に包囲網を作成していた警察の、知り合いである刃野刑事の姿もあったことに驚きの声を出していた。

 

もっとも刃野たちも眠っているだけのようで安堵の息を吐きつつ、意識を再びドーパントに向けようとした時…ダブルに…いや、翔太に異変が起こった。

 

「…っ?!」

 

ドーパントまであと50メートルもないところで、翔太の視界がぐにゃりと歪んだのだ。丁度跳躍していたタイミングだったこともあり、着地に失敗したダブルの体勢が崩れる。

 

『翔太、どうしたんだ!?』

 

「わ、分からねぇ…急に身体が重く……くそぉ、これは…」

 

相棒の異変を動きだけでなく、ダブルドライバーを通してフィリップも感じ取っていたが、翔太自身も原因が分からないでいた。気合で立ち上がろうとするが…全身の力がどんどんと抜けていくのと同時に、意識までもが薄れてきていた。

 

そして…立ち上がろうとしたダブルの身体がそのまま地に伏した。

 

『…翔太!?しょう…』

 

ダブルに変身していた翔太の意識が消える中、最後に聞こえたのは相棒の声だった。

 

 

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

…ザパァン!!

 

「…!?うおおおおぉぉ!?…つ、つめてぇ?!」

 

「目が覚めたか?」

 

落ちていた意識が冷たい感覚によって呼び覚まされる。

 

突然のことに、翔太は思わず飛び起きた。何事かと完全に動揺しまくりの姿で周囲を見渡す翔太に声を掛ける人物がいた。

 

「…照井。なんでお前がここに…」

 

「目が覚めたようでよかったよ、翔太。それに、照井竜も…助かったよ」

 

「礼はいい。それで、今、何が起こっているんだ?」

 

翔太が視線を向けると、そこにはバケツを手にした照井の姿があった。周囲を見渡すと、氷水がぶちまけられており、顔に氷水をぶっかけられたことで、目が覚めたのだと理解したところで、相棒であるフィリップがいることにも気づき、翔太は周囲を見渡す。そこは、街の中心から外れた、いわゆる都心外というところだった。

 

「…フィリップ、俺は一体何が…それに、照井もなんでこんなところに…」

 

「俺に質問をするな…と言いたいが、お前が眠ってしまったところに、俺が駆けつけて、フィリップの助言に従って一旦退却したということだ」

 

「あのまま戦うのは危険だったからね。照井竜に頼んでダブルの身体を運んでもらったんだ。君が意識を完全に失ってしまったから、変身はギリギリ維持できていたが、僕だけではどうにもならなかったからね…さて、照井竜の質問に答えるとしよう」

 

いつものフレーズで回答を断ろうとした照井だったが、今はそれどころではないということもあり、翔太の疑問に答えた。そして、フィリップが補足したことで自身が意識を失った後のことを把握した翔太に対し、フィリップはドーパントの正体について説明を始めた。

 

「…先程検索を完了した。やつのメモリの正体は…おそらく『レストレイント』だ」

 

「レストレイント…えっと、制止って言葉だっけ?」

 

「制止…だが、それがなんで人を眠らせる能力になる?」

 

「照井竜、正確には人の活動を制止させているんだ。いや、人だけじゃない、エネルギーや風といったあらゆるものを制止させる…それがレストレイントの能力だ。人の意識を制止させることで眠りにつかせ…最悪の場合、生命活動さえも制止させる」

 

「「…!?」」

 

フィリップから告げられた、ドーパントの恐るべき能力に翔太と照井が絶句する。制止という言葉からは想像できなかった能力に、2人が驚くのも無理はなかった。

 

「まぁ、まだ人を死なせるまでの力にまで強まってはいないのが幸いだけど…その魔の手はどんどんと広がっている。これを見たまえ」

 

「…これは?」

 

「デンデンセンサーで、継風全体をサーチしたものだ。この赤く円状に広がっているのは…レストレイント・ドーパントの能力が広がっている箇所だ」

 

「…おい、これ…どんどんと広がっていないか」

 

「メモリの情報を検索した際に、地球の本棚に掛かれていたことによれば、レストレイントは精神系のメモリだ。ただいるだけでどんどんと周囲の精神を汚染していく…このままだと、1時間も経たずに継風は吞み込まれる。そしたら…」

 

「「……………」」

 

フィリップが告げなかったその先の言葉の意味を、翔太と照井も理解してしまった。ならば、すぐにドーパントを倒さなければと焦る翔太だが、

 

「なら、すぐにでもあいつのところに…「いや、君はここで待機だ」…なぁ!?」

 

リベンジだとばかりに意気込む翔太を、フィリップの冷静な声が制止する。まさかの待機命令に思わず翔太から変な声が出る。

 

「た、待機って…何言ってんだよ、フィリップ!?」

 

「さっき言っただろう?レストレイントは精神系のメモリだと。そして、その力は奴に近づくほどに強まる上に、影響が少ないところであっても時間経過によって意識を失う…ここはまだ影響下にないから大丈夫だが…奴に近づいただけであの様だった君が行っても…また眠らされて二の舞だ」

 

「っ……なら、どうするんだよ!?」

 

「…照井竜、君と僕とで奴を倒すんだ」

 

「なぁ…」「…なんだと?」

 

翔太が行ってもまた眠らされてしまう…自分ではどうしようもないのと歯噛みする翔太の問い掛けに、フィリップがまさかの答えを口にした。その言葉に、翔太と照井が異なる反応をする。

 

「照井竜、君はさっき奴の近くにいたのに全く影響を受けていなかった。あそこにいなかった僕でさえ、翔太の状態を共有されて少し眠気を覚えていたのに、君だけは平気だった。おそらく、君は精神系の干渉に対して耐性があるんだと思う。そして、君ほどじゃないが僕にも…でないと、翔太が意識を失った際に、僕も更に影響を受けていただろうからね」

 

フィリップの推察に、あのドーパントは照井と…そして、照井には劣るものの、同じ体制を持つフィリップ自身でしか戦うことができないと悟った翔太は悔しさを隠せずにいたが、頭を横に振るって意識を切り替えた。

 

「照井…癪だが、お前だけが頼りだ。頼む…!」

 

「…ふん、らしくないな、佐桐。だが、任された」

 

「よし、なら急ごう。問題は奴のところに向かう方法と…ダブルの戦い方だね」

 

胸元を叩くと共に言葉を掛けた翔太に対し、クールな笑みを浮かべた照井が応える…彼らなりの激励を見ていたフィリップが、ドーパントの元に向かうことを提案しつつ、問題点を口にしていた。

 

「…戦い方って…お前がドーパントのところに行くっていうのなら、ファングジョーカ―か、ロストドライバーで変身するしかないだろう?」

 

「ロストドライバーは今回使えないよ。言っただろう?奴の精神攻撃は僕にも少し効いてしまう…サイクロンメモリだけしか使えないロストドライバーじゃ戦うのは厳しい。そして、ファングジョーカーも…多分使えない」

 

「えっ、なんでだ…ファングジョーカーなら……あっ!」

 

「そう…ファングジョーカーは、君がいてくれて、ファングメモリの力を抑えることができるから変身できるフォームだ。だが、今回は相性がある意味最悪だ…おそらく、僕をボディとして変身しても…君はレストレイントの影響を受けるだろう」

 

「そうなると…ファングメモリをコントロールできなくなる、ってことか。あそこには刃さんたちがいるから…一歩間違えれば大惨事だな」

 

この戦い、ダブルのほとんどの手が封じられてしまっていることに気付いた翔太は冷や汗を流していた。ここにきて、ファングジョ―カーの性質自体が裏目に出るという事態に、どうするべきかと考えていた時だった。

 

「…ただ、1つだけ手があるかもしれない」

 

「えっ…?」

 

しかし、その時相棒が口にした言葉に、翔太は思わず驚きの声を上げた。そこには、いつもの笑みはないが、何か覚悟を決めたフィリップの顔があった。

 

「翔太…地獄の底まで悪魔と相乗りする勇気はあるかい?」

 

「…はっ、今さらなことを聞くなよ、相棒。そんなの…とっくにできてるさ」

 

フィリップに何か策があるのだと理解し、そして、その内容を効かずに翔太は迷いなく信じると応えるのだった。

 

「なら、あとは移動手段だな?」

 

「ああ。奴の制止のフィールドは広がってしまっている。もうバイクの移動手段は使えない」

 

「ならば…ここに来たのと同じ手段で移動すればいい。そうだろう?」

 

ダブル側の話し合いは終わった頃を見計らい、照井が声を掛ける。もう一つの問題点である移動手段について、ハードボイルダーやリボルキャリーも使えないというフィリップに対し、照井は意味深な言葉を吐きつつ、アクセルドライバ―とアクセルメモリを取り出す。

 

『ACCEL!』

 

「変…身っ!」

 

ドライバーに装填されたアクセルメモリよりエネルギーが伝わり、照井の身体が仮面ライダーアクセルへと変わる!そして、続けてアクセルドライバーを腰から取り外し…空に跳び上がったアクセルが、その身体をバイクフォームへと変形させた。

 

「あー、なるほど…ここには、アクセルによって運んでもらったのか…」

 

「そういうこと…照井竜、安全運転かつ最速スピードで頼むよ?」

 

バイクが使えなかったのに、どうやってここまで移動してきたのかと思っていた翔太の疑問が解けたところで、フィリップはバイクフォームとなったアクセルに跨りつつ、そんな言葉を告げるのだった。

 

「ふん、無茶を言う。しっかり捕まっていろ…さぁ、振り切るぜ!!」

 

フィリップの無茶ぶりに苦笑いしつつ、マフラーから爆炎を吐き出したアクセルが急発進し、その姿を翔太は見送るのだった。

 

 

 

バイクフォームとなったアクセルが街を駆け抜けること数分…レストレイント・ドーパントの影響によって、街の交通網は麻痺…いや、全てが眠りについていたこともあり、その進路はほぼ空いているようなものだった。

 

そして、ハードボイルダーを停めている付近にまで戻ってきたところで、アクセルはエンジンを一度停止し、フィリップがアクセルから降車した。

 

「ここでいいのか?」

 

「ああ、ありがとう、照井竜。実験が終わったら、すぐに僕も向かう。」

 

「…ふん。別に俺が倒してしまってもいいのだろう?」

 

「頼もしい言葉だね…それならそれでいいさ。それじゃ…後で」

 

腰にあるダブルドライバーに左手を添えつつ、ここで一旦アクセルと別れるフィリップが、アクセルに対し激励の言葉をかける。その言葉に皮肉を返しつつ、アクセルはドーパントのいる場所へと急行するのだった。

 

「よし…翔太、準備はいいかい?」

 

『そりゃ大丈夫だけど…本当にやるのか?』

 

「ああ…僕の推察が当たっていれば、きっとうまくいくさ」

 

ダブルドライバーを通して聞こえる翔太の心配の声に、フィリップは…右手に手にしていたファングメモリを見つめる。ここに来るまでに手元に呼び寄せていたのだが…ファングメモリもレストレイント・ドーパントの影響を受け、ライブモードとして自立行動ができなくなっていたのだ。

 

純粋なガイアメモリとして利用できるようになったファングメモリを起動させつつ、フィリップは意味深な言葉を呟くのだった。

 

「さぁ…普段は開けることのできない扉を開けることにしよう」

 

『Fang!』

 

 

 

一方で、ドーパントの元に向かったアクセルは、

 

「…さっき見た時と同じ状態か。このままおとなしくしてくれていればいいのだが…」

 

フィリップの読み通り、ドーパントを目視できる距離に近づいても、照井の意識は残ったままだった。これなら行けると思ったアクセルはバイクフォームから人型に戻り、エンジンブレードを手にした。

 

ドーパントは先程と同じように、一切その場から動かずにいた。呼吸しているからも怪しい程に微動だにしないドーパントに気味の悪さを覚えつつ、アクセルは速やかに決着を着けるべく、エンジンメモリをアクセルブレードに装填する!

 

『Electric』

『Engine! Maximum Drive!』

 

トリガーを4回引き、エレキトリックにて電気を宿した刀身にマキシマムドライブの一撃をドーパントに向かって繰り出す!このまま決まれば、良ければメモリブレイク、少なくとも大ダメージは与えられる筈だった。

 

…しかし、そうは問屋が下りなかった。

 

…カァン!!

 

「っ…?!」

 

甲高い音と共にアクセルブレードの一撃が宙に制止した。

 

マキシマムドライブの刀身から消えていなかったが、ドーパントからあと少し…1センチもない距離で、エンジンブレードの一撃が止まってしまったのだ!

 

アクセルがなんとかブレードの刃を押し込もうと渾身の力を込めるも…刃は全く動かない。そして、その努力をあざ笑うかのように…それまで微動だにしていなかったドーパントが初めてアクセルの方へと視線を向けた時だった。

 

「…ぐううぅぅ?!」

 

次の瞬間、一切の余波なくアクセルの身体が後ろへと吹っ飛んだ!近くにあったパトカーに背中から叩きつけられたアクセルがダメージを堪えつつ、アクセルブレードを杖にするようにして立ち上がる。

 

(これが…フィリップが言っていたドーパントのもう一つの能力…空間の制止か)

 

ここにくるまでにドーパントの能力を聞かされていたアクセルは、フィリップから聞かされていたレストレイントの能力のことを思い出していた。

 

レストレイントはその場から動かずに街を侵食していく一方で、自身の空間をずっと制止させているのだという。つまり、それに近づくものさえも制止した空間に阻まれてしまうのだという。

 

アクセルが初手でマキシマムドライブを発動させたのも、その空間を突破するためだったのだが…予想以上のその強固な空間制止に舌打ちを打ちたくなっていた。

 

だが、一度アクセルを敵と認識したレストレイント・ドーパントはそんなことお構いなしに…その能力による反撃を繰り出してきた!

 

「っ…!?」

 

自分がいる場所の頭上に何かを感じたアクセルが前方に飛んだ後、上空から何かが振り…その地面を揺らした。アクセルがさっきまでいた地面が陥没していたことに、アクセルの背筋を冷たいものが伝う。

 

「制止した空間を壁とした放ってきたのか…本当に厄介な能力、だな!」

 

レストレイント・ドーパントは制止した空間を操ることができる。それは防御だけでなく、攻撃にも転用できる。制止した空間を拘束で操ることで、見えない鈍器としてアクセルに繰り出してきていたのだ。

 

気配でなんとか躱していくアクセルだが、見えない以上、空気の動きを肌で感じて回避するしかなく…全てを回避し切れずに徐々に被弾していく。

 

「っ…!?」

 

『Steam』『Jet』

 

エンジンブレードのスチームによる水蒸気による動く空間の可視化と、ジェットによるエネルギー弾でのドーパント本体を攻撃するも…焼け石に水、アクセルの攻撃は届かず、更には周囲状況のせいもあり、広範囲の攻撃を繰り出せずにいた。

 

周囲には刃野を始めとした眠っている警察たちがいるのだ…一歩間違えれば、警官たちを撒き込んでしまうのだ。

 

このままでは押し切られてしまう…打開策が思いつかない状態のアクセルだったが、その側面から見えない空間がヒットし、横っ飛びに吹っ飛ばされてしまった。

 

「くっ……こうなれば、一か八かバイクになって特攻するしか…」

 

「それはオススメしないかな」

 

「…!?」

 

自身が持っている手札から…一番火力が出せる方法であるバイクフォームでのマキシマムドライブによる特攻しかないとないと、その手をドライバーに掛けようとした時だった。

 

離れたところから聞こえてきた声にアクセルが目線を向けると…そこには、走ってきたためか、息を切らしたフィリップの姿があった。

 

その腰にあるダブルドライバーには…フォアングメモリとジョーカーメモリが既に装填されていた。

 

「フィリップ…実験は終わったのか…」

 

「ああ…そして、レストレイント・ドーパントの攻略方法についてもね。選手交代だ、あとは任せたまえ。行くよ、翔太」

 

『……ぐぅぅ』

 

「翔太!!いくよ!」

 

『うがぁ…!…わ、悪い…ああ、だいじょ、ふわぁぁ…大丈夫だ』

 

ここからは自分が…いや、自分たちが戦うというフィリップの言葉に、アクセルが安堵の息を吐く。

 

そして、フィリップは翔太へと声を掛けるも…逆にダブルドライバーを通して影響を受けてしまっている翔太からいびきが返ってきたため、相棒を起こすためにフィリップが叫ぶ。今回は、ダブルドライバー越しの影響だったので、フィリップの言葉に翔太は欠伸交じりで言葉を返すも、その意識はなんとかはっきりしていた。

 

「『変身!!』」

 

『Fang! Joker!』

 

フィリップがダブルドライバーを開いたことで、ドライバーが2つのメモリをエネルギーを解放し、フィリップの身体をダブル ファングジョーカーへと変える!

 

そして、そのままレストレイント・ドーパントに攻撃を…仕掛ける前に、更にもう一手…今回のためだけの臨時の切り札を切った。

 

「さぁ、今回だけのとっておきだ」

 

『Dinosaur!』

 

「…フィリップ?!」

 

 

ダブルドライバーを閉じ、ボディサイドのジョーカーメモリを噛むように変形していたファングメモリを一旦元に戻し…なんとジョーカーメモリをドライバーから抜いたのだ。そして、その代わりに手にしたのが…ダイナソーメモリというまさかの切り札だった。

 

まさかの手段にアクセルが驚きの声を上げるも、構うことなく…フィリップが操るダブルの左手はダイナソーメモリをダブルドライバーの左側のスロットに装填し…そのままいつものプロセスにてドライバーを開いた!

 

『Fang! Dinosaur!』

 

「『うううぉ…うおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!!』」

 

いつも以上の雄たけびを上げながら…周囲の地面を陥没させるほどの勢いと共に、ファングジョーカーのボディサイドがジョーカーからダイナソーに変わる!

 

フィリップと翔太…それぞれにとって暴走の危険性がある2つのメモリ、ファング系列のフォームでは絶対に組み合わせることができないと思っていた、悪い意味でも、そして、いい意味でも相性が良すぎるダブル ファングダイナソーがその場に顕在した!

 

暴走×暴走が掛け合わさったフォーム…だが、アクセルの予想に反し、ダブルの様子はこれまでと変わることなく、暴走の兆しは見られず冷静だった。

 

「レストレイントメモリは制止の記憶を宿したメモリだ…そして、それはガイアメモリについても例外じゃない。完全にじゃないけど他のメモリの力を抑制しているんだ…なら、その力を利用してやればいい。逆転の発想ってやつさ…ファングメモリもライブモードが使えない程に抑制されている…なら、僕のメモリの能力を昇華させるダイナソーメモリをかけ合わせれば…マイナスを相殺できる、ってことさ」

 

『そして…闘争本能のおかげで、俺の目もバッキバキに冴えたぜ!』

 

何故暴走しないのか…ファングジョーカ―でもレストレイントの影響を受け、意識やメモリの力が制止させられるのなら、制止させられることでマイナスになることを前提に変身すればいい。

 

それがフィリップの思いついた妙案だった…ファングとダイナソーという余剰すぎる力を発揮するメモリたちを、逆に力を抑制されることで使いこなすという荒業を2人は見事にこなしてみせたのだ。

 

『…!!』

 

ダブル ファングダイナソーを新たな脅威として認めたのか…レストレイント・ドーパントは再び見えない空間で迎撃しようとした。

 

…だが、超音速の牙がそれを許さなかった。

 

「うおおおおおおおおぉぉぉ!!」

 

『…!?』

 

制止した空間をいとも容易くぶちやぶり、ダブルがドーパントの頭を掴んでいた!

 

『ここじゃ刃さんたちがアブねぇからな…場所変えだ!』

 

周囲の被害を考慮した翔太の言葉通り、ダブルはドーパントの頭を掴んだまま、その場から跳躍した!あっという間に彼方に消えたダブルとドーパントの姿をアクセルは見守ることしかできなかった。

 

 

 

「うがあぁぁ!!」

 

『…っ!!』

 

人気のない広場にまで辿り着いたところで、ダブルはドーパントの頭部を解放した。着地をしたダブルに対し、着地と同時に地面に投げつけられたドーパントの身が転がる。

 

そのまま追撃をしようとしたダブルだったが…その身体が崩れ落ちかける。

 

「っ…!」

 

『フィリップ…?!』

 

「くぅ…抑制させられているとはいえ、やはりファングにダイナソーの力を加えたこのフォーム…力を抑えるのは難しい…!僕の身体が、ダブルの攻撃に耐えられない…!」

 

ダイナソーメモリにより能力が昇華されたファングメモリのパワーは絶大…しかし、それゆえの弱点があった。

 

ただでさえフィジカルがそこまで強くないフィリップにとってファングダイナソーの力は過剰すぎたのだ。ダブルの生態装甲を身に纏っていながら、その自壊ダメージにより、フィリップの肉体に限界が迫りつつあった…なんとか立っていられるが、フィリップの四肢が痙攣し始めていたのだ。

 

『…!!』

 

その隙を見逃さず、レストレイント・ドーパントがダブルの四方から見えない空間にて攻撃していく。ダイナソーメモリの強固さによってダメージにはなっていないが…変身しているだけで肉体にダメージが発生している以上、ダブルが変身していられる時間はもう僅かだった。

 

「…時間がない、一撃で決めるよ、翔太!」

 

『ああ!技名はもう思いついてある!』

 

「いつも通り、そこは君に任せる…いくよ!!」

 

『Fang! Maximum Drive!』

 

一発に全てをかける…2人の覚悟も既に決まっており、攻撃に耐えながら、ダブルがファングメモリのタクティカルボーンを3回叩く!それにより、マキシマムドライブが発動し…全身にファングメモリのエネルギーが駆け巡り、それを解放するかのように、ダブルの複眼が光った!

 

次の瞬間、音を置き去りにした一撃が空間を崩壊させた。

 

瞬間移動したかのように、ドーパントの目前に現れたダブルが左足による垂直蹴りにて、ドーパントの身体を空へと真っ直ぐ打ち上げたのだ!

 

そのまま追いかけるように空に跳躍し…ドーパントに追いつき、マキシマムドライブを放つ!

 

「『ファングコンセティクブズ!!』」

 

そのまま右足による回転蹴り…に終わらず、左足での蹴りを回転の要領で2撃目を叩き込み、更に最後の1撃…恐竜の足がオーラと化した3撃目を叩き込み、ドーパントを地面に叩きつけた!

 

「…さぁ、お前の罪を数えろ」(…さぁ、お前の罪を数えろ)

 

遅れて地面に降り立ったダブルは、そのまま即座にドライバーからファングメモリとダイナソーメモリを抜き去り、その変身を解除する。レストレイントメモリをメモリブレイクした以上、他のメモリへの抑制能力も消えるため、変身を解除しなければ、即座に暴走してしまうからだった。

 

だが、変身を解除しても問題はなかった…最強のマキシマムドライブを叩きこまれたことで、地面から動けずにいたドーパントの全身をマキシマムドライブの余波が走っており…フィリップ(と変身を解いているため、その場では聞こえないが)と翔太のいつもの決め台詞が放たれた直後、ドーパントの身体が爆発を起こした!

 

…そして、その場にはメモリブレイクされたレストレイントメモリの残骸と、名の知れない女性が倒れていた。

 

「…これでレストレイントメモリの能力も消えた筈…眠っていた人々の目も覚める筈だ」

 

『なら、あとはマスターに頼んで刃さんにこの人を確保してもらうとして…俺たちはズラかるか』

 

「そうだね…ハードボイルダーも回収しないといけないしね…っ…!」

 

『…って、その身体じゃ無理そうだな。リボルキャリーで迎えに行くから、ちょっと待ってろ』

 

「…悪い、頼むよ」

 

一件落着…あとは警察に任せようと話し合っていたところ、フィリップの肉体と体力が限界を迎えた。マキシマムドライブを放った足は反動によって出血しており、骨折まではしていないが、歩くことは難しい状態だった。

 

その状態の相棒を放っておくことなどできる筈もなく、翔太はフィリップ(とハードボイルダー)を回収するべく、すぐさまリボルキャリーをスタッグフォンにて呼び出すのだった。

 

 

 

…だが、彼らはまだ知らなかった。

これが、最悪のシナリオの始まりでしかなかったことを。

 

ダブルがレストレイント・ドーパントを倒すまでの間…継風のほとんどを制止の記憶が覆っていた。それは、彼ら彼女らにも及んでいた。

 

「ねーむれ、ねーむれ…いいーこーよー…」

 

シューベルトのこもりうたを少し改変した歌詞を口にしながら、その男は部屋に入っていた。制止した環境にて動けているこの男は、レストレイント・ドーパントを仕掛けた張本人だったからだ。

 

そして、レストレイントメモリをその身に一度差したことがあったからこそ、メモリの力に耐えることができていた。そして、この男もまた…照井やフィリップと同じように、精神系のメモリに対する耐性を持っているのだ。

 

黒いハットに黒い紳士服…どこか愉快そうな笑みを浮かべるその男は…眼下に眠る6人の男女を…モルモットを観察するかのように見下ろしていた。

 

「フフフッ…フハハハハ!さぁ、計画の最終楽章を始めましょうか」

 

そう…それはダブルとアクセルがよく知る因縁の相手…ウェザー・ドーパントことドクターだった。その手には小さなキャリーケースがあり…ドクターはキャリーケースを地面に置き、そこから取り出したのは…

 

「…君たちがどんな選択をするのか…実に楽しみですよ」

 

その脳裏にはダブルとアクセル、そして、これから起こる悲劇が想像されていた。歪で、邪悪な笑みが更に一段と深まり…ドクターは、ガイアメモリの生体コネクタを刻印するための装置をキャリーケースから取りだした。そのキャリケースには5つのガイアメモリが納められていて…

 

「…楽しい、楽しい…実験の始まりです」

 

その眼下に見下ろす…風太郎と五つ子たちに対し、ドクターはその魔の手を延ばすのだった。

 

 

 

 

次回 仮面ライダーダブル/Kの花嫁

 

「大切なのはどこにいるかではなく、五人でいることです」

 

(…やっぱり、風太郎君だ!)

 

『貴女だって分かってるでしょ?…全部壊したのは貴女…壊すことが貴女の本音』

 

「…私とデートしましょうか、佐桐さん!」

 

 

「…俺は俺の罪を数えた……さぁ…お前の罪を………数えろ…!」

 

『少女‥‥Y』 これで決まりだ!

 

 




オリジナルフォーム
●ファングダイナソー
 ジョーカーメモリ以外とは暴走してしまうファングメモリと、ボディサイドでも制御が一番難しいダイナソーメモリを組み合わせた、最強最悪のフォーム。本来は変身不可(というよりも暴走する上に手の付けようが一切なくなるため、かなり危険)。
 ダイナソーメモリの特性で、ファングメモリに記憶された『牙』が『砕牙』に昇華されている。
 攻撃・防御共に純粋なボディスペックだけ見ればダブル最強のステータスを持つ。更に、ファングの機敏性も組み合わさっているため、ボディスペックだけ見れば単なる力だけで相手を圧倒できる(まさしく物理で殴るだけで解決できる)。
 ファングメモリのタクティカルホーンを叩く回数で、何度でも再生する牙を腕や肩から外し、投擲や斬撃を放つことができる(特にショルダーファングは投げては再生の繰り返しで、無限の数を放つといった芸当も可能)。
 但し、暴走×暴走のメモリをそれぞれ使用しているため、例外を除き変身不能(これはダブルの2人が成長しても、当面は不可である可能性が高い)。また、物凄いパワーを発揮できる反面、戦闘向きではないフィリップの身体に尋常ではない負担がかかり、戦闘できるのはものの数分である(少し戦っただけで、フィリップの肉体が自壊してしまう程)。

●オリジナルドーパント
レストレイント・ドーパント 『Restraint』
 色のない人型のドーパント。例えるなら全身のっぺらぼうが特徴のでドーパントだが、その能力は凶悪の一言に尽きる。
 制止の記憶を、ドーパントを中心にフィールドとして展開し、フィールド内にいる全ての存在を制止させていく。人であれば意識を、電気等のエネルギーは流れを、機械はその稼働そのものを制止させてしまう。また、この制止能力はガイアメモリにも少なからず影響を与えており、ライダーたちが使うガイアメモリや擬似メモリは使用不可とまではいかないが、少し能力が下げられてしまう(逆に、その力をダブルに利用されることとなったが)。
 その能力は絶大で、フィールドは時間経過により広がっていき、またフィールドの拡大によって能力は徐々に強まっていき、最悪の場合、人の生命活動を制止=死亡させることさえも可能になる。
 また、制止の能力は攻防面でも発揮されており、ドーパントの周囲は空間が制止されているため、強大な力でない限り破ることができない。また、周囲以外の空間を制止しぶつける、という見えない空間での物理攻撃を行うことが可能。
 上記の能力でダブルのマシンを使用不可能にし、翔太の意識を制止=眠りにつかせることで前線に立たせなくしたり、精神系攻撃に耐性を持つアクセルを空間攻撃で苦戦させた。
 だが、上記したようにガイアメモリの力を一部抑制するという点をフィリップに利用され、変身不可であるファングダイナソーへの変身できるようにさせてしまい、その圧倒的なパワーにより制止空間を破られ、そのままメモリブレイクされた。
 しかし、このドーパントの真の狙いは、ドクターが五つ子たちに近づくことにあったため……
 余談だが、書いてて「あれ、五●悟?」と作者が思ったメモリだったりする。

ということで、間章のお話でした。
前章のラストでの表記はこういうわけだったわけです。ファング系列で一番変身できないだろうというオリジナルフォームの登場でした(あっ、多分もう出番ないです。暴走確定フォームなので(笑))。
そして、またしても面倒なことをしようとしているドクター…感想でも鋭い指摘をしていた読者の方がいましたが…次章以降のお話はご想像にお任せします(黒笑)。

 さて、次回予告でも意味深な台詞をいくつか書いておりますが…次章は原作交えつつ、ほぼ炎上しそうなお話を予定しております。ということで、サブタイ通り彼女を中心としたお話で…ダブル関連のお話は最終章に入ってまいります。そのため、遂にあれとかあれとかの登場も迫っているわけで…

 また次回をお楽しみに。
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